第三百九十四話・(崩れる一枚岩と、嘘で固めららた磐石)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
派手な爆発音が響き、俺がいる曲がり家までビリビリと響いている。
ゴーグルを使って何が起こったのか確認したのだが、魔族固有の妖気反応は感じられない。つまり、これは魔族の侵攻ではなくそれ以外の何か。
それなら、まずはこの場に結界を追加して、天羽さん達にはここで待機してもらった方が安全じゃないか?
そう考えて祐太郎の方を見ると、俺の頭の中が読めたのか覚悟を決めたようにコクリと頷いている。
「さすがだな、オトヤンは天羽さんを頼む。俺は麻生さんを守って外に出る」
「え? 俺の考えが読めたんじゃないのか?」
「流石に無理だが、オトヤンは何を考えた?」
「いや、ここに結界を張ってさ、天羽さん達には待機してもらおうかなと」
「それなら外に出てからでもいいんじゃないか?」
「いやいや、外は危険だわ、結界で守ったとしても姿はモロに見えるからさ、狙われる可能性だってあるんだよ?」
はい、意見が一致していませ〜ん。
まあ、これもいつものお約束なので、此処からは行動あるのみ。
「作戦変更。天羽さん達を外のセンチュリーにぶっ込む」
「そして俺が結界でセンチュリーごと包み込む。さっきの案内のお嬢ちゃん達も保護しないとな」
「それでいく!!」
何が起きたのか分からず、動揺してオロオロしている天羽総理と、スマホ片手にどこかに連絡している麻生さんを捕まえて、そのまま屋敷の外へゴー。
廊下を駆け抜けるんじゃなく縁側から庭に飛び出して、そのまま正面玄関へ。
途中で屋敷から外に出ていたらしい人たちにも声を掛けてから、皇室でも愛されている丈夫さナンバーワンのセンチュリーまで駆け抜けた。
「お、乙葉君、いったい何があったんだ?」
「わかりません!! ということなので、ここで待機です」
「麻生さんも車の中に入ってくれ。こいつは魔導具で改造されているんだろ? この車体にも術式防御壁が使用されているようだからな」
「な、何故、異世界の君たちがそのことを知っているんだ?」
「オトヤンの目は節穴じゃなくてね。この程度なら、見ただけで解析できる」
「祐太郎、流石にそこまでは無理だからな?」
思わず突っ込みつつ、空間収納から結界発生装置を取り出す。
本当に、俺が作った歴代魔導具の中で、最も活躍してくれているのが防御用魔導具って……俺は魔導具を軍事利用する気なんてさらさらないんだけどなぁ。
──カチッ……フィィィィィン
屋敷から逃げてきた人たち全員をセンチュリーの周りに集め、結界発生装置を起動。
さて、これで10式戦車砲でも破壊できない結界が完成したので、ここからが俺たちのターン。ちなみに10式戦車砲の正式名称は44口径120mm滑腔砲。
俺の魔術だと、リミッターカットした44式力の矢が同程度の火力を有する。
つまり、俺と同程度の魔力保有術者が、威力44倍で魔術を発動しない破壊不可能ってこと。
「……オトヤン。敵性存在の確認完了、俺たちが入ってきたあたりに6つ。妖気反応なし」
「オーライ。近接系は任せる。俺は遠距離攻撃と防御支援に徹していいか?」
「手を抜くなよな。ほら、先制攻撃が飛んできたぞ?」
──ヒュヒュヒュヒュヒュン
前方がキラッ、と光った瞬間。
光の矢が大量に飛んでくる。
それも弓矢のように山形じゃない、水平に一直線に。
「自動解析!!」
──ブン!
無詠唱の6式力の盾。
それを俺と祐太郎の前に二つ発動すると、飛来した光の矢は全て盾に直撃し、地面に落下する。
それをちらっと見ると、落下したのは銃弾だった。
──ピッ
「……ふぅん。ライフル弾に光の浄化術式を施したと。対人、対魔族どっちにも有効な兵器で、生身の人間を狙ってくるとはねぇ」
「つまり、相手は魔族じゃなく人間。それも、銃器の扱いが得意な軍人でファイナル……」
──ドゴッ
祐太郎の後方から姿を表した敵兵士に向かって、素早く体を放ってからの掌底を叩き込んでいる。
それも、掌に闘気を集めた一撃。
普通の人間なら即死じゃないのか?
「アンサーだよなぁ。祐太郎、その人、生きてる?」
「当然。体の神経に作用するように練り込んだ、麻痺の闘気だからな。ちなみに運動神経に作用するけど、心臓が止まったりしないから安心しろ」
「そりゃまぁ、お優しいことで。チャンドラ師匠の技?」
「そういうこと。それで、オトヤンはどうする?」
──ブン
祐太郎がブライガー装備を身に纏う。
それじゃあということで、俺も今の装備にフィフスガントレットとセフィロトの杖を構える。
しかし、この倒れている兵士。
顔は忍者のような覆面のようなもので隠れているし、身体にも軍人とは思えない近未来的なプロテクターを装着。
手にした武器も拳銃や日本刀ではなく、柄だけの奇妙な……あ、フォトンセイバーか。
「近未来忍者?」
「そんな感じだよな。それで、どうする?」
「如何にもこうにも、黙ってやられるほど俺ちゃんは優しくなくてね。24式拘束の矢っ」
──ジャラララララッ
俺の左右に6本ずつ、拘束の矢が展開する。
これを待機モードに切り替えてから、ゴーグルで前方を確認。
有視界内には三人、祐太郎の後ろで倒れている一人。
あと二人が見えないけど、まあ、まずは前の三人から片付けるか。
『ロックオン……』
ゴーグルを使って三人をロックオン。
あとは魔導紳士に拘束の矢を制御して貰いつつ、一人二本ずつ、合計六本を発射。
「シュートっ!」
──ヒュヒュヒュヒュヒュン
高速で飛んでいく拘束の矢。
韻は含んでいないので悪しからず。
それは一瞬で二人に直撃し身動きが取れないようにしているのだが、残り一人については直撃せず、そいつの周囲を高速回転している。
そこにいるターゲットを中心に渦を巻くように回転している。
「……なんだぁ?」
「……」
──シュパッ
俺が怪しげな動きになった拘束の矢を見ていると、左右から突然、二人の兵士が姿を現す。
こういう不意打ちの場合、『御免!!』とか『覚悟!!』って叫んでくれないと、俺は反応に困るんだけど。
──ドッゴォォォォォォン
「七の型・爆裂機甲撃……」
ほら、俺が反応できなくても祐太郎が反応したじゃないか。
たった一撃で、俺を狙ってきた近未来忍者の一人は吹き飛び、もう一人は全身に拘束の矢が突き刺さって硬直している。
魔導紳士の有視界は、全周囲だぜ?
「オトヤン? こいつらは魔力も闘気も感じなかったが……」
「そうだよなぁ、つまり答えは一つだよ」
足元に落ちている、異世界製フォトンセイバーを拾い上げ、スイッチを押す。
──ブゥン
柄状の魔導具から、魔力を凝縮した刀身が現れた。
うん、こいつって、科学と魔術の融合だわ。
俺たちの世界よりも、遥かに高い魔導科学の結晶だわ。
「科学で魔法を生み出した……オトヤンの言う魔導科学ってやつか」
「そうみたいだね。で、それで正解なんだろう?」
残った一人に聞こえるように、俺が叫ぶ。
すると、そっちの方角から、手を叩きつつ歩いてくる白衣の科学者が一人。
「正解だよ! さすがは特異点だ。それで、私たちに力を貸す気にはなってくれたかな?」
メガネをかけた細身の男性。
ピッタリとしたスーツの上に白衣を着流し、左右には俺が放った拘束の矢を浮かべている。
「……俺の術式を、乗っ取ったのか?」
「違うよ。全ての魔術はね、私の前では無力。私は魔力の上に存在するのだからさ。ということで、速やかに私たちに協力するのなら、君たちの仲間には一才手を出さないと誓おう。だが、逆らうならどうなるか……」
──パチン
ニコニコと微笑みつつ指を鳴らす白衣の男。
すると、俺たちの後方、センチュリーを囲っていた結界の周囲に、未来忍者達が姿を表した。
「この程度の結界は、紙のようなものだ……さぁ、どうするかな?」
これはまた、魔術操作系?
それとも支配系?
いずれにしても、初めての相手だわ。
これが魔族なら問答無用に全力を出せるんだけど、相手が人間ならなぁ……。
まあ、天羽さん達はどうにか守る事にしますか。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




