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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第四十七話・頭髪上指で万骨枯る(妖魔襲撃)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。

 いゃあ、昨日はすごかった。


 何が凄いって、ステージの後であれだけ警戒していてもさ、何も起こらなかったんだよ。

 訂正、俺はクラスメイトによって教室まで拉致られて、ワンマンショーをやらされましたとさ、めでたしめでたしめでたくないよ。


………

……



「それで、なんで朝っぱらから第六課の人が居るのかなぁ」


 早朝7時。

 朝飯を食べている最中になった玄関ベル。

 カメラで確認すると、井川遥巡査長が立っている。

 取り敢えずインターホン越しに話をしようと思ったけど、ポストに何かを放り込んでそのまま帰っていったようなので、取り敢えず先に食べかけのご飯を食べてからポストを確認。


「ん? 手紙か。第六課への勧誘だったら空間収納チェストの肥やし確定ね……」


 食後の一休みかーらーの、手紙の確認。



『 北海道を拠点とする妖魔が暗躍を開始しました。

  重要人物が狙われていますので、注意してください 』 

 

――ブワッ!!

 乙葉が目を通したのち、手紙は一瞬で燃え上がり消滅する。

 魔法による炎か何かなのだろうが、レジストリングをはめている浩介は火傷することもない。


「うをっち!! なんなんだ一体‥‥‥と、それよりも、妖魔が動き始めたねぇ‥‥‥とりあえずみんなにlinesで連絡を入れておきますか」


 すぐさまlinesのグループチャットで今の文言を送信しておく。

 まあ、気を付けていればどうにかなるというものでもないので、今日あたりからは新山さんと瀬川先輩にはできるだけ一人にならないように注意しつつ、カナン魔導商会で便利そうなものを探すことにしましょうそうしましょう。


――ピピッ

 すぐさまlinesに返答が届く。 

 新山さんと瀬川先輩は十分に注意するという返答が来たので問題はないだろう。

 そして祐太郎からの返答は‥‥‥。


『惜しい。今まさにバトルなう』

「おいおい、随分と余裕があるなぇ‥‥‥じゃないわ!!」


 すぐさま着の身着のままで家から飛び出すと、祐太郎の家の塀を軽くジャンプして飛び越える。

 監視カメラとかがあるので不審者扱い間違いはないだろうけれど、緊急事態だからいいよね、問題ないよね、いいんだよ。


 日本庭園風の庭を駆け抜け母屋へ向かう。

 

「‥‥‥ユータロ俺だ今どこだ」

『二階だ、親父の部屋にいる!!人型妖魔がフベッ‥‥‥』


――プツッ

 あ、スマホ破壊されたな。

 まあ二階というのなら、いいでしょうショートカットだよ。

 加速をつけてちょいとジャンプ。

 ちょうど祐太郎の部屋のベランダに着地したので、そこからお邪魔しまーす。


――ドゴォッ

 部屋に入った瞬間にも、向かいの部屋から大きな音が響いてくる。

 それなら手加減は無用と、部屋から飛び出しておじさんの部屋まで一直線。

 あけ放たれていた部屋に飛び込んだ時、ベッドを挟んで反対側で拳を構えている祐太郎と、その背後で血まみれになっているおじさんの姿。

 しかも祐太郎は右腕がだらりと垂れたままピクリとも動いていない。

扉側、つまり俺の正面には二体の人型妖魔‥‥‥だよなぁ。

 全身が包帯に包まれたミイラのような奴と、腕が六本ある阿修羅のようなやつ。

 しかもどっちもロングソードを構えているじゃないか。


「‥‥‥なんだきさまは」

「ターゲットじゃないが、まあ、餌としては十分すぎるほどうまそうじゃないか!!」


 ミイラ男が俺に向き直って手を伸ばしてくるが、それは悪手だ。


「‥‥‥力の楯っっっ」


――キン!!

 静かに第三聖典の力の楯を発動すると、俺の目の前に透き通った楯が浮かび上がる。

 それによってミイラ男の手は阻まれ、俺に触れる事すらできない。

 うん、自宅でこっそりと練習したり、甲乙兵で訓練した甲斐があるよ。

 予想外にスムーズに発動すると、妖魔を目の前にしても俺の精神は動揺することもない。


「貴様、それは一体なんだ?」

「なんだかんだと問われたら、答えてやるのが世の情け。魔力125倍、風の弾丸っっっっ」


 右手をピストルのように構えてミイラ男の頭を狙う。

 だが、それがどうしたと言わんばかりにへらへらとミイラ男は笑っているが。


「バンテージ!! 躱せっっっっ!!」


 阿修羅男が叫ぶがもう遅い!!

 高速詠唱も使用した125倍の風の弾丸をくらえっ!!


――キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン

 固体化した小さな竜巻。

 それがドリルのようにミイラ男の頭部に突き刺さった。

 そのまま高速回転して頭部を貫くと、その一撃でミイラ男は霧散化し消滅した。


「頭部に核があるっていうのは偶然なのか? それとも人型妖魔の核は頭なのかい?」


 煽るスタイルで阿修羅男に問いかける。

 すると、阿修羅男は全身を真っ赤に輝かせ震え始めた。


「き、貴様ぁぁぁ。いいだろう、危険度8の魔術師として認定してやる。貴様の生き胆をくらえば、俺はさらに強くなれるだろうさ!!」


――シュシュンツ

 一瞬で間合いを寄せてくると、両手に構えたロングソードで切りかかってくる。

 だが甘い、日本家屋でそんな長い武器を使うと、天井に引っかかって動けなくな‥‥‥あれ?


――スパァァァァッ‥‥‥ギギンッ

 天井を紙でも切るかのように切断し振り抜き、俺の力の楯に向かって連撃を叩き込んでくる。

 だが、力の楯は自動的に連撃を受け止め、そして消滅した。


「ぬおっ!! お、俺の力の楯がぁぁぁ」

「ふはははははっ、これで終わりだっ!!」

「お前がな!!」


 阿修羅男の背後で、祐太郎が勁砲の構えを取る。

 素早く背中めがけて掌底を叩き込むと、そこから勁砲を体内にむかって叩き込んだ!!


――カッコォォォォォン

 小気味良い金属音と同時に、阿修羅男は弓ぞりになって俺のほうに飛んでくる。

 それなら、俺もやるしかないでしょ?


「威力125倍かーらーの、魔力増幅も加えた風の弾っっっっっ」


 右手の中に作り出したドリル状の竜巻。

 それを阿修羅男の心臓の部分に向かって叩き込む!!


――ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ

 高速で回転する竜巻が阿修羅男の体を削り取り、貫通した。


「ぐはあっ!! こ、こんなの聞いていないぞ‥‥‥魔術師の護衛はいないって言っていたのに、あの女騙しやがったなぁぁぁ」


 フラフラの体で俺たちから離れる阿修羅男。

 もしも頭部に核があるのなら、まだ生きていて動けるし霧散化して再生も可能だろう。

 だが、全身のあちこちが霧のように散り始め大気に溶けていく。

 確実に核が破壊されたのだろうと、俺は確信した。


「あ、ちょいと済まないけど、あの女っていうの教えてくれないかな?」

「‥‥‥いいだろう。どうせ俺は消滅するからなぁ。そこにいる築地議員を始末しろと命じたのは、りん‥‥‥」


――バシュゥゥゥゥッ

 名前を告げる途中で、阿修羅男は霧散化消滅した。


「‥‥浩介くん済まない、助かった」

「オトヤン、本当に感謝するわ。もう間に合わないかと思った」


 急ぎ祐太郎は収納ポータルバッグから治療薬を取り出して親父さんに飲ませていく。

 その次に自分も飲むと、どうにか腕だけは回復したようである。


「しっかし、ユータロも折れた腕でよくもまあ、勁砲なんて打ち込めたなぁ」

「やらないとやられる。さすがに一対二だと無茶すぎるけど、一対一なら何とかなるわ」

「まあ、ぶっちゃけるとこれが本当の意味での初陣のようなものだからなぁ。以前は憑依された人間相手だったり、霧状妖魔だったけれど、本当に人魔と呼ばれているタイプ相手にはこれが初めてだからな」


 近くにあった椅子に座って、今後のことを考えてみる。

 今回、第6課からの手紙がなかったら、祐太郎とおじさんは殺されていたかもしれない。

 いや、最悪祐太郎は生き残ることが出来たかもしれないけれど、おじさんが妖魔に殺されたなんてことになったらトラウマどころか祐太郎はどうにかなってしまっていたかもしれない。


「はぁ。今回ばかりはあのねーちゃんに感謝するしかないか」

「あのねーちゃん? まさか、俺たちが襲われることを教えてくれた奴がいるのか?」

「ああ、第6課のほれ。胸がちょいとさみしいなんていったっけ」

「‥‥‥井川さんか。彼女が、俺たちが襲われるって教えてくれたのか?」

「ええっと、『北海道を拠点とする妖魔が暗躍を開始しました。重要人物が狙われていますので、注意してください』だったかな。そう書かれた手紙がポストに放り込まれてね。それでグループチャットに注意喚起したんだよ」


 そのタイミンクで、祐太郎がSOSを出してくれたのでどうにかギリギリ間に合ったっていう事。

 いゃあ、本当に間一髪だよ。

 

「そうか。乙葉君、本当に助かったよ。このお礼は必ずするからな、ありがとう」


 おじさんも頭を下げてそう告げる。

 なら、この前の回らないお寿司がいいなぁと告げて笑いを取ったところで、祐太郎が神妙な顔をしているのに気が付いた。


「‥‥‥なんで井川さんは、妖魔が暗躍することを知っていた? 第6課は対妖魔組織だろう? にも拘わらず、忠告だけで何もしていないっていうのはおかしくないか?」


 真面目な顔で告げる祐太郎。

 そう、そこなんだよ問題は。


「第6課が動けない理由があるということだ。つまり、合法的に動けなくできる奴らが、私を妖魔に襲わせたという事。あの6つ手の妖魔が言い残した名前には、儂も心当たりが何人かいる。そっちの線でつつくことにしようか」

「いやいや、おじさん、危ないから一日待ってくれない? 動くなとは言わないけれど、こっちにも考えがあるからさ」


 俺はまあ、妖魔に襲われてもどうにでもなるという事が判った。

 っていうか、俺の能力は今更ながら飛んでもチートだよね?

 それに祐太郎の父ちゃんまで巻き込んで来たっていう事は、こっちも手加減無用でやらせてもらうからな。


「考えじゃと?」

「そそ。まあ、俺に任せて‥‥‥その代わり、お中元の余っている奴、少し分けてくれない?」


 当然、カナン魔導商会に査定に出して、おじさん用の防具を仕入れるために決まっているでしょう。

 祐太郎は申し訳なさそうに頭を下げている。


「親父、ここは俺とオトヤンに任せてくれ。そんじょそこらの妖魔程度では傷一つつけられないものを用意してやるから」

「ああ。全て任せる。それで、祐太郎、すまないが乙葉君の準備が終わるまで、ボディガードを頼めるか?」

「任せてくれ。ということで今日は学校は休みだ。オトヤンはどうする?」

「今から行っても遅刻だよ、だったら俺も休んで自宅でいろいろと準備してくるわ」


 そうと決まれば動くだけ。

 おじさんから大量のお中元セットを受け取って全て空間収納チェストに放り込むと、まっすぐに自宅へと戻ることにした。

 さあ、本気の俺を見せてやるぜ!!



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせならば「蒸着」で戦闘装備に着替えて欲しかったな笑
[一言] うーん、有力議員のお中元セットどれほどの価値で査定されるのか? やっぱ、定番の洋酒が中身じゃなくてカットガラス製のボトルが高く評価されるのかなw
[一言] 世の情け…答えずに実力行使してるよね?…|д゜)ジー
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