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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第五部・世界とんでも動乱編
319/586

第三百十九話・覧古考新!愁眉を開きたい(動き出す悪意と、戦う魔術師たち)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 朝。

 目が覚める。

 いつもの、日課。

 カナン魔導商会を開いて、メッセージが届いていないか確認。

 新商品とお薦めの一品のチェック、そして納品依頼も確認。

 それが終われば、洗面所で身だしなみを整える。

 パジャマ姿で居間に行こうものなら、朝から怒られる。


 そして、居間に向かった時に見たのは、大型テレビの向こうで起こっている、戦争のような光景でした。


「……何があったんだ?」

「お、浩介、おはよう」

「おはよう……って。これは何処?」

「イギリス郊外らしいわ。英国の対妖魔機関『英国騎士団』と使徒の全面戦争らしくてね。ここだけじゃないのよ」


 母さんがチャンネルを切り替えると、今度はブラジル方面での戦闘が映し出された。

 今までのように姿を消して、魔力値の高い人間を攫っていたのではなく。上空から降下し、建物を力任せに破壊、中にいる人間を引き摺り出しては、頭を掴む。

 恐らくは観測、もしくは鑑定か何かなのだろう。

 殆どの人間はその直後に投げ飛ばされているのだが、一部の人間は抱き抱えられて上空へと飛んでいく。

 そんな映像がショッキング映像として流れているのだが、イギリスの映像では攫われそうな人々を守る為に、騎馬で突撃し、手にした剣で使徒を真っ二つに切断する騎士たちの姿もあったのだが、ブラジル方面は完全に防戦一方。

 

 この突然の襲撃事件についてだが、ヨーロッパ方面、南北アメリカ、中東付近で最も使徒の戦闘が多く、中国は国全体が虹色の結界によって包まれたらしく、使徒が侵入できなくなっているらしい。

 同じように香港や台湾と言った国も結界で守られているらしいけど、それ以外の地域は小競り合いだったりなにもなかったり。


「……何もないのはオーストラリアのみか。やはり、御神楽さまの予見通りとはな」


 親父がそう呟くのを、俺は聞き逃さない。

 むしろ、俺に聞こえるようにわざと話した感もあるんだが。

 ここは、乗ることにするか。


「御神楽さまの予見? それって何?」

「聞こえていたか。今回の使徒の件、御神楽さまはすぐに予知の術式を用いて『獣神鏡』に可能性の未来を映し出したらしくてな。その映像の一つに、世界に使徒が溢れるというものがあったらしい」

「へぇ。日本はどうなんだろう? 使徒って、ここに一番に集まってくる感じしかしないんだけどさ」


 だって、北海道にいる魔術師だけでも、かなりの魔力を集めることができるはずだよ? だったらここを攻めない理由なんて無いよね?


「逆だ、逆。対抗手段がある魔術師の存在ぐらい、奴らは確認しているのだろう。だからこそ、日本には攻めてこないと思う」

「それならさっさと潰しに来た方がいいと思うんだが」

「使徒にとっては、浩介たちの存在は核ミサイルみたいなものなんだろうな。報復措置を考えるなら、手を出さないほうが賢明。そして動ける個体数が少ないことも理解しているからこそ、今回の一斉襲撃のように分散した地域での戦闘が始まったのだと推測できる」


 ははぁ。

 ふと家の電話をチラリと見ると。

 やっぱり電話の呼び出し音を切っていましたか。

 さっきから着信からの留守電に切り替わっているらしく、外部スピーカーからは小声で何か聞こえていますわ。


「親父と母さんは、呼び出しを受けていないのか? 陰陽府とかヘキサグラム・ジャパンとか」

「呼び出しは受けていないが」

「御神楽さまからは、遊撃任務を仰せつかっているわよ? まあ、その前に朝食の準備とか、朝は色々と支度が多いから」


 手早く朝食の準備を終えたので、家族団欒の朝食。


「いや、待って!! なんでこんなに落ち着いているんだよ」

「何故って、遊撃だから?」

「日本に使徒が来ない理由はさっき説明しただろ? だからここに居る。出撃が必要な時は、第六課とヘキサグラムから連絡が来るようになっているからな。だから、浩介も早く食べて学校に行きなさい」

「……マジかよ」


 慌てているのは俺だけ。

 親父たちは、務めて冷静、何をするべきかわかっているし、それをすることが自分達の任務だと割り切っている。

 それじゃあ、俺にできることはなんだ?

 戦場になった国に魔法の箒で移動して、そこで使徒を殲滅したら良いんじゃないか?

 妖魔特区の水晶柱ターミナルを使って、各国の水晶柱ターミナルに転移したら、移動時間は短縮できるよな?


──ガタッ

 急いで食べて立ち上がる。

 そうと分かれば、学校なんか行ってられるかよ。


「浩介。学校には行くように」

「ターミナルからの転移については、白桃姫に話はつけてあるわ。貴方は、ターミナルを使えないからね」


 バレている。

 いや、これってマジで動けないじゃないかよ。


「俺の力は知っているだろ? 奴らを殲滅してとっとと戻ってくる。一つでも多くの場所を開放して」

「新山さんが狙われているのよ?」


──ドキッ!?

 え、何それ?

 そんな話、俺は知らないぞ?


「ど、どどどういうことだよ?」

「私と綾女は、妖魔特区に侵入しようとした上位使徒とやり合ったのよ。その時にね……」


 母さんが綾女ねーさんと戦ったというベヒモスという使徒の話。

 それを隠さず教えてくれたんだけど、アザゼルとやらが新山さんを狙うように命じていることが分かった。


「眷属級使徒のベヒモス、そしてそれに指示を出しているアザゼル……新山さんが狙われる理由は」

「簡単よ。彼女を囮にして浩介を捕まえるためじゃない? あなたの魔力って、オールディニックの封印をかなり削ることができるのですからね。ということなので、とっとと学校に行く!!」


 母さんが説明を終えると同時に、庭を指差す。

 そこでは祐太郎が手を振っているんだが、どうやら俺たちが真面目な会話をしているので、声をかけられなかったんじゃないかな。

 

「行ってきます!!」


 ここは素直に従うしかない。

 いや、裏技を考えれば何かありそうだけど、マジで怒らせるとうちの親は怖すぎるから。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──札幌市妖魔特区

 放課後。

 今日はうちの魔法研究部全員で、白桃姫の元にやって来ました。

 目的は簡単で、高遠先輩と美馬先輩は昨日覚えた対使徒対策の訓練のため。

 俺は白桃姫と相談して、使徒をどうするか。

 祐太郎と新山さんは、次の水晶柱ターミナルの封印解除について。


「なんじゃ乙葉、ターミナルなら起動せんぞ?」

「やっぱり母さんから連絡が来ていたのかよ。それはまあ、諦めたので他の話。まずは祐太郎たちから」

「ということで、大トリの前の前座って、俺が前座かよ」

「いつもの漫才はいいから、なんのようじゃ?」

「はい、次の水晶柱ターミナルの鍵の解放なんですが、何時ごろ出発するのですか?」


 新山さんが話を切り出したので、俺たちも聞くモード。

 

「早いほうが良い。使徒がかなり活性化しておる所を見ると、オールディニックの封印解除も早まったかもしれんからな」

「それじゃあ」

「明日の朝一番で向かう。そこからは、タイミング合わせについては無視して、一つ一つのロック解除の強度を高めて、一気に解放することにしよう」

「それなんだが、俺も同行していいか?」


 手を上げて、俺は白桃姫に問いかける。

 何故って、理由は簡単。

 新山さんが狙われているから。


「今回の件は、乙葉浩介抜きで進める手筈じゃが。何かあったのか?」

「まあ、簡単に説明するんだけど。使徒のボスらしいアザゼルってやつが、新山さんを狙っている。俺の恋人を捕らえて、人質か何かにしようとしているんじゃないかと思ってね」

「狙って……恋人!!」

「お主らははやくくっつけ!! それよりもじゃ、使徒たちが小春を狙っているというのは本当かや?」


 まあ、そう考えるのは分からんでもない。


「母さんと綾女ねーさん、あと協力者二人でベヒモスっていう使徒と戦闘になったらしくてね。その時に、ベヒモスとやらが口を滑らせたらしいんだわ。俺の恋人の新山小春を捕まえろって」

「まあ、小春を捉えることはすなわち、お主の動きを止めることになるからなぁ。なかなかの策士が向こうにもいるということが」

「そうね。そこで相談なのですけれど」


 俺たちの話し合いの中に、瀬川先輩が加わる。

 ちょうどやって来たらしく、そこまでの経緯はリナちゃんたちに聞いていたらしい。


「おや、雅も来たのか」

「ええ。私は白桃姫に教えてほしいことがあったのよ。まず、この日本に流れる龍脈の位置を教えてほしいのよ」


──ブゥン

 深淵の書庫アーカイブが展開し、魔導モニターが外を向く。

 そこには日本地図がいくつも開いているのだが、どれにも細い線が引かれている。


「ネットなどで調べた龍脈図が多すぎて。それに、どれも心霊スポットを繋いだものだったり、パワースポットだったり。一番それらしいのは、日本を縦断する『中央構造体』、山脈に連なる断層図なのだけど、どうにも確証が持てないのよ」

「どれ、どうやら雅の話は、先ほどの乙葉たちの話に通ずるものがあるようじゃから、こっちから説明しよう」


 そうして白桃姫が地図を見つつ、足下に魔法陣を展開して腕を組んで考えている。

 30分ほどすると、白桃姫は日本地図に細かい線を次々と描き込み、さらに中央構造体を北海道まで伸ばした。


「この細いのは各土地の霊脈。この中央構造体が星を巡る龍脈。そして大切なのはここ」


 トントンと指差したのは富士山。


「ここが龍脈の集合位置。日本に毛細血管のように伸びる細いエネルギーを伝って、全ての霊脈・龍脈からエネルギーが集まる場所。そして集まったエネルギーが意志を持つマナに変換され、ここに流れていく」


 ス〜ッと富士山に指を伸ばし、そこから地図をなぞってある場所を指差す。


「え、マジかよ?」

「そこは、え? どうして?」

「……嫌な予感はしたんだけどさ。そこは不味いだろ?」


 白桃姫の指差した場所には、皇居がある。


「ここが龍穴といい、日本のすべての霊的エネルギーが集まる場所じゃな。雅よ、深淵の書庫アーカイブをフルパワーで使うためには、ここで術式を展開するか、もしくは富士山の地下龍脈溜まりで術式を使う必要がある」

「予想はしていましたけれど、確信は持てませんでした。ありがとうございます……さて、それでは私からの説明を再開したいと思います」

 

 力強く話を始める瀬川先輩。

 そして、その話というものから、俺たちは予想外の情報を知ることになった。

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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