第564話・一朝一夕、急いては事を仕損じる(アニメでも、定期的に総集編ってやっているよね)
封印大陸。
伝承によれば、鏡刻界と真刻界(裏地球)とは異なる空間収納に存在する世界。
という事で、箱舟のシステムの一つである、『古代伝承』についてのおさらいなど。
俺たちの住む地球がある世界は、真刻界と呼ばれている。
そして鏡写しのように異世界に存在するのが鏡刻界であり、その二つの世界が一つの水槽の中に存在しているのが【俺たちの世界を創造した神の領域】。
そしてこの神々の領域を管理しているのが、【統合管理神】というものであり、それら統合管理神を統括しているのが、【真なる創造神】。
それじゃあ、俺たちの世界にある宗教の神々って、どこに定義されているのかというと。
統合管理神の下に存在する【世界神】というものが鎮座していまして。
ここに様々な宗教の神々が存在しているという事で。
「……と、このモニターには表示されているんだけれど。面白いのは、この俺達の世界の統合管理神っていうのが、実は12柱の神々によって構成されているっていう事らしいんだよ。本来ならば、一つの統合管理神の元にあるべき世界を、12柱の神々によって管理統括しているんだと」
それってつまり、オリンポスの12柱みたいな感じなんだろうなぁ。
さて、続きを表示しますか。
えぇっと、この世界が収まっている水槽が幾つも並んでいるのが【多元世界】であり、それぞれにその世界を創造した神がいて、世界を管理・運営しているという。
この、水槽の中に揺蕩う世界がぶつかり合うと、お互いにはじけてしまい消滅するか、一つに併合されてしまうらしい。それを防ぐために、多積層結界というもので水槽の中に存在する世界を包み、衝突を防いでいるとの事。
「……つまり、真刻界を管理している私たちの世界の神々と、鏡刻界を管理している神々がいるっていう事だよね?」
「そそ、新山さんの言う通りなんだよ。そんでもって、二つの世界同士は干渉しないように努めている事、その為に多重積層結界というものが作られていたっていう事」
「それが、転移門によって繋がりを持ち、鏡刻界から魔族が侵攻して来たっていうのが、過去の魔族大氾濫であるという事。これは魔皇さんたちが教えてくれた事なので、間違いはないわ」
瀬川先輩、補足をありがとうございます。
「そうなんですよ。でも、この多重積層結界のもう一つの役割というのがありまして。実は、この結界はある世界へ人間か移動出来ないようにする為のもので。そこか封印大陸っていう事なんですよ」
「オトヤンの説明にさらに補足させてもらうのと、これはローラさんへの確認なんだが」
そう告げてから祐太郎が話したのは、封印大陸とは何かという事。
そもそも、封印大陸は神々の住まう『神界』であり、神とその眷属以外の出入りは禁止されている。
というのも、封印大陸の中心に存在する【神々の祭壇】には【創世のオーブ】というものが安置されてあり、これを【人間たちが手にしないように】統合管理神たちが管理している。
この創世のオーブは【世界そのものを自在に作り替える力】を持ち、創造神および統合管理神から、神人達がこの世界を管理する為に授かったもの。
「ええ。私たち神人の使命の一つが、12柱の神々の神殿の封印の管理と、中央大神殿に安置されている【創成のオーブ】を管理するという事です」
「そこで質問。その【創成のオーブ】は、今は誰が管理しているんだ?」
「それは分からないわ。そもそも、中央大神殿は、破壊神ダークの封印が溶けたのち、崩壊してしまったので」
「つまり、そこを確認して【創成のオーブ】を回収、そののち、封印大陸を元の姿に戻すように祈りを込めれば、全て解決するんじゃないかっていう事なんだけれどさ」
――ピッピッピッピッ
問題は、封印大陸にまだたどり着けていないっていう事。
箱舟を使っての空間移動は、ものすごく簡単に出来たんだよ。
ただし、それは『鏡刻界』と『真刻界』の間を行き来する時のみ。もしくは、虚無空間へも移動することは可能らしい。
そして俺たちが向かっている先は、いわば【天国】。
神々の頂どころか、住んでいる世界へ向かうんだから、そりゃあ結界があるのは当たり前だよね。
そして現在、箱舟はその結界に引っかかっていて身動きが取れなくなっています。
「……乙葉くん。そろそろ神威のチャージが完了するかしら?」
「後1時間っていう所かなぁ。それで箱舟に搭載されている時空間航行機関の出力が上がるので、この結界を越えることは出来るんだよ。これってさ、神威を持つものは通り抜けられるみたいだから」
「ありていに言えば、俺たちが生身で突破する事は可能かもしれないが、神人であるローラさんを連れてはいけない。そのためにどうしても箱舟で行かないとならないっていう事なんだよなぁ」
「そそ。ということで、あと1時間はノンビリとお茶でもして待っていましょ」
お久しぶりにウォルトコ経由でケーキとか飲み物を大量購入。
それをコクピット後方の広いスペースにテーブルを追加して並べると、正に『現実逃避』という名の御茶会が始まりましたとさ。
「はぁ。乙葉君は相変わらずよね」
「だってさ、今、この状況で出来る事って何もないと思うよ? 封印大陸のおさらいもしたし、このまま結界を越えることが出来れば、武神ブライガーの像の安置されている神殿の手前に着地する手筈になっているんだからさ」
という事で、1時間ほどお茶会を楽しんだ後、いよいよ最高出力で神威結界を突破。
その直後、目の前の世界が真っ暗になったと思ったら、軽い振動ののち箱舟は無事に着陸完了。
………
……
…
正面モニターに外の様子を映し出して貰うと、突然姿を現した箱船の周囲に人が集まり始めている。
神殿の神官さんや近くの建物を修繕している人達といった感じかなぁ。
そして、大慌てで馬に乗って駆けつけてきたトゥルーソン伯爵の姿も見えたので、ここが封印大陸の城塞都市アウズンフラである事を確信した。
「それじゃあ、とりあえずはトゥルーソン伯爵に事情を説明した後に今後の対策について色々と考える事にしますかねぇ」
「俺は武神ブライガーの像に祈りを捧げてくるわ。あちこち崩れそうになっているけれど、以前見た時のように透き通った綺麗な像だな・ちょっと安心したわ」
「それじゃあ、俺たちはトゥルーソン伯爵の家にでも案内して貰うわ。祐太郎は場所を知っているよな?」
「ああ、それじゃあ後程」
という事で、ハッチを開いて俺たちは外に出る。
まず最初にローラさんに降りて貰ったのだが、突然、見も知らない物体から知っている顔が降りてきたので、トゥルーソン伯爵が驚いている。
そして俺たちが続いて降りていった時、どうやら事情を察してくれたらしい。
それにしても、崩壊しかかっている世界だというのに、集まって来た人たちって意外と元気だよなぁ。
ま、暗い顔でどんよりとしているよりは良いけれどね。
後は、これからの話し合い次第だよなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




