表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第九部・終わりの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

526/591

五百二十六話・満身創痍、いつも柳の下に泥鰌は居らぬ(緊急事態? 対処方法、なし!!)

 白桃姫に頼まれて、魔術研究部一同の召集が行われまして。

 時刻は夕方の十七時半、大学生の美馬先輩と高遠先輩は部活とかで参加できないそうで、いつものメンバーが妖魔特区に集まってきましたわけで。


「おお、皆の衆、集まって貰ってすまぬな。緊急事態じゃ」

「まあ、そうでなければ白桃姫さんが召集を掛けることはありませんからね。それに、何処で話を聞きつけて来たのか、忍冬警部補と要先生も来ていますけれど」

「むしろ説明の手間が省けて都合がよいわ。ということで、このの場にいるのは雅と小春、築地と乙葉、りな……ちゃんと紗那、そして退魔官が二人と……うむ、では説明するぞ」


 修復された札幌テレビ城下の広場で、ぶっとい丸太をぶった切った一枚テーブルの周りに集まった俺たちに、白桃姫が話を始めたのだが。


「さて、では簡潔に説明するか。災禍の赤月が再始動した。現状では、あと300日前後ですべての月が重なり、魔力枯渇現象が発生する。それで、現在はこの地球の霊脈から魔力を吸い出した精霊樹が活性化し、周辺環境の改変を開始している……ついでに、いくつかの精霊樹は完全活性化し、おそらくじゃが世界の転移現象も発生すると妾は睨んでおる」

「……すまないが、もう少しかいつまんで説明してくれるか?」


 忍冬警部補が手を上げて、詳細説明を求めている。

 まあ、俺たちにしてみれば前半部分は分かっていたこと、ただし後半の部分、特に『世界の転移現象』については理解不能なんだけれど。


「そうじゃな……では、これを使って説明しようか」


 そう告げながら、アイテムボックスから地図を二枚取り出す。

 まあ、何処にでもある世界地図だけれど、それを一枚だけ天地をひっくり返して重ねると、適当な大きさに丸くくり抜いていく。

 

「この上の地図が鏡刻界(ミラーワーズ)で、」こっちが裏地球(リヴァース)だと思え」


 白桃姫は二枚の地図を並べつつ、説明を続けている。

 俺たちの目の前には、丸い穴が大量に開いた地図が並んでいるだけで、その横にくり抜いた地図が置いてある……って、ああそういうことか。

 

「そして、転移現象とはすなわち、二つの世界の一部が丸々入れ替わることになる。このようにな」


 そう説明してから、白桃姫は地図の横にあるくり抜いた部分を適当に填め込んでいく。

 ドイツの部分に突然丸いアメリカ部分が嵌っていたり、逆に海の真ん中にブラジルが嵌っていたりと、とにかく地形がめちゃくちゃである。


「……うわぁ。これって以前、使徒とやらの襲撃の時にも起こっていたよな? ほら、水晶の杜と太平洋が入れ替わった奴」

「ナイスだ祐太郎、ということでファイナルアンサー?」


 そうだよ、あの使徒攻防戦の時にも起きた出来事だよ。


「うむ、そもそも、あの事例はテストケースであった可能性もある。そして、霊脈から魔力を吸い出し活性化した精霊樹が、土地ごと転移する事象が発生する。これはつまり、二つの世界が一つに重なりつつあるということに他ならない……」

「そして世界が混乱し、裏地球(リヴァース)鏡刻界(ミラーワーズ)が完全に重なったとき……災禍の赤月は完成し、この世界から魔力が消滅する……ということか」

「そんなことになったら……大変じゃないですか!! 魔族は魔力がなくては死んでしまうのですよね?」

「築地と小春の言う通り。つまり、いよいよ伯狼雹鬼(はくろうひょうき)も本格的に活動を開始した。なにか焦っているようにも感じるが、それはまあ良い。問題は、霊脈の流れを、やつらに完全に支配されているという事じゃよ」


 うわぁ。

 それってかなりやばくね?

 ってあれ、ちょっと待って?


「なあ白桃姫……水晶柱ってさ、その支配権は俺と白桃姫が持っていたはずだよな? それってどうなったんだ?」

「支配されたらしき霊脈が水晶柱に流れ込み、精霊樹となった……その際に、がっつりと上書きされおったのではと推測できるが」

「んんん、それってさ、俺が精霊樹に触れて、支配権を書き換えるっていうのは?」

「その直後に、また精霊樹に流れ込む霊脈によって書き戻される。ということで、やらねばならぬのは、霊脈の支配権を取り戻すことなのじゃが」

「それは、私たちでは不可能……ということよね?」


 いつの間にか深淵の書庫(アーカイブ)を起動していた瀬川先輩が、眼鏡をクイッと上げつつ問いかけている。


「先輩、それってどういうことですか?」

「単純な話として、霊脈って、私たちの眼には見ることができないのよ。しかも、この地下何十キロ、何百キロにな存在するかもわからない存在なの。それをどうやって探し、接触することができるのか……ねぇ、例えば乙葉君の持つ秘術で、それって可能かしら?」


 先輩が敢えて秘術(・・)って言ったという事は、それは【聖徳王の秘術】に間違いはない。

 そしてそんな都合のいい秘術は存在しない。

 つまり、霊脈を探し出し、そこに触れられる存在でない限りは、世界はこのまま破滅に進み始める。

 そして300日後、全世界に封じられている魔族が復活する・って、そいつらも消滅するんじゃね?


「阿呆が。封じられている存在すべてが魔族である訳がない。それこそ伝承に存在する邪神といったたぐいの上位存在も目覚めるに決まっておろうが。この世界に、一体どれだけの伝承が存在゜しておると思っている?」

「ああ、そういう輩ね。うん、最悪だわ」

「ということで忍冬や、この件をよそに報告するもしないも好きにせよ。ただ、現状では、この世界は間違いなく滅ぶ。新年を迎えることなく……ということじゃな」

「そ、そんなバカな……」


 うん、忍冬警部補も要先生もそう考えるよね。

 俺もそう思っているから、間違いはないと思うよ。

 なんというか……久しぶりの絶望感だよ。

 でも、そんな状況で、どうして瀬川先輩は深淵の書庫(アーカイブ)を操作しているの?

 それに余裕のようなものも感じるけれど。


「……それで雅よ、どうにかできるかや?」

「今、崑崙八仙のパールヴァディさんとアクセスしました。深淵の書庫(アーカイブ)の本来の力、星の地脈と霊脈を制御するための解除コマンドを入力していますが……」

「「「「「「なんだって?(ですって?)」」」」」」


 深淵の書庫(アーカイブ)の能力って、超電算能力じゃなかったの?

 なんでも解析できるスーパーコンピューターじゃなかったっけ?


「……うん。最後のマスターコードが書き換えられてしまっていて、別のコードが必要なのですけれど。それについては、私はなんとなく誰が持っているか分かりましたわ……」

「え、先輩、それってまじなの?」

「ええ。以前、パールヴァティさんと白桃姫さんと一緒に、この星の霊脈にアクセスすることが出来たのですけれど……今は、支配領域が書き換えられてしまっていて、私でもアクセスすることはできません」

「付け加えるなら、以前は妾も雅とリンクして、地図として浮かび上がらせることが出来たのじゃが……それすら書き換えられてしまっていてな。それで雅や、別のコードは誰が持っておる?」


 そう白桃姫が問いかけると、瀬川先輩は忍冬警部補の方を向いて、一言。


「忍冬警部補、大至急、御神楽様との謁見をお願いします」


 その一言で、俺もすべてを理解した。

 以前、使徒攻防戦の際、おれは御神楽さまの儀式により不可思議な力を得ている。

 そして俺と先輩は龍泉洞という場所に赴き、そこで噴き出している龍脈で、あることが出来た。

 あの場所に向かえば、もっとより詳しい情報が得られる。

 そして先輩ならば、そこから霊脈にアクセスし、敵性存在から霊脈を取り戻すことができるのではないか……。


 よっし、すべての道が一つに繋がった……と思う。

 あとは御神楽さまの許可を得るのみ!!

 さあ忍冬警部補、急いで連絡をプリーズ。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ