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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第六部・饗宴なる修学旅行、或いは平穏な日常編

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第三百三十九話・融通無碍? 寝耳に水だよ?(修学旅行だって、浮かれている間に大事件)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 先日の、乙葉浩介を招いての『対魔法戦闘想定訓練』は、陸上自衛隊及び特戦自衛隊の完敗に終わった。


 たとえ魔術師であろうと、対人戦の経験はないだろう。

 格闘戦術なら、我々でも勝ち目はある。

 たとえ個としての戦力が特化していても、部隊戦となると話は別。

 情報を制するものこそが、今は戦いを制する。

 

 そのように驕っていた自衛隊は、その個に対しての認識を改め直す。

 だが、これが官僚各位の耳に届いた時、また国会では討議が始まっていた。

 

「今は平和な世に戻りつつありますが、いつ、また使徒や異世界からの進軍が始まるのかわからないではありませんか? 今こそ、陰陽府の再編を検討するべきではないのですか?」


 今日も燐訪議員は饒舌に語る。

 過去において、その陰陽府を解体したのは彼女の政権時代だが、そんなことは棚に上げて倉庫にしまって鍵をかけたのか、今は陰陽府容認派に舵を取り直している。

 

「陰陽府再編については、重要な課題であると考えています。政府としても、早急に綿密な打ち合わせを行うべきであると考えていますが。いかんせん、先代陰陽府の責任者であった方々は引退しており、あたらしく陰陽府を取り仕切る後継者がいないという問題もあり。また、政府組織として陰陽府を組み込む必要があるのかという懸念もあります……」

「そんな弱気でどうするのですか? 今や魔族及び使徒に関しての研究が最も進んでいるのは、アメリカという噂まで流れています。対妖魔機関ヘキサグラム、それに追従し、追い越すレベルまで高めなくてはなりません。二番如きに甘んじて良いのですか? 目指すならは一番でしょう!」

 

 この燐訪の言葉に苦笑するものも少なくはないが、言っていることは的を射ているために、賛同する声も多い……。


………

……


──北広島西高等学校・魔術研究部

「ということで、本日の国会は大荒れだったようです。ちなみにお父様の元にも、参考人として説明をお願いしたいという申し出がありまして、どうしたものかと考えているところなのですよ」

「はぁ。有馬さんも大変ですね。日本政府が動いたということなら、有馬博士を中心にヘキサグラムのようなものを組織しようと考えているのでしょうね」


 沙那さんと新山さんが、難しい話をしている。

 うん、その話の中心である『日本版・ヘキサグラム』の設立については、俺にも打診があったんだよ。

 高校を卒業したら、そこで魔導具の研究・開発をお願いしたいってさ。

 魔導科学を広めようと考えている俺にとっては、まさに渡りに船な話なんだけどさ。

 今回は断ったんだよ。

 大学にいって、失いつつある青春の時間を取り戻したいからさ。

 

「では、リナちゃんはこれをお土産に欲しいです!!」

「ほいほい、リナちゃんには銘菓『鬼殺し饅頭』だね。さて、荷物が多くても心配はないんだが、祐太郎、自由時間の行動はどうする?」

「そうだな。DSJ、ドリーマーズスタジオ・ジャパンで遊び尽くすというのもアリなんだがなぁ」

「朝から夕方まで。俺は賛成だが、他のメンバーがどういう意見を出してくれるか」


 ん?

 俺たちがやっているのは、6月末に再開される修学旅行の打ち合わせですが、何か?

 昨年10月に予定されていた修学旅行だけど、魔族絡みの事件が多かったでしょ? 特にサンフランシスコ・ゲートが開いたり俺が乗っていた飛行機が襲われたりって、いろいろな事件が重なりすぎた挙句、旅行先での生徒の安全を確保できる保障がないとかで、旅行会社からもキャンセルの申し出があったんだよ。

 そこからはもう、スケジュールを調整して延期、さらに使徒事件でさらに延期と伸び伸びになってね。


 3年に進級した時、6月に希望者のみで修学旅行を再開するっていう話に落ち着いたんだけどさ。

 これがまた、細かいルールがあって。

 魔術研究部は全員、飛行機の同乗は禁止。海上を魔法の絨毯で移動するようにという話になりましたが。

 なお、俺たちが何かやらかした時のために、特別顧問である要先生も同行することになりましたが。

 宿の周囲には、俺が結界装置をセットして安全を保証することになりましたが。

 ここまでしてでも、修学旅行は再開したいそうで。

 まあ、俺としても再開したいというか、何が悲しくて修学旅行まで中止にされなくちゃならんのだと、現代の魔術師も全面協力ですが。


「初日は飛行機で移動、京都と奈良で二泊するだろ? その翌日が大阪方面で自由時間。そこから夜に新幹線で東京にいって一泊して、翌日の昼に北海道へ戻る……なかなかの強行スケジュールだよな」 

「しかも、俺は要先生と一緒に、魔法の絨毯で先行して宿に結界装置をセットするんだぜ」

「バスで移動中とか、新幹線とかは守れるのか?」

「まあ、バスはなんとかできるけど、新幹線は無理だから。俺たちは外を飛ぶ。なにか解せないのだが、他の連中を守るためなら、仕方ないよなぁ」


 配られたばかりの旅の栞を見ながら、祐太郎と細かい時間調整を進める。

 すると、沙那さんのところから新山さんも戻ってきた。


「こっちは、どんな感じ?」

「大阪でDSJを遊び倒すことは決定。新山さんたち女子は、どうするんだ?」

「ん〜。立花さんたちも、私と一緒に行動したいっていうから、全員一緒でいいと思うよ? 同じ班なのだからね」

「それもそうか。でも、新山さんって、医療補助も頼まれていたよね?」

「うん。そのための書類を対妖魔機関の第ニ課に提出に行かないとならないのよ。それは明日でも大丈夫なんだけどね」

「俺たちは、人の怪我を癒す魔法が使えないからなぁ。新陳代謝活性化と」

「闘気による自己回復.あとはオトヤンが用意する軽回復薬ぐらいか」


 やはり新山さんの神聖魔法による治療については、かなり注目されているようで。外で、俺たち以外に、緊急時に魔法治療を行うための許可をもらわないとならないらしく。

 緊急時の魔術行使宣言を簡略化するんだって。

 そのために書類の提出と許可証を発行してもらうというのも、なにか、日本政府に魔法を使うことを制限されているようだけど。


「まあ、こればっかりは仕方ないよ。こうやって許可制にしないと、誰彼構わず私に治療を求めてきちゃって、お医者さんが廃業するって医師会からも相談されたらしいからね」

「ま、逆に言えば国が制限することで、守ってくれているってことだからなぁ」

「俺は良いように使われまくってますが?」

「オトヤンは、まあ、ガンガレ」

「アトランジャー派なんだがなぁ。ガンガルはちょっと……」


 そんな馬鹿な話ができるだけ、日常も取り戻し始めたってことで。

 このまま何も……はい、これ以上は話しません、変なフラグが立つからね。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──乙葉浩介宅

 学校から戻って、カナン魔導商会を開く。

 いつもの日課だから、これは忘れずにやっている。


「そう言えば、最近は新しい提携店って増えないんだよなぁ。まあ、異世界の店とかで増えるとしても……」


 カナン魔導商会で、魔導具とかの素材も間に合っている。

 サイドチェスト工房とウォルトコもあるから、武具も大丈夫だしこっちの世界の商品もある程度は取り寄せられる。

 うん、新しく何か増えるとしたら、全く異なるショップじゃないと保留だよなぁ。


「ないなぁ。大抵はカナン魔導商会で終わるから、まあ、いいか。それよりも」


 溜まりに溜まりまくった、この発注依頼。

 気のせいかもしれないけど、だんだんと種類も量も増えてきてさ。

 ウォルトコで仕入れできるものは構わないんだけど、それ以外のものについては、俺が都度、買い物に出かけないとならないんだよ?

 まあ、効率よくチャージできるからさ、俺としても助かっているんだけど。


「あ〜、なんだろ、これ?」


 発注処理を全て終わらせたら、突然メッセージアイコンが点滅したんだけど。

 サイドチェスト工房かな?


──ポチッ

『ピッ……発注依頼及び査定に、乙葉浩介様が作った魔導具及び各種ポーションが解放されました。今後とも、よろしくお願いします』


 おや?

 おやおやおや?

 俺の作った魔導具とかも、査定してもらえるのか。

 でも、これって正式な金額を知ることができるチャンスだよ?


──ピッ

 さらにらもう一件。

 今度はなんだろうと、ポチッとメッセージを開いで、俺は言葉を失った。


『いつもお世話になっております。

 この度、乙葉浩介さまの納品される商品が好評をいただき、私どもとしては嬉しい限りです。

 つきましては、近日中に『札幌市』に、カナン魔導商会・地球支店を開店いたしますので、今後ともお付き合い頂けるよう、よろしくお願いします。

 業務内容はアクセサリー販売及び占いの館を予定しております』


 へぇ。

 カナン魔導商会、ついに札幌にも出店かぁ。

 出店……。

 え? 出店? どういうこと?

 占いの館? アクセサリー販売?


「ちょ、ちょっと待て、これは重大事件じゃないのか」


 慌ててLINEを起動して、祐太郎や新山さんとか、カナン魔導商会を知っているメンバー全員に連絡を入れたんだよ。

 それで急遽明日の放課後、ティロ・フィナーレで細かい作戦というか、話し合いをすることにしたんだ。

 

「ネット通販が使えなくなるわけじゃなく、でも、誰でも買える店を作るってことだよな。支店? 支店ってことは、何か取り扱いするとか、俺からじゃなく直接仕入れをするとか、そういう事だよな? チャージがやばくならないか?」


 急いでその辺の確認のため、カナン魔導商会に質問のメールを送る。

 修学旅行の資料とか、どこでお土産を買えばいいかとか、そういうことを楽しく調べたかったのに、いきなり状況が慌ただしくなってきたんだけど?


『ピッ……カナン魔導商会・札幌支店では、魔導具関係の販売は行えません。

 また、地球の商品を私たちが直接仕入れることもできません。

 普通にアクセサリー販売及び、少し効果のある魔法的占いを行うだけです』


 ふぁ?

 とりあえず、俺のネット通販スキルはセーフ。

 カナン魔導商会とも普通にお付き合いできるようだし、まずはホッと一安心。


 しかし、なんでいきなり札幌進出したんだろう?

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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― 新着の感想 ―
[一言] > あとはオトヤンが用意する軽回復薬ぐらいか 治療魔法が医師法に引っかかるなら、魔法薬は薬事法に引っかからないのかしら? 売ったり医師が使ったりしたら引っかかるけど、個人で使う分には民間療…
[一言] アトランジャー・・・某ゲームで助っ人に出て瞬殺されていたなぁ
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