第三十四話・人の振り見て八面六臂(なんとなく錬金術)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。
八月中旬の、NET-TUBE動画にて。
透明人間って分かりますか?
ほら、映画や漫画で昔流行った、透き通った人間の事ですよ。
それを初めて見たのは、8月の中旬。
上野にあるホテルの外、小さな庭があるところでした。
高校生らしい男の子が二人、息を切らせてそこまでやってくると、突然スーツと消えたのですよ。
最初は疲れ目かな? 目の錯覚かなって思ったのですけれど、翌日も同じ場所に男の子たちがやってきて、ス〜ッと消えたのです。
二日目の時の映像はしっかりと撮ってあります、これがそうですよ‼︎
そう叫ぶNET-TUBEプレイヤーの横では、確かに二人の高校生が透明になるシーンが映っていた。
顔の部分は個人情報なのでフィルターが掛けられているが、最初は高度な画像処理だとか、自己紹介乙とか叩かれていた。
けれどNET-TUBEの他のユーザーたちが解析して、それは本当に姿を消した人物がいるという結論が出た。
これに対してboyaitterでも賛否両論の意見が出て、夏が終わる頃にも透明人間は本当にいるとか、異世界に拐われた人間であるとか、さらには異星人の襲来であるとか様々な噂が広がっていった。
それと同じタイミングで、今年のコミックマーケットのコスプレイヤーにプロのマジシャンが参加していたという噂も流れ始めていた。
詳しく見てみると、天才マジシャンたちによる『ヘンリーフォッカーと魔導の城』のコスプレが最高に出来が良かったと動画付きで絶賛されていた。
特に魔法の箒で宙に浮かぶマジックについては、プロのマジシャンでもその種がなんであるのか、全くわからなかったという。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「……オトヤン、ネットの世界が騒がしいぞ」
「言うな、少しだけ後悔している」
いつものようにくそ面白くない授業を終えて部活にやってくる。
美馬先輩と高遠先輩は大会が近いらしく、いつものように欠席。なので、俺と祐太郎、新山さん、瀬川先輩が揃った時点で俺が部屋に沈黙空間を施すと、早速ここ最近になって騒がしくなっているNET-TUBEの動画についての話し合いを始めることにした。
それでなくてもさ、俺、大通り公園に出没する謎のストリートマジシャン・甲乙兵って名前でNET-TUBEやboyaitterで取り上げられていたのにさ、ここに来てさらにブレイクしちまったよ。
ブレイク〜ブレイク〜、あなたの街を〜って感じだ。
「あの、このコスプレってどうやっているのですか?」
「乙葉君の場合、物を出し入れするのは空間収納を使うといくらでもできると思いますけれど、この空中浮遊も魔法の一つなのですか?」
そう真面目に聞かれてもなぁ。
「オトヤンの使える魔法には、まだ飛行系はないぞ。俺はほら、軽気功っていう体重をゼロにする闘気術式があるから、浮かんだりゆっくりと飛ぶぐらいはできるけどな」
──フワッ
説明の最中に祐太郎が武術書を取り出し、軽く床を蹴って椅子ごと空に浮かんだ。
椅子にも闘気を循環させたので、自分と椅子どちらも一緒にプカプカと浮かんでいる。
「な、成る程。では、乙葉君も築地君に術式をかけてもらったのですか?」
「いや、これを使っただけだから」
──シュンッ
素早く手元に魔法の箒を呼び出すと、それに跨って浮かび上がった。
「えええええ‼︎ 乙葉君、それが前に話にあった空飛ぶ魔法の箒ですか」
「そ、この前、錬金術でガッツリ稼いでチャージしてさ、それで買ったやつだね。俺とユータロはこれで浮かんで、手品のふりをしていただけだよ」
「そ、それは私たちも使えますか?」
「まあ、使えると思うけれど……欲しいの?」
──コクコクコクコク
首振り人形のように肯く二人だけど、俺はカナン魔導商会を開いて在庫を見る。
すると、魔法の箒の在庫はあと一つしかなく、代わりに空飛ぶ絨毯が販売されている。
「あ〜、あのですね、魔法の箒はあと一つしかなくてですね、その代わり空飛ぶ絨毯が販売されてますけど、どうします?」
「あ、あの、それって高いの?」
「魔法の箒は……今日は一億五千万で、空飛ぶ絨毯は三億円ですね? あ、フライングリングもあるか、じゃあまとめて買っちゃいますね?」
「「 いや、待って‼︎ 」」
──ポチッ
そんな、待てと言われても待たないよ?
在庫がいつ無くなるかわからないんだからね。
実際に、この前魔法の箒を購入した時は在庫はあったしもっと値段が下がっていたんだよ? でも今見ると在庫は一つしかないし値段も上がっているし。
──プシュゥ
机の上に宅配魔法陣が輝くと、そこに箒と絨毯あとゆっくりと指輪が現れた。
「それで、誰がどっちを使いますか?」
そう二人に問いかけてみると、二人とも部屋の隅に移動して話し合いを始めていた。
なので、先に俺は錬成魔法陣を発動すると、試したいことを実践してみる。
「ん? オトヤン、何か錬成するのか?」
「持ってる指輪を全部一つにする、これが出来たらユータロのも纏めるから」
「成る程、できる限りコンパクトにか、いいね」
楽しそうにサムズアップして来るので、俺もサムズアップし返してみる。
そして一か八かでまとめてリングを全て融合してみると……
『ピッ…融合完了。マジックリングが完成しました』
いつも思うけどさ、この錬金術や鑑定ができたときに脳裏に走るこの声はなんだろうね。
世界の声とかかなぁと思ったけどさ、そうでもないし。
俺のアビリティに大賢者でもあるんじゃないかって慌てて見たこともあるんだよ?
「お、完成したぞ、えーっと……ワイズマンリング? なんだこれ?」
『ピッ…ワイズマンリング。耐熱・耐打撃・耐斬撃・吸精に対するレジスト、アクティブブースト、透明化、フライ、レジストストアー効果が統一されたリングです。乙葉浩介のみ装備可能、自動的に魂登録の処理も引き継がれています。賢者のみ装備可能』
んんん?
なんか作ってはいけない物を作った感じですよ?
俺、童貞散らしたはずなのに賢者になったぞ? あ、賢者タイムを経験したからじゃって煩いわ。
「まあ、気を取り直して、次はユータロのやってみるか」
そのままユータロのリングを全て受け取って、融合化してみる。
すると、俺の時と同じくしっかりとリングは一つになった。
『ピッ…魔闘家の指輪。耐熱・耐打撃・耐斬撃に対するレジスト、透明化、レジストストアー効果が統一されたリングです。築地祐太郎のみ装備可能、自動的に魂登録の処理も引き継がれています。魔闘家のみ装備可能』
はっはっはっ。
「よお、美しき魔闘家の築地君。君のリングが完成したよ?」
「なんで幽遊白書ネタ? 俺は七色のなんちゃらなんて使えないぞってなんじゃこりゃぁぁぁ」
「な、玄海師範に殴られてこいな」
「はぁ、俺のはまあ、魔法も近接もできるし、闘気も纏えるようになったからわからなくもないが、オトヤンはどんな職業になった?」
ふっふっふっ。
聞いて驚け見て腰抜かせ。
「賢者な」
「あ〜、エロいことして賢者タイムになったら発動する奴か?」
「ちっがうから、普段から賢者だから。エロいことして賢者になれるなら、お前とっくに大賢者だわ」
「フッ、褒め言葉として取ってフベシッ」
──スパァァァァァン
思わず顔面にハリセン叩き込んでしまったわ。
まあ、それは良いとして、あっちの二人も話し合いが終わったようで、モジモジとしながら手をあげている。
「乙葉君、話し合いが終わりましたよ。私は魔法の箒を、新山さんは空飛ぶ絨毯を頂けると助かるのですが」
「あ、そうなの、じゃあすぐに登録するね?」
「あ、そ、それでね、御礼ってどうすれば良いの?私の貰う空飛ぶ絨毯って三億円なんでしょ? 先輩だって一億五千万ってさっき話していたよね?」
「この前も色々と貰ったから……お返ししないと」
あ、そう言えば。
まあ、それならそれで、報酬はしっかりともらいましょうか。
「鉛筆を二十ダースでお願いします」
「「 え? それでいいの? 」」
呆然とする二人に頷いてみせる。
そのまま二人は外に買い物に出かけて鉛筆を二十ダースずつ、合計四十ダースを買ってきて俺に手渡してくれた。
そして早速全ての鉛筆を錬成魔法陣に入れると、一気に分離・抽出・変形・融合を行なってダイヤモンドを作り出した。
これには三人とも目を丸くしているではないですか。
「えええ? あ、あの、それって本物?」
「おう。鉛筆480本から作り出した、45ctのダイヤでございます。まあ、芯が硬い奴だと炭素が少ないからロスになるし、メーカーによって炭素の質も違うみたいだから、これはこれで……そして買取査定……そのまま売り飛ばして完了」
しっかりと査定してもらった結果、二人の魔法の箒と空飛ぶ絨毯は楽々回収完了。
この前の収納バッグとかの代金分もついでにしっかりと回収できたし、無問題あるよ。
二人には画面が見えないからね。
『ピッ……高額査定により、当面の間はダイヤモンドの買取は中止させていただきます』
やっちゃった、テヘ。
こうなる予感はしていたけれどね。
「大体今の大きさでこの前の分と今回の分が同じぐらいだから、貸し借りなしのジャストフィット。あとは二人で好きに使ってみて」
「ええ。何処か空き地でも行って練習してみますね?」
「私は自宅の庭で試しますよ。箒ですと、上手く跨がらないと辛そうですし」
「横座りすれば? サマンサのように?」
「そうですね、それで練習してみます」
あとは魔法の箒と空飛ぶ絨毯の取説を日本語訳して二人に手渡すと、今日はもう部活にならないぐらい魔導具の話で盛り上がってしまった。
●現在の乙葉の所有魔導具
センサーゴーグル(TS/鑑定/アクティブセンサー)
WMリング(耐熱・耐打撃・耐斬撃・吸精に対するレジスト、アクティブブースト、透明化、フライ、レジストストアー×1チャージ)
魔法の箒
中回復ポーション×2
軽回復ポーション×5
病気治癒ポーション×1
身代わりの護符
・カナン魔導商会残チャージ
13億25万クルーラ
●築地所有の魔導具
センサーゴーグル(TS/鑑定/アクティブセンサー)
加護の卵『31/100』(左手ブレスレット)
魔闘家の指輪(耐熱・耐打撃・耐斬撃に対するレジスト、透明化、レジストストアー×2チャージ)
収納ポータルバッグ
魔法の箒
大回復ポーション ×5
中回復ポーション ×25
軽回復ポーション ×5
病気治癒ポーション×5
ブライガーの武術書
注)サーチ、シー・インビジブル、透視効果は、アクティブセンサーと同化。
レジストリングはホテルで融合化済み
●新山所有の魔導具
収納ポータルバッグ
空飛ぶ絨毯
加護の卵『25/100、未覚醒』
レジストリング(耐熱)
病気治癒ポーション×1
軽回復ポーション×5
魔導書
●瀬川所有の魔導具
魔法の箒
収納ポータルバッグ
加護の卵『25/100、未覚醒、眼鏡型』
レジストリング(耐熱)
軽回復ポーション×5
魔導書
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりづらいネタ
奥様は○女
魔○少女まどかマギカ
幽○白書 / 冨○義博 著
ハズレ赤○道士は賢者タイムに無双する /ほ○ち(平○正和)著




