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同盟国編 二話

「緊急事態発生、緊急事態発生。精鋭隊は至急アステリア国境付近へ出撃せよ、精鋭隊はアステリア国境付近へと出撃せよ」


鳴り響く警報と初の事態に戸惑いを見せる兵士や先の地獄を体験したものたちの戦戦恐恐とした表情が入り混じった基地内は、阿鼻叫喚と表現していいような景色が広がっていた。混乱する群衆の中を縫うように、俺は、数体の次世代型戦闘型ロボットともに現場へと向かった。




 数時間後、俺たちの隊は地獄に立っていた。ほんの少し前までは、長閑な農村が広がっていただろう集落が燃やされ、命だったものがゴロゴロと転がっていた。常人なら吐き気を催すような凄惨な景色だったが、部下たちは全く気にせずに襲撃者の痕跡を探している。恐らく今救えるごくわずかな村民よりもこれから襲われる可能性のある多くの人を救うための判断だが、人の心を持ってしまった俺には、少し躊躇われる行動だ。‥‥いや、俺も先の戦争の時なら迷わずそうしていただろうな‥‥そう思い、捜索をしていると通信が入る。


「西の関所より黒煙が上がっております、この村の襲撃者の可能性高」


「了解、至急現場へ向かう。俺の後に続け!」


 決意を決めるように部下へ言い放ち、新たな襲撃地点へと急ぐ。1人でも多く人命を助けるために‥‥




 銃声と悲鳴がこだまする関所にポツリポツリと煙が小さく上がっているのを見て、手遅れではないことへの少しの安堵感と早く何とかしなければという焦燥感が沸き上がり、雄叫びを上げながら、地獄に変わりつつある戦場に突入した。

 小さな火柱の上がる砦内に入ると、避難してきた近隣の村人たちを兵士たちが敵から必死に守っている場面に出くわした。俺は、握りしめた槍で突入の勢いそのままに、突進攻撃をした。敵は、一瞬にして吹き飛んだ。何が起きたのかいまいち分かっていない兵士たちに俺は、こう言った。


「避難民はここにいるものだけか?」


「‥‥え?ここにいるものだけです」


「了解した、私の部下も護衛に付けよう。早くここから逃げるといい」


「はい!先ほどはありがとうございました!」


 彼がそう言い終えると、後から突入してきた部下2人に護衛を任せ、掃討戦へと移行した。俺たちは、燃え盛る火の中で残党兵を順調に殲滅していった。このまま何事も起こらずに済むと思い、ホッと胸を撫で下ろし、救助の段取りについて考え始めたその時、護衛をしていた部下からの通信が途絶えた。漠然とした負の予感に囚われた俺は、すぐさま残りの部下を半分に分け、関所の鎮火と襲撃された村々の生存者の捜索を命じ、通信が途絶えた地点へと向かった。




 目的地へ着くと信じ難い現場に遭遇した。俺が引き連れてきたのは、帝国の技術と我が国の技術を組み合わせて改良された最新鋭の戦闘機兵だ。いくら連合国が、力を尽くしても簡単に倒せるようなものではない。現に関所内では、無傷で敵兵を葬っていた。だが、そこには見るも無残に破壊されつくされた部下たちと、今まさにとどめを刺されている最後の村人がいた。俺は無我夢中で突撃するも間に合わず、金切り音のような断末魔が平野に鳴り響いた。その悲鳴をかき消すように攻撃をするが、受け止められ、横にいたものから切りかかられる。それを間一髪で避け、薙ぎ払うように槍を振るったが、虚空を切り裂いた。


「解放プロトコル実行」


 機械音声のような声でそう呟くと、彼らの持つ武器が光り始め、攻撃の威力が増した。こんなことが前にもあった。帝国の猛者が持っていた神器‥‥そうだ、間違いない。そうなれば、こいつらはネームド辺りと言ったところか。なるほど‥‥合点がいく。ネームドならば部下たちが敵わないのも無理はない。そう思い、心を落ち着かせ、祈るように叫んだ。何せ一度しか成功したことは無かった上に、使う機会も無かった。だが、出来なければ確定した死だ。ならば、やるしかない‥‥!


「神器解放!トリシューラ!」


 すると、溢れんばかりの光が俺の槍から出てきた。あの時‥‥帝国で奴を倒した時と同じだ!一か八かの賭けに勝ったと喜んでいるのも束の間、1人の兵士が切りかかってくる。合わせるように、槍を振り当てると、敵の武器が粉々に粉砕された。これならいける!そう確信した俺は、すぐさま渾身の一突きを残った敵に刺し込む。肉を裂く音を手で感じ取り、自身の勝利を実感する。久しくなかった死からの脱却に喜びでガッツポーズを取りかけたが、すぐさま冷静になり、武器を破壊し無力化した兵士を捕虜にすべく、振り向く。だが、奇妙なことを目の当たりにした。そこには死体があったのだ。確かに俺は武器を破壊したが、それ以上の攻撃はしていない。不思議に思い、奴らの武器を見ていると、通信が入った。


「こちら関所内鎮火部隊、強敵に接敵。救援もと‥‥」


「なんだ?どうしたというのだ?!」


 それ以上の返答はなかった。部下たちが強敵と認めるのは、神器持ちしかいない。まさか、こいつらはネームドではないのか?それともここに戦力を?様々な思考が巡っていると、また通信が入る。


「こちら救援隊、生存者1名を確保しましたが、敵に接敵中」


「分かった、すぐに向かう、何としても持ち堪えろ!」


 この通信の後、救援隊と合流に成功したものの神器持ち兵士の数に圧倒され、俺の隊は、徐々に追い詰められていった。敗走し最後に残ったのは、俺と生存者のたった2人だけであった。


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