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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第七十三話・三平二満、休むに似たり

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。

 はい、現在、国会議事堂です。


 俺は衆議院本会議に参考人招致で呼ばれています。

 因みに俺を呼んだのは、野党第一党の立憲民進党。

 質問内容は決まっているらしく、台本のようなものを控え室で手渡された。

 なお、議事堂外での妖魔騒動の直後、警備員と燐訪リンポウ議員は待機していた第六課に連行されましたとさ。

 議員特権があるので逮捕は不可能かと思ったけど、第六課の持つ権限の一つに、『不逮捕特権の無効化』があるんだって。

 しかも、これってかなり昔に制定された権限であり、表に出ていない法律がなんちゃらだって説明してくれたんだけどね、よく分からないわ。



………

……



 そんなこんなで無事に質疑応答も終了。

 え? 内容はどうしたって?

 高度に政治的なものでもなく、ただ俺以外の人が魔術を覚えられるのかとか、俺に魔術の指導員にならないかとか、そうそう、俺の知っている魔術の秘儀をすべて公開しろとかそういう感じでね。

 基本的には、俺が国に対して協力するかについてはすべてNO。

 確かに俺以外の人が使えるようになればいいとは思うけどさ、そんなことに俺の貴重な時間を割くのは馬鹿らしいのでパス。

 

 これには野党の議員たちのブーイングもあったけどさ、なんで高校生の進路にまでお前たち議員が口出ししてくるのかって思わず叫んじゃったよ。


『どうせあなたたち議員のバックにも、妖魔がついているでしょう』とか、『妖魔のボディーガードを雇えばいいんじゃないですか? 立憲民進党の議員の方の中には、そちらに詳しい方もいらっしゃいますし。妖魔が議員しているぐらいですからね』って思わず言っちゃったよ。

 だってさ、議会場の中にも12人、中級人魔じんまが居たんだよ?

 一人は与党だけどさ、残りはすべて野党で、それも立場がそこそこに上の人。

 本当に、国会には化け物がいるんだねぇ‥‥。

 思わず名前を挙げてやろうかとも思ったけれどさ、そんなことをして変に恨まれても仕方ないし、そもそも小澤議員と燐峰議員の件で立憲民進党には、すでに恨まれていると思うよ。


 そんなこんなで楽しかった2時間も終わったので、俺は国会議事堂を後にした。

 さて、ここからはフリータイム、のんびりと羽を伸ばして秋葉原へいざ、鎌倉!!



「そう考えていたことも、ありましたとさ……」

「え? 空想タイムおわった?」


 国会議事堂を後にして、さあ遊びに行こうかと思った矢先に井川巡査部長につかまりましたよ。

 

「ええ、しっかりと。そこで、これからどこに行くのですか? 俺は秋葉原に同人誌買いに行きたいんですけれど」

「乙葉君の魔導具作成能力を実証検分したいっていう人がいてね。協力をお願いしたいのよ」

「それって、普通は先に説得しませんか? 俺は嫌ですよ」

「報酬は出るわよ」

「お・こ・と・わ・り、します。どこに行くのか知りませんけれど、俺は何もしませんし車から降りたら自力で北海道に帰りますからね。国会の参考人招致までは協力しましたけれど、どうして俺が自分の奥の手を他人に教える必要があるんですか?」

「あなたの能力は、もうあなた一人のものじゃないのよ? 妖魔の存在が明るみに出ていて、そして妖魔に対抗できるのが魔術しかないって判明している時点で、君には人類に協力しないとならないっていう宿命があるの」


 そんなの知らんわ。

 北海道にいたときは、まだまともな思考になっていたと思ったけれど。

 また、横浜中華街で出会ったばかりの時と同じ考え方をしているよ。


「そんなの知りませんよ。そもそも、いまはどこに向かっているんですか?」

「市川の防衛省よ。特殊戦略自衛隊に新設された、『対妖魔兵器開発部』であなたの協力が必要ですって……」


 ふむふむ。

 第6課とは管轄が違うよねぇ。

 なんで井川巡査部長が、防衛省に協力しているんだ?

 それっておかしくね?


(鑑定眼……井川巡査部長のバイオリズムとステータス以上の確認)


 まず最初に疑うべきだったよ。


『ピッ……深度4の催眠暗示状態。妖魔による特殊能力化と思われます……さらに詳細鑑定……上級妖魔能力の『思考誘導』です』

(はい、ありがとさーん)


 なんだ、妖魔に操られているのか。

 それなら話は早いわ。

 ちょうど信号に停車したことですし。


「まあ、いくら乙葉君が拒否していても、これについては強権も発動フベシッ!!」


――スパァァァァァァァァン

 お待たせしましたのミスリルハリセン。

 精神状態を安定化させるので、この手の催眠とかにも有効であります。


「……あら? 乙葉君。私はどこに向かっていたのかしら?」

「あ~、そこからですか。実はですね……」


 かくかくしかじかと、先ほどまでの井川巡査部長の話の内容を一通り説明。

 するとだんだんと優しい顔が険しくなっていく。

 

「へぇ……防衛省ねぇ……特戦自衛隊ねぇ……あそこの開発部とかかわりのある議員とは、議事堂でも少し話をしていましたけれど……へぇ。その時に私をねぇ……」


 あ、やばい、井川さんが怖い。

 そういえば、議事堂にも人魔じんまいたよなぁ。

 そのうちの一人が、井川さんを催眠状態にしたやつかもしれないなぁ。


「あ、あのですね。とりあえずは大事にならなかったのですから、この件はこれでお終いにしましょう? あとは美味しいものでも食べてのんびりとね?」

「……そうね。今日のところはそうしましょうか。けれど、防衛省にまで妖魔が入り込んでいるっていうのは見過ごすことはできないわ。乙葉君、国会議員の中に紛れ込んでいる妖魔のリストって作れるかしら?」


 そう来るとは思っていましたよ。

 すでにリストは作ってあるので、それを井川巡査部長に手渡しておく。

 これで、本当に東京での仕事はおしまい、あとは豪華に行きましょう!!



 〇 〇 〇 〇 〇



 軽く食事をして秋葉原で散財。

 購入したものはすべて空間収納チェストに収納し、手ぶらで買い物三昧。いい、実にいい。

 財布も空間収納チェストに収納しているのですり対策も万全、まあ、テレビ中継で俺を見た人は遠巻きに俺を観察しているようだけれど、不必要に接触してくる人はホントいなく……って、まあ、記念撮影ね、はいはいオーケー。

 そんなこんなで遊び疲れてベンチに座っていると、遠巻きに人が集まってくるじゃないですか。



「あの、魔法使いのおにーいさん。魔法を見せてもらえますか!!」

「お、テレビで見た魔術師か。なんか見せてくれよ!!」

「何々、ストリートマジシャン?」


 次々と人が集まってくるので、とりあえず札幌でやったお題目を一通り公開。

 拍手喝采の中で、最後のしめは魔法の箒による空中浮遊。

 まあ、マジックどころか本物の箒なので、種も仕掛けもありませんけれど、ここに集まっている人たちは、本物の魔法を見たいのだから問題なし、ヨシ!!


 ということで、最後は箒にまたがって空を飛んだ。

 箒を取り出したとき、観客は皆一様に期待に満ちた目で見ていたので、そこにゆっくりと浮かび上がった。 


――フワァァァァッ

 ゆっくりと浮かび上がってから、低空飛行のパフォーマンス。

 そのまますぐに着地してはいおしまい。

 あまり長時間やっていると、警察が来て怒られそうだからね、大通公園みたいにお目こぼししてもらえそうもないから。


 そんなこんなで魔法の箒もしまって帰り支度をしているんだけどさ。


「あ、あの、空飛ぶ箒って、どうやって作るのですか?」

「俺も箒で空を飛びたいんだけれど、誰でも乗ることができるのか?」

「テレビのまほーしょうじょみたいになりたい!!」


 うーむ。

 子供の夢は壊したくはないし。


「えぇっとですね、まず大前提として、魔法使いでないと、魔法の箒で空を飛ぶことはできません。次に空飛ぶ箒の作り方ですが、これは錬金術が使えないと作れません。そして最後は、まほーしょうじょか……それって『二人はマスキュラ・マックスバウァー』みたいな感じでいいのかな?」

「は、はい!! まじかるプロテインで『オーケィ!! ビルドあーっぶ』したいです!!」


 うーん。

 子供の夢を壊したくない。

 けどなぁ。

 魔法使いになる方法かぁ。

 そんなこんなで悩んでいると、少し離れている場所で井川巡査部長がニヤニヤと笑っている。

 くっそぉ、俺の反応見て楽しんでいるな?


「魔法少女になるためには、まず魔法の適性があるかどうか調べないとならないんだよ。今はそれを調べられないけれど。近い将来、魔法使いの才能があるかどうか適性を調べられるようになると思うから、それまで待っていてね……」


 そう説明して、空間収納チェストから魔力感知球を取り出してみる。

 そして女の子に、水晶玉の上に手をのせてみるように話しかけてみると、なんとまあ、水晶玉がうっすらと黄色く輝いた。


――フゥゥゥゥゥゥッ

「あ、黄色くなった!!」

「ありぁ、適性ありか。えぇっとね、たぶん、近いうちに君のところにも魔法使いになるかどうかって話が来るかもしれないよ?」

「本当!!」

「ああ。詳しい話は、あそこのお姉さんが分かっているはずだから、聞いてくるといいよ」


 こっそりと井川巡査部長を指さすと、女の子は井川さんのほうに走っていく。

 その後ろを女の子の親がついていったのを確認して、俺は近くのベンチに座って一休みである。



「……妖魔反応12。下級妖魔フローター8、下級妖魔ヘッドブレイカー1、下級妖魔ショルダープレス2、下級妖魔リミットボム1か。随分と飛び回っているなぁ」


 フローターはよく見るやつで、ヘッドブレイカーは憑依対象に頭痛を引き起こすやつ。ショルダープレスは肩こり妖魔ね。そして問題なのが、リミットボム。



『ピッ……下級妖魔・リミットボム。憑依対象の精気を吸収し、一定値以上の精気を蓄えたときに爆発し、リミットボムの子株を拡散する。爆発の威力はそこそこ強く、憑依されていた人間は爆死する。

 上位妖魔に使役されている場合が多く、自然発生することはない』


 

 いや、待って、それ駄目だから、危険すぎるから。

 すぐさま立ち上がってリミットボムをターゲットロックすると、12式・力の矢でぷかぷか飛んでいるリミットボムを破壊する。

 妖魔核を撃ち抜いたので、問答無用にリミットボムは蒸散、これで安全である。

 ただ、野生種のリミットボムがいないというのが厄介なことこの上ない。


「あれも報告書として提出しておくか……」


 スマホで簡単な報告書をくくって、忍冬師範にメールをぽちっとな。

 そんなことをしているうちに、井川巡査部長も話が終わったらしいので、あとはホテルでのんびりと骨休め。

 明日の朝には北海道に帰還することになった。



 〇 〇 〇 〇 〇



 防衛庁・特殊戦略自衛隊本部

 

「……井川君はまだ来ていないのか!!」


 本部に詰めていた川端防衛大臣政務官は、傍らで待機していた陣内議員に問いかけている。

 ちなみに陣内議員は上級妖魔であるが、古くから妖魔共存派サイドに協力している穏健派である。

 

「まあ、あの場では簡単な術式しか使えませんでしたからねぇ。おそらくは、乙葉浩介に術を破られたんじゃないですか?」

「それでは困るのだよ。いいかね、アメリゴの対妖魔機関『ヘキサグラム』は、すでに対妖魔兵器の量産体制に入ったという噂もある。中国では獣人による特殊部隊『妖撃』が新設され、イングランドでは対妖魔特務機関が活動を開始。あのバチカンでさえ、虎の子である『マルタ騎士団』に活動要請を行なったそうじゃないか」


 すべて、対妖魔組織として表立っては知られていない。

 ただ、各国にも同じような組織は存在しており、中でも有名なのが上記の組織である。


「ええ。ですので我々も急ぎ対策を練る必要があります。我が国は過去から現在、幾度となくゲートが開いています。あと数年以内に訪れる大氾濫、それまでには対妖魔兵器を拡充し、対策を練らなくてはなりませんからねぇ」

「それが分かっているなら、急いでなんとかしたまえ。各方面から集められた特戦自衛官でさえ、いまだ対妖魔兵器を所持していないのだぞ? それにも拘らず、あの北海道の第6課はミスリル武具を装備しているというではないかね?」


 すでにそういった情報は手に入れている。

 そして、それらを譲渡したのが乙葉浩介であることも知っている。

 彼が退魔法具を自在に作り出すという『錬金術』を使えることも、すでに報告に上がっている。


「ええ。確かに少ない予算枠で入手したという報告は受けていますね」

「ならば、それらを供与した乙葉浩介とやらに話をつけたまえ。彼も日本国民ならば、対妖魔兵装の開発を手伝う義務があるのではないか?」


 口から泡を吹きそうな勢いで叫ぶ川端防衛大臣政務官。

 ああ、こいつはあほか?

 乙葉はまだ高校生だぞ? それに日本国民だからと言って戦う義務を押し付けるとは、なんという古い考えだ。

 どれだけ兵器開発メーカーに忖度しているのやら、どれだけ献金を受けているのやら。

 まあ、そんなことを話してもこいつは理解しないからなぁ。

 しっぽ切りは得意そうだし、もう何人もコイツの不始末を消すために秘書がいけにえにされていたことか。

 

「高校生には義務なんてありませんよ。そもそも相手は民間人ですし高校生です。いくらわが日本にたった一人の魔術師であっても、国民の権利を守るのが国です」

「黙れ!! そんな甘いことを考えているようでは日本は他国から後れをとってしまうだろうが!! 今の日本の情勢を知っているのか!!」


 はいはい。

 特に何も変化していませんよ。

 他国の対妖魔機関が活動を活発にしている中で、日本の防衛省は何をしているんだって世論が厳しいことぐらいしか知りませんよ。

 そして、その件は私がなんとかしましょうって国会答弁で言い切って防衛大臣に啖呵切った挙句、いまの状況だっていうこともね。 

 

「報告では、特に変化はありませんねぇ。まあ、この件は私のほうでも動いていますので、いましばらくはお待ちを……」

「わかった。なるべく早く頼む。先方も開発予算を割いているにもかかわらず、何も進展していないでは済まされないらしいからな」


 はいはい。

 どうせいい案なんてありませんから、あなたの立場が世論につぶされそうになるまでは時間を稼がせてもらいますよ。


‥‥‥

‥‥


 朝。

 無許可で路上パフォーマンスをやって警察に怒られた俺ちゃんだよー。

 井川巡査部長が間にはいってくれたおかげで説教で終わったのと、飛行許可のない空飛ぶ箒の使用は禁止だよって言われてへこんだよ。


「その、魔法の箒って、誰でも飛べるの?」


 帰りの飛行機の中で、そう井川巡査部長に問いかけられたので、昨日と同じ説明だけしておいた。


「あの、魔法の箒の使用許可ってどうゃってとったらいいの? ちゃんと魔法安全器もついているし、対ショック用のマジックアブーバーもついているよ? 原付でダメなの?」

「えぇっと。まず原動機はないわよね? なので車両という概念ではないわね。同じ理由で航空機でもないわ。どっちかというとドローンのような立場なのかな?」


 ふむふむ。

 できれば公式に許可をとって、堂々と飛びたいんですけれどねぇ。

 そう説明したら、とりあえずは忍冬師範とも相談してみるっていう話でこの件は打ち切りになった。

 そして、朝方、防衛省の川端防衛大臣政務官から出頭要請が来ていたらしいけど、学生なので断りを入れて帰ってきちゃった、てへ。


 まあ、これで面倒な国会とかそういうのは終わったので、明日からは明るい魔術師生活を……違う違う、いや違わないけど、明るい学生生活を送ることができそうだ。 


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >本部に詰めていた川端防衛大臣政務官は、傍らで待機していた陣内議員に問いかけている。 > ちなみに坂内議員は上級妖魔であるが、古くから妖魔共存派サイドに協力している穏健派である。 …
[気になる点] うーん、出頭要請ならともかく出頭命令を一高校生にだせるもんなんですかね、ちょっと違和感感じます。
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