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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。
42/586

第四十二話・質実剛健、見て地獄(異世界ならドラゴン肉でカレーっていうのはお約束展開?)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。

  はてさて、光陰矢の如し。


 部活動については、一切の魔法的活動は自粛して、普通に文学部らしくラノベを読み漁る事にした。

 持っていたタブレットとカナン魔導商会をリンクして、タブレットで色々と調べ物をしたり食材も購入した。


 特選シーフードカレーとドラゴンシチューに必要な食材も購入して空間収納チェストにしまっておかないと。

 あ、レジストリングが販売再開されているから、これは先に購入しないとなぁ。


──ブゥン

 突然、目の前のテーブルに宅配魔法陣が広がると、注文したレジストリングが四つ転がった。


「ブッ‼︎ オトヤン、なんでここに出した‼︎」

「い、いや、違う、多分アップデートで空間収納チェストに入るものが間違って外に出たんだ、そう、誤空間収納チェストにごわす、発送先は目当ての場所じゃなが!」


 慌ててリングを拾い上げると、それをすぐさま空間収納チェストに放り込んだ。


「オトヤン、またにごわすか?」

「女々にごわす……要先生が呆然としているでごわすよ」

「オトヤン、お約束のギャグはこの辺にしようか。という事で先生、今のは見なかった事に。オトヤンの手品ですから」

「はぁ。乙葉君、部活中に手品の練習はあまりしないようにって、前に話しましたよね?」


 ナイスだ祐太郎と瀬川先輩。

 

「あら、乙葉君は手品ができるの?」

「素人レベルですけれどね?」


 両手を握って、その中に空間収納チェストから500円玉を取り出しておく。

 そして手を開くと、さっきまで何も握ってなかった手の中に500円玉が出てくる。

 まあ、プロのマジシャンなら誰でもできるよね? ミスター・ノリックでも出来るよね?


「へぇ、どんなタネがあるのかしら、興味があるわね」

「手品のタネを聞いちゃダメですよ。という事で瀬川先輩サーセン、読書に戻ります」


 タブレットを仕舞い込み、本棚から適当なラノベを引っ張り出す。

 いやぁ、異世界チートといえば、やっぱり最近は天空の城をもらうやつだよね。最高だよね。

 シャングリラで重機買うのもいいよなと、途中で新山さんと盛り上がってまた先輩に怒られたけど、これは地でやってしまったので後悔した。




……


 北広島西高等学校潜入レポート。


 現時点で、対象である乙葉浩介及び築地祐太郎が妖魔と接触した形跡なし。

 また、彼らの背後組織との接触も確認できず。

 あの二人が何かを隠しているのは明白ですが、なかなかそれを掴むことはできません。


 所持品についても、抜き打ちの検査をしましたが確認できず、校内にいる限りは普通の生徒を装っているようです。


 校外についての調査は、該当担当官からの報告を参照してください


要 梓


……


 

 第六課から来た要巡査による潜入捜査が始まって、間も無く一週間。

 今日は土曜日、駅前のマンションにみんなで集まって、今日は楽しい料理パーティー。


「……流石に、ここまで潜入調査には来ないよなぁ。来たら追い出すしプライバシー侵害だし」

「それはないだろう?」

「わからんぞ、あいつら何しでかすかわからないからな。という事でGogglesゴー。対象はいつもの第六課で」


『ピッ……距離128mに二人確認』


「「 いるなぁ 」」


 俺と祐太郎、ほぼ同時に確認したらやっぱりいた。

 でもまあ、個人宅までは来ないだろうから安心して料理を作りましょうそうしましょう。

 いくらなんでも、ここは最上階、ドローンでも飛ばさない限りは監視されることはない。


「それで、今日の材料は何かしら?」

「乙葉君の注文通り、玉葱と人参、ジャガイモは買ってきましたけれど、メインの食材は何を使うの?」


 新山さんと瀬川先輩がエプロンをつけながらそう尋ねてくる。

 なので、取り出しましたる空間収納チェストから食材。

 今回はちゃんと購入後にラップしてしまい直したから完璧さ。


「え!! あの、お肉が光っているんだけど?」

「こっちの塊は牛かしら?」

「先輩の前のはロングホーンバッファローっていう魔物のロースとバラ肉らしいよ。新山さんの前のは、レッドドラゴンだってさ。それももも肉」

「「 うん、分からないわ 」」


 ですよね。

 俺も理解の範疇超えたから。

 でも、カナン魔導商会の食材にあったのだから、一般流通しているんだよね? ドラゴンとバッファローの肉合わせて2億クルーラ飛んだよ。

 これで変な装備が届いたらクレーム案件だわ。 


「ま、まあ、作るのはカレーとシチューですから、基本は同じでいきましょう。新山さんはドラゴンのお肉を一口大に切ってください、私はバッファローのお肉を切りますので」

「はい、分かりました」

「それでは、俺たちは居間で格ゲーしてるか」


 そのままキッチンから逃げようとしたんだけどさ、野菜の入ったボウルとピーラーを二つ、手渡されたんだよ。


「乙葉君と築地君は野菜の皮むきをお願いします。それが終わったら遊んでいて構いませんから」

「「 イエス、マム 」」


──シュルルルルルル

 のんびりと皮を剥く。

 寸胴なんてないから、ウォルトコの通販サイトで二つ買いましたよ、120リットルのを二つも。

 そして後から思い出したともさ、チェスト工房で買えば良かったと。まあ、なかったから結果オーライなんだけどね。


「120リットルのカレーとシチュー。原材料費用が二億円か……」

「オトヤン、俺たちの食べる分はあるのか?」

「なんぼなんでもあるだろ。肉だけでも30キロあるんだぞ? ドラゴンの大きさなんか知らんけど」

「あ、そのレベルなのか。しかしカナン魔導商会なんでもあるなぁ。食材から魔導具までとは、なんだろう、マッコイ商会クラスの在庫だな」


 そうなんだよ、ここなんでもあるんだよ。

 流石に武器防具はチェスト工房の方が品質はいいんだけどね。


「まあ、流石に戦闘機とかは……え? 特殊兵装コーナー? 浮遊戦艦?」


『ピッ……超大型浮遊戦艦『尾張』。全長250m、機動兵器用魔導カタパルト二基、三連装魔導パルスカノン8基機搭載可能……魔導兵装、その他砲門、対空兵装はオプション。価格、応相談』


 まあ、俺は呆然としたわ。

 まさかそんなものまで売っていたとは思わなかったよ。

 きっとあれだ、このカナン魔導商会のオーナーは、豆が大好きな老人だ。

 うん、きっとそうに違いない。


「オトヤン、見なかった事にしよう」

「そ、そうだな、これはなかった。でもお気に入りマークつけて画面を閉じる……」

「あの〜、乙葉君、相談なんですけど‼︎」


 おや、新山さんのご指名だ。

 デートのお誘いなら喜んで受けるけどさ、そんなのないよなぁ。


「あのですね、ドラゴンのお肉なんですけど、この包丁では切れないんですよ」

「バッファローもですわね。どうしますか?」

「あ〜、やっぱりファンタジー食材なんだね。ミスリルの包丁を入れチェスト工房でピッ……と、はい、これ使ってね」


 切れないのなら、ここは夢のミスリル包丁でしょ。

 ああ、なんとなくファンタジーしていて楽しいわぁ。

 これで第六課が何もしてこなかったら、文句ないんだけどね。


………

……


 お肉が切れないので、乙葉君にお願いしてミスリルの包丁を、買ってもらいました。


「先輩、この包丁って、普通の使い方でいいんですよね?」

「そうだと思いますけれど。試しに、この包丁まで魔力を循環してみます?」

「そうですね、これも訓練ですよね」


 よくあるファンタジー小説とかでは、ミスリルは魔法を弾く性質があるらしい。

 けど、この包丁と一緒に手渡された取説によると、硬いものを切るときには魔力をコートするといいって書いてあるし……どうして、私、異世界の文字が読めるの?


「先輩? この文字読めます?」

「ええ。私はこの眼鏡がありますから、文字の読み書きはできますわよ。それに新山さんも鑑定のイヤリングがあるから読めますよね?」

「あ、そうなんだ。いきなり読めるからびっくりしました」


──ブゥン

 包丁を構えて魔力を循環させる。

 すると、私と先輩の包丁の刃が赤く輝いた。


「へえ、綺麗」

「さ、鮮度が落ちる前に切って、軽く焼き目をつけましょう」


──ス〜ッ……トンドシュッ

 はい、お肉が何の抵抗もなく切れました。

 下にあった俎板も真っ二つです。

 シンクにも突き刺さりました。


「……お、乙葉君‼︎ ごめんなさい‼︎」

「あの、宜しければミスリルの俎板も欲しいのですが」


 なんだなんだと駆けつけた乙葉君と築地君の苦笑する顔が見えて、思わずみんなで笑ってしまいました。


「まあ、そうなるよなぁ……はい、俎板も二つね」

「それで、あの、この傷はごめんなさい」

「いいよいいよ、後で錬金術で修復しておくからさ」


 恐るべし錬金術。

 そうですよね、確か『変形』と『融合』で穴埋めして形を整えるだけですよね。

 さすが現代の錬金術師です。


………

……


 まあ、途中でなんだかんだとあったけど、無事にカレーとシチューは完成した。

 痛まないように支払い分のカレーは寸胴のまま空間収納チェストに収納して、残りは俺たちの晩ご飯である。


「サラダもあるし、完璧だな」

「「「「 では、いただきます‼︎ 」」」」 


──パクッ‼︎

 沈黙。

 たった一口、それでこの場の空気が変わった。

 これは、食の進化だ。

 カレーとシチュー、その最終形態が目の前にある。

 良く煮込まれたドラゴンの肉、新鮮なスパイスが表面に染み込み、中からは溢れんばかりの肉汁。

 薄らと輝いているシチューって初めて見たわ。


 言葉はなかったよ。

 多めに作って冷凍しようと思っていたから、みんなにもタッパに詰めてお持ち帰りしてもらったよ。

 でも、俺たち、もう普通のカレーは食べられないかもしれない。



………

……


 あら。

 お隣は今日はカレーみたいね。

 確か学生さんの一人住まいらしいけれど、こんな高いところに住んでいてカレーだなんて、きっと投資目的でここを買ったのはいいけれど、生活費まで回らなさそうね。

 

「ママ、うちはカレーじゃないの?」

「うちは、今日はステーキよ。少し高かったけど、お父さんが奮発して買ってきてくれたのよ」

「わーい。やったー」


 子供たちの笑顔が最高のスパイスよ。

 まあ、まだ学生さんには分からないわよね。


 でも、いい匂いね。

 あら、ちゃんとお肉を焼いてから煮込むのね。

 これだけ排気がしっかりしているマンションなのに、うちまで匂いがするってどういうことかしら?

 あ〜、スパイスのいい香りもするわ。

 これは生のスパイスね、なかなか食には拘らないのかしら?


「ねぇ、ママ。うちはカレーじゃないの?」

「カレーにすると勿体ないお肉だからね。でも、あのカレーよりも美味しいから任せて‼︎」

「うん‼︎」


 そうは言ったものの、いい匂いね。

 隣にお裾分けしてもら……いやいや、ダメよ。

 そんな事、私のプライドが許さないし、そもそも隣に行くのだって、別のホールに行ってエレベータを乗り換えないとならないのよ?

 隣のホールに入る鍵なんてないから無理よ。


「ママ……カレーがいい」

「そ、そうね、カレーにしましょうか」


 あぁ……鹿児島の和牛が、フィレとサーロインが、カレーに変わったわ。

 でも良いわ、子供が欲しがっているなら、母親として作ってあげなきゃ。


 はい、できたわよ。

 貴方も座って、今日はカレーなのよ。

 とっても美味しかったのに、なぜか、子供も旦那様も複雑な顔ね。

 何故でしょう。

 食べているのは私が作ったカレーなのに、匂いを味わっているようも見えるのは……。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──ガバッ

 朝。

 慌てて目を覚ます。


「なっ‼︎ もう昼すぎ? なんで?」

 

 久し振りに寝過ごした。

 いやぁ、今日が日曜日でよかったよ。

 もしこれが平日なら、確実に遅刻だよ。


「あ、惚けている場合じゃないわ、午後からみんな集まるんだったよ」


 慌てて掃除をしていると、linesにメッセージが届いた。


to. オトヤン

send:祐太郎

 『すまん寝過ごした、二時までにいく‼︎


to. 乙葉君

send:小春

 『ごめんなさい、今向かっています。

 30分遅れます


to. 乙葉浩介様

send:瀬川 雅

 『所用にて、少し遅れることをお許しください。

 『30分で到着します。


「みんな寝坊か〜い。でもなんで、みんなして寝坊するかな……あのドラゴンの肉?」


 みんなが来る前に、詳細鑑定でドラゴン肉を調べた結果。ドラゴン肉はスパイスと併用すると旨味が増し、疲労も完全に吹き飛ぶらしい。

 しかも滋養強壮栄養補給MP全快新陳代謝増加美肌精力増強と、悪いことがない。

 そりやぁ、疲れも取れて爆睡するわな。


………


・カナン魔導商会残チャージ

 7億8075万クルーラ

(食材各種及びミスリル包丁、俎板等購入により)



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎度小ネタをブッこんでくるところステキです。 マッコイ商会、もちエリア88ですねw
[一言] 匂いを味わっているようも見えるのは……。 →匂いを味わっている様にも見えるのは……。
[一言] お隣さんが可哀想!w
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