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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第九十四話・心慌意乱、思う念力岩をも通すぞ‼︎(永き時間の果てに・前編)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 はてさて。


 数日前の地獄のように不幸な日を無事に突破し、昨日までは俺の家で新山さんと祐太郎が宿題をやりにやってきましたよ。

 正確には今日の午前中で完了、今は昼ごはんを食べてのんびりと過ごしているところだけど。



「乙葉君の家って、大きいよね」

「まあ、隣の一丁の四分の1ぐらいある祐太郎の家よりは小さいけどね?」

「うちはそこまで大きくねーぞ、地主で土地はあるけど殆ど貸しているからな」

「それでも、自宅はうちの4倍あるじゃねーかよ」

「札幌駅横のタワーマンション持ってるオトヤンに言われたくないわ」

「アホかぁ。うちのマンションのすぐ外はジャングルだわ、妖魔特区のなかだぞ? メンテナンスに行くのに必死なんだからな」


 そんな話をしていると、新山さんがため息をついている。

 美少女の溜息、良い。


「はぁ〜。どうしようかなぁ」

「何かあったの?」

「お正月にうちの両親と話ししたんですけど、そろそろ家を買ってみようかって話が出てるのですよ」

「良いんじゃね?」

「まあ、幸いな事に去年の宝籤を当てたので、資金はあるのですよ。それで私が全額出して建てようって事になったのまでは良いのですけど」


 ふむふむ。

 財務管理がしっかりしていらっしゃります。

 それで、なんで溜息?


「成る程な。何処に建てるかで揉めたのか」

「築地君の言う通りです。揉めたと言うよりは、候補地が多すぎて絞りきれないと言うところです」


 そのまま話を聞いていくと、父親としては通勤に便利な新札幌・第二中央区が希望だと。

 母親としては、自然豊かな郊外・清田区推し。

 そして新山さんの希望は豊平区? 

 なんで?


「豊平区って、何もないよ?」

「まあ、近所にうちの生徒が何人か住んでいるし……オトヤンとか、織田とか」

「ユータロ、織田ってうちの近所なのか?」

「三丁ほど向こうだぞ? 本当にオトヤンはそういうの興味ないんだな。もうすぐ二年になるのに」

「ばっか、今年はずっと魔法使いしていたから忙しかったんだよ。そうか、織田が近所か……見つからないようにしないとな」

「「 それで、なんで豊平区? 」」


 思わず祐太郎とハモったよ。


「ほら、私の自宅って白石区でしょ? JR白石駅の近くだったので色々と便利だったけど、万が一に妖魔関係で何かあっても、すぐに合流できるじゃない」

「それもそうか。隣の区だもんなぁ。それは話したの?」

「お母さんとしては、それでも構わないらしいのよ。お父さんもいい物件があったら構わないって言ってくれているんだけどね、その物件がないのよ」


 そりゃそうだ。

 妖魔特区が出来上がってからは、あの対物理障壁内部の住民は殆どが外に引越ししたからな。

 結果として、住宅関係の会社は業績上昇したんだけど、そもそも希望する物件がなかなか足りない。

 引越しセンターは妖魔特区内部までトラック持ち込めないので引越し荷物も最低限のものになる。


 国からの支援援助は出ているので、そろそろ落ち着いた生活環境は出来上がっていると思うけど、逆に今までは飽和状態だった空き家空室はかなり埋まったらしい。



「希望物件は? マンション? 一軒家?」

「一軒家が良いのですけど、殆ど空きがなくてですね。土地を購入して新しく建てても構わないのですけど、それすら順番待ちでして……」

「ちょっと待ってて」


 すぐさま祐太郎が何処かに電話し始めた。

 こう言う時の祐太郎のコネは絶大だからね。


「さっき、殆どって言ってたよね? 空いている家はあるの?」

「訳あり物件ばかりで、そんなところは怖くて無理でしょ?」

「そりゃそうだ。幽霊なんて出てきた日には……幽霊?」


 ふと思う。

 散々、魔族妖魔を見たくせに、そもそも幽霊の定義が存在するのか考えたことはない。

 人の魂、幽霊の存在、それって如何なんだろう?


「乙葉君は、幽霊に知り合いでもいるの?」

「飛頭蛮になら1人ほど」

「綾女さんかぁ。妖怪って妖魔で魔族なんでしょ?」

「その辺りの定義があやふや過ぎるんだよ。正確にはね」


 鏡刻界ミラーワーズの住人が『魔族』であり、これが人間世界にやってきて、こっちの人間に『妖魔』って呼ばれているだけ。


 妖怪は、中級・下級妖魔のことを指すらしい。

 人魔は、上級・中級の人の姿をした魔族。

 つまり、妖魔・妖怪・あやかしは一括りに魔族。


 これは区別なく皆同じ。

 じゃあ幽霊って何?


「……ふぅん。私達は妖魔って呼んでるけど、本当は纏めて魔族なのね」

「そう言うこと。俺もなんだかこんがらがっちゃってるからなぁ。この辺りの意思の統一は必要なんだけど、どうしても煩雑になるんだよ」


 そんな他愛ない話をしていると、祐太郎も電話が終わったらしい。


「新山さん、ここから一丁隣に土地ごと売りたい人がいるんだけど、見てみる?」

「え? そんなものがあるのですか?」

「うん。うちの親父の経営する会社が管理しているんだけどね、もう何十年も売地のままなんだけど」

「ユータロ、あそこか、メイド・イン・ヨーカンか」

「え? メイドイン・羊羹?」

「違う違う。俺と祐太郎がガキの頃からあった洋館でね、メイドの幽霊が出るって言われていたんだよ。実際には見たこともないし、ただの噂なんだけどね」

「あそこなら格安で売り出せるよ。なんなら見にいく? オトヤンと俺がいたら怖いものはないと思うけど」


 うむ、その通りだ‼︎

 本物の幽霊なら怖いかもしれないけど、妖魔なら怖くないから大丈夫だ、うむ‼︎


「そ、それじゃああ見てみたいかな……」



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 それは見事な洋館である。

 築100年を越える、二階建ての西洋館。

 室数15のその建物は、人が住まなくなってから半世紀を軽く超えている。

 庭の草木は定期的に刈り取られ、建物の内部も週に一度は掃除して埃が落とされている。

 据え付けの家具も手入れがきちんとしており、住む気になればすぐにでも住むことが可能である。



「って言う感じなんだ。それでも、中々借り手がいないんだよ」


 祐太郎が鍵を借りてきたので、俺たち三人は正門の鍵を開けて中に入った。

 玄関の鍵もスムーズに開くと、一階はそのまま大きなフロアーになっていた。


「す、すっげぇ。ここって、こんなに綺麗だったんだ」

「俺とオトヤンが子供の時から、ずっとこのまんまなんだってさ」


 俺たちが建物の中を見渡していると、新山さんが両手を組んで感極まっていた。


「こ、ここに住みたいな。築地君、ここってどうして借り手がいなかったの?」

「まあ、庭木の手入れも完璧、建物の中も常に清潔そのもの。しっかりと手入れされているだろ? 本当に誰がやっているのやら」

「「 え? 」」

 嫌な予感しかないわ。

 いまの祐太郎の一言で、俺と新山さんは鳥肌が立ったぞ?


「え? じゃなくてな。管理物件だったけど、ずっと手入れも何もしていないんだよ。じいさんがそのまた爺さんからの遺言でな、ここは借りられる人に貸し出せって、借り手は家が選ぶってな」

「ええっと……あの、管理会社は?」

「あるけど、ここには誰も入れていないんだよ。正門の鍵が開けられるのは築地一族のみで、管理会社でも中に入れなかったらしくてね」


 さて。

 それじゃあ俺たちは帰りますか。

 あとは祐太郎に任せてね。


──ガチャッ

「あ、鍵が掛かったか」

「掛かったか、じゃないわ、ここはオートロックなのかよ」

「いや? そんなことはないはずなんだけどなぁ」


 そう呟く祐太郎の顔も真っ青だが。

 あれか? こんなところを新山さんに売ろうとしたのか?


「な、なあオトヤン。俺、いつの間に屋敷に入っていたんだ? 正門の鍵を開けて、そこから中を見せようとしたところまでは覚えているんだが」


 ガクガクと震えつつ俺に問いかけるな馬鹿ぁぁぁ。

 

「ちょ、おま、正門の鍵を開けたところまでは覚えていたんだよな、そこから記憶がないのかよ」

「な、無い。今さっきだわ、だから不思議なんだよ、俺、俺が話していたことは事実なんだけど、外で聞いているようにも感じたんだ」

「うわぁ……ここは不味い、新山さん、急いで出よう……新山さん?」


──シーン

 え?

 新山さん何処?

 今さっきまでここに居たよね?

 ほら、本当に一瞬で消えたよ?

 音もなく、まるで切り取られたかのように。


「Gogglesゴー、戦え大戦隊っっっ」


──ガチャン

 速攻でサーチゴーグルをセットすると、サーチ対象を新山さんにセット‼︎


『ピーン、ピーン……』


「新山さんの反応あり、二階の奥だ」

「妖魔反応感知。同じく二階奥の部屋っ」


 俺と祐太郎同時にサーチ。

 俺は新山さんを、祐太郎は妖魔を。

 そして同時に確認したので急いで二階へ駆け上がって行ったのだが、その部屋には新山さんも妖魔の反応もあるにも関わらず、何もない空っぽの部屋だった。

 

 ただ、部屋の中央にポツンとベットが置いてある。


「新山さん‼︎ 何処だ、返事してくれ‼︎」

「妖魔反応はある。ただ、ここに居てここじゃない」

「空間結界かよ!」


 思いつくことは一つだけ。

 妖魔が何らかの理由で新山さんを拉致し、空間結界に逃げたのだろう。


 急がないと新山さんが危ない。


「Goggles、サーチ対象を空間結界に」


『ピッ……この部屋全体が空間結界によって包まれています。位相空間にこの部屋と同じ存在を確認、下級妖魔一つ、新山小春一人の反応あり』


「ビンゴぉ。ここに空間結界がある‼︎」

「オトヤン、空間結界の破壊方法は?」

「結界破壊術式、もしくは結界内部からの物理的破壊……嘘だろ?」


 慌ててカナン魔導商会を開くと、魔導具の中から空間結界を破壊できそうなものがないか探す。

 だが、そんなものはすぐには見当たらない。

 それならば錬金術で、空間結界を破壊する魔導具を製作すれば良いのだが、そんな術式が存在しない。


「まて、落ち着け俺。いいか、相手は妖魔で結界の向こうで、結界を破壊すれば良いだけだろ?」


──ブゥン‼︎

 すぐさま125式力の矢フォースアローを生み出すと、部屋全体に飛ばす。

 ゴーグルによる視線誘導で部屋中を隈なく飛ばしてみたのだが、結界に引っかかるような事はない。


 その俺の横では、祐太郎がスマホで瀬川先輩に連絡を取っている。


「瀬川先輩、お願いがあります……深淵の書庫アーカイブで指定座標をサーチしてください。新山さんが妖魔に攫われました」

『了解。スマホはそのまま接続しておいてください。サーチ座標をお願いします……』

「はい。座標というか、住所は豊平区の……です」

深淵の書庫アーカイブ発動。指定座標……をサーチ……新山さんの反応はありますが、眠っているようですわ。バイタルチェックは問題ないわね』


 何か話してあるんだろうけど、祐太郎が俺に向かって笑顔でサムズアップするので最悪の事態は回避されているらしい。

 流石だ祐太郎、さすがゆと略してやろう。

 そして瀬川先輩ありがとう。


「スーハースーハー。よし落ち着いた。深淵の書庫アーカイブでは、妖魔の反応はあるんだろ?」

『外部スピーカーだから聞こえているわよ。乙葉君、新山さんのバイタルデータはルーンブレスレットを通じて確認できたわ。今は眠っているだけ、その近くに妖魔の反応はありますけど、残念ながら正体までは確認できませんわ』

「ありがとうございます‼︎ その一言で可能性を探せるよ」


 よーしよしよし。

 これで新山さんの救出方法は出来た。

 結界の中に入る、結界を破壊するんじゃない。

 

 中にいる新山さんを、俺の元に引き寄せれば良いんだな。


「ユータロ、先輩と連絡取り続けてくれ、何かあったらすぐに俺に教えてくれれば良い。俺は、新山さんを助ける魔導具を作る‼︎」

「分かった。と言う事ですので、先輩も何か変化がありましたら教えてください」


 これで連携は完了。

 作る魔導具は一つ。

 対象物を引き寄せる魔導具。

 これで新山さんの装備しているルーンブレスレットと新山さんを一つに紐づけて、こっちに召喚するだけ。


 空間魔法系魔導具なので、必要な材料はレア度の高いものばかり。

 しかも俺の錬金術レベルでの成功率は16%と低いが、そんなものは乙葉式確率変動だ、成功か失敗かの五分と五分、これで行けるはず‼︎


「待ってろ新山さん、絶対に助け出すからな‼︎」


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


・常駐されたネタ

 大戦隊ゴーグルV


・ゲストの一髪ネタ

 一つかのう。

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