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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

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第573話・閑話休題、鰯網で鯨捕る(当事者たちの宴)

――鏡刻界(ミラーワーズ)・魔大陸


「はぁ……」


 鏡刻界(ミラーワーズ)・魔大陸中央帝都。

 その帝城ドミナオンの謁見の間では、魔人王・銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)が目の前の書状を眺めて溜息をついていた。

 その理由はただ一つ。災禍の赤月事変の結末、その一つが『魔人王オーガス・クレイス』こと瀬川雅より魔人王を継承したものの、新たな十二魔将の選定で頭を悩ませていたのである。

 既に第十二位の『虚無のゼロ』は確定し、更に『嫉妬のアンバランス』『傲慢のタイニーダイナー』、『冥王のプラティ・パラティ』ら3名も3期続いての就任が確定し、簡略的ではあるが魔将紋を継承している。

 それでは残りはどうするべきかという所で、銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)は頭を抱えているのである。

 

「先代魔人王である娘の友人達を十二魔将に迎えるというのも何かが違う。かといって、側近に据えようものなら、雅に怒られそうではあるが……良い人材がいないというのもなぁ」

『何だ、まだそんな事で頭を悩ませていたのか』


 魔人王の執務室にやって来た虚無のゼロが、新たに追加の書類を届けに来た所である。

 そして虚無のゼロを恨めしそうに眺めている銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)など知った事かと書類を机の上に置くと、そのまま腕を組んでじっと銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)を眺めている。


「そんな事とはいうが……この短期間に魔人王が代替わりしたケースはない筈だよな?」

『ああ、我が魔皇代表として、十二魔将に迎えられてからは一度もなかったな。それに、早い所決めてくれなくては、封印書庫へと迎え入れる事も出来ぬのだが』

「ああ、勤勉のスターリングへの謁見だな。それはわかっているが、それよりも白桃姫から伝言鏡を通じて連絡が届いていたんだが」


 そう説明してから、銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)は一通の書類を虚無のゼロに手渡す。

 かつて、白桃姫が鏡刻界(ミラーワーズ)にいた時代、鏡を通じて百道烈士(くどれっし)や乙葉浩介とやり取りをしていた事があった。

 その時の魔術を応用して、現在は白桃姫から定期連絡のようにメッセージが届けられている。

 その一番新しい報告書をを受け取り、虚無のゼロはどうしたものかと目を細めてしまう。


幻想界(アルト・ミラージュ)にて、封じられていた魔人の眷属プラグマティスの封印が解かれていた事、創世のオーブが何者かによって奪われてしまっていた事……そして、4神が幻想界(アルト・ミラージュ)の修復の為の試練を、乙葉浩介らに託したという事か………実に興味深い』

「ああ。そして、それらの言葉について心当たりがあるのなら、連絡が欲しいという事だが……虚無のゼロ、君なら何か知っているのではないか?」


 瞳を細くして問いかける銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)

 すると、虚無のゼロが懐から小さなメダルを取り出し、執務机の上にコトリと置いた。


「これは?」

幻想界(アルト・ミラージュ)の大神殿に封じられていたプラグマティスが封じられていた媒体。創世の金属レグルスで作られたものであり、神々以外では精錬する事すら不可能だ』

「……それで、その中身は? まさか虚無のゼロがどこかに匿っているとか、そういう話ではないよな?」

『それは違うな。ただ、プラグマティスという眷属はすでに存在しておらず、その意思だけが継承され続けているということは確か。レグルスより解放されたプラグマティスは何者かによって吸収され、そしていくつもの力に形を変えて散っていった。その欠片の一つは、あの伯狼雹鬼(はくろうひょうき)の元にも存在していた』


 淡々と、感情を揺らす事なく話し続ける虚無のゼロ。

 そしてその言葉に嘘偽りがない事を、銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)の右目はしっかりと捉えていた。


「その欠片が集まり、再びプラグマティスとなる可能性は?」

『皆無だな。既に力を解放する事なく消滅した欠片さえ存在する。まあ、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)は欠片を自らの血族に託した可能性はある。そしてその欠片の一つが、神楽のもとを通じて玉藻に託されていたという事も』

「……乙葉浩介が、そのプラグマティスの継承者という可能性がある……か」

『そこなんだがなぁ……あ奴、一度死んでいるだろう? 自己犠牲により最愛の恋人を蘇生した。その代償として魂を捧げてしまったので、ひっょとしたら欠片も失われている可能性がある』


 何となく呆れたような声で告げる虚無のゼロに、銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)は頷くしかない。

 そして今の話が事実なら、プラグマティスは既に存在していない事になる。


「それで、残りの欠片はどれぐらいだと思う?」

『大きなものが一つ。だが、そこにはプラグマティスの意思は残っていない』

「それはどこに?」


 そう銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)が問い掛けると、虚無のゼロが自信の胸元を指さした。


『私が、プラグマティスの欠片の一つ。その力の大半が結晶体に変化し、魔族として命を得たもの。ゆえに、我は魔族の全てを知る』

「そして同時に、始原の魔族の一人である……と、そりゃあ、歴代魔皇を統べるだけの力を有している訳か」

『七徳の魔族ではないがな。この事を知っているのは勤勉のスターリングのみ。ということで、銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)様も、お心の中に留めていただけると』

「こんな事、誰に説明出来るかっていうの……ああ、白桃姫に何て報告すればいいんだ……」


 そう告げて頭を抱える銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)だが、虚無のゼロが自身の口元に指を立てて見せる。つまり、黙っていた方がいい。


『説明出来るのは、プラグマティスが欠片となった事。そしてそれが受け継がれている事……創世のオーブについては、残念だが私にもわからない。四神の試練については、創世のオーブの回収が答えとなるだろうが……一つだけヒントを。プラグマティスの欠片を有する者は、疑似神威を身に着ける。ゆえに、創世のオーブを手にする事が出来る』

「それで、災禍の赤月事件のどさくさに紛れて創世のオーブを盗み出した者がいるという事か。そいつは一体何者なん……って、ちょっと待て、虚無のゼロ、お前まさかとは思うが災禍の赤月についても、全てを知っていたんじゃないだろうな?」


 そう怒鳴るように問いかけると、虚無のゼロが再び口元に指をあてて、そしてスッと消えていった。


「ああああぁっっ、あの野郎っ。どこまで、何を知っているんだっ。そもそもプラグマティスの欠片が結晶化して虚無のゼロになったというのなら、自我もそのまま保っているんじゃないだろうな……」


 むしゃくしゃして頭をバリバリと搔きむしる銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)。 

 だが、彼の考えが正しかったのか、それは誰にも答える事は出来なかった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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