表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/279

「元宮さん、連続殺人の犯人はあんただったんだな」


 英斗ははっきりと言う。屋根の上にいた元宮は笑顔を貼り付けて言う。


「えっ? 何のことですか? 私には、貴方が彼を襲っただけにしか見えませんでしたが?」


「とぼけるんじゃねえよ。あんたは俺とレオさんの戦闘を見てたんだろ? 文京区に行ったなんて嘘だったんだ」


「いやいや、何を根拠にそんなことを言ってるんですか? 自分が殺したくせに私に罪をなすりつけるのは止めてくださいよ」


 と嘲るように言う。


「あんた、なんで俺のスキルを知ってたんだ? 俺はあんたに一度もスキルを見せたことは無い。だが、あんたは塀を直す時に俺になんとかしてくれないか、と尋ねた。見てたんだろ、あの獣人を殺した後もずっと」


「……言いがかりにしか聞こえませんね。とりあえず聞いただけですよ、私は」


「あんた、そもそも獣人じゃねえだろ?」


 英斗のその指摘に元宮から完全に笑顔が消えた。


「前から引っかかってたんだ。アンデッドが発生した時、あそこはあんたの見回り区域なのに一番遅かった。犬の獣人なら鼻も利くはずだ。なのに、アンデッドの臭いに全く気付いてなかった。そりゃそうだよな、あんたは獣人じゃないのに利くわけがない」


 無言で聞いていた元宮は大きく口を開け醜悪な笑みを浮かべた後笑った。


「ハハハ! 罪をあっさりなすりつけられた間抜けのくせに中々の推理だ! 確かに俺のスキルは、犬なんかじゃねえ」


 そう言うと、元宮は犬耳と尻尾を解除し普通の人間と同じ状態に戻る。


「なぜ……わざわざ獣人に化けてまで、獣人達を殺すんだ?」


「そりゃあ、あいつらは人間の面被ってやがるが、中身は獣畜生と何も変わらないからだよ!」


 元宮が大声を出す。いつも穏やかな元宮からは想像できない大声である。


「何を言っている! 見た目は違えど同じ人間に決まっているだろう!」


「ふざけるな! 同じ人間などではない! ……俺は妻も子供も獣人のゴミに殺されたんだ! 見るも無残にな! あれは人間のできることではない……あれはまさしく獣畜生にしかできない光景だった……!」


 そう言った元宮の目には憎悪を煮詰めたような全てを憎む目をしていた。その目を見て英斗は何を言っていいのか分からなかった。


「勿論、そのゴミは殺してやった! だがあの日から消えないんだ。妻の……愛する娘の死んだ目が。いつも……いつもこちらを見ているんだ、全ての獣人を殺せとな。あいつらはスキルにより見た目だけでなく、中身まで獣になっているんだ! 完全獣化を見ただろう? あれはまさしくただの獣じゃないか」


 スキルで理性が少し失われるからと言って、獣人すべてが獣だなんて詭弁を認めるわけにはいかなかった。


「確かに、貴方がされた事については、何も言えない。その殺した奴に復讐する権利もあると思っている。だが、ここの住民は貴方の妻と子供を殺した屑とは違う。一緒に住んでて分からないのか!」


「俺には、あの日以来獣人は喋る獣にしか見えないよ……。レオの手伝いをしたのだって、集めて獣人達を全滅させるためさ。1匹、1匹殺していてはきりがないだろう? 獣人の宴(ビースターズ)の奴等を全滅させるため色々策を弄したが、やはりレオが邪魔でなぁ。お前がレオに怪我でも負わせてくれればと思って、目の前で殺したまでは良かったが、まさかお前が勝つとは思わなかったよ。あの化物に勝てる奴がいるとはな」


「そんな理由で……! お前がやっているのはもうただの大量殺人だ! 確かに今は法など機能していない。だが、そんな事をさせるわけないだろう! おとなしく罪を認めて償え。俺に勝てると思っているのか?」


「流石、レオにも勝った男は言うことが違うな。確かに勝てる気はしないが……俺のスキルについて、まだ何にも分かっちゃあいないだろう?」


 そう言うと、元宮の姿が闇に紛れて徐々に見えなくなっている。


「俺のスキルは、逃げるのは得意なんだぜ?」


 そう言うと、闇に紛れて逃げ出した。その速度は翼を生やした英斗並の速さである。


「マジか! いったい何のスキルなんだよ」


 そう言って、英斗は元宮を逃がさないように全力で追う。彼にここで逃げられては、何も証拠は残らない。そうなっては再びレオと殺し合いである。

 英斗の速度も凄まじく逃がすことなく少しずつ距離を詰める。だが、運の悪いことにその先には女の子が居た。梓の友達である芽衣である。


「まだ、ツキは残ってるようだな」


 元宮はそう言うと、芽衣を捕まえ、首元にナイフをあてる。


「止まりな、ヒーロー。幼気な女の子がお前のせいで死んでしまうぜ。もう既に何人も殺してるんだ、ハッタリじゃないことくらいは分かるよな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ