第八十八話・阿鼻叫喚、ジョーズの手から水が溢れる(札幌発、魔法の箒は早かった)
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うん。
物理耐性が破られた俺ちゃんだよー。
そんな状態で白桃姫と百道烈士の2人相手に戦えるかっていうの。
実験したいんだけど、祐太郎は女の子たちとデートなんだってさ。
抜け駆けで誘っていた女子たちも、祐太郎の策略により轟沈。
白石のカラオケで、パーティールームを予約しての合同デートだってさ。
もげろ。
夜には、祐太郎の家でクリスマスパーティだってさ。昨日もやったのに今日もやるなんて、サービス精神がよろしい事で。
「オトヤン、そのクリスマスパーティに意気揚々と参加しているんだから、少しは嬉しそうにしたらどうなんだ?」
ああ、その通りだよ。
うちの両親は今日は帰ってこれないらしいから。
出前でも買って食べているか自炊しなさいって連絡がきたよ。
そのタイミングで、新山さんがうちに来たんだよ。
祐太郎の家でクリスマスパーティの第二部があるから行きませんかって。
そんなの、行くに決まっているだろう?
新山さんに誘われたら、行くしかないでしょうが。
「いや、チキンが足りないなぁと思ってさ」
「そうだぞ乙葉ぁ、もっと美味いものを用意しろ!」
近くの丸テーブルを囲んで料理を食べ散らかしているのは織田一行。
祐太郎は、クラスのみんなをクリスマスパーティに誘ったらしいからなぁ。
そして保護者代わりに参加している要先生。
思わず笑ってしまうぐらいガチの服装ですよ?
まるでクリスマスパーティの約束が無くなったから、こっちにきた感じですよ?
「乙葉君。声に出ているわよ?」
耳元でボソッと呟く新山さん。
え? そうなの?
「乙葉ぁぁぁぁ。そんな所で、なんで新山さんとイチャイチャしているんだよぉぉぉぉ」
「新山さんだけは、君だけは築地の毒牙に掛かっていないと思ったら」
「新山さん、まさか乙葉の野郎と付き合っているのか?」
お、不健全男子のターゲットが新山さんに切り替わったぞ?
「え? 私が、乙葉君と付き合って????」
いきなり真っ赤な顔で両頬を押さえると、新山さんが走って部屋から出て行った。
うん。
俺と新山さんは付き合ってはいないよ。
でも、新山さんの気持ちは分かっているし、とりあえずは妖魔特区をなんとかしてから、落ち着いたら仕切り直しでって話し合いが終わっているんだよ?
俺の気持ち?
す、す、す、す、好きなのかもしれない?
正直いうと、分からん。
でも、可愛いし、彼女だったら良いなぁとは思うんだけどね。
「オトヤン、新山さんを追いかけなくて良いのか?」
「祐太郎の家と俺の家は、対妖魔結界で守られているから安全だけど?」
そう告げると、祐太郎はじめ周囲の女子がため息をついていた。
え? 俺何か間違っていた?
すぐに数人の女子が新山さんを追いかけて行ったけど、何かあったの?
「はぁ〜。現代の魔術師も女心は難題だったか」
「女の敵スキルホルダーに言われたくないわ‼︎」
「それでも、女性の扱いについてはオトヤン以上と自負しているが」
「よし分かった、今からユータロに呪いをかける‼︎ チンコの大きさを1/10にする!」
すぐさま魔導書を取り出して魔力を注ぐ。
光り輝く魔導書の出現に、男子たちはヤンヤヤンヤの大喝采‼︎
「マジか‼︎」
「ああ。ついでにこうしてやるわぁ!」
もうここから先はヤケクソ。
今しがた完成した、『広範囲型、速攻性転換術式』をくらぇぇぇ‼︎
──キィィィィィン
部屋の中の全員の姿が光り輝く。
ポーションバージョンとは違い、術式型は光り輝いてから一気に変身するのだよ?
それこそニチアサの女の子向けアニメ『二人はマスキュラー』のように。
「待て待て、オトヤン、俺が悪かった‼︎」
「遅いわぁ、kill kill bang for ウホッ‼︎ みんな纏めて光になれぇぇぇぇ」
──チュドーン
それはもう、阿鼻叫喚の出来事であった。
クラスの男子は一様に美少女化するし、女子はなんと言うか、タカラヅカ? 男装の麗人化しているし。
性転換薬のように、服用したら理想の異性の姿になる筈なんだけど、少し間違ったかなぁ?
祐太郎も美少女化というか、お姉さま化してキラキラしているのはなんで?
「お、オトヤン……なんてロリ巨乳化?」
「へ? ユータロ何を言って俺もかぁぁぁぁぁぁ」
そう。
広範囲型は範囲内すべて。
つまりは、俺も。
そして、なんで俺がロリ巨乳化したんだよ?
のじゃロリ案件待ったなしじゃないか?
そして美少女たちの俺を見る目が怖いんだが。
因みに麗人たちは優雅に、お互いを褒めているぞ。
「はぁ。全く、乙葉の無神経が……」
「ただいま。ってなにこれ?」
「え? まさか、全員、性転換?」
戻ってきた女子たちが、今の光景を見て頭を抱えている。
まあ、それでも女子は順応性が高いというか、すぐに麗人化女子に混ざって話しはじめたよ。
そして状況を理解しきれていない新山さんが、俺のところに駆けてきたんだが。
「うわぁ、この子可愛い。これって誰?」
新山さん、あなたが抱きしめようとしているロリ巨乳は俺です、堪忍してください。
「新山さん、それはオトヤンだよ?」
「え? 乙葉君なの?」
「俺ちゃんだよ〜」
にこやかに手を振る俺。
あ、新山さんが固まった。
そんなこんなでパニックの中、俺の発動した広範囲型性転換術式は、一時間で時間切れとなり全員元に戻ったさ。
まあ、なんだかんだ言っても、ようやくクラスが一つにまとまった感じで俺としても嬉しいよ。
「あ、あのね乙葉君。皆川さんだけ、麗人のままにできるかしら?」
「「「 立花さんを、ずっと麗人にして 」」」
「「「乙葉ぁ、織田を永続性転換よ、ろ、し、く」」
はぁ?
一年のマドンナ立花彩花さんを麗人化したまま?
そういえば、立花さんも満更でもない顔でみんなと話していたもんなぁ。
そして織田、やはりお前はモテない男子の憧れの的だったようだなぁ。
まあ、その件については考えておこう。
こうして阿鼻叫喚のクリスマスパーティは、無事に幕を閉じましたとさ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今日は二学期の終業式だよ。
一昨日の白桃姫と百道烈士とのやり取りは、結界内にいた特戦自衛隊から報告されたようですよ。
まあ、会話については録画されていなかったらしいし、距離もあったのでやばい会話はデータとして残っていない、勝利‼︎
「……なあ乙葉、空手部に入らないか?」
「いや、ボクシング部はどうだ?」
「剣道部で、青春の汗を流そうじゃないか‼︎」
朝から先輩たちの勧誘が始まったよ。
一瞬だけど、テレビのニュースで俺と白桃姫の戦闘シーンが流れてたらしくてね。
個人情報保護法どこいった? 出てこいやぁ。
お陰で朝からこの調子だけど、柔道部は来ていない。
クラスの柔道部の奴に聞いたら、『乙葉って、授業では素人当然だっからなぁ』っていう理由で勧誘に来ていないらしい。
うむ、格闘全般、俺は素人だからね。
そのまま終業式も終わって部活に移動、冬休みの活動についての話し合いがあるのよ。
………
……
…
「先輩、冬休みと言っても、俺とユータロは明後日から東京だよ? 先輩も行くんでしょ? 聖地巡礼・冬の陣に」
俺と祐太郎は予定通りにコミケにゴー。
先輩もタケもっこす先生の売り子でしょ?
「その件なのだが。残念な事に、私は行けなくなってしまったのよ。母と一緒に過ごす事にしたのでね」
「その代わり、私が先輩の代役としてタケもっこす先生の所で売り子をする事になりました」
成る程、先輩の代わりに新山さんが参戦ですか。
胸熱ですなぁ。
「最終日はコミケが終わったら、すぐに北海道に戻ってきますけどね。家族で大晦日は絶対ですから」
「俺も、今年は空で行く予定だ。魔法の箒があれば、飛行機よりも早く……はないけど、帰ってこれるから」
ええっと、魔法の箒の時速は、おおよそマッハ3.5。
時速で4000kmか。
東京から札幌までの直線距離で800kmだから。
「あれ? 12分?」
「オトヤン、高度をあげないと飛行機にぶつかるぞ? そこも考慮したらどうなる?」
「高度か。確か1万2000メートルだったか? 12kmだから……それよりも高い高度を維持してぶつからないようにして……」
うん。
30分以内に帰ってこれるわ。
「ちょいと席外します」
そう告げて外に出る。
透明化してから魔法の箒に跨ると、それいけ全速で高度上昇、目標高度2万メートル。
箒に乗っていると結界が自動的に発生するらしく、気温や気圧の変化から身を守ってくれるらしい。
しかも、衝撃やバードストライクなども結界が弾く、つまりどういうことかというと。
──一時間後
「ほい、ただいま。お土産はナルト屋の焼き立て鯛焼きね」
熱々の焼き立てを買って来ましたよ、秋葉原の名物鯛焼き屋さんで。
これには全員の目が丸くなった。
「え? オトヤン? 今、秋葉原行ってきたのか? 転移使えるのか?」
「魔法の箒で飛んできた。堂々と鯛焼き屋でお土産買ってきたよ。先輩も新山さんもボーッとしてないで、熱々を食べるが良い‼︎」
「ハッ! そ、そうですわね、それじゃあ私はお茶を入れてきます」
気を取り直した先輩がお茶を淹れてくれたので、そこからは鯛焼きパーティー。
そっか、転移という手もあったか、俺は使えないけど。
「それにしても、魔法の箒と収納バッグがあれば、高速物流が可能になりますわね」
「それってさ、乙葉君が箒に乗って宅急『それ以上はいけない‼︎』あ、はい」
あぶねぇ。
新山さんには悪いが、言わせねーよ。
そんな感じで、明日からの休みで話に花を咲かせつつ、今日は無事に終わりましたとさ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「ほう、浩介が白桃姫とやり合ったのか」
円山の喫茶・九曜裏にある道場。
俺は週に三回、機甲拳の修練のためにここを訪れている。
ついでだから、チャンドラ師匠に聞いたんだよ、オトヤンの対物理抵抗をどうして白桃姫が破ったのかを。
オトヤンにも、羅睺さんとチャンドラ師匠に聞いてきて欲しいと頼まれていたので、尋ねてみたんだけど。
「ええ。それでですね、オトヤンの対物理抵抗を突破されてですね」
「あ〜。理由は簡単だな。恐らくだが、お前の機甲拳の一撃も恐らくは防げないな」
「それって、純粋な打撃は防げるけど、魔法や闘気が付与されている攻撃は別物という事ですか?」
これは俺の予想。
そして、それが正しかったらしく、傍で見ていた羅睺さんが頷いている。
「うむ。魔法や闘気、それと妖気を付与した攻撃に対しては、まだまだ抵抗力が足りないという事じゃなぁ」
「今のまま戦ったとして、まともに妖気の乗った百道烈士の攻撃を受けたら、ただじゃ済まないだろうなぁ。早い所、対処方法を探さないと」
「それは俺もです。何か対応策はあるのですか?」
そう問いかけたんだけど、チャンドラ師匠はキョトンとした顔で俺を見ている。
羅睺さんに至っては、笑いを堪えているのがよくわかる。
「ええっと、俺、何かおかしいこと言いましたか?」
「まあ……な‼︎」
──ドゴゴドゴドゴッ
いきなり立ち上がると、チャンドラ師匠が踏み込んできて乱撃を入れてくる。
俺は普段から目に闘気を乗せているから分かる、拳に闘気を纏っている‼︎
これは掠るだけでもかなりの衝撃がくるのは、毎日の乱取り稽古で分かっている。
それなら、やることはひとつだけ。
──ヴン‼︎
こっちも全身に闘気を纏う。
薄い衣のようなもので、だけど濃度は強く。
それで全てを弾き返す‼︎
──バババボバボバッッッ
「うぉあっ、いきなり本気ですか‼︎」
「本気も本気。拳に闘気を纏った攻撃の感想は?」
「感想もなにも、闘気の衣で守らなかったら……あ」
「フォッフォッ。人の事は解る癖に、自分の事となると分からないものじゃなぁ」
そういうことか。
対物理耐性って言う言葉に惑わされていた。
相手が魔力を纏うなら、魔力耐性でいいんじゃないか。
「オトヤンが、対魔力耐性を身に付けたら良いのか」
「それだけじゃあダメじゃなぁ。魔導体術を身に付けているのじゃから、さらに踏み込んだ修行が必要になる」
そこからの話で理解した。
対魔力耐性、対闘気耐性、対妖気耐性は一度に複数を同時に纏えない。
これは魔導具にしても同じ事らしく、お互いに干渉して効果を打ち消すらしい。
「つまり、全てを弾き返す耐性は身につけられないと言う事ですか?」
「うむ。じゃんけんみたいなものでな、こればかりは仕方ない。但し、一つだけ別の方法がある……」
「それは?」
それがあれば、オトヤンはもっと強くなる。
闘気体術系なら俺でも自信があるし、近接戦闘なら誰よりも前に出ることが出来る。
だけど、オトヤンは魔術師だ、後方からの攻撃が得意なはず。
前に出るなんて危険極まりない。
それが、打たれ強くなる、いや、うまくいけば無力化まで考えられる。
しかも、妖気ってなに?
それについては、まだ俺も学んでいないんだけど。
「自分で考えるんじゃなぁ……と乙葉君に伝えたまえ。何もかも教えてもらうのではない、自ら導き出すことも必要じゃからな」
「分かりました。では、そう伝えておきます」
流石は羅睺さん、この手の話は彼に尋ねるに限る。
あとは帰宅してから、オトヤンと話をすることにしよう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今週のわかりづらいネタ
なんか色々とありそうですが、作者にも答えがわかりません。無意識の呼吸‼︎




