第八十六話・雲蒸竜変、郷里に容れられず(ニコラウス襲来)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
本日はクリスマス。
と言うことで、クリスマスイブプレゼントをお届けします。
ハッハッハッハッ‼︎
広大な雪原を、一人の男が走っている。
ミスターオリンピアにでも出場したら、5年連続で優勝は間違いなしのナチュラルボディ、ナイスバルク、切れてるよ~と掛け声を掛けたくなるだろう。
さて、今年もコンディションは万全、あとは当日を待つばかり。
「ニコラウスさん、アザラシの良いところが取れたのだが持っていくかね?」
「いつもすまないね。折角だから分けて貰うか」
「いいってことよ。ニコラウスさんにはいつもお世話になっているんだから」
俺、ニコラウスに声を掛けてくれる彼らは、近くにあるロシア所有のベリングスハウゼン基地に詰めている聖職者たち。
数ヶ月に一度、近くの南極基地のメンバーと交流しては、様々な食材の交換などをしているらしい。
俺はと言うと、この南極大陸のあちこちに拠点を構えては、来るべき日のために体を鍛えている。
友である『トナカイ型神獣』たちも万全の状態。
あとは12月24日の夜、この星の大気中にある『自然発生型妖気』を回収するだけ。
自然発生型魔力と自然発生型妖気は全く異なる。
前者は人間に害を与えることはないが、後者は人体に蓄積すると様々な症状を引き起こす。
最悪は不治の病などを併発するため、毎年、定期的に空を飛んで回収することにしている。
いつのだったか知らぬが、ある時から、アメリゴが俺をレーダーで追跡し始めた。
そして各国で共同で追跡を開始したのだが、そもそもワシの体は精神生命体がベース、捉えることなどほとんど不可能であろう。
「よし、それじゃあ帰るとするか」
雪原を走ることで強靭な足腰を生み出す。
これとウェイトトレーニング、自重トレーニングでこの鋼のような肉体を維持し続けている。
あとは、本番当日を待つばかり。
待っていろよ人類。
聖父は、今でも皆を見守っているからな。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「メリークリスマス‼︎」
今宵はクリスマスイブ。
乙葉家、築地家、新山家、瀬川家合同のクリスマスパーティが始まった。
主催は毎年恒例の築地晋太郎おじさん、そこにうちの家族が乗っかって毎年行われている。
「本日は、お招きいただきありがとうございます」
「いえいえ、うちの息子に巻き込まれて色々と大変なことになってしまいまして、こちらこそ一度、ご挨拶をと思っていました」
新山さんの親父さんとうちの親父が話をしている。
俺はこれから祐太郎とホームシアターでアニメの鑑賞会なんだけど、まだ新山さんと先輩は到着していない。
「新山さんの親御さんは来ているのに、なんで本人はまだ?」
「さぁ? 確か新山さんは先輩を迎えに行ったはずだよなぁ?」
──ピンポーン
おや、呼び鈴なう。
これは新山さんに違いないと玄関に向かったら、外では新山さんと瀬川先輩、そして車椅子に乗っている女性がいた。
「初めまして、瀬川雅の母の瀬川加奈子です。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
え?
瀬川先輩のお母さんって、確かかなり重体で病院で……。
そう考えたあと、すぐ隣に新山さんが立っていたので理解した。
「新山さん、先輩のお母さんの治療したの?」
「うん。一気に治療したら反動が大きくなりそうなので、少しずつね。それで、昨日、バイタルが戻ったので今日は仕上げで体力も戻してきたの」
「それでも筋肉の衰えは戻せなかったので、今日は車椅子で参加させて貰うことにしました。あまり長い間はいることができませんが、今日はよろしくお願いします」
最高だよ。
先輩が満面の笑みを浮かべている。
その隣でペロッと舌を出して照れている新山さんも最高だよ。
こんな奇跡が起きるなんて、流石はクリスマスだよ。
すぐさま先輩たちをパーティ会場へと案内すると、改めて乾杯をする事にした。
「それでは、この、奇跡の夜に、乾杯‼︎」
「「「「「「 乾杯 」」」」」
魔法は人を幸せにできる。
それを、新山さんは実践してくれた。
俺は、この魔法を使って、これから何をしようか。
まあいいや、そう言うのは明日から。
今日は、この奇跡に、乾杯。
………
……
…
「現在位置は?」
『日本国上空、間も無く北海道は札幌だ』
「了解。ダンサーとヴィクセンは周辺警戒を頼む。この辺りから妙に浮遊魔力と妖気が濃くなっている……流石に一晩で全ては回収できないから、可能な限りは回収して脱出する」
ニコラウスがトナカイたちに指示を飛ばし、可能な限り低空飛行で北海道上空に突入する。
そして浮遊妖気と魔力の集中している札幌上空を通過するとき、背負っていた袋を全開にして浮遊妖気と魔力を吸収し始めた。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥッ
轟音を上げて袋が膨れ上がる。
そのまま札幌上空を通過するとき、ふと、ニコラウスは人の視線を感じた。
……
…
なんだあれ?
雪が降ってきたので、俺は祐太郎達と外に出て空を眺めていた。
ホワイトクリスマス、いいねぇ。
そう考えていたら、ふと、俺の視界に異様なものが飛び込んできた。
8頭のトナカイに引かれたソリ。
そこに乗っているサンタクロース。
「おいおいおいおい‼︎」
思わず叫んだ時、新山さん達も何かを察したのか空を見上げた。
「え? サンタクロース?」
「うわぁ……本物のサンタさんですよ?」
「……妖気感知には反応があるんだが、センサーが困っている感じか」
「純正妖魔じゃない、むしろ『神威体・ニコラウス』って鑑定結果がでたんだが……本物かよ」
俺たちに見えたのは一瞬。
そして俺たちに気が付いたのか、サンタクロースは手を振っていた。
これは予想外の奇跡。
サンタクロースは本当にいたんだ。
神威体って、多分神様の事だよね?
じゃあ、サンタクロースのプレゼントって神様の加護? 異世界案件?
そんなことも考えたけど、今日はいいや。
もう奇跡の連発でお腹もいっぱいだからね。
それじゃあ、改めて。
Merry Christmas
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




