表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

554/591

第554話・九牛一毛、浮き沈み七度(能力の確認、よし、劣化してるけれど問題はない)

 朝。


 いつものように目を覚まし、日課である『カナン魔導商会』の画面を開く。

 メッセージが届いているか確認をして、もしも『納品依頼』があったら、その内容だけを確認しておく。

 そして新商品があるかないかを確認した後、身支度を整える為にベッドから出ていく。


「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、このルーチンワークが懐かしく思えるわ。しっかし、結構な能力ダウンだよなぁ。失ったステータスはどうやって補ったらいいのか、全く判らんなぁ」


 ミラージュのおかげで、俺の加護である『カナン魔導商会』が帰って来た。

 破壊神の加護は失ってしまったものの、新たに魔導神アーカムという神様から魔導に関する加護を得ることが出来た。

 当初から保持していたチートスキルのうち、現在残っているのは以下の通り。


 ネットショップ・カナン魔導商会+++

 空間収納(チェスト)++

 自動翻訳  (初期セット)

 鑑定眼+++(初期セット)

 思念の創造球(マギ・スフィア)


 これは感覚的に理解できたもの。

 実はステータスを見通す能力は破壊神の加護があってこそらしく、今は自身の能力が『なんとなくこんな感じ』程度にしか感じ取る事が出来ない。

 鑑定眼はいつも通り天啓眼として使用出来る、自動翻訳スキルもある。

 空間収納(チェスト)が戻って来た事、中に入れてあったものが全て存在していた事については助かったとしかいいようがない。

 魔導神の知識曰く、それらの能力は自身の魂に紐づいていたものであり、スキルはそこから力を得るためのスイッチのようなものらしい。

 つまり、空間収納(チェスト)に収まっていたものは、全て俺の魂の中には存在していたらしいが、それを引き出すためのスイッチが壊れていたという事になるらしい。

 思念の創造球(マギ・スフィア)については、普段は俺の魂と同化していて、必要に応じて両腕に装着することが可能らしい。

 こいつの使い方については、追々考えるしかない。 


「そして、カナン魔導商会。共有についてはリセットされているので、もう一度設定し直さないとならないようだけれど。それはまあ、追々考える事にするか」


 身支度を終えて一階へ降りていく。

 既にミラージュは親父と一緒にヘキサグラム・日本支部に向かったらしく、テーブルには『朝食は冷蔵庫に入っています、お昼ご飯はガンバ』というメッセージが置いてある。


「あ~、母さんは陰陽府か。それじゃあ、浪人生はのんびりと受験勉強でもしますかねぇ……とはいえ、特例措置対象の確認から先にやってしまった方がいいか」


 魔術が元のように使えるようになった時点で、俺は特例措置対象となる可能性がある。

 というのも、推薦入学の条件の一つに『魔術講習証明所持』というのがあってね。

 こいつが何かというと、ずばり『魂の情報』を所持しているかどうか。

 それの開発者である俺はミスリルカラーの物を持っているので、実は願書受付時に、魔術講習証明所持欄にチェックを入れるだけで、あとは一般教養と実技試験のみで終わるっていう寸法。

 心配なのでネットで一通り確認したり、来年度の願書受付日程などを調べているうちに、気が付いたら昼である。

 

「……さて、今日はどうしようか……と、ああ、先にこれだけはやっておくか」


 すまほを取り出してラインを開く。


『能力回復完了、よろ』


 とだけメッセージを入れる。

 

――ピッ

 ほら、速攻で返事が返って来た。


『えええ、ど、どうやってですか? 取りあえず会いましょう、デートではありませんからね』

『いや、そこはデートして来てもいいんじゃないか? とりまオトヤン、おめっと』

『はぁ、本当に色々と驚かせてくれますわね。深淵の書庫(アーカイブ)で検査させてもらっていいですか? 暇な時間に札幌テレビ城に来てください』

『あ、先輩、私もいきます!!』

『りなちゃん、で~す!! 乙葉先輩、手合わせを』

『りなちゃん、乙葉先輩は病み上がりなんですから、無理させては駄目ですよ、能力回収、おつかれさまでした』 


 うん、本当に楽しいねぇ。

 ということで、午後からは妖魔特区に向かうとしますか。


 〇 〇 〇 〇 〇


――札幌市・妖魔特区

 空間収納(チェスト)から魔法の箒を取り出して、実に久しぶりに大空の旅。

 そして妖魔特区入り口である12丁目ゲート前に着陸すると、入り口を警備している特戦自衛隊の人たちに『魂の情報』を提示して、中に入れてもらう。

 うん、大通十二丁目、十一丁目を包むように起動している結界装置は問題なく稼働しているし、現在結界内部ぎりぎりに壁も作ってある。

 その奥、十一丁目にはもう一つのゲートがあり、俺はそこを通り抜けて妖魔特区の中へと入っていく。後はほら、再び箒を取り出して札幌テレビ城へと高速移動。

 既にテレビ城下には、瀬川先輩と新山さんが待機している。


「おっす、おっすおっすおっす……と、祐太郎は今日は欠席?」

「今日は朝から、アルバイトで築地慎太郎議員の後援会事務所に行ってますわ。それで、さっきのLINEですけれど、本当に戻ったのか調べさせてもらいますわ。深淵の書庫(アーカイブ)、発動」

「それじゃあ、魔法を使うね……診断(ディアグノーシス)……って、嘘、本当に力が戻っているの?」


 深淵の書庫(アーカイブ)の中で先輩は頷いているし、新山さんも口元を手で押さえて泣きそうな顔になっている。


「見た通り。亜神でもないし、能力の大幅ダウンはしているけれど、元に戻ったと言っても過言じゃない」

「でも、亜神じゃなく『魔導神の眷属』っていう状態ではあるようですわ。魔術はどれぐらい?」


――ヒュンッ

 軽く右手を振り、力の楯(フォースシールド)を発動する。

 以前のような透き通った楯が出現し、俺の右半身をガードしている。


力の楯(フォースシールド)に続いて、十二式力の矢(フォースアロー)を待機状態で」


――シュシュシユンッ

 俺の周囲に十二本の力の矢(フォースアロー)が浮かび上がる。

 まあ、全て神威を魔力に変換して生み出したものだけれどね。

 感覚的に、俺の体内の魔力回路は神威回路に作り変えられている。

 とはいえ、感覚的には使えているので問題はない。


「……うわぁ、前よりも術式が綺麗になっていますね。100%神威っていう感じですよ」

「新山さんなら神威は感じられるからわかるでしょ? ということで」


――パチン

 指を鳴らして力の楯(フォースシールド)力の矢(フォースアロー)を消滅させる。

 こうなると、色々と試してみたくなってくるじゃない?


「次は……あれ、いけるかな? ちょいと試してみるわ」

「はぁ、ほんと、力が戻ったと思ったら、色々と試し始めるなんて……乙葉君らしいと言えばそうですけれど」

「まあまあ、あれが乙葉君ですから」


 呆れている先輩と、肯定してくれる新山さん。

 ほんと、力が戻って来るっていうのは、嬉しいんだけれどね。

 そのまま精霊樹の近くに立ち、そっと手を添える。

 そしてゆっくりと体内の神威を右手に集めて、精霊樹にちょっとだけ注ぎ込んでみる。


――ヒュンッ

 うん、ちっとの筈が一気に吸い取られていったわ。

 だから慌てて手を離すと。今度は思念の創造球(マギ・スフィア)を両腕に起動する。


「えぇっと……24の神器の力で……鍵よ、今こそ姿を現せ……」


――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 そう叫びつつ、イメージするのは転移門を開く鍵。

 すると俺の右手に鍵の形をした、透き通った魔力の塊が形成される。


「はぁ……俺が作ったことのある魔導具なら、神威により作り出すことが可能……と。それじゃあ、今こそ開け、異界の門っ」


――ガシュゥゥゥゥ

 そう叫んで鍵を差す仕草をして見せる。

 すると、俺の目の前に門が生み出された。

 よく知っている、鏡刻界(ミラーワーズ)へと繋がっている門。

 その両開き扉の鍵穴に鍵を突き刺し、グイッと捻ってみる。


――カチャン

 ほら、鍵も開いた。

 あとは扉が開けるかどうか……。


「んんん、乙葉や、そんな所で何をしておるのじゃ?」


 いざ、扉を開こうとしたとき、背後から白桃姫の声が聞こえてくる。

 その向こうで新山さんと瀬川先輩が、心配そうな顔でこっちを見ているのは何故だろうか。


「あ、実は能力の一部が戻って来てね、鏡刻界(ミラーワーズ)に繋がる扉が形成できるかどうか試していたんだわ」

「たわけが。いくら力が戻ったとはいえ、そう簡単に転移門など作れるはずが……作れているのぅ」


 ポカーンとした表情でこっちを見ている。

 そしてツカツカと近寄ってくると、目の前に完成した転移門をペタペタと触り始めた。


「ふむ。乙葉ゆかりの国ということは、ラナパーナ王国か。感覚的には、その城下町に開くという感じじゃが、今、開くのかや?」

「ちょっとだけ。どんな感じか、確認したくてね」

「それなら止める必要もあるまいて。ただ、ここでの行動は全て、あそこから監視されていることも忘れんようにな」


 白桃姫がクイッと手にした傘で、大通二丁目を差す。

 そこには特戦自衛隊の妖魔特区ベースキャンプが接地されていて、俺の方を監視カメラかに何かでじっと見ている。


「ま、見られているからといって、今更感満載ですけれどね。それじゃあ、ちょいとだけ……」


 そーっと扉部分を開いてみる。

 そしてそこから覗き込んでみると、いつか見たラナパーナ王国の城下町の風景が、変わる事無くそのまま見えていた。

 うん、能力的には衰えているっていうのは理解できる。

 神威なんて半分ぐらいまで下がっているんじゃないかなぁ。

 それでも使えるっていうのは、さっきの話にあった魔導神の眷属っていう称号のおかげだと思う。

 称号? あれ、称号だよね?

 まさか種族じゃないよね? 後で確認してみますか。


――バタン

 そして扉を閉じてみると、転移門自体がスッと消滅した。


「ふむ。いまの感じじゃと、かなりいい線に迄戻ってきてるな。それで、例のあれは戻っているのかや?」

「例のあれ……ああ、戻っているね、普通に使えるようになっているわ」

「そうか……それこそが、乙葉の力の源じゃと思っていいじゃろ。では、妾はノンビリと怠惰しているのでな、あとは好きにせい」


 そう告げてから、白桃姫はアイテムボックスを開いてビーチベッドとパラソルを取り出し、怠惰モードに突入。という事で、俺は新山さん達の近くに戻ると、とりあえずサムズアップ。

 

「ふぅ。どうやら問題は無さそうですわね」

「でも、あまり無理しないでね。病み上がり……っていえばいいのかなぁ、とにかく、いきなり能力全開じゃなく、一つ一つできることからコツコツと」

「了解さん。さて、次は……」


 とりあえず、空間収納(チェスト)からブルーシートを取り出して広げると、そこでカナン魔導商会を起動。ウォルトコ経由でハイローラーという定番メニューとジュースを購入し、新山さん達と一緒にちょいと遅めのランチタイムに突入。

 さて、午後はあまり無理しないで、明日は異界門のチェックでもやりますかねぇ。

 そんなに急ぎという事でもないような気もするし、でも急がないとやばそうな感じもするし。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハイローラーは焼いても美味しい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ