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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第八部・狂乱のアメリカ

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第五百十六話・魑魅魍魎 、自暴自棄にもほどがある、(互角? いや、そんなはずないでしょうが)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。

 連邦捜査局に連行されて、結界牢の中に閉じ込められて、ついでに魔術封じの手枷も嵌められてなんだかんだとしているうちに、イエムセティが押し込んできて手枷を付けてあげたら、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)がやって来てイエムセティがフッ飛ばされて一触即発で、今そんなところです。


「……っていう感じで、テロップでも流れていそうな状態だよなぁ」

「相変わらず、お前が何を言っているのか理解できんわ。それで、今、ここで我とやり合うのなら、全力で相手をするが」

「へぇ、やり合わないって言ったら、どうするつもりだ?」

「一撃で首を飛ばして神の器を抉るまで」

「はっはっは……どのみち死合う気満々じゃねぇかよ」


 両足に魔力を込めて、高速で間合いを取る。

 つい今しがたのやり取りで理解した、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)は近接戦闘型術師で、狼系獣人。

 それも伝承級のやつだよな。

 そんなやつが、堂々と俺の前に姿を現して神の器を寄越せってか。

 ああ、なんとなく想像がついてきたわ。


「まあ、そういうことだな。ここに連れて来た時点で、殺す予定ではあったからな」

「そうしないと、神の器を欲している奴の存在がやばくなるのか、もしくはあんたの身体が持たないっていうところか?」


 半分は推測。

 そして残り半分は、これまでの情報から考えた、俺なりの結論。

 すると、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)は俺の方を見て、ニイッと牙を剥いて笑っている。


「そうだな、ああ、その通りだよ。災禍の赤月の発動で、魔族はその命が尽き始めている。精神生命体であり、魔人核があるかぎりは不死であった魔族がだ。その命の格ともいえる存在が、災禍の赤月によって無力化され、消滅しようとしているのだからな……」

「それで、あんたも消滅から逃れるために、試製・天球儀を体に取り込み、破壊神の意識をその体に宿した。うん、そこまではもう、理解しているんだわ」


 何故わかるのか?

 それは、奴の身体に同化している天球儀を見たから。

 そして、俺の天球儀に宿っていた誰かの意識が、伯狼雹鬼はくろうひょうきの中に宿る『破壊神の残滓』に気が付いたから。

 つまり、これですべてのピースは揃ったという事。


「よりにもよって、あの使徒のボスまで喰らった挙句、その力を全て自分のものにしているとはねぇ。そのせいで、破壊神の残滓が手に入れた力が膨大になり過ぎて、それを納める器が欲しかった。だから、聖徳王の天球儀を納め、そこに破壊神の意識体を移す必要があった……今のあんた、ただの『破壊神の依り代』でしかないっていうことか」

「ああ……ご名答」


――パンパン

 伯狼雹鬼(はくろうひょうき)が、嬉しそうに手を叩いている。

 まあ、あとは奴をブッ倒して神の器を破壊し、破壊神の残滓とやらを消滅させるだけ。

 そのあとで、災禍の赤月を止めて世界は平和になりました、俺の明るく楽しい大学生活のスタートっていう感じにしたいところだけれどさ。


「さて、そうとわかったらさ、あんたをぶっ飛ばして試製神の器を破壊したいんだけれど、ああ、断るっていう意見は禁止な、俺がやるって決めたから」

「そうだな。我も同意見だ。ただ、貴様はツメが甘い……」


 そう伯狼雹鬼(はくろうひょうき)が呟いた時、奴の後ろに俺のニセモノが姿を現した。

 しかも、半裸にひん剥かれている新山さんを後ろ手に捕まえた状態で。

 しっかりと、魔力封じの手枷まで嵌めているとは、用意周到上等だよ。


「に、新山さんっ……」

「ああ……乙葉君……見ないで……」


 恥ずかしそうに舌を俯き、真っ赤な顔で呟いている。

 体を震わせつつ、後ろ手に掴まれた状態から必死に逃れようと体を揺さぶっているじゃないか。

 

「は、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)っ……卑怯だぞ」

「卑怯……ねぇ」

「ははっ、初めまして、オリジナル。俺の名はハピ、悪いがこの女には人質になってもらったよ。俺の姿を見て心配そうに駆けつけてきたので、ちょっと魔術で意識を支配させてもらってねぇ……ああ、安心しろ、この子は処女だったよ……」

「い、いゃぁ……」


 ハピとかいう奴の言葉に身悶えつつ、体をクネクネと艶めかしく動かす新山さん。

 はぁ。

 いったい、どんな術式を使ったら、女性をああも淫らに洗脳できることやら。

 それも、俺と互角な魔術抵抗力を持つクローン体を。


「……さあ、そこにうつぶせになれ、魔法は使うなよ、この女が大切ならばな」

「……大いなる聖霊よ。我に神威の鎧を与えたまえ……」


 さてと、いい加減、茶番に付き合う気はなくてさ。

 俺ってさ、初めて見た対象は半自動的に天啓眼で鑑定してしまう癖がついていてさ。

 それも、ルーンブレスレットの魔導紳士が消滅してからは、勝手に住み着いている魔皇紋が制御してくれているのよ。

 その魔皇紋が、このニセ乙葉二人が目の前に現れた時に正体を暴いてくれたんだよ。


――シュゥゥゥゥ

 俺の身体の表面に、うっすらと透明の膜が広がる。

 神威を実体化した俺の鎧、以前持っていた魔導鎧・零式とほぼ同じ性能を有しており、しかも制限時間は無限。

 これも修行の賜物っていうところだな。


「き、きさま、どこまでも抵抗するというのかぁぁぁぁ」


――ビリビリビリッ

 かろうじて体に纏っていた衣服が全て破り捨てられ、ニセ新山さんがその場にへたり込んでしまった。うん、なかなかいい演技だねぇ。

 

「いや、抵抗するもなにもさ、その手枷って魔力の制御を乱すものだけれど、新山さんの神聖魔法って神威ベースだから、制御できなくなっている筈はないんだわ」

 

 これははったり。

 だけど、この一言でニセ新山さんが俺をキッ、と睨み返してきた。


「……き、貴様……何処で気が付いていた!!」


 そう呟きつつ、体がゆっくりと変化を始める。

 すげぇ、体組織から大きく作り替える変身魔術かよ。

 きっと、俺の魔導書にもその術式が浮かびあがっているんだろうなぁ、今度、試してみよっと。


「いや、ここに姿を現した時から? この空間ってさ、外界と断絶されていても念話は通るんだわ。そして、ついさっきまで新山さんとは話をしていたところでね。あの直後に攫われたとしても、ここに念話が届いてくるっていうこと、つまり、計画が甘いってこと……なあ伯狼雹鬼(はくろうひょうき)、こんな俺の出来損ないをあつめて、神の器のクローンを作ろうとしていたのか?」


 壁際に背を向けて、ニセ乙葉たちの茶番を眺めていた伯狼雹鬼(はくろうひょうき)に敢えて問い掛ける。だってさ、いきなり新山さんのクローンを連れてきて、それを人質に取って脅してきたときにも、奴はクックッと笑って様子を見ていただけだからね。


「ああ、当初は藁にも縋る気持ちでいたからな。だが、お前があっさりと掴まってここに来た時、計画の変更を余儀なくされたからな」

「へいへい。確かにここに来た時は、俺も罠だったなんて疑っていませんでしたよ。あのイエムセティとかいう奴が襲撃してくるときまではね……なあ、ニセモノの俺たち、もう少し考える力を身に付けろよ。俺だったらどうするっていう予想ぐらいは出来ただろうが」


 トントンと、俺は自分の頭を人差し指で叩きつつ、呆然としているニセモノたちに話しかける。

 だが、その意図を理解したのか、一人は再び新山さんに変化して、ニイッと笑っていた。


「そうだなぁ、確かに、俺はお前の知識と記憶までは完全にクローニングで来ていない。だが、セヌエフは一目見た対象の魂をもクローニングする。だから、今、貴様の前に立っている新山小春は、オリジナルとほぼ同じという事だ……」

「ということ。私の事、攻撃できないよね? この体も記憶も、新山小春そのものだよ……」

「いや、偽者なら殴れるし倒せるけれど?」

 

 そう呟いてから、俺は一歩踏み込んでから魔導体術による拳のラッシュを叩き込む。

 うん、所詮は偽物でさ、いくら完璧なクローンであっても、俺の天啓眼に『セヌエフ・新山小春クローン』っていうステータスが浮かんでいる限り、あんたは偽物でしかないんだわ。

 ついでに、肉親の姿を宿して攻撃の隙を作るとかいう、漫画でよくある展開は、俺には期待すんな。

 オリジナルでない限りは男女平等、遠慮なくぶっ潰すだけ。


――ドドドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴォッ

 拳によるスーパーラッシュ、これも聖徳王の天球儀に納められていた秘術の一つ。

 ああ、敢えて名づけるとしたら、『17条拳法』っていうところか?

 そのまま俺の拳によってフッ飛ばされたセヌエフは、 ハピの真横に吹っ飛んでいった。


「くっ……くっそぉぉぉぉぉっ、足りない、力が足りないんだよっ、ハピ、貴様の身体も借りるぞ!!」

「はぁ? 勝手に正体が露見してフッ飛ばされた挙句、力を貸せだとう? わ、何をするやめろ……」


 うん、フッ飛ばされたセヌエフがハピの身体にスライムのように纏わりつくと、そのままハピの肉体を浸食。そのまま取り込み同化していった。

 実に、先ほどまでの総魔力値の倍、戦闘力も倍ってところか。

 

「さて、そろそろ本気を出さないとまずくないかね?」


 相も変わらず、壁際で俺とセヌエフの戦いを見ていた伯狼雹鬼(はくろうひょうき)

 明らかに、俺の戦い方を観察しているよなぁ。

 そして、俺がこの戦いで弱っていくのを待っているようにも感じられるんだが。

 そんなことを考えているうちに、セヌエフの姿が筋骨隆々の新山さんに変貌したわ。

 いや、これはちょっと……ないわぁ。

 

「まあ、ぶっちゃけると、その体型は可愛くない気持ちが悪い。ついでに一言、俺の好みじゃない……ということで、新山さんの名誉のために、ぶっ飛ばさせてもらうわ」


――シュンッ

 空間収納(チェスト)からフィフスガントレットとセフィロトの杖を装着して、セヌエフを凝視する。うん、ちょいと本気でやらんと、かなりまずそうだわ。

 それじゃあ、前座はとっとと処分して、メインイベントに駒を進めますか。



いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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― 新着の感想 ―
[一言] 自身に痛みが伝わってこないうちに素早くひっこめればダメージが倍になる拳法ですね
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