第九話・魚心あれば以心伝心(便利道具は良いけれど)
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さて。
もうご存知の朝のステータス確認。
この為に早起きするという日課を、俺は身に付けたぜ。
本当ならば魔力の循環とか魔法を使っての基礎トレーニングをするべきなのだろうが、俺、そういうのやり方知らないんだよ。
なので最初に魔力回路を開くためにやっていた、両手の指を立てて合わせてグールグルってやつを5分間やることにした。そのあとにステータスウィンドウを確認すると。
……
…
名前:乙葉浩介
年齢:16歳
種族:人間(転生処理済み、バグ)
レベル:29
体力:101 (126.2)
知力:102 (127.5)
魔力:1280(1600)
闘気:1280(1600)
HP:440
MP:18800
・スペシャルアビリティ
ネットショップ・カナン魔導商会
空間収納チェスト
自動翻訳 (初期セット)
鑑定眼+ (初期セット)
・固有スキル
一般生活全般 レベル16
魔力循環 レベル2
魔力解放 レベル2
第一聖典 レベル3
・コンディション
体調 :超優良
拗らせ童貞
チン長:最大19cm
……
…
「……はい、レベル上がってまーす‼︎ なんで上がったのか分かりませーん」
なんで上がってるの?
この前から上がるようなことをした記憶はないが、指先合わせてグールグルで上がるのか?
まあ、1レベルごとに体力と知力が1ずつ上がるのは理解した。
魔力と闘気は10ずつだね。HPも10ずつ上がったんだろうなぁ。
だがMP、貴様はなんで1レベルごとに100も上がるんだ?
そして俺のチン長まで上がっているぞ? これも日頃の努力だなうるさいわ‼︎
そんなんで大きくなるなら童貞拗らせた奴のチン長はメートル超えるわ。
ハッ‼︎ 俺のステータスの拗らせ童貞が成長を促した煩いわ一人ボケツッコミしてやるわ。
「しっかし、このレジストリングって便利なんだけど不便だよなぁ。昨日は本当に参ったよ」
昨晩。
俺は熱い風呂に入るのが大好きです。
江戸っ子爺さんのように熱々の風呂に入って、あーっ極楽極楽って呟くのが好きです。
なのでお願いですレジストリングさん。
風呂の体感温度まで適温に下げないでください。
なんで風呂の温度が下がったのか最初は判らなかったんだけど、それがレジストリングの能力である熱耐性効果だって理解して、リングを外した瞬間の熱湯直撃ライン。
覚悟を決めて入ったのではなく、ほら、あれだ、押すな押すなよで後ろから押し込まれた熱湯コマーシャル状態だったよ。
しかも驚いた挙句に手が滑って、リングを排水口に落として大慌て。まあ、排水口は二重だから、流れていくことなく回収できたから問題なかったからよし。
「……でも、いまだにレベルが上がった原因がはっきりしないんだよなぁ。共通点と言えば、この前のレベルアップと今日のレベルアップの前の行動……あっれれ?」
朝食を食べつつ思考を巡らせてみる。
ちなみに今朝の朝食は焼き魚定食。
これも裏技があってね、昨日の晩のうちに作って空間収納に放り込んだんだよ。
朝はそれを取り出して食べるだけ。
空間収納の中は時間が止まっているから、いつでも出来たて熱々さ。
「レベルが上がった原因って……やっぱりあれしか無いよなぁ」
思い当たる節は、部活動時に飲んでいたマルムティーセット。
スキルが貰える程度なら良いかと思って飲んで食べたので、レベルが上がってた理由はこれぐらいしか思いつかない。
もしもそうなら、文学部のメンバーは全員レベル上がっているんじゃね?
よし、原因がマルムティーだったら封印確定。
そもそもみんな二回目だったから、スキルが二つランダムに付与されていてもおかしくはないんだよね。
という事で、学生の本分である学校へレッツらゴー。
………
……
…
まあ、授業なんで真面目に受けるだけにしておいて、いよいよお楽しみの放課後部活タイム。
早速部室に一番乗りして、やってくる部員たちを次々と鑑定眼で確認タイム。
MP消費量を抑えるためのサイトゴーグル装着も忘れずに。
‥‥結果から申します。みんなを鑑定して俺は爆死しました。
瀬川先輩、新山さん、祐太郎、3人ともレベルが21になっていましたともさ。
そして3人全員に共通するアビリティが追加されておりました。
『加護の卵 1/100』
なんだかよく分からないアビリティが全員に付いているんだけれど。
まあ、鑑定していたおかげで、先輩たちに付加されているスキルも大体把握した。
‥
‥‥
●瀬川雅
・追加アビリティ
百鬼夜行
・追加スキル
魔力解放 レベル1
●新山小春
・追加アビリティ
切磋琢磨
・追加スキル
魔力解放 レベル1
●築地雄太郎
・追加アビリティ
自給自足
・追加スキル
魔力解放 レベル1
‥‥
‥
とまあ、皆さん魔力解放レベル1を修得していますが、実は魔力解放って魔力循環がないと起動しないスキルなんだよ。
そもそも魔力回路を開くところから始めないとならない。
まず魔力回路解放、そして体内の魔力回路に魔力を循環。そこから全身に魔力を纏うように解放する。
俺が指先に魔力を集めたりするのは、すべて循環で指先に魔力を集めてからの魔力解放なんよ。
「‥‥オトヤン、何かあったのか?」
「ん? なして?」
「いや、今日はなんだか、部室にきた先輩や新山さんをじっと眺めているからさ。まさか二股、俺というものがありながら!!」
「うっさいわ。俺は健全な男子だ。公園で青いつなぎを着ている兄さんに連れられてあッ〜する趣味はない。俺は女が好きなんだよ!!」
「ヤラナイカ?」
「やるか、ぼけぇ!!」
思わず大声で叫んでしまったが、瀬川先輩はそんな俺を微笑んで見ているし新山は顔を真っ赤にしている。あれ、俺またやらかしたか?
「まあ、私も君たちも高校生、若さゆえの暴走は理解できるけどね。乙葉君、私は好意を持ってくれる人は好きだぞ」
「わ、私も‥‥乙葉君には感謝しているし、私のことも好きって‥‥」
「待て待て。なぜこのタイミングでオトヤンがモテ始めているんだ? なぜだ?」
それは俺が聞きたいわ。
「坊やだからさ‥‥って言いたいけど、まあ、好きは好きでもLIKEであってLOVEじゃないんでしょ?」
「ああ。私の愛は、そんなに安いものではないな」
「わ、わたしはライクでもラブでも、好きは好きですからね」
「ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
「ユータロ、これが真実だよ‥‥と、冗談はこの程度にしておきますか」
それで話をうまくごまかせたと思って、俺はいつものようにラノベで統計を取っていく。
『ピッ‥‥カナン魔導商会より、本日のお勧めのご連絡です』
はぁ。
なんで突然スマホに表示するかなぁ。
それよりもだよ、異世界の魔法技術、現代科学に対応するの早くない?
とりあえず新商品とやらを見てみますか。
『本日のお勧めはこちらです‥‥スキルオーブ。高純度魔晶石と結晶魔力によって構成されたこれは、触れた対象の持つスキルをコピーすることが出来ます。
コピーしたスキルオーブは、所有者が装備することであたかも自分の所持しているスキルのように使用することが出来ます。
開発者の意図と全く違う効果が出てしまったために廃棄されたものですが、本日のみの限定販売となります。今なら一つ50万クルーラ、限定5つの販売となっています』
――ピッ
悩む必要なし、全部ポチッとな。
これでチャージ残高は225万20クルーラ。
だけどさぁ、なんでカナン魔導商会って、廃棄されたものとか失敗作をネットショップで販売するのかなぁ。まるで、廃棄物を押し付けられた感じだよ。
――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
すると、目の前のテーブルに宅配魔法陣が展開した。
「しまった!!」
そう叫んだが後の祭り。
魔法陣の上には5つの透き通ったオーブが姿を現した。
「お? なんだなんだ? オトヤンの手品の道具?」
「お、おおう。転がしてしまった‥‥スマソ」
良かった、宅配魔法陣は見えていないみたいだ。
テーブルの上をころころと転がっているスキルオーブ。それを祐太郎と瀬川先輩、新山さんも手伝って集めてくれた。
ただ、みんなが手に取る度にオーブがチカッチカッと点滅していたのを俺は見逃さない。
『ピッ‥‥瀬川雅のスキルをランダムにコピーします』
『ピッ‥‥新山小春のスキルをランダムにコピーします』
『ピッ‥‥築地雄太郎のスキルをランダムにコピーします』
うぉぉぉぉ、なんか自動的にコピーしていくぞ。
ついでにテーブルに置いてある取説も回収しておこう‥‥と思ったが、新山さんがそれを手に取ってしまった。
「あ、これってその道具の説明書?」
それを手に取って新山さんが見ているんだが、どうやら異世界の文字は読めないらしい。
ナイス自動翻訳スキル。
「あ、そ、そう。海外からの取り寄せ品なんでね‥‥」
「そっか。はい、なくさないようにね」
「サンキューって、ユータロも早くそれ返してくれないか?」
「ほらよ。今度新作の手品を見せてくれな?」
ひょいとスキルオーブを受け取ってポケットにしまう。
あとは上手くごまかして、家に戻ってから実験してみよう。
〇 〇 〇 〇 〇
帰宅なう。
急いでスキルオーブを調べたいところではあるが、まずは晩飯そして風呂。
宿題が出ていたのも忘れずに、ああ、宝くじ日記もしっかりと書き込んでおく。
風呂に入るときはレジストリングを外すのも忘れない。
そしていよいよ待ちに待ってた出番が来たぜ!!
さっそくスキルオーブの鑑定だ。
『ピッ‥‥瀬川雅からコピーしたスキルは『学業エキスパート』です』
『ピッ‥‥おめでとうございます。新山小春からコピーしたスキルは『アビリティ・温故知新』です』
『ピッ‥‥築地祐太郎からコピーしたスキルは『女性の敵』です』
んんん?
よくわからないものばかりなり。
ということで、まずは全部空間収納に放り込んで、換装の画面を開く。
そこの装備欄にある『その他の装備』に、スキルオーブをはめ込んでいくんだけれど、ここって二つしか欄がないんだよ。
まあ、祐太郎のは後回しで瀬川先輩と新山さんのスキルオーブをはめ込んでいく。
「さて、何がどうなったことやら」
すぐさま自宅にある置き勉していない教科書を開いて後ろのページを見る。
当然習っていないところなので、分かるはずもないんだけど‥‥。
全て頭の中にすらすらと入ってくる。
なんだこれ、大人が小学生の勉強を見るみたいにスラスラと理解できるぞ、これが学業エキスパートの強さなのか。
でも、温故知新ってスキルをどうやって使うのか判らない。
「ええっと、これってどうやって使うんだ? 鑑定眼でわかるかな?」
温故知新のスキルオーブを取り外して手に取り、サイトゴーグルで鑑定してみる。
『ピッ‥‥ゴーグルによる鑑定眼の追加メニューを使いますか? スキル鑑定』
「やっぱりスキル鑑定あるよね‥‥鑑定‼︎」
『ピッ』
すぐさま手にした温故知新のオーブの鑑定が始まった。
『ピッ‥‥温故知新、自分の所持しているスキルを解析し、上位スキルに派生することが出来る。現在のアビリティレベルでは、スキルしか上位に転換できない』
「おおう‥‥では、装備して早速試してみますか‥‥」
『ピッ‥‥乙葉浩介のスキルで、温故知新で上位に転換できるスキルはまだありません』
ですよねー。
なんとなくそんな気がしていましたともさ。
ついでに祐太郎の『女性の敵』っていうスキルも鑑定しておくか。
『ピッ‥‥女性の敵、対象となる女性の欲しているもの、言葉、行動を瞬時に理解し、最適解を計算することが出来ます。このスキルには『性豪』『精力回復』『調教』も含まれています』
ん。
封印。
いくら女性にもてたいとは言え、こんなスキルに頼っていてはだめだ。
いやまて俺。スキルとは、その人の持つ力なんだろ? つまり、このスキルは俺が持っているから俺のものだよな? だったら使うのはありなのか?
試しに装備してみようとするが。
『ピッ‥‥女性の敵は、現在のレベルでは条件がクリアされていないので使用できません』
「条件ってなんだ? いや、そこまでは出ないのか。まあ、まだ女性にがっつく暇もないし、今はカナン魔導商会とかいろいろと楽しいことがあるからいいや」
それに、明日は小遣い稼ぎのためにロト6買わないとならないから、早く寝ることにしよう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回の判りずらいネタ
くそみそ○クニック/山○純一著
・カナン魔導商会残チャージ数
225万クルーラ