第六話・酒に交われば意気揚々(当たる所までは良かったけれど)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。
新山さんの病院に行ってから二日。
つまり月曜日だ。
昨日は一日中祐太郎とゲーセンで遊びまくっていた。
あんまり得意じゃなかったガンシューティングゲームだけど、昨日は最高に楽しかった。
SBリングの効果なんだろうけど、敵がね、遅く感じるのよ。
俺の射撃の腕も向上したらしく、ノーミスではなかったが全面クリアを果たした。
そのあとも異世界チートでゲーセン無双がいけると思ったが、UFOキャッチャーは惨敗。
対戦麻雀ゲームも惨敗。
運要素が高いゲームに対しては、異世界チートは通用しないことはわかった。
そして今日の体育は柔道。
ふっ、この俺のステータスを見ろ。お前ら高校生の平均値は70前後なのは、鑑定眼を使って分かってるぜ。
俺の体力は100オーバー。
いくらお前が柔道スキルを持っていても、この俺のステータスには
──ズドーン
「1本、高田の勝ち‼︎」
体育教師の声が室内に響く。
あれ?
俺負けたの?
たかだか体力70の男に?
「あっれ? おっかしいなぁ?」
頭を捻りつつ列に戻って座る。
ステータスだけでなく、スキルもやっぱり必要なのか?
まあ、大抵のネトゲでも、ステータスだけで制することはできない。やはり必要なのはスキルとキャラクタークラス。このバランスが重要なんだけど、俺自身にはクラス設定はないんだよなぁ。
あちこちのクラスメイトを確認しても、どいつもこいつもレベルは1。ただ、みんな色々なスキルを持っていた。
運動部の奴らはそれぞれの運動系。
趣味を極めているやつは、それぞれの趣味のスキル。
でも、俺って多趣味だしアニオタだし、色んなスキル持っていても良いんじゃね?
そーっとステータス画面を見るけど、俺のスキルは相変わらず『一般生活・全般』と魔法系のみ。
「やっぱり使えねぇぇぇ」
「お、どうした乙葉。また何かあったのか?」
あ、またやっちまったよ。
最近は画面を見て突っ込み入れると、声に出ていることが多いらしい。
「いえ、ちょいと考え事です、サーセン」
「そうか、まあ、試合中だから静かにな」
クスクスと笑う友達に苦笑いピースを返す。
ああ、早く放課後にならないかなぁ。
………
……
…
という事で、放課後ですよ。
楽しい部活タイムですよ。
「ちーす。って今日は人多い‼︎」
狭いながらも楽しい部室が、今日は俺を含めて5人もいる。
「ユータロはまあ、よしとして。皆さんは新入部員さんですか?」
「違うわよ乙葉くん。彼女たちは元々の部員ですわ」
え?そーなの?
「オトヤン、ほら、俺たちが入部した日に入れ違いに帰っていった先輩たちだよ」
「そういうこと。まあ、ここは兼部で幽霊部員みたいなものだからなぁ。私は美馬かなめ、そっちの彼女は高遠遥」
ああ、美馬先輩、女性なのに男らしい挨拶ありがとうございます。そして高遠先輩、いかにも文学部の少女みたいに無口で清楚でご馳走様です。
「俺は乙葉浩介です。よろしくお願いします。それと一つ聞いていいですか?」
そう言えば、俺、今まで知らなかったんだよなぁ。
「部長の名前って、なんでしたっけ?」
「あら? 私は初日に自己紹介したはずですわよ? ではもう一度、私は瀬川雅ですわ」
──ポン
思わず手を叩く。
そう言えばそうだったわ。
しかも、部員の皆さんの鑑定はしていなかったわ。
ということで、恒例の鑑定眼・発動タイムでございます。
……
…
名前:美馬かなめ
年齢:18歳
性別:女性
種族:人間
レベル:1
体力:87
知力:70
魔力:5
心力:17
HP:19
MP:17
・スペシャルアビリティ
球技に愛されしもの
・固有スキル
一般生活・基本 レベル17
学業エキスパート レベル1
バスケットボール レベル10
・コンディション
体調:優良
サイズ:90.73.92
処女
嗜好(未解放)
その他(未解放)
――
名前:高遠遥
年齢:18歳
性別:女性
種族:人間
レベル:1
体力:52
知力:61
魔力:56
心力:2
HP:10
MP:26
・スペシャルアビリティ
なし
・固有スキル
一般生活・基本 レベル17
学業エキスパート レベル1
百人一首 レベル15
吹奏楽・弦楽器 レベル8
・コンディション
体調:優良
サイズ:70.65.76
処女
嗜好(未解放)
その他(未解放)
……
瀬川雅
年齢:17歳
性別:女性
種族:人間
レベル:1
体力:55
知力:73
魔力:12
心力:8
HP:17
MP:34
・スペシャルアビリティ
貴腐神ムーンライトの加護+++
プロテクト(1日3回/残二回)
・固有スキル
一般生活・基本 レベル17
学業エキスパート レベル6
楽器演奏・フルート レベル11
・コンディション
体調:優良
サイズ:82.65.88
処女
嗜好(未解放)
その他(未解放)
……
…
いかん、鼻血出そうになる。
しかし、美馬先輩のアビリティの『球技に愛されしもの』というのもびっくりだけど、瀬川先輩は『貴腐神ムーンライトの加護+++』ってついてる。
えええ、神様の加護なんて持っているの?
プロテクトって何?
そう言えば、みんなスペシャルアビリティに知らない四文字熟語みたいなスキルついていることあるよね? あれって何? 俺も欲しい。
『ピッ、乙葉浩介のスキル・鑑定眼とサーチゴーグルをリンクしますか?』
え? なんかわからないけどイエス。
リンクしてどうなるものかと、透明化したゴーグルを装備する。
『ピッ…セレクト、TS/サーチ/鑑定眼』
ん? まあ鑑定眼で宜しく。
ピッという音がしたが、特に何も変わらない。ただ、瀬川先輩を見ると、頭の横にウィンドウ表示が出ているだけ。
まあ、鑑定眼では一度に50MP使うのだけど、それが5MPに減ったようだし。これは良しとしておこう。しかし、このゴーグル、万能魔導具だなぁ。
「オトヤン、なんで瀬川先輩を見てニコニコしてる? まさか惚れたか?」
「いや、そんなことはないけど可愛いなぁって」
おっと失言。
だが、瀬川先輩は俺の言葉ににっこりと微笑む。
「褒め言葉として、ありがたく受け取っておきますわね」
先輩、あんた天使かよ。
まあ、今日はすぐに帰りたいので、このまま直帰しますサーセン。
そして帰宅してすぐに日記を開くと、サーチゴーグルで今日の日記の部分を見る。
──ス〜ッ
すると、今日、あと一時間後に行なわれるロト6 の当選番号が浮かび上がってきた。
「よし来た、これを買えばいいんだな」
早速小遣いを握り締めて、近くの銀行にスーパーダッシュ。
小遣いをキャッシュカードに入金すると、そのままATMでロト6 を購入。
え?
なんで売り場で買わないのかって?
売り場で購入するとだね、換金の際には保護者が必要なのだよ?
だけどキャッシュカードの場合は、当選金は自動的に振り込まれるのだよ。
そして、いざ買うところで買えない。
『未成年の、宝くじのオンライン購入はご遠慮ください』
ああっ、神様は無慈悲である。
ならば仕方ない、普通に売り場で購入しよう。
そのまま帰りに売店で購入してスキップしながら自宅に帰る。
そして運命のロト6 当選番号発表。
うん、全て当たり、まあ当たり前だよね。
結果から告げると、当選本数は2口、おれが買ったのは一口だけなので466,750,300円。
この一枚のくじが一週間後には四億ですよ奥様。
「来たぁぁぁぁ、一気に億万長者だぁぁ‼︎ この当選番号も日記に記録して……と」
万が一の場合を考えて、当たりくじとキャッシュカードと通帳、印鑑は空間収納に保存。これで誰にも盗まれない。
この日は心臓がずっと高鳴ってしまい、まともに寝ることができたのは深夜3時過ぎだったそうな。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
乙葉くんから貰った魔法の水……っていう話のペットボトルの水を飲んでから、私の体が軽くなったような気がしました。
午後の検査も良好だったらしく、月曜日の精密検査が楽しみです。
「まさか、本当に魔法の薬だったのかなぁ」
ペットボトルは全部飲めなかったので、あとで飲もうとおもって個室の冷蔵庫にしまってある。もしも検査の結果が良かったら、また飲んでみようかな。
そして月曜日の検査。
朝から色々な検査をして、夕方になって私の両親と私は主治医の先生の部屋に呼ばれた。
「今から説明しますけど、驚かないでください。小春さん、貴方の甲状腺癌は完治しました」
え?
「いや、こんなに劇的に改善どころか完治するという症例を見たことがないのです。生化学検査、MRI、エコー、どの検査でも全て正常値です。念のためあと数日は検査をしたいのですが、それは大丈夫ですか?」
お父さんもお母さんも手を取り合って泣いている。
もうダメだと諦めていたらしい。
私は、どの治療法の効果があったのかを調べたいのでと…もう数日は入院するらしい。
でも、私はもう健康になったんだ。
「しかし、どの療法でもここまで一気に治るということはないのですよ? 小春さん、なにかこう、治る感覚とかありましたか?体の異変とか心当たりとか……」
そう真剣に問いかけるので、私は特になにもないとだけ告げた。
けど、心当たりはある。
きっとそうに違いない。
「乙葉くんの魔法かな……」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
宝くじが当選した翌日。
俺は眠い目を擦りながら、学校へ。
俺はまだ16歳だろ?
一等賞金が4億超え、あと84年生きるとしたら年間で540万使えるんだぜ?
月にして45万。贅沢しなければ、一生遊んで暮らせるレベルだ。
そのままニヤニヤしつつクラスに向かうと、前の席に新山が座ってた。
「おはよう乙葉君」
「おう、まさか治ったのか?」
驚いたような演技をしてみせる俺。
ここで当然のような顔をしたら返って怪しまれる。
すぐさまゴーグルを換装して鑑定眼で確認すると、不可だった体調ランクが優良に変化していた。癌らしき表示もない、よし、あの薬は本物だ、もう少し買い占めておこう。
「ええ。ありがとうね。乙葉君の魔法の薬で治ったんだよ?」
「そんなわけないだろうが。あれは甘いスポーツドリンク。プラシーボ効果で治ったんじゃね?」
「ふふ、そうかもね。でも、ありがとう」
そう告げて前を向く新山。
これで愛のフラグが成立か? なんて甘い考えはしないよ。
こんな簡単に恋に落ちるなら俺はとっくに愛の伝道師だよ、中学時代から勝ち組リア充だよ。
昨日の宝くじといい、新山の退院といい、今日は良いことばかりだ。
………
……
…
放課後。
部室に向かっていつものようにラノベの解析。
今日の祐太郎は何やら真剣に神話の本を読んでいる。まて祐太郎、クトゥルフには手を出すな!! SAN値チェックで持っていかれるぞ。
「おや、2人とも早かったわね。今日は新入部員が入ったのよ」
「本日入部しました新山小春です。宜しくお願いします」
部長とともに入ってきたのは新山さんだった。
おやまあ、まさか、恋のフラグ成立か?
などと甘い妄想はそこそこに、軽く挨拶をしてから俺は提案する。
「なら部長、今日は帰りに甘味処行きましょうよ、新山さんの快気祝いと入部祝いも兼ねて」
「いいねぇ、ちょっと寄ってく?」
「「ラララ無人君〜♪」」
相変わらず祐太郎のツッコミは惚れ惚れする。
それに乗る俺もどうかと思うが、その日は楽しい1日を過ごせた。
いきなり俺が誘ったことに祐太郎が何か気づいたらしく、俺はロト6 で4等が当たったことにした。それなら窓口で受け取れる金額なのでごまかしが利いたのだが、甘味処は俺の奢りになってしまった。
「それじゃあ、今日はご馳走様」
「ありがとうございました」
「ゴチになります‼︎」
三者三様の挨拶でお開きになると、俺はのんびりと帰宅して日課を終え、心地よい気分のままベッドに潜り込んだ。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回の判りずらいネタ
ラララ無○君/ア○ム
・宝くじ、ロト6についての世界説明
ロトくじの未成年購入については、『乙葉浩介のいる世界』では未成年でも購入は可能ですが、高額当選の換金については未成年の場合は保護者が必要であると言う設定ですので、ご了承下さい。