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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第五部・世界とんでも動乱編
327/586

第三百二十七話・森羅万象? 万物流転しすぎじゃね?(切り札は遅れてやってくる、敵味方関係なく)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

──静岡県・永宝山火口付近

 瀬川先輩が儀式を開始して、すでに二時間。

 龍脈洞を流れるマナ、それを深淵の書庫アーカイブに取り込んでエネルギーに変換する儀式は順調。

 形のないマナを汲み上げて、それを使って地球全域の好きな場所に浄化の光を注ぐっていうのは、さすがに俺ちゃんでも無理なんだよ。

 

 そんでもって、俺ちゃんは俺ちゃんなりにできることをするって事で。


──キュィィィィィィン!!

魔導強化外骨格メイガスアーマー・零式。フルバースト」


 全身に纏った零式装甲。

 さらに手にしたフォトンセイバー。

 この二つをリンクし、さらに体内の神威を魔力に変換し、零式とセイバーにダイレクト接続。

 ゴーグルの中に稼働時間が映し出され、カウントダウンが始まったんだけど。


「……三日間は、連続で戦えるか。悪いな使徒の御一行様、ここから先は俺ちゃんの領域だわ」


──ブゥン!!

 フォトンセイバーを右手に構え、左手には積層装甲となった二十四枚の力の盾フォースシールド

 神威をコントロールして作り出した力の盾フォースシールドは、使徒のいかなる攻撃をも弾き返し、神威を纏った魔力によって形成されたフォトンセイバーは、使徒を一撃で蒸散する。

 翼を広げて飛んでくる鷹型使徒、ガーゴイル型使徒には魔法の箒に立ち乗りして接近、からの疾走斬撃マッハ状態で殲滅。

 地上を駆け抜けてくる獣型使徒に対しては、上空からの『神威型・炎の槍フレアランス』の一斉攻撃。


「魔導執事、地上の使徒全てをロックオン」

『ピッ……ロックオン……了解です。こいつはヘビーだな……手加減は出来そうにないな……です』


──ヒュヒュヒュヒュヒュン!

 俺の周囲に魔法陣が展開。

 そこから燃え盛る炎の槍フレアランスが姿を表すと、魔導執事が自動制御で地上の使徒を狙い撃ちする……んだけど、執事さんや、小ネタを挟むほど余裕があるのかよ。


──ガギィィィン

 そんなツッコミをする間も無く、鎧姿の使徒が三体、俺に向かって飛んできた。

 

「フルアーマーに天使の翼……天使型使徒かよ、悪魔が天使の姿って、洒落にもならないって分かっているのかよ」

「私の名前はパワー」

「私はドミニオン」

「私がヴァーチャー」

「「「悪魔の三使徒、この地に顕現!!」」」


 俺の前で身構え、堂々と名乗りを上げる三体の使徒。


「……魔導執事、フル火力で三体を殲滅!」

『ピッ……了解です』


──ズドドドドドドドドドドドドドダドドダォドドドドドドドドドドド!!

 一人当たり125本の炎の槍フレアランス

 それを間髪入れずに三体にぶち込む。


「貴様、まだ我々が名乗りブヒぶひゃぶふぉ!!」

「名乗の最中に攻撃とは、なんと卑怯ナフワラシャクマバボリャァ」

「この悪魔のような所業を許す訳にブゲゴギャグガイガガギャゴゲ許してください」


 一瞬で鎧が吹き飛び、全身を貫かれた三体の使徒はその場で蒸散。


「おっと、念動サイキック……と」


 使徒が吹き飛んで、その体内にあったと思われる魔人核が落下し始めたので魔法でそれを固定し、俺の方に引き寄せる。



「倒すだけなら楽なんだよ。魔人核まで傷つけないように倒すのが、難しいんだよ」

『ピッ……しっかりと取り込まれた魔人核の位置は確定しております故に、ご安心ください』


 炎の槍フレアランスで貫かれた地上の使徒たちは蒸散し、取り込んでいた魔人核は地面に転がる。

 まあ、時間の経過で霧散化し、どこかで再生されるだろうから放置。

 それよりも、この三悪魔の魔人核は強力すぎて、すぐに他の使徒に取り込まれそうだったから回収しただけなんだよ。取り込んだ魔人核の格によって、得られる力が変化するらしいからさ。

 危険じゃない奴は放置、地面に落ちても壊れるはずがないから。


「そっちは任せる。それよりも、第二波が到着するようだから……次弾装填!!」


──ヒュヒュヒュヒュヒュン

 すぐさま俺の全周囲に魔法陣が展開し、炎の槍フレアランスが生み出される。

 それをストックしたまま、次の魔法陣を起動。

 合計250本の炎の槍フレアランスが生み出されると、地上を、上空を高速でやってくる使徒に向かって、一斉に放った!!



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



── 太平洋・マルケナス

 ムー大陸に向かうための転移門ゲートのロックを解除するため、白桃姫と築地祐太郎、新山小春は最後のロックのある場所、マルケナスの水晶柱ターミナルにやって来た。


「マルケナス、じゃなくマルキーズ諸島か。古い文献にはマルケナスって地名で載っているとは、知らなかったわ」

「妾など、この世界の地理に詳しくないからな。よもやここに辿り着くまでに紆余曲折があるなど、思っても見なかったぞ」

「まあ、それでも到着したのですから、早速、儀式を始めましょう」

「まあ、待て。それよりも、これはなんじゃ?」


 札幌市妖魔特区の水晶柱ターミナルからここにきた一向は、目の前にある古い遺跡群に気がつく。

 似たような旧遺跡はポリネシアなどでも多々見られるのだが、このマルキーズ諸島にも点在しているという文献は見たことがない。

 まあ、そんな細かいものまで見るオカルトマニアなど、祐太郎たちの通う北広島西高でも乙葉と織田の二人ぐらいだろうという結論には辿り着くのだが。


「……ほう、古代魔法語による術式が組み込まれておるのか。この場所に現れた水晶柱ターミナルを守るための守護者? いや、これは遺跡を守るガーゴイルがいたということか」


 岩肌に刻まれている魔法文字に、ゆっくりと手をかざす白桃姫。

 すると文字が光り輝き、白桃姫の掌に吸い込まれていく。


「それは?」

「古代の念話文字じゃな。魔力を持つものなら、この文字を読み取ることができるのじゃが。古代魔法語の知識がなくては、これは天気予報の術式にしか見えないわ」


 複雑に刻み込まれた文字配列は、見た感じでは術式を書き込まれているようであるが。

 実際は、一文字一文字に256の言葉が綴られており、それが魔力により圧縮され一文字に姿を変えて刻まれている。

 それらが一つの術式を成しているのだが、知らないものが見たら、それは普通に天気を予測するだけの魔術式にしか見えない。


「……ほう、これは予想外じゃわ」

「予想外? 何かわかったのか?」

「うむ。このメンバーで正解だったことが、わかった。ちと二人とも、ついてくるが良い」


 白桃姫の言葉に従い、二人が密林の奥へと進んでいく。

 やがて開けた場所に到着すると、そこにある奇妙な存在に気がついた。


「……ストーンヘンジ? いや、円形ではないし、岩の形が違う」

「あれほど大きくないし、でも。形状は似ていますよね?」

「ストーンヘンジというのは、イギリスにある大規模転移門ゲートのことじゃな。あれは龍脈がズレたおかげで、今は使えぬからなぁ」


 いきなり爆弾発言まで始める白桃姫。

 そして、スタスタと円形状巨石群のような遺跡の真ん中に立つと、そこにある小さな丸い石に手を翳す。


──ブゥン

 その白桃姫の動きに呼応したのか、石全体が光り始める。


「はよう、二人もここで魔力を注ぐが良い」

「応、これが最後のロックなのか」

「今行きます!」


 慌てて小春と祐太郎も手を翳し、魔力を注ぐ。

 すると、一瞬で周囲の風景が変化した。

 ストーンヘンジのような遺跡はそのままに、何処か寂れた都市の中心、広い草原区画に立っている。

 白亜の建物には無数に蔦が絡みつき、建物全体を包み込んでいる。

 ストーンヘンジの外の地面は高い草に覆われ、まるで密林の中に佇む廃都市のような雰囲気が流れていた。


「こ、ここは?」

「最後のロックが解除されて、いきなりムー大陸に来たのですか?」

「いや、違うわ」


 二人の言葉を否定してから、白桃姫はストーンヘンジから外に出る。

 そして周りを見渡し、あちこちに手を翳してから一言。


「最後のロックなど、とっくに解除されておったわ。あの場所は、ムー大陸から裏地球リヴァースに向かうための、一方通行の転移門ゲート。それを妾たちが外からロックを解除し、行き来できるようになった……そうじゃろ、そこの者よ!!」


 白桃姫が右手を力一杯横に振り抜く。

 その刹那、彼女の腕から飛んだ真空の刃が離れた場所の巨木を切断。

 その影から、一人の老人が姿を現した。


「断空列斬。空間系魔術の基礎で、これだけの破壊力を持つとは……」

「返事になっておらんわ、其方は何者じゃ?」


 少しだけ声のトーンを落とし、やれやれを両手を腰に当ててふんぞり変えるように白桃姫が問いかける。

 すると、老人も顎髭に手を当てて撫でるようにすると、ゆっくりと話を始めた。


「いかにも。ここはムー大陸と呼ばれている生体大陸。いや、浮遊大陸カリュブディスと説明したら、分かるじゃろ?」

「いや、わからんわ」

「半分だけだな。浮遊大陸の下りなんか知らん」

「そもそも、カリュブディスは対オールディニック用の決戦兵器ですよね?」


 あっさりと返ってくる言葉に、老人も頬をひくひくとびくつかせ始める。


「ま、まあ、その辺りの説明は長くなるから割愛しよう。それよりも外世界のものが何故、この地にやって来たのだ?」

「簡単じゃ。表の世界でオールディニックが目覚めようとしておる。それを諌め、封じるための超兵器を回収しに来たのじゃ」


 あっさりと説明する白桃姫に、祐太郎と小春も驚く。

 相手の出方を見てから、慎重に対応すべきところなのに、こうもあっさりと手の内を晒していいのかと思ったのだが。


「ほう、魔皇の鑑定アプレイズ能力か。では、私が何者かも?」

「わかるぞ。我が魔眼には、貴様の正体がありありと見えておる。ムー大陸の神官にして亜神の眷属、サミュエルを名乗るもの。真なる名前は封じられていてわからぬが、不死の身で、この地を守っていたのじゃろ?」


 淡々と話をする白桃姫に、祐太郎はようやく理解した。


「ここの浮遊大陸カリュブディス……まさかとは思うけど、それも仮初の名前なのか?」 

「真なる名は告げてはならぬ。それは、彼を目覚めさせ、オールディニックの元へと誘ってしまうから。君は、理解したか?」

「……まあ、な。これはオトヤン案件だってことが理解できた。そっちの魔導書も、確かミスリルの箱に封印してあるからな」


 そこまで祐太郎が告げた時、小春もようやく事態を理解できた。

 黒い使徒の存在、封じられているオールディニックという悪魔。

 その近くに存在する、封印された世界ムー大陸。


「まあ、それ以上の詮索は無用。オールディニックを名乗る悪魔の封印、それを再生する超兵器が欲しいのじゃな?」

「うむ。妾たちを信じるのなら、それを寄越してほしい」


 白桃姫の言葉に、サミュエルと名乗った老人が3人を見る。

 そして天を仰ぎ印をなぞると、空に向かって静かに頷いた。


「来てください。どうやら、イオの杖は貴方たちに渡さなくてはならないようですから」


 それだけを告げて、サミュエルは深い草むらを歩き始める。

 それに遅れないように3人も、草をかき分けて老人の後を追いかけ始めた。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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