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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第八部・狂乱のアメリカ

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第五百十八話・(怒りに我を忘れてはいけないよ)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。

 現在の状況。


 伯狼雹鬼(はくろうひょうき)の身体から噴き出した黒い霧が、まるでポルターガイストのように苦悶の表情を浮かべて苦しんでいた。

 そして伯狼雹鬼(はくろうひょうき)本体も呻き苦しみ、この位相空間から転移でどこかへと逃げ去ってしまった。

 そして残った黒い霧を吸い込み、マッシブ・新山がさらにハイパー化して、暴走を開始。

 あふれ出す力が制御できず、この位相空間にさえ亀裂を走らせ、内部から破壊しようとしている。


 そして、その光景を冷静に見ている俺。


「……って感じで、ナレーションが聞こえてきそうだよなぁ」


 ぶっちゃけよう。

 今のこの状況に対応するためには、こいつを殺さないとならないんだけれど。

 え、人間を殺すのかっていう葛藤がまた、心の中を駆け抜けるんだけれどさ。

 今の状況で、この化け物を無傷で止める手段なんてない。

 それなら、やるしかないんだよなぁ。

 ああっ、こんな時に破壊神魔加護でちょちょいとどうにかできたら最高なんだけれど、そもそも破壊神マチュアの加護って、『ネット通販スキル』なんだよ。


「ウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ」


 マッシブは巨躯を制御できないのか、肥大した腕で周囲の壁を殴り始める。

 そのついでに俺にも机やら椅子やら、建物の壁面やらの砕けた破片が超高速で飛んでくるんだわ。


「あっぶねぇわ、力の楯(フォースシールド)っっっ」


――ゴガゴガゴグワシャァァァァッ

 うん、大量の破片を受けて力の楯(フォースシールド)が砕けるんだわ。

 その都度、場所を変えて力の楯(フォースシールド)を展開、いいかげん残骸も壁も無くなるまで持久戦に持ち込むしかないんだよなぁ。


「カナン魔導商会……と、何かこの窮地を脱する武器……は、ないよなぁ、そうだよねぇ」


 魔導具の類に武器は存在しない。

 むしろ普段使いに便利な日用品の魔導具しかないんだわ……って、あれ、この魔導自自転車ってなんだ? 超小型魔導ジェネレーターの開発に成功? はぁ? いつのまにそんなことになっているんだ?

 

「ええい、使えん、使いたい武器がないっ……破壊神マチュアよ、我にこの場で適切な武器を授けたまえっっっっ」


 おもわず走りながら叫んでみたわ、叫ぶだけなら無料だからさ。

 すると。


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ

 俺の右手に魔力が凝縮し始めた。

 そして一瞬で姿を変えると、俺の右手には『ミスリル製ハリセン』が出現したわ。


「ちっがうから、これって空間収納(チェスト)にしまってあったやつだから!! こんな状況で化け物相手にハリセンでどうにかできるなんて誰も考えないから!」


 走りつつ飛んでくる瓦礫を躱し、空間収納(チェスト)にミスリル製ハリセンを放り込む。うん、やっぱり破壊神の加護ってカナン魔導商会しかないわぁ。


「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 ドコドゴッと瓦礫をはじきつつ、マッシブが俺に肉薄してくる。

 いや待って、ここじゃもう無理だから、こんな狭い部屋……もとい、今は左右の壁まで吹き飛んでとっても広い大部屋になっているけれどさ、足場は悪いし空間のあちこちが砕けて黒い空間が広がっている場所でなんて戦えないから。


「……しゃーないか……」


 両足に聖霊力を蓄えて、筋力を上昇。

 そのまま廊下に飛び出すと、建物の廊下を全力疾走。

 いや、ここって魔族の能力とか空間魔術で作った位相空間だからさ、望まない存在は内部に入れることはできない筈なんだよ。 

その証拠に廊下を駆け抜けつつ途中途中の扉をぶん殴って開いたけれど、特に人影や気配になんて微塵にも感じていないんだよ。

 つまり、今、この位相空間に存在しているのは俺とマッシブのみ……。

 ん、マッシブの相方がどこかに居た筈になんだけれど、何処にも姿が見えないわ。

 まさか逃げたのか?

 

「ええい、考えても無駄だわ、もうけりをつけるしかないっていうことだよな……」


――ドッコォォォォォォォォォォォォッ

 廊下の先にある両開き扉を蹴り破って外に飛び出す。

 そこはこのofficeの正面入り口らしく、広いフロアに事務用机とかカウンターんが並んでいる。

 その向こうは広いフロアになっているので、そこまで駆け抜けていくと、俺は両手を組んで素早く詠唱開始。


「三経義疏より来たれ、法華が義疏。封じられし収筆より二十五慶の理を開放する……聖徳王が秘術・護国綱の雷撃槍っ」


――ジャキィィィィン

 俺の目の前に雷撃が発生すると、そこに稲妻の形をした鉾が生み出される。

 これは俺の知る魔術系統ではない、聖徳王の秘術の一つ。

 かの聖徳王が残せし『法華経』『勝鬘経』『維摩経』の三経に、韻と印を組みかえて封じられていた国を守るための雷、それを鉾の形に召喚したもの。

 ちなみに実体化しているだけで、俺の体内の真意が高速で削られていくんだけれど。

 これで終わりじゃないんだわ。


――ブゥン

 俺が出てきた廊下に向かって、鉾を水平に構える。


「三経義疏より来たれ、勝鬘経の牙。獅子吼にてかのものに、十大受を穿ち給え……って、来たぁぁぁぁぁぁぁあ」


――ブゥゥゥン……

 鉾の先に、十個の魔法陣が浮かびあがる。

 これにより、対象に十大受というものを穿ち、そのものの悪性を善性に書き替えていく。

 まあ、ぷっちゃけると、これって悪神をも更生させる秘術であり、神体を人の体まで堕天させてしまうことから『神滅の術式』と呼ばれていたらしい。

 そして。


「ウゴブァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 両開き扉をぶち破り、俺目掛けてマッシブが走って来る。

 うん、やっばりオリジナルである俺の因子は欲しいところだよなぁ。

 だが。


「更生しろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


――ビュンッ

 力いっぱい鉾を構え、そして全身の発条(バネ)を利用して全力で鉾を投げ飛ばす。

 すると、展開した魔法陣の中を貫く様に、鉾が高速で飛んでいき。


――ドシュッ

 マッシブの頭を貫いた。

 

「うっは……最後は光の速度で飛んでいったのかよ。流石に光を回避することはできなかったか……ってあれ?」


 頭部に穿たれた巨大な穴を押さえるように、マッシブが両手で頭を抱える。

 そのまま膝から床に崩れていくと、みるみるうちに体が縮んでいった。

 シュウシュウと黒い霧を発し、まるで高熱に焼かれたかのように全身をけいれんさせて床で呻き、広がっているマッシブ。

 やがて、その体が幼稚園児程度まで小さくなったとき。

 神滅の術式は消滅し、そこには小さな女の子が倒れていた。


『ピッ……クローン・乙葉浩介・幼児体。体内から悪業すべてが滋養化された存在。なお、コピー・新山小春の外見を映していたため女性体となる』

「いやまって、この子を俺がどうしろと? そもそも俺のクローンが起こした犯罪だったけれどさ、その犯人って……うわぁ、こいつしかいないのかよ」


 唯一捉えられている筈の一人、そいつが生き証人になってくれると思うんだけれど。

 これで俺の無実って証明できるのか?


――ピシッ・ピシッ……

 そして、マッシブの頭部を貫いた鉾はこの位相空間を『異物』と認識したらしい。

 つまり……。


「うっそだろ、あの鉾ってディスペル能力も持っていたのかよ」


――バッキィィィィィィン

 位相空間が砕け散り、俺は、連邦捜査局ボルチモア支局の一階正面ロビーに出現。

 突然姿を現した俺の姿を見て、あちこちから捜査員とか警備員が駆けつけてきて、銃を構えたわ。

 

「はぁ。つまり、俺はやっぱり、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)の作り出した位相空間に閉じ込められていたっていう事なんだね。いかも、それでいてこの建物自体も結界で包み込んでいたとは、なかなか高度な術式で……あきれて何もいえんわ」


 スッと両手を上げて抵抗する意思がないことを証明すると、俺は再び後ろ手に拘束されました。

 願わくば……親父たち、俺を助けてくれ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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