第三百七十話・油断大敵、瓢箪から駒?(邪魔!! 死にたいのかよって突っ込みたく候)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
異世界・鏡刻界へ攫われた三人の要人を救出するため、俺と祐太郎の二人は最も近いと思われる水晶柱のある国会議事堂へ移動開始。
あれれ、おっかしいぞ〜。
今日の午前中には、俺たちはこの場所にいたはずだぞ〜。
また帰ってくる事になるって、解せなさ120%なんだけど。
どうしてこうもまあ、厄介ごとに首を突っ込む事になるのやら。
ひょっとして、俺のステータスに新しく何か追加されているんじゃないかって勘繰ってしまうレベルだよ。
そもそも、ステータスとかスキルの表示システムって、要は俺が鑑定で知り得る有効なデータだっていうことは、魔皇を通じて理解できてんだよ。
人間の持つスキルって、ある程度は低レベル万能で専門スキルのみが特化して表示される。
だってさ、生まれてから今までに学んだ事や体験したことの全てが表示されるとしたら、それこそゲームのスキルやら塗り絵やらアニメ知識◯◯系とか、全て表示されるじゃないか。
そうならないように、ある程度のスキルは『一般』として表示されているのだそうで。
「オトヤン。そろそろ枕話は終わりか?」
「枕話ってなんだ?」
「いつもの独り言妄想モード。たまに言葉に出ているやつだな」
「俺はデッドプールかよ!!」
そんなことを突っ込みつつ、超高速で魔法の箒で移動中。
海上ルートで飛行しているので、ぶつかりそうな障害物はほとんど存在しないから、とにかく速い!
あっという間に東京湾まで回り込むことができたので、ここからは上陸して公道を制限速度よろしく移動。
夜8時過ぎには国会議事堂前まで到着したわ。
そこまでは良かったんだが。
──カッ!!
大量の中継車両、重装備な撮影スタッフ。
そして政府関係者の群勢。
何かよからぬことでも起きたのか?
「なあ、オトヤン。これってあれか? 夕方の報道を見た各局関係者が、俺たちに同行しようと考えて集まっているんじゃないか?」
「そんなところだよなぁ。ほら、議員の皆さんも困った顔しているし」
とりあえず、この件を起こした元凶とは思えない川端政務官を発見。
そこの前まで移動して着地する。
「川端さん、これって夕方の報道の関係で集まったのですか?」
「まあ、そういうことだろうな。それで、なんで防衛省の俺の前に着地した?」
「ここなら防波堤になるかなぁと思ったから」
「そういう事です」
「まあ、マイクとカメラを構えてここに来たそうな奴らがいるが。それでどうする気だ? 天羽さんたちを助けに行くんだろう?」
「まあ、そんなところですけどね」
「それじゃあ、とっとと行けばいい。水晶柱の周りには機動隊が待機しているから、あれを掻い潜って突撃しそうな気概のある報道関係者はいないだろうからさ」
その説明で、改めて水晶柱を確認。
確かに機動隊と特戦自衛隊時の部隊がガッチリと水晶柱の周りを囲んでいる。
「それじゃあ、行ってきますけど。あまり変なことは考えない方がいいですよ? 先に伝えておきますけど、札幌で夕方開いた転移門と、夜にこの場所で開く転移門とでは座標が違いますからね」
「それじゃあ、また」
右手指二本で敬礼し、それを軽く振り下ろす祐太郎。
お、これは『鍛えてますから!!』ですね分かります。
そのまま報道関係者が走ってくるのを防ぐために力の盾を少しだけ広く、枚数を増やして展開。
ようは魔法の壁を作って、その中を歩くように水晶柱へと向かうという方法を使うことで、人混みに揉み込まれるのを防いだ。
「乙葉浩介さん、JHNの特報一番です!! 取材許可を」
「TVVのニュースワンダーです、異世界は私たちもぜひ!」
「KHKの神田川です。特番を組んでありますので、現地での報道許可を」
あちこちから聞こえる声。
そして無関心な顔でこっちを見ている議員たち。
どうやら、国会議員はこの件にはノータッチ、様子を見ているだけの模様。
「お待ちしていました。どうぞこちらへ」
水晶柱を囲む機動隊たちが道を開く。
それでは堂々と銀の鍵を取り出して、鍵を水晶柱に突き刺さすと、魔力を伝達してから一気に扉を形成。鍵を開けてから躊躇なく扉を開く!
──ガチャッ、ギイイイィィィィ、ザバザバ
そして一気に締める、まだ入らないわ!
水が噴き出してきたんだが、どういう事?
「……コントじゃねーんだから」
「オトヤン、これって偶然、どこかの湖とかに開いたパターンか? これは海水じゃないな、しかも少し熱い……」
「丘陵地とか少し標高が高いところの湖だろうな。ついでに一言付け加えるなら、これはお湯だ。温泉だと思うぞ、この香りは」
そして俺たちの検証に合わせて、機動隊員たちも少しお湯を浴びたらしく指にとって確認している。
俺たちが平気なことを確認してからのチェックだなんて、なかなかに慎重で。
すぐに別の部隊がやってきて、周りに溢れた温泉を回収しているようだが、これは覚悟を決めた方がいいな。
「祐太郎、行くぞ……水中呼吸かける二っ!」
──キィィィィン
俺と祐太郎に魔法を付与。
あとはお湯が外に溢れないように、周りに展開している力の盾を集めて扉の周りに設置。隙間から溢れるのはしゃーないけど、可能な限り水圧を抑えないと泳いで進むことなんて不可能だからさ。
「闘気術・身体強化……よし!
「行くぞ!」
わざと大きな声をあげて扉を開く。
その瞬間に温泉が噴き出すが、1メートルほど噴き出したところで力の盾による壁で外に漏れなくする。
そして飛び込んだ瞬間に、後方からカメラを持った取材班が駆けてくるんだが、素早く扉を閉じてロック。
──シュン
扉も消滅したので、あとは上へと浮上。
呼吸は普通にできているけれど、いつ、どんなタイミングで効果が切れるか不安なので一気にバタ足で水面を目指し。
──バシャァァァァ
「んっぷはぁぁぁぁ。ああ、新鮮な空気がうまいわ」
「水中で息ができるっていうのも、普通じゃ体験できないけれどな。それで、ここはどこなんだ?」
水面から頭を左右に振りつつ見渡す。
あたり一面が湯気に隠れていてよくわからないが、頭上には満天の星空が広がっている。
三日月が二つ重なり合ったような形の物体が夜空にあるんだけど、まさか月じゃないよなぁ。
「ゴーグルゴー、戦え大戦隊……ってダメだ、地図も何出てこないし、魔族反応すら見当たらない。獣人についてはサンプルデータが乏しいから無理、できても生体反応サーチ程度だ」
「まずはここから出ることが先決だな。オトヤン、魔法の絨毯を貸してくれるか?」
「ほれ、これはやるから一つ持っていて構わんよ。似鳥で買ってきた絨毯がベースだから、飯奢ってくれればいいや」
祐太郎に魔法の絨毯を取り出して手渡すと、すぐさまそれを広げて上に飛び乗る。
俺も自前のものを取り出して乗っかると、すぐにブレスレットの効果で登録してある別の着替えにすぐさまチェンジ。
多少体が濡れているのは、乾燥風という生活魔法で乾燥じゃあ。
「はぁ。鏡刻界の魔法って便利だな。闘気法にはこういうのはないからなぁ」
「多分、この手の生活魔法で一番詳しいのは織田だと思うよ。奴が持っている魔導書は生活魔法主体らしいからさ」
「へぇ。そいつは良いな。と、オトヤン、天羽総理の反応は?」
攫われた人たちの中でも、天羽総理以外は会ったこともない。
ついでに魔力波長については調べたことがないから、なんとも言い難く。
「ダメダメ、そもそも波長を知らん。祐太郎たちなら、ルーンブラスレットを装着しているから探しやすいんだけど、そうじゃない人たちについては魔力パターンを一度調べないと無理だわ」
「そうなのか?仕方ない、地道に探し回るか」
「そういうことだな。まずは、岸辺まで向かってから、今後の調査範囲を調べる事にしますか」
そのまま湯気の中を掻い潜って、やがてぶつかるであろう岸辺へと飛んでいく。
やがてスゥゥゥゥッと風がたなびき、湯気が消えていった時。
──バシャッ
「え?」
「お?」
「おや?」
岸辺近くで行水? をしている女性の近くに到着していましたが。
しかも全裸って、待て待て、このあとの反応ってお約束だよなぁ?
「……」
「……」
「……きゃ……」
きゃ?
「キャァァァァァァァァア!!」
魔皇さん天啓眼と合わせての言語解析からの自動翻訳をありがとうございます。
そのまま祐太郎と共に一気に高度をあげると、そのまま絨毯の上で俺と祐太郎は土下座モードだよ。
「申し訳ございません!!」
「済まない、覗こうとして覗いたわけじゃない!」
そう叫んでいるのだが、女性は慌てて水辺から飛び出して、森の中へと走っていったんだが。
やばくね?
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




