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転生魔帝の人界亡命  作者: conacana
14/30

一転攻勢

《前回のあらすじ》

 少女とコカトリスの後を追い、洋館に侵入したエミールたち。不自然な痕跡を多数見つけ、遂には洋館の主、レクス・ブラックバーンと対面する。しかし、話し合いで解決することはなく、彼と交戦することになった。血の結晶を操る彼の攻撃に苦戦を強いられ、連携を取ることが難しい状況の中、エミールは窮地に追い込まれてしまった……。


 俺が言い残したいことか……それなら……!


「お前の()が解けたぜ」


「なに? 何を馬鹿なことを……。!?……」


 俺の四肢を封じていた水晶は、水に溶ける氷のようにあっさりと解けた……!


「な、馬鹿な、この水晶が勝手に割れるなど……!」


 直後、一瞬の隙を突いて放った魔弾はレクスの左胸を貫く……これで終わりじゃねえぜ! 両手で魔弾を放つぞッ!

 腹、腰、脚、腕……それらを()()()にするように、次々に穴を開けて行く……!

 どうだ! 反撃も防御もできまい! だが、この程度で吸血鬼がくたばるはずがねえ……!


「く……この……人間風情が……ぐっ……!」


 ナイスタイミングだ! ディードの空気弾で吹っ飛んだところを、アリスの茨が絡め取った! これで逆転だぜ……!


「さて、何か言い残したいことはあるかよ?」


「なにッ……!? 貴様らに言い残すことだと……!?」


 レクスは俯くと、その表情が次第に、不気味に笑い始めている……!

 今度は何を企んでやがる……!?


「ククク……貴様らにくれてやる勝利などない!」


 な、水晶を身体から発して、強引に茨を解きやがった……そのまま、レクスはアリスの方にすっ飛んで行って……!


「その血を寄こせッ!」


「きゃあッ……!!」


 こいつ、アリスの脇腹に手をズブって突き刺して吸血してやがるッ!

 面倒なことをしやがってッ……!


「え、エミール……たす……けて……!」


「止められるものならやってみろッ!!」


 俺が攻撃する間もなく、レクスは周りにあった水晶を集めて、ピラミッド見てえな分厚い壁を作り上げやがった……! ……まてよ?


「師匠! なにしてるんです! はやく水晶を割らないと……!」


「待て、ディード! ()()()()()()()()()良いのさ! この状況だからこそ……!」


 だが、今の俺はこれで最大限の地の利を得ることができた……これを活かさない手はねえだろ!

 俺は水晶にゆっくり近づき、手を触れて強く念じた……!


『解けろ!』 バリィ……ガラガラガラガラ……バッシャアァンッ!!!


 その瞬間、あれだけ厚かった水晶の壁は一瞬のうちに崩壊し、中にいるレクスとアリスの姿が見えた!


「な、何!? 貴様……!」


 今の俺は素早いんだぜ……! とりあえず一発ゴスッと殴らせてもらった!

 そして……!


 魔力を剣状に具現化した……「魔剣」でレクスの腹を切り裂く……! さあ、アリスの血を吐きだしやがれッ!


「ぐはあッ……! お、おのれぇ! 仕方ない!」


 吹っ飛ばされ、出血した奴は苦肉の策として、周囲にある水晶を自分の傷口に溶かし始めた……よし、かかったな! この時を待っていた!


「おまえ、もう終わりだぜ」


「な、なんだと……!?」


「お前今、その血の水晶を溶かして体内に入れただろ? その時点で、もうお前は敗北してるんだぜ」


「バカなことを……な、なに!? け、血液が……水晶が……動かない……!?」


 だから言ったはずだぜ……もう終わりだってな。そして、ヒントは血液だ。

 さっきレクスが溶かした血の水晶には、俺が流した血も混ざってるんだぜ。そして、そいつには()()()()()()()()()みてえなんだ……。


「き、きさま……まさか、貴様の能力は……!」


「これでもう答えは分かっただろ? 俺の能力は()()()()()()()さ。お前は俺の血を取り込んだから、能力の支配権は俺にあるんだぜ」


 まったく、分かり辛い能力だったぜ……敵がコイツじゃなかったら、俺は一生、この能力について気付かなかったかもしれねえ。


「ち、畜生ッ……!」


「さて……このままお前を嬲り殺すのは個人的に納得がいかねえ。アリスがブチギレるだろうしな。そこで、一つ()()しよう」


「と、取引だと……!?」


「なんてことはない。ただ、お前の攫った少女を返してもらうだけだ。それさえしてくれれば、お前の命を取らないし、略奪もしない。仲間にも手を出さないと約束しよう。そして、俺たちはこの館のことを内緒にしてやる。返さなければ、てめえを殺して、この館のことを街にバラして森ごと潰してもらうのさ。さて、どうする?」


「…………わかった。人の子を返そう……これで交渉成立なんだよね……?」


「へっ、物わかりのいいやつだ。……ああ、そうだ、そこでぶっ倒れてるアリスに血を返してやってくれ」


「あ、ああ……」


 気絶しているアリスをディードと一緒に引っぱってくると、レクスは脇腹に開けた穴に渋々と輸血を始めた。


「…………うっ……んん……ん……はっ!」


 おお、よかったぜ。無事、アリスは意識を取り戻してくれたみてえだ。

 前世の漫画で読んだ、血液が少なくなって起きる「出血性ショック」……ってやつだったかな。それでぶっ倒れてたみてえだが、よくぞ目覚めてくれたぜ。


「エミール……う、うわあ! て、敵!」


「落ち着けよ、もう勝負は着いてるぜ。お前が起きるのを待ってたんだ」


「えっ……そうなの……?」


 ま、無理もないよな。気絶するまで血を吸われるなんて、滅多にない経験だろうしよ。けど、彼女が無事で本当に良かった……アリスはただの恩人であり、仲間なだけのはずだってのに。妙に安心するんだぜ……。


「坊ちゃま、例の少女をお連れしました」


「ん、この人たちに返してあげてほしい。それで、全部丸く収まるみたいだから」


 お、少女も無事みたいだな。特に酷いこともされてないみたいだし、なにより、俺たちのことを見るや、駆け寄ってきた。


「あ、あの……ごめんなさい! マロンが森に入って行かなきゃこんなことにはならなかったから……」


「起きたことを後悔してもしょうがないわ。……えっと、マロンちゃんだっけ? とにかく無事でよかった……」


 ふう、これで一件落着ってこったな……。

 まったく、ディードに稽古をつけてやろうと思ったら、少女を追いかけてきたコカトリスと戦うハメになるし、そっからこんな深い森を突き進んで、このでっかい館で吸血鬼と戦うことになるとは、思いもしなかったんだぜ……。


「……君は魔族かい?」


 なに……!? レクスの奴、急に突拍子もない質問をしてきやがった……! なんでわかったんだ!?


「その黒い目に赤い瞳……遠い昔に見たことがあるんだ。僕たちはかつて暴君と呼ばれた魔帝から、この世界に逃れてきたんだ……まさか、また()()()()()()()()()の持ち主に会うとはね……」


「えっ……そうなんですか? 師匠……」 「エミール……?」


 わ、災いの目だって……!? 俺を疫病神とでも言いたそうだな……!


「俺はそんなつもりはねえ。バカなことを言うんじゃねえぜ……!」


「……できれば近いうちに去ってほしいな」


 言われるまでもねえ。俺たちは館を後にすると、来た道を辿って帰路に着いた。……災いを引き起こすか……確かに、ここ数日嫌な目にしか遭ってねえな……この血の運命なのか……?


「師匠、どうしてあの水晶を解くことができたんです?」


「ん、ああ、ちょっとした魔法の応用を思いついてな。それを試しただけさ」


「さっすが師匠! 俺も見習いたいです……! また、明日も稽古をつけてください!」


 明日も同じことすんのか……怠いな……。

 って、気づいたらもう夕方になってる。午後5時くらいかな?


「よかった、夕食には十分間に合いそうだよ! 今日は何が食べられるのかな……?」


「母さんの作る料理はランダムですからね~。なんにせよ楽しみっす!」


 街に着くと、少女の親御さんらしき人物が、門の前でウロウロしていた。


「ああ、マロン……! 無事だったのね!」


「ごめんなさい、お母さん。もう遠くまではいかないよ。」


「あなた方が娘を見つけてくれたんですね。もうなんてお礼を言ったらいいか……」


 へへ、お礼の言葉だけで良いんだぜ。

 別に欲しい物なんて、今の俺にはないんだしな。強いて言うなら、疲れを癒す場所を探してる……かな。

 そんなわけで、少女を引き取ってもらった俺たちは、ディードの家に戻ってきた。


「お帰りー! ちょうどいい時間に帰って来たわ! 今日は()()()()()()()()()をメインで作ってるからね!」


「え、ええ? こ、これで完成してるんですか? 私、こんな料理は始めて見ました……」


「こ、これは……予想の斜め上の料理を作ったね……母さん……」


 な、なんだこの料理!?


「魚の頭がパイから突き出ているぜ!? この夕食、ゲテモノすぎる……!」


「食わず嫌いしない! とりあえず食べてみなさい!」


 えぇ……し、仕方ない、覚悟を決めて食べるか……!

第十四話、序盤のボス戦が終わりましたね!

読んでいただきありがとうございます!


次回もお楽しみに!

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