第四十八話・用意周到、軽んずべからず(用意周到ぐらいが丁度いい)
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さて。
築地晋太郎おじさんの身を守るための魔導具を作成、もしくは市販品がないか、カナン魔導商会で調べることにした。
すでに妖魔を使って何者かが晋太郎おじさんの命を狙ってきていることは明確なので、一刻も早くそれらを渡しておかなくてはならない。
――ピッピッ
『検索結果、対妖魔用兵装というものは取り扱っていません』
カナン魔導商会で検索したけど、相変わらずヒットするアイテムはない。
「検索方向を切り替えますか。ええっと、妖魔のいる世界ではなく、あっちの世界で精神生命体とやらは存在するのか‥‥‥」
以前購入した、カナン魔導商会の存在する世界の魔物図鑑などの書籍を隅から隅まで目を通す。
凄いのは、妖魔と似た生態系を持っている魔族についての表記があること。
そして対魔族用の防具というものも存在しないこと。ガッデム!!
「あ、魔族とかの精神生命体からの憑依をレジストする魔導具はあるのか、これを人数分ポチッてと‥‥‥あとは、何があるかなぁ」
などなどといろいろと調べつつ、手に入れた魔導具や商品がこちらになります。
・レジストリング ×7
・憑依防護リング ×4
・魔力結界の腕輪 ×2
・魔力感知球 ×3
・遠話の宝玉 ×3
・魔石 ×21
・スキルオーブ『コピー』×3
・ミスリルのインゴット ×18
・ミスリルナイフ ×3
・ミスリルソード ×1
問題は、これをどうやって組み合わせていくか。
遠話の宝玉は、それを持つ者同士が如何なる場所にいても会話が可能なもの。
憑依防護リングは、身に着けているだけで精神生命体に変化した魔族の憑依を防ぐもの。
魔力結界の腕輪は、魔力を込めると自分の周囲に直径1mの結界を作り出す。
魔力感知球は、周囲に高魔力反応が出たり近づいてくると反応する。
魔石はまあ、魔導具作成には必要な核パーツだし。
そしてミスリルの武具。
これらはサイドチェスト鍛冶工房で購入した。
これらを部屋中に並べて、どっかりと座り込んで考える。
「‥‥‥晋太郎おじさんの貰ったお中元、査定でチャージした金額の半分しか使っていないんだけどなぁ。もうすこし数が欲しいところだけれど、まあ、まずは晋太郎おじさんの身を守るものから作っていくとしますか」
ということで、レジストリング7つと憑依防護リング1つ、結界の腕輪1つ、魔力感知球1つ、遠話の宝玉1つをすべて融合化する。
――キィィィィィィィィィィィィィン
錬金術用魔法陣の中ですべてが一つになるのだけれど、混ざり合うと効果が失われてしまうので慎重に融合する。錬金術の世界では、混ざるのと融合は別物なんだってさ、どういう理屈なのかしらんけど。
同時にミスリルインゴットを細工で加工して、それぞれの魔導具の核同士をミスリル鋼糸で接続。
さらに魔石も追加し、周囲の魔力を吸収するギミックも付け合せる。
よしよし。
これで魔力が少ないおじさんでも、装備しているだけですべての効果を発揮できるぞ。
「問題は形状かぁ。普段使っていて、それでいてどこに持っていっても問題のないものかぁ‥‥‥」
女性ならアクセサリーという手もあるんだけれどさ、男性の、それも壮年の人が身に着けているものなんて知らないよ。
衣服にすると風呂に入っていたりと裸の時に襲われたらたまったものじゃないけれどさ、かといって裸の時にも身に着けていておかしくないものかぁ‥‥‥
「ん~。面倒くさいから、おじさんに直接聞いて考えることにするか」
〇 〇 〇 〇 〇
早朝。
まさか朝から妖魔の襲撃があるなんて、俺は予想もしていなかった。
朝食を食べていた時、突然インターホンが鳴った。
正確にはインターホンと一体化になっている通信機から、玄関横にある守衛室からの緊急コールが鳴り響いた。
親父の仕事柄、いろいろと狙われていることも少なくなかったために警備については厳重になっているのだが、その守衛室からのコールとなると尋常でないことがうかがえた。
案の定、正門を突破してきた二人組の人物は、建物の中で待機していたSPをも倒して家の中までやってきた。
慌ててゴーグルをセットして調べたところ、案の定妖魔二人組が侵入してきたのが判った。
「築地晋太郎さーん。隠れていないで出てきてくださいよぉ~」
「お待たせしました、死を運ぶ宅急便です!!」
全身を包帯にまかれているミイラ男と、腕が6本もある阿修羅のような妖魔。
それが玄関を破壊して室内にやってきた。
最悪なのは、親父はまだ寝室で逃げる場所としてはあまりにも不利な場所にいること。
なので俺は急いで親父の部屋まで走ると、親父を逃がすべく何か方法を探した。
「祐太郎、警備から連絡が来たが暴漢は何者だ?」
「妖魔が二体。急いで逃げるぞ」
「いや、お前は急いで逃げなさい。忍冬師範でも誰でもいい、第6課に繋がるなら連絡を!!」
すぐさま逃げるのが正解なのだが、親父は隣の書斎に走っていくと、壁に掛けてあった日本刀を取り出して廊下を向かってくる妖魔に向かって走り出した!!
「ふん、妖魔がここに来ることぐらいはお見通しじゃよ!!」
「それはそれは。それでは契約にのっとって、貴方の命をもらい受けることにします。まあ、強欲に見つかる前でよかったですねぇ」
「まったくだ。お前たちが強欲の部下ではなくて助かったぞ!!」
そう叫ぶや否や、親父は日本刀を構えて妖魔に向かって走り出す。
まさかの親父の反撃に、妖魔の奴らも身構えるのが遅すぎた。
――ズバァァァッ
一撃で6腕の妖魔の腕の一本を切断したが、それで刀は折れてしまった。
いや、その刀って何?
妖魔って、俺たち物理世界の攻撃は無効化するんじゃなかったか?
「‥‥へぇ。退魔法具とはまた、随分と懐かしい代物を‥‥」
「祐太郎逃げろ!! ここはわしが食い止める!!」
「は、はぁ!! 何を馬鹿なこと言っているんだよ!!」
素早く闘気を身に纏って、妖魔と親父の間に飛び込むと、詠春拳で妖魔たちの攻撃をさばきつつ、親父が逃げる隙を作った。
「階段は奴らの後ろか、窓から逃げるぞ!!」
親父を寝室に押し込んで扉を閉める。
すぐさまスマホでlinesを開くと、片手でオトヤンに連絡を入れることにする。
どうやらオトヤンのほうでも何かあったのか、少し前にオトヤンからも連絡が入っていた。
『惜しい。今まさにバトルなう』
今はそれだけを入れるのが精いっぱい。
親父は窓を開いてベランダから出ようとしているが、なぜか窓が開かない!!
「局地結界‥‥いや、窓の外に包帯がみっしりと絡みついていて開かぬ!!」
「なんだって!!」
――ガチャガチャ
ノブをがたがたと回す音がする。
ちょうどlinesもオトヤンが音声に切り替えてくれたらしい。
『‥‥‥ユータロ俺だ今どこだ』
「二階だ、親父の部屋にいる!!人型妖魔がフベッ‥‥‥」
扉の向こうから、突然一振りの剣が突き刺さった。
それは俺の右手に直撃すると、スマホごと俺の手を貫通した。
さらに追撃で突き出された剣は俺の右肩を貫通、右腕が使えなくなってしまったじゃないか!!
――ミシミシ‥‥バギッ
扉が破壊され、妖魔が入ってくる。
やばい、窓が使えないとなると袋のネズミだ。
とりあえず親父を後ろに下げて、俺が楯になるしかない‥‥近くに第6課がいるはずだから、オトヤンが連絡してくれていることを祈るしかないか。
‥‥‥
‥‥
‥
うん。オトヤンのチートについては、予想のななめ上にあったことが判ったわ。
俺の渾身の勁砲でも倒せなかった妖魔を、一撃のもとに粉砕していた。
ま、まあ、それぐらいの差があることは予想もしていたんだけれど、正直俺も真面目に特訓したほうがいいだろうな。
どう考えても、この先は妖魔との戦いに突入するのが目に見えてきたから。
〇 〇 〇 〇 〇
「‥‥ヨシ!!」
おじさんの家に行って希望を聞いてきた。
ネックレス型に形状を変化させて『縮小』処理をして完成。
・守護のネックレス
レジスト効果6種(未登録)
憑依防護、結界生成、魔力感知、遠話
魔力自動回復
うん。
恐ろしいほどに高性能。
可能ならこれをみんなに配りたいけど、レジストリングが足りない。
そこであれですよ、俺の錬金術のスキルを使うのですよ。
「えぇっと、量産化の魔法陣を生成して、ここにレジストリングを置いて‥‥」
材料にはミスリルインゴットと魔石。
実はこれだけでレジストリングは作れる。
作れる‥‥はず。
俺の知識の錬金術データベースがそう言っている。
ならば作るしかないでしょ、ということですぐさま魔法陣を起動。
‥‥10分後、魔石16個と引き換えにレジストリングが4つ完成しました。
でも、これって失敗なのよ、大成功なら魔石一個で間に合うのよ。
「‥‥しゃーないか。残りの材料でレジスト効果なしのが二つ作れるから、二つ作って‥‥と、まてまて遠話の宝珠は俺も持っていないとだめだから、残った材料はそのままで様子見するしかないか」
それでも遠話の宝珠の一つは俺の賢者の指輪に融合化しておく。
おじさんからの連絡が届かないとまずいでしょ?
‥‥‥
‥‥
‥
「という事で、これがおじさんの身を守る『守護のネックレス』だから、大切に身に着けて‥‥と、ちょっと待ってて」
おじさんに完成したネックレスを渡す前に、おじさんの魂とネックレスを紐づけておく必要があるよね。そうすれば、奪われたり無くしたときも手元に戻ってくるから。
すぐさま魂登録を発動すると、晋太郎おじさんの魂と守護のネックレスを紐づけた。
そして一通りの説明ののち、祐太郎に頼んで使い方のレクチャーをお願いしたよ。
いくら装備が良くてもさ、瞬時にそれを使いこなせないともったいないからね。
俺?
俺はほら、強力な錬金術の連続で一気に魔力が消費しきったでしょ?
つまりあれだよ、ふらふらした足取りで自宅に戻ると、そのままベッドでバタンキューさ。
〇 〇 〇 〇 〇
第6課は動けない。
動けないのなら、動けないなりの対応をしてみる。
朝一番でターゲットである乙葉浩介の家に向かうと、忠告として手紙を放り込む。
これで彼の登録している組織が動くかどうかはっきりするわ。
あらかじめ潜入調査をしている要巡査にも連絡を入れてもらい、残った二人のターゲットの監視をお願いすることにしました。
結果として、乙葉浩介は単独で上級妖魔・抜魂王を一体殲滅、築地祐太郎と二人掛かりで上級妖魔・六腕鬼を消滅させました。
しかも、組織とかそういうバックアップなしで、単独での撃破です。
霧散化など許すことなく妖魔核を破壊しての討伐には、流石の私でも身震いしました。
ここにきて、私は認識を改めることにしました。
現時点での彼らの背後にあると思わしき組織はなく、フリーランスの対妖魔術師として認める方向に舵を切りなおす必要があります。
「さて、そろそろ呪符の効果も切れるわね」
偵察用に飛ばしていた小鳩符も魔力が切れたので消滅。
もう一度札を作るためには12時間のインターバルが必要になるけれど、ハトの目を通して対象者たちを監視できるのは都合がいいわね。
どうせ、あの二人にはばれているでしょうけど、上級妖魔を相手している時にこっちにまで手が回らないでしょうからね。
さて、近くに止まっているあの黒塗りのセダン、どうやらどこかに行ってしまうようですけど。
ナンバープレートが未登録になっているので裏稼業の人たちで間違いはないですね。
とりあえず、ここは二人に任せておいて、あの背後の人たちを追いかけることにしましょう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
シリアス展開ではネタを挟む余力はない‥‥といいつつ今回は三つ。




