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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第七部・災禍の赤月、或いは世界滅亡へのカウントダウン

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第四百五十四話・(状況逆転、北の国から)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。

 ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォツ


 爆音と同時に、一体の魔族が霧のように散っていく。

 札幌市丸山付近で暴走していた妖魔の一体が、戦捺羅チャンドラ の拳を受けて一撃で霧散化したのである。


「ふぅ……ハルフェ、マスター・羅睺の説明では、霧散化させてしまえばもう安全だっていうことだよな?」

「ええ。魔人核に傷をつけないように慎重にね。こっちの世界の人間では、暴走した妖魔を取り押さえることはできてもそれを保護する場所はないらしいから。私たちでは封印術式は使えないのだから、今のところの最善の手は霧散化しかないらしいわ」

「でもよ、人間に憑依してまた再生しやがったらどうするつもりなんだ?」


 路上に落ちている皮ジャンを拾いつつ、戦捺羅チャンドラ が問いかけると、ハルフェは肩をすくめる仕草をする。


「私たちがこの世界で肉体構成できるまで回復するためには、人間に憑依して一か月ほど生気を吸収する必要があるの……って、チャンドラは獣人だから知らないのかぁ。つまりはそういうことよ」

「タイムリミットは一か月、それまでにすべてを終わらせないと、憑依されていた人間が今度は餌食になるっていうことなんだろうなぁ」

「そうね、それしか手段がないのだから仕方がないわ。それに、龍造寺建設の若い衆が、今は市内の魔族に避難勧告を出すために走っているから、今は暴走魔族の鎮圧を最優先してって」


 羅睺の言葉をそっくり伝えると、ハルフェはチャンドラの乗って来たサイドトライカーの側車席に乗り込む。


「そうか。そんじゃ、ここの地区の制圧は完了、ベースキャンプに連絡を頼む」

「わかったわ……と、次は盤渓に暴走魔族が二体出現だって、急いでね」

「はぁ? ここから盤渓かよ!!」


 ぼりぼりと頭を掻きつつ停車しているサイドトライカー・ウラルに跨ると、ゴーグルだけを装着して盤渓へと向かった。


………

……


――札幌市・妖魔特区

 対暴走妖魔鎮圧作戦のベースキャンプの設置されている大通り二丁目では、札幌市内全域から次々と送られてくる情報を精査し、次々と指示を送っている最中であった。

 そこから少し離れた大通り一丁目の札幌テレビ城下では、瀬川雅を中心とした魔族チームによる暴走妖魔迎撃チームが編成されている。


「ハルフェさんから入電。円山地区の暴動は制圧完了です」

「それじゃあ、彼らには盤渓方面に走って貰ってください。座標指示については正面のモニターを参照、できますか?」

「はい、いけます」


 直径5メートルに拡張された深淵の書庫アーカイブの中で、喫茶・九曜の蔵王真澄がサブオペレーターとして戦捺羅や羅睺からの連絡を受け、それを瀬川に報告。

 その都度、必要な人材を深淵の書庫アーカイブが算出し瀬川に報告、それを蔵王が書く魔族チームにスマホを通じて指示を送っている最中である。


『こちら計都姫。新札幌方面が手薄、追加人材を求める』

「はいはい、そっちには今、りなちゃんが向かっているので彼女と合流してください」

『是』

『羅睺だが、真駒内方面に大型魔獣を一体確認、琥珀狼という上級魔獣でな、どうやら暴走した阿呆が封印を解いたようだが。これはどうするのだ?』

「単独での撃破は可能ですか?」

『現在、石山通を中央区に向かって暴走中。15分もすれば大通り付近までたどり着く。建造物などの被害を考慮しないのなら取り押さえられるが』

「それらについては気にしないでください。事後所のの段階で復興対策支援予算と保険で賄ってもらいます、かまわないのでやっちゃってください」


 つい一時間前とは状況が異なる。

 りな坊からの連絡を受け、まず喫茶・九曜が大通りに移動し、瀬川の指示のもと、第六課の臨時職員として活動を開始。それにともない、龍造寺建設の人魔や獣人たちも移動してきたため、羅睺により『浄化の響き』が発動、集まった魔族や獣人全員に『抵抗術印』が施された。

 あとは配布された『第六課臨時職員』と記された腕章を装備し、瀬川指示のもと各方面へと出撃を開始したのである。


 現時点での第6課臨時職員の腕章を装着した魔族・獣人は全部で100名弱、その大半が白桃姫配下の妖魔特区の住民魔族であり、のこりは龍造寺建設の職員と八魔将たち。

 その報告を受けて忍冬警部補は、頭を抱えそうになったことはいうまでもない。



 〇 〇 〇 〇 〇

 


――永田町・国会議事堂敷地内

 首相官邸では、突然の妖魔災害に対して臨時対策本部を設立。

 現在。日本各地にて発生した魔族の暴走について各方面の陸上自衛隊及び特戦自衛隊に出動を要請したものの、未だ暴走妖魔のすべてを押さえることは不可能。

 一部の地域では民間人の避難も開始されるほどの災害に発展している。


「ええい、北海道の乙葉浩介にはまだ連絡がとれないのか!!」


 対策本部内で天羽総理が傍らにいる執務官に問いかけるものの、返ってくる答えはひとつ。


「現在、彼は異世界・鏡刻界に向かったままという連絡を受けています。また、現代の魔術師チームは札幌方面の暴動の鎮圧を開始、現地にて有志の魔族に協力を得て暴動を制圧中とのことです」

「瀬川君、瀬川雅君、こっちの声も届いているのだろう!!」


 天羽総理がインカムを受け取って叫ぶ。

 どこに繋がっている訳でもないのだが、さけべば通信が繋がると理解している。

 そして天羽総理の読みの通り、対策本部に並ぶモニターの一つに瀬川の姿が浮かび上がる。


『こちら、札幌市対策チームの瀬川です。天羽総理、どうなさいましたか?』

「どうにもこうにも、こっちは完全に手詰まり状態だ。なにか打開策はないのかね?」

『簡単な打開策としては、旧陰陽府の術師に出動を要請するのが一番かと思われますが。あとはそうですね、国家登録魔術師については北海道に偏ってしまっていますので、そちらの術師の方に『抵抗術印』の術式を授けますので、それを施した魔族のチームを編成するのがよいかと思いますが』


 淡々と説明を行っている瀬川の後ろでは、蔵王がモニターを指さしつつ次々と指示を飛ばしている最中。その姿を見て、天羽も頭を抱えるしかなかった。

 モニター越しでも、札幌地区の激戦状態が手に取るようにわかる。

 それでも守りを固めるどころか、次々と暴走妖魔を制圧しているという現実が、天羽にも痛いほど理解できる。


「北海道の部隊を派遣することは可能か?」

『可能か不可能かと問われますと可能。ただし、その場合は札幌市の防衛が手薄になること、協力魔族は第六課の臨時職員として扱われているものの、実質は白桃姫配下の魔族であり私の指示以外を受けることはありえないこと、そして手薄になった札幌市の防衛の増強を関東圏から回してもらうことが可能であるのならば、札幌市からの魔族の部隊を派遣することは可能ですが』

「……それは無理だな」

『では、上位の術式を施せる魔術師を札幌市に寄越してください。『抵抗術印』さえ魔族に刻み込むことが出来れば、実働部隊として戦闘に出ることは可能ですが……って、それよりも、魔族議員のみなさんは大丈夫なのですか!!』


 参議院と衆議院の議員にも、魔族は存在する。

 今のこの状態では、魔族議員も狂化して暴走している可能性は十分に考えられるのだが。


「隣邦議員を主導として、魔族議員たちは皇居付近に退避している。あの一帯は対妖魔結界によって悪しき魔族の侵入を阻んでいるのだが、今回は状況が状況のため、皇居外苑については魔族の対入りは許可されている。どういう理屈で結界を越えられるようになっているのは全く謎だが、いまは魔族議員たちはそちらに避難しており、暴走する様子もない」

『そうですか……』

 

 天羽の報告を聞き、御神楽が手を回したのだと瀬川は理解する。


「いそぎ安部家に連絡を行う。陰陽師を数名、北海道に派遣するので彼らにその術式を教えてあげてくれるか?」

『そうですね……と、いえ、それでは国会議事堂内部にある水晶柱にその方々を派遣してください。こちらから転移門(ゲート)を開きますので、彼らにはここに来ていただき、術式を学んでもらいます』

「わかった、では急ぎ手配する」


 それで通信は切れる。

 天羽は急ぎ元陰陽府統括の安部家に連絡を入れると、至急、国会議事堂まで来るようにと指示を行った。


  

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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― 新着の感想 ―
[一言] 天羽総理アメリカと3つの月の関係1番理解してないといけないのになんの役にもたってない。資料も奪われるし。あんなに苦労して助けに行ってたのにこの後におよんで未成年学生に頼ろうとは片腹痛いわ。天…
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