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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。
37/586

第三十七話・因果応報、石をも穿つ(トイレのイケボさん)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。

 さて。


 校内での妖魔騒動の翌日からは、校内を漂っているフローターの姿はなかった。

 まあ、万が一ということもあるので、俺と祐太郎は毎日中休みと昼休み、そして放課後には校内を適当に巡回していた。


 そんなこんなで週末、久しぶりの土曜日・休日。

 今後の対策も考えないとならないので、祐太郎と新山さん、そして瀬川先輩は俺のマンションへと朝から集まることにした。

 特に、前回のハングリーミストの件については、未覚醒の瀬川先輩と新山さんが唯の被害者になってしまったので、その励ましの意味も込めて集まっているというのもある。


……



「私‥‥‥何もできませんでした‥‥‥ヒーラー失格です」

「いえいえ、あれは不可抗力としか言いようがないわね。いきなり妖気とやらの中に飛び込んでしまったようですし、魔よけのネックレスが通用しない相手でしたから」

「そうそう。瀬川先輩の言うとおりだ、まさかオトヤンが作った秘密兵器が一発目で通用しないって、誰が想像できる?」

「築地君の言う通りですよ。あれは、対応の不備とかではなくて、運がなかったとしか‥‥ね?」


 必死に新山さんを慰めている祐太郎と瀬川先輩。

 俺は二人に慰め役を任せて、さらなる妖魔からの攻撃を防ぐアイテムを作ろうとしている。

 

「妖魔の発する魔力が妖気だろ? それを防ぐ結界を生み出すアイテムだよなぁ‥‥‥」


 魔よけの御石は下級妖魔にしか効果がない。また学校まで中級妖魔が現れたとき、今度は無事であるという保証はどこにもない。

 それなら、妖魔をとにかく調べまくるといいのだろう。

 でもどうやって? 妖魔を捕獲する?

 それこそどうやってだよなぁ。

 綾女ねーさんに聞くのも手だけれど、いつもいつも頼りっぱなしというのもなぁ。



「うーん‥‥どこかに適当に、実験台になってくれるいい妖魔いないかなぁ‥‥‥」

 

 一人で考えていても仕方がないので、祐太郎たちのもとに向かったのだけれど、祐太郎がいない。

 はて、どちらに?


「新山さん、ユータロはどこ行ったの?」

「お手洗いだそうです、はい」

「築地君はさっきからジュースをがぶ飲みしていましたからね‥‥」


 そう説明してくれる新山さんと瀬川先輩。

 まあ、今日は暑いから仕方ないよなぁ。俺も結構飲んだし、トイレも近くなるわ。


「そうか。ユータロがいないんじゃ、後で話進めるとするか」

「何かあったのですか?」

「いや、実はね、新しい魔導具を作りたかったんですけれど、どうしても妖魔のデータが足りなくてですね。妖魔のサンプルが欲しいので何匹か捕まえたいんだけれど‥‥」


 そう2人に告げてみたが、魔法や闘気が使えない先輩と新山さんには、難しい案件であった。

 色々と考えたりメモしたりと、アイデアを探しているようであるが、まるで締め切り前の同人作家のように部屋を徘徊したり、気晴らしに週刊誌を読み出したりしているだけに見える。


  

「妖魔の生態をもう一度考えてみたほうがいいな。となると、困ったときのタケもっこす先生か綾女ねーさんだよなぁ‥‥‥という事で、ご用意しました俺のスマホでございます」


 linesアプリで登録しているタケもっこす先生に電話を入れてみることにしよう。

 いつも綾女ねーさんにおんぶに抱っこだから、たまにはね。


『プルルルル‥‥‥ピッ‥‥‥はい、タケもっこすですが、どうしましたか乙葉さん』

「あ、御無沙汰しています。実は妖魔の生態について色々と教えてほしいのですが、お時間ありますか?」

『あら、御無沙汰していますね。妖魔についてですが、何が知りたいのですか?』

「妖魔の発している妖気について。それから身を守る方法とか、妖気を感知する魔術とかはありますか? それらの研究をしたいので妖魔を捕獲したいのですけれど」

『あ、随分と積極的になりましたね、お姉さんとしてもうれしい限りですけれど。妖気から身を守るのなら『妖気遮断』の魔術が必要ですし、妖気を感知するのなら、ずばり『妖気感知』です。妖魔を捕獲するのであれば、ぎりぎりまで弱らせてから封印するといいでしょう』

「‥‥‥おおう、先生のおっしゃっている事は理解できますが、それらの魔術はどうやって手に入れるので?」

『古い文献ですね。まあ、相手は精神生命体ですから、それらに対応する手段としてはいろいろな伝承が残っていますから、それらを調べるとよろしいかと』


 なるほど参考にはなった。

 なら、そのあたりの魔導具を作ればいいのか。

 なんだか、ここ最近はずっと俺は錬金術師なんだよなぁ、クラフト系は嫌いじゃないけれど。


『では、締め切りが近いのでこれでいいかしら?』

「はい、ありがとうございます」

『お礼は一晩付き合ってくれればいいわよ』

「はい、祐太郎を好きにしていいので、一晩じっくりと絞ってあげてください」

『大切なお友達を売るなんて、悪い人ね‥‥‥じゃあ、よろしく伝えてくださいね。一度でも肌を合わせた相手なら、すぐに転移できますから‥‥‥プツッ』

「え?」


 最後の言葉がすっごく怖いんですけれど。

 そんな話をしていると、祐太郎もトイレから戻ってきた。


「なあオトヤン、俺を売っただろ?」

「売ったよ。情報代として……って、もうトイレから戻ってきたのか」

「‥‥ん。まあいいか。たまには楽しみたいからなぁ」

「なら、俺もちょいとはばかりに」


……


 人間、飲んで食べていると生理現象はつきものだよね?

 急いでトイレに飛び込んだのは良いのだけれど、なんか雰囲気がいつもと違う。



「ふぅ。まさか、この雰囲気は妖魔じゃないよなぁ」

『いや、妖魔だが?』


 確かに聞こえた声。

 しかもイケボ、cv.杉田智和って感じ。

 このトイレには、妖魔がいる。


「言葉を理解できるということは、中級に当たる妖魔か? なんでここにいるかなぁ」

『へぇ、俺のことを分かる人間がいるとはねぇ。まあ、立ち話も何だから、座れや』


──パカッ

 妖魔の声と同時に、トイレの蓋が自動で開く。

 まさかとは思うけれど?


「あの、その、トイレに憑依しているのか? それでいて、いきなり座れって、まあ、ここは座るところだけどさぁ……変態妖魔か?」

『そうさ。俺はトイレの妖魔、人の心の中の感情の一つ、色欲を司る妖魔の配下さ。さぁ、君も全てをさらけ出して座りなよ‼︎』


 あ〜、これはいけない妖魔だわ。

 女性陣が被害者じゃなかったのが幸いだわ。


「因みにだが、お前いつからいた? 俺の友達に不埒な真似をしたか?」

『不埒? いやいや、そんなことはしないぜ。色々と拝見させてはもらいましたがな、そうだな、今度からは一言お礼を……』


 うん、退治対象確定だ。


「いや、お礼なんて言わなくて良いからさ。取り敢えず滅してあげるから……レーザーブレードっっっ」


──ヒュゥゥゥゥ

 先日購入したマナフォトンセイバーを空間収納チェストから引き抜くと、すぐさまセイバーモードで起動する。

 マナで形成された真紅の刃が音を立てて振動すると、気のせいか便器の妖魔さんが震えているようにも感じる。


『ちょ、おま、いきなり滅しにくるってなんなん? 俺妖魔だよ? よし、俺と取引しよう。俺はあんたの指定したトイレに憑依する、そこで見聞きしたもの全てをお前に教えてやるから、俺を滅するのはフバスュっっっ‼︎」


──ズバァぁぁぁぁ

 ギャバンなダイナミック斬で便器の妖魔を便器ごと真っ二つにする。

 どうやら魔核も真っ二つにしたらしく、トイレの中に砕け散った魔核が散らばり、蒸散していく。


「お前の間違いはひとつだ。俺はスカ趣味じゃないし盗撮は滅んでしまえ案件なオタクだ」


──ジョボボボボホ

 壊れたトイレから水が溢れそうになったので、急いで元栓を閉めて外に出る。

 やべぇ、本日はトイレ使えません。


「あ〜、トイレの妖魔を倒した時にトイレ壊したので、今日は札駅まで行ってトイレしないとならんのよ。急いで業者に連絡するけど、今日中に直るかわかんないわぁ」


 ホウレンソウは基本。

 妖魔をトイレで滅したことを説明すると、三人とも頭を押さえている。


「なんでトイレに行って妖魔退治してくるかなぁ。それに、その魔導具はあれか? オビワンなケノービィの光るあれか? 俺も欲しいんだがハウマッチ‼︎」

「ユータロには籠手があるでしょうが、それを構えて叫んでみたら、チェンジ!アガートラームって」

「なんか色々と混ざっているが、オトヤンの話だと、俺は女性で巨乳じゃないとならないのだが」

「中の人はひん……ゲフンゲフン、それはまあ置いておくとして。クラシアンに電話してくるわ」


 トイレ周りと水漏れには、出張サービスのあるクラシアンが便利だよね。

 さて、俺と祐太郎で話していると先輩や新山さんが置いてきぼりになるので、この辺で勘弁してやろうそうしよう。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 さて、それよりも問題の魔導具開発について。 

 いっそ面倒なので、サーチゴーグルを作ろうと思ったのだが。

 カナン魔導商会で購入した魔導具でも、サーチゴーグルはかなりの高性能魔導具である。そんなものを量産化プロダクションで増やそうものなら、どれだけの素材と魔力を消費することか。


──ヒュゥゥゥゥ

 三つの錬成魔法陣が、音を立てて高速回転している。

 カナン魔導商会で購入した素材の合計金額は2億3800万クルーラ。

 それでも足りないものもあり、急遽、俺がダイヤモンドに魔導化を施して誤魔化した。

 なので、術式の成功率は7割と低い。


「オトヤン、なんだかいつもの魔法陣とは違うが大丈夫なのか?」

「ふーあーゆー。成功率は7割、だが、俺にとっては成功か失敗か、五分と五分‼︎」

「乙葉君、それはダメよ、下がっているわよ‼︎」


 あ、本当だ。

 いやぁ、いつものノリで返答したんだけれど、それはダメだわ。


──ブシュゥゥゥゥ

 なんだか梨汁が飛び散るような音と共に、魔法陣が停止する。

 サンプルとして配置しておいた俺のゴーグルは問題なし。

 そして残り二つの錬成魔法陣を確認する。


「ふむ、こっちは俺のゴーグルの廉価版か。鑑定とサーチの能力だけが残った『サーチゴーグル』だな。形状が……なんでイヤリング?」


 ゴーグルとして作ったのに、何故か小型化している。まあ、新山さんも瀬川先輩もアイテムの透明化はできないから、これはこれで良いのか。


「はい、これは新山さんの分ね。大切に使ってね?」

「あ、ありがとう、大切にしまっておくね?」

「「 だから、使ってよ‼︎ 」」


 そう俺も祐太郎も同時に突っ込む。

 まあ、この前のやり取りで分かっているから、新山さんも笑いながらイヤリングを装備した。


 そして問題は、このガラクタ。


「……カメラだよね?」

「カメラだなぁ。どうするよ?」


 もう一つの錬成魔法陣の中には、古いカメラが安置されている。

 縦型で二眼レフのクラシックカメラ、形状はローライフレックスに酷似している。

 

「これは、まあ、形状はともかくとして問題はカメラの性能だね。あとは鑑定だけ。これどうする? 瀬川先輩の分を作り直さないとならんぞ?」

「そうだよなぁ。オトヤン、魔力残っているか?」

「いや、空っぽではないが結構きつい。ついでにカナン魔導商会の素材の在庫もない、次やったら確実にぶっ倒れる」


 これは参りましたなぁ。

 どうしたものかと考えていると、瀬川先輩が戻ってきた。

 いや、いつの間に席を外していたんだろう?

 あ、電話が掛かってきていたのね?

 俺が錬成しているあいだにですか。


「先輩、電話何かあったのですか?」

「トイレの次は電話に憑依している妖魔ですか? まだいるのなら、俺が締めますよ‼︎」

「いえいえ、母からの電話ですわ。今日は調子が良いそうで、明日病院に行く前にお使いを頼まれただけですわ


 ホッ。

 それはよかった。

 けど、最近は何かあると妖魔に結びつけてしまう節があるから、気をつけないとね。


「あ、あの、先輩、それでですね、このイヤリングは先輩が使ってください。乙葉君が作ってくれた鑑定用の魔導具なのですけれど、もう一つは失敗しちゃって」


 新山さんがイヤリングを外そうとするが、瀬川先輩はそれを手で制して、代わりにカメラを手に取った。


「私はこちらを頂いて良いかしら?」

「あ、それは構わないですけど、使い勝手が良くないと思いますよ?」

「それもよいですね」

 

 にこやかに笑い、瀬川先輩は俺たちにカメラを向けてシャッターを切った。

 まあ、フイルムが入ってないから何も出てこないけれど……。


──ジーッ

「「「 写真が出てきたぁぁぁ 」」」


 これには驚いたけれど、出てきた写真を見て瀬川先輩がクスッと笑った。


「まあ、この写真は人には見せられないので私が取っておきますわ」

 

 そう告げて写真を胸元に仕舞い込む。

 そこに仕舞われたら、俺たちには無理。




誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


・今回の判りずらいネタ

 技のデパート / 舞の海

 宇宙刑事ギャバ○

 アガートラーム /グランドオーダーなシンフォギア


です‼︎



……………


●現在の乙葉の所有魔導具(Eマークは常時装備)

 センサーゴーグル(空間収納チェスト内、換装可能)

 (TS/鑑定/アクティブセンサー)

E.WMワイズマンリング(換装可能)

 (耐熱・耐打撃・耐斬撃・吸精に対するレジスト、アクティブブースト、透明化、フライ、レジストストアー×1チャージ)

E.身代わりの護符、(換装可能)


空間収納チェスト

 魔法の箒(換装可能)

 中回復ポーション×2

 軽回復ポーション×5

 病気治癒ポーション×1

 錬金術道具一式


・カナン魔導商会残チャージ

 9億8500万クルーラ



●築地所有の魔導具(Eマークは常時装備)

 センサーゴーグル(TS/鑑定/アクティブセンサー)

E加護の卵『31/100、左手ブレスレット型』

E魔よけのネックレス

E魔闘家の指輪(耐熱・耐打撃・耐斬撃に対するレジスト、透明化、レジストストアー×2チャージ)


収納ポータルバッグ内

 魔法の箒

 大回復ポーション ×5

 中回復ポーション ×25

 軽回復ポーション ×5

 病気治癒ポーション×5

 ブライガーの武術書



●新山所有の魔導具(Eマークは常時装備)

Eレジストリング(耐熱)

E魔よけのネックレス(装備)

Eサーチイヤリング(鑑定、サーチ)

Eパリ・コレの腕輪(衣服6着登録)


収納ポータルバッグ内

 空飛ぶ絨毯

 加護の卵『25/100、未覚醒、未固定状態』

 病気治癒ポーション×1

 軽回復ポーション×5

 ダイエットドロップ×三瓶(36粒)

 魔導書(契約済み、未覚醒)




●瀬川所有の魔導具(Eマークは常時装備)

Eレジストリング(耐熱)

E魔よけのネックレス

E加護の卵『25/100、未覚醒、眼鏡型』

Eパリ・コレの腕輪(衣服6着登録)


収納ポータルバッグ内

 魔法の箒

 軽回復ポーション×5

 ダイエットドロップ×三瓶(35粒)


 魔導書(契約済み、未覚醒)

 心写カメラ(鑑定、サーチ、感情看破)


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― 新着の感想 ―
[一言] >ずばり『妖気感知』です 父さん陽気です くそあついです
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