第四話・石橋を叩いて勇往邁進(未成年にはまだ早い)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。
はてさて。
カナン魔導商会のチャージが心許ない。
残高は90万クルーラであり、高額な魔導具など買えないが、細々とした普通のアイテムなら買い物に問題はない。
だが、俺が欲しいのは魔導具、つまりマジックアイテム。それならば、何か異世界で高く売買されそうな地球の商品を探すため、日夜俺はラノベを漁りまくっていたのだが。
「やっぱり、貴金属と宝石が手堅いのか。参ったなぁ」
放課後。
文学部部室でいつものようにラノベを調べまくり、統計を出して考え込んでいる。
今のところ、換金率が高そうなのは真珠。
それも粒の大きなネックレスが高く買い取ってもらえそうである。
「ん? オトヤン今度は何を調べているんだ?」
「いや、ほら、異世界ラノベでさ、地球のアイテムで何を持っていったら高く売れるかなぁと思ってさ。ユータロは何か良いものあるかい?」
また小説のネタとしてアドバイス頼むと頼み込んだら、部長がそっと手をあげていた。
「乙葉さん、いつも疑問に感じていたのですが、異世界ラノベというのはどのようなジャンルなのですか?」
「あ、部長は純文学派でしたっけ。異世界ラノベというのはですね」
祐太郎が淡々と説明してくれている。
それを云々と肯きつつ、俺はこっそりとカナン魔導商会をオープンしてメニューから装飾品を選んで見る。
すると意外なことに気が付いた。
カナン魔導商会のある世界には、現代の宝石研磨技術がない。綺麗なカットの宝石は高額で取引されているが、そうでないものは意外と安く売買されている。
「向こうの世界の宝石は、大粒で透明度が高いのが一般的みたいだな。でも、真珠はリストにないから、やっぱり真珠の買取査定は高いんだろうなぁ」
「オトヤン、例の小説の方はどうなった?」
「ん? ああ、紙の時間を進める眼鏡ね。あれ、設定的に主人公のMPが足りないので宝くじは当てられないわ」
やれやれという感じで説明するが、部長が頭を捻っている。
「そのストーリーアイテムですが、こう、自分が紙に書いたものなら構わないのですよね?」
「まあね。でも、宝くじのあたりなんて、自分じゃわからないですよ?」
「ですから、宝くじのあたり番号をメモする習慣を身につけてはどうですか? そうすれば、抽選番号を日記かなんかにメモする事で、宝くじの抽選日には予め日記の内容を確認するだけですわよね?」
んんん?
つまり、俺が日記帳を買ってきて、毎日抽選日には宝くじの当選番号をメモすれば良いのか。
部長、あんたは天才か!!
ならば善は急げ、その日の部活は早めに切り上げて帰り際に日記帳を購入、その日から宝くじの当選番号をメモする習慣をつけることにした。
………
……
…
寝る前の日課として、カナン魔導商会の画面を確認する。
いつ、どのタイミングでお勧め商品が更新されるのか分からないし、時間限定商品があったら見逃したくないから。
「まあ、魔導具って言っても、ポーションとか武器も全てあるからなぁ。こりゃ一発、とんでもない道具があったら良いなぁ。例えば、惚れ薬とか、媚薬とかさ。本日のお勧めにそういうアダルトなやつはないのかなぁ」
笑いながらそう呟いたものの、段々と言葉の現実味が増してくる。
高校生活も一ヶ月も経てば、彼方此方にカップルができる。
けれど、そんなのを横目で見ながらリア充滅ぶべしと呪いをかけるよりも、自分で彼女を作った方がよっぽど建設的である。
それを魔導具に頼る自分もどうかとは思いつつ、取り敢えずは本日のおすすめを確認してみる。
『ピッ…本日のお勧めはこれ、サーチライトです。特定アイテムや人を探すことのできる魔導具です。単体では使用不可ですが、TSレンズと融合することで使用可能です。250万クルーラ』
無慈悲にも程がある金額である。
今の残高では買えないって言うし、そもそも探し物なんてないわ。
「無〜理〜。ええっと、メニュー欄に検索項目もできているぞ? どういうタイミングでこういうカスタマイズされているんだろう」
いつのまにか備わった新機能、検索。
なら使うしかないでしょうと、検索ボタンに指を当てる。
『検索ワードを入力してください。ボイス入力も可能です』
「キタコレ‼︎」
『ピッ。キタコレというワードに該当する商品はありません』
「あ、俺はアホか? 検索ワード、惚れ薬‼︎」
『ピッ、該当商品は15品目あります。ページを開きますか?』
マジかー。
これって、販売したら儲けもの?
俺が高校生の愛のキューピッド?
なんて考えるよりも、自分で使ったほうがいいよなぁ。
「では、惚れ薬のトップページを開いてくれ」
『ピッ』
ウィンドウの別ページが開くのだが、そこには赤い文字とよく見たロゴが並んでいる。
俗にいうアレだ、18歳未満閲覧禁止マークだ。
その下に、やっぱりお約束のアレ。
『貴方は18歳以上ですか? YES/NO』
そりゃあね、健全な男子高校生なら、ここはYES一択でしょう。
震える指でYESをタッチするが、画面にはアラートの文字が流れる。
『乙葉浩介のプロフィール年齢と一致しません。トップ画面に切り替わります』
──ピッ
そしてよく見るカナン魔導商会のトップ画面。
「え〜っと。異世界のネットショップだよね? なんで日本の青少年育成条例が適用されているの? ねぇ、なんで? この期待に滾った若さの証拠はどうすればいいんだい?」
そう画面に問いかけるが、ネットショップなので返事もない。
止むを得ず、その日は自前のPCにダウンしてある画像で若さを沈めてから、のんびりと夢の世界へとダイブ‼︎
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
毎日の日課の、宝くじ当選番号日記。
これを書き続けて一週間、まだ日記帳の時間を進めても当選番号は出てこない。
恐らくだけど、毎日書き続けることで不確定未来が確定未来になるんだろうなぁと予測できる。
つまり、まだ俺が日記をサボる可能性の方が高いのだろう。
それでも、なんとなく画面に滲みのような部分が見え隠れしてきたので、あと少しで行けるだろうと良い方向に思っておく。
毎晩の日課の画面検索を行なっていたら、ある日、胡椒の買取が再開された。
おそらくは本店の在庫が減ったか無くなったのだろうと推測し、大慌てでキッチンに置いてあった胡椒の袋やら砂糖、塩、そして新しく用意した百均ショップの工具などを次々とぶち込んでいく。
「おおおお、次々と入っていくぞ、いけ、もっと行くのです‼︎」
『ピピピピピッ、買取限界となりました。現在の残高は590万クルーラです』
そして買取限界に到達。
今回の買い取り上限は500万だった模様。だが、胡椒の取引はまたしても一時停止となってしまった。
まあ、これだけあればしばらくは困らないんだろうけれど、新しく何かを買うかというと特に真新しいものはない。
正確には、欲しいものは億単位なので金が足りないんだよ。
『ピッ…お勧め商品が更新されました』
「なんだってぇぇ‼︎」
すぐさま画面を切り替えて商品を見る。
『本日のお勧めはブースターリングです。装着するだけで所有者のステータスを1.25倍に強化し、更には魔力を注ぐことで最大125倍まで強化することが可能です。このリングが、今ならもれなく450万クルーラ』
「買ったぁぁぁ、ポチッとな」
──チン、ボトッ
そして前にも見た宅配魔法陣が展開すると、ポツンと置いてある指輪がひとつ。
「これを装備欄に登録して……お、やっぱりこの指輪も透明化出来るのか。どれ、ステータスはどうなっているんだろう?」
すぐさまステータス画面を出す。
‥
‥‥
名前:乙葉浩介
年齢:16歳
種族:人間(転生処理済み、バグ)
レベル:9
体力:81(101.2)
知力:82(102.5)
魔力:1080(1350)
闘気:1080(1350)
HP:240
MP:16800
・スペシャルアビリティ
ネットショップ・カナン魔導商会
空間収納
自動翻訳 (初期セット)
鑑定眼+ (初期セット)
・固有スキル
一般生活全般 レベル16
魔力循環 レベル1
魔力解放 レベル1
・コンディション
体調 :超優良
チン長:最大18cm
‥‥
‥
「はぁ、たしかに1.25倍になっているなぁ。って…レベル上がっているぞ? 俺なんかした? 誰か倒した? 鑑定眼も+が増えているしコンディションっていう表示も増えている。だがチン長ってなんだよ!! 俺の息子はこんなに大きくなかったぞ?」
経験値欄が無いため、なんの理由でレベルが上がったのかさっぱりわからない。
となると、明日からは少しネットショップ以外の能力の方を色々と調べることにしよう。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
翌日。
朝一で学校に向かうと、俺は鑑定眼を起動し、クラスメイトを1人ずつ眺めてみる。
いや、こっそりとだよ、ガチ見なんてしないよ恥ずかしい。
そして判ったこと。
例えば、クラスのマドンナ的存在の立花彩花さんの場合。
……
…
名前:立花彩花
年齢:16歳
種族:人間
レベル:1
体力:73
知力:78
魔力:10
闘気:10
HP:16
MP:16
・スペシャルアビリティ
才色兼備
・固有スキル
一般生活・基本 レベル16
・コンディション
体調 :優良
サイズ:88、62、90
非処女…経験人数一人
嗜好 (未解放)
その他(未解放)
……
…
ブッ‼︎
いかん、鼻血が出そうになる。
これはいけない、女子のサイズまで丸わかりになるじゃないか。
しかし、いくつかの項目については未解放という表示が出る。
ひょっとして!これもレベルが上がったら見えるようになるのか?
ならば見ましょう‥‥それでレベルが上がるかもしれない。ごめんよ我がクラスの女子たちよ、俺の経験値の糧になってくれ。
次々と女子のプライベートな部分まで鑑定眼で確認していく。おおっと、重要な項目や注意事項はちゃんとスマホにメモしておくよ? 何かあったら大変だからね。
でも、そんな中で1人だけ気になった子がいる。
俺の席の前に座っている女子で、名前は新山小春。
……
…
名前:新山小春
年齢:16歳
種族:人間
レベル:1
体力:52
知力:63
魔力:12
闘気:5
HP:10
MP:16
・スペシャルアビリティ
温故知新
・固有スキル
一般生活・基本 レベル16
・コンディション
体調 :不可(悪性腫瘍stageⅣ)
サイズ:78.66.85
処女
嗜好 (未解放)
その他(未解放)
……
…
実に好みのちっぱいであるが、いや、そんなことよりも悪性腫瘍ステージ4って何?
体調が不可って何?
そんなことに動揺していたら、五限目の授業中に新山小春は椅子から落ちて倒れてしまった。
すぐさま保健委員が彼女を保健室まで連れていったが、ちょいと心配だよなぁ。
そして翌日から、彼女は登校してこなくなった。
持病の治療のために、病院に入院したらしいが、治療に専念するためにお見舞いはお断りしていると担任が説明してくれた。
数日後の夜。
日課の宝くじ日記の記録を終えて晩飯を食ったり風呂入ったりと、日常の日課を一通り終える。
そのあとはカナン魔導商会の商品チェックと入金チェックだが、ここ数日は特に何も増えてはいない。
「はぁ。レベルアップも無しか……新山さん、大丈夫だといいんだがなぁ……」
悪性腫瘍って癌だよな。
ステージ4ってかなり悪いんだよな。
俺はあんまり彼女とも接触はなかったし、ただのクラスメイトだから祈ることしかできないんだよな。
「祈るか……いや待てよ、あれ? 俺、彼女救えない?」
慌てて空間収納から病気治癒ポーションを取り出して、瓶の後ろのラベルを確認する。
『病気治癒ポーション…ランク4までの病気を回復可能。後遺症も傷跡も残らない。先天性の病から後天性の病まで、死と呪い以外は全て癒します。ああっ、申し訳ないがあんたの厨二病は治せないぜ、済まないな兄ちゃん』
んんん?
なんだか最後の方の説明がおかしなことになっていたが、これ飲めば新山さんのガンって治るのか?
まあ説明では治るんだよなぁ。
せっかくクラスメイトになったことだし、いきなり病気でクラスメイトがいなくなるのは忍びない。何よりも、彼女自身がそれを望んでいないだろう。
癌の治療について調べてみたが、どれもキツくて辛いものばかりだからなぁ。
「よし、このポーションを飲ませてあげるか。でも、どうやって?」
考えてみてもすぐには思い浮かばない。…何かいい方法はないものか。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回の判りずらいネタ
まあ、難しくないかと。
・カナン魔導商会残チャージ数
140万クルーラ




