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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第五部・世界とんでも動乱編

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第三百七話・栄枯盛衰、大賢は愚なるが如し?(予想外と使徒の弱点見つけたり)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 札幌市妖魔特区・南六条区画。


 今、まさに結界内部は激戦区。

 オールディニックの眷属ベヒモスと、乙葉洋子・綾女・馬導師・藍明鈴の混合チームが正面から激突。

 現在は空中に打ち上げられ、炎の鎖で縛り上げられているベヒモスが落下中である。

 

「……魔導銃サンダラーはね。とある偉人が使う銃器のかけらから、怨念を抽出して作り上げた存在なのよ。そして、この銃は私に、ガンマンの力を授けてくれるのよ」


──ガチャッ

 一瞬で神威のこもった弾丸をリロードすると、さらに両手のサンダラーをベヒモスに構える。

 そして素早くトリガーを引くと、一秒間で五発、左右合わせて十発の弾丸がベヒモスに向かって撃ち放たれた。


「こ、こんな炎おぉぉぉ、どうして外れないのよ!!」


 必死にもがくベヒモス。

 その体の鎧状の皮膚が弾丸によって吹き飛ばされ、黒い皮膚が露出する。

 そして地面に叩きつけられると同時に、さらなる焔が地面から噴き出し、鎖となり、楔となり、ベヒモスを地面に縫い付けていった。


「……この前のような弱き焔に在らず。見よ、醴泉により浄化されし銭で作られた銭剣を。かの導師が使いし霊感あらたかなる剣の力、篤と御覧あれ!」


 左手の銭剣をベヒモスに向け、右手は虚空を描くように陣を生み出す。

 そこから炎が噴き出し、燃え盛る虎に変化するとベヒモスめがけて走り出した!!


──疾駆!

 炎虎は一気に間合いを詰め、ベヒモスの喉元めがけて牙を穿つ。

 だが、首に食らいついたまま、力任せに地面に叩きつけられると、首から離れた瞬間に頭を噛み砕かれた。


──ゴゥッ

 ひと噛みで炎虎を食い砕き、さらに全身を縛り上げていた炎の鎖も砕け散る。


「ふひゃひゃひゃひゃ!! すごい、凄いすごい凄すぎる!」


 シュウシュウと音を上げつつ、ベヒモスの体が縮んでいく。

 そして漆黒の人形のような姿に変化すると、右手で鉄砲の形を作り出し、馬導師に向ける。


「まずは、あんたの力を貰うわね!!」


 右手人差し指に力が集まり、爪先が馬導師に向けて撃ち出される。

 だが、その爪先目掛けて銭剣を振るうと、馬導師は飛んできた爪を真っ二つに切り落とした。


「……ふん。このような小細工が通用するとでも? この馬天佑を舐めてもらっては困る」

「この前は、そこの明鈴と二人で使徒から走って逃げていたんだけどねぇ」


 睨むようにベヒモスにつぶやく馬導師だが、その後ろから綾女が釘を刺す。

 さらには洋子が尻尾を振り出し、細い針のような毛を打ち出して割れた爪を穿つ。


──プシュゥゥゥゥ

 爪から赤い蒸気が吹き出し、消滅する。


「全く。爪自体が意思を持っているし、分裂してもまだ蠢いていたわよ。あれを取り付かせて自在に操るのか、もしくは取り憑かせて贄とするのか。そんな感じじゃないかしら?」


──ヒクッ

 洋子の言葉に、ベヒモスの頬がヒクヒクと動く。

 図星を突かれたのが悔しいのか、ジロリと洋子を睨みつける。


「ふん。こんな姑息な技を使う気などないわ。アザゼルが持てる力は全て使えというから、使うまでのことよ!」


──ビュン!

 一瞬で、油断していた藍明鈴の前に移動すると、その頭目掛けて抜き手を突き込む。

 そして明鈴の頭が吹き飛ばされるのと、ベヒモスの顎がサンダラーで吹き飛ばされたのはほぼ同時であった!


「あ、あが!!」


 会話ができず喉から音が出るベヒモス。

 方や藍明鈴はその場で蒸散するが、魔人核は頭にはないため霧散化してその場から逃げたのである。


「力任せな使徒じゃなぁ。しかも、的確に魔人核を抉り出そうとするのかや」

「は、はふあ、あふわなぁわ」


 シュウシュウと音を立てつつ顎が再生されるが、言葉が紡がれる前に綾女が近寄っていく。


──ズルリ

 巨大な金棒を空間から引き抜き、ブゥンと軽く振る。


「なぁ、お主は野球というものを知っているかや?」


 ブンブンと金棒を振り回しながら、一歩、また一歩とベヒモスに近寄る。


「昔はな、すいんぐというのは横に振るれべるすいんぐというのが主流じゃった。しかしのう……最近はあっぱーすいんぐというのが流行りらしくてな。こう、下から斜め上に向かって振り抜くのがいいそうじゃ」


──ブゥン

 素早く間合いを詰め、アッパースイングでベヒモスを打ち砕こうとする。

 ベヒモスもそれを躱そうとしたが、体を捻っても左腕が避けきれず、一撃で砕け散った。


「ぐきゃぁぁぁぁぁぁ」

「うん、よい音じゃ。これならぐりーんもんすたーも越えられようぞ。ということじゃ、死ね!」


 さらに金棒を振る。

 だが、今度は後方に向かって全力で地面を蹴り、すんでのところで躱した。


「な、な、な、なんだ、魔神ってこんな出鱈目なの? こんなの相手なんてしていられないわよ!」


──ドゴッ

 地面に向かって右足を踏み込むと、ベヒモスはそのまま地面の中に消えていく。

 穴を開けたのではなく、地面と同化したのだ。

 

「墳っ!!」


 銭剣を地面に突き立て、両手で印を結ぶ馬導師。

 だが、銭剣の放つ感知の力は、ベヒモスがこの妖魔特区から姿を消したという事実だけを告げた。


「綾女大姐、乙葉大姐、奴はこの地から逃げたようです」

「あら、生捕りにしようとしたのに残念ね。綾女、もういいわよ?」

「ふぅむ。全く、とんでもない輩じゃなぁ」


 ビリビリと痺れる両腕をダラリと伸ばす。

 金棒でベヒモスの腕を吹き飛ばした時、その衝撃で綾女の腕の骨も砕けていたのである。

 それでも魔力により骨を接合し、ズタズタになった筋肉や神経を無理やり接合して腕を動かしていたのである。

 それも、緊張が解かれると全てバラバラになってしまう。


「あやつ、皮膚に触れるだけで魔力を吸収しおる。金棒を伝って一気に半分も持っていかれたわ」

「本当に厄介よねぇ。よくまあ、浩介たちはあんな化け物とやり合っているわね……大丈夫かしら?」

「まあ、神威武具を持つならば不可能ではあるまい。それに、以前やり合った使徒とベヒモスは違う。眷属級? というのが相手ではない限りは、乙葉浩介も遅れを取ることはなかろうかと」


 困った顔の馬導師だが、彼の言葉に洋子も頷いている。


「さて、問題なのは、使徒が小春ちゃんを狙い始めたっていうことね。どこでそんな情報を手に入れたのかしら?」

「わからぬのう。魔族の中に、使徒に組みする裏切り者が出たのか、あるいは情報を得る方法があるのか……アザゼルとやらが教えてくれたと、奴は話しておったなぁ」


 近くのベンチに座り込み、両腕に魔力を集めて再生を促す。

 治癒魔法などないものの、魔神ともなれば時間は掛かるものの自己再生程度は可能。


「まあ、注意するように連絡はしておくわね……って、あら?」


 ポケットからスマホを取り出そうとしたが、そこから出てきたのは粉々に砕けたスマホである。


「私、ベヒモスの攻撃を受けていないわよね? どうして壊れているのかしら?」

「摩訶不思議な。馬よ、そなたのスマホは無事かや?」

「さて。無事だと良いのですが」


 帽子を脱いで手を突っ込もうとしたが、脱いだ瞬間に粉々になったスマホが落ちてくる。

 

「……はぁ。これは備品で、返却しなくてはならないのに」

「フリーランスの馬が備品とは。どこに雇われてあるのやら」

「いくら大姐でも、そこは秘密です。まあ、同じものを狙っているだけということで、では失礼」


──バサバサバサッ

 全身が大量の呪符に変化して飛んでいく。

 それを見届けている時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「ようやく第六課も動いたか。まあ、時間的には妥当なラインじゃな」

「そういうことのようね。さて、藍明鈴、あなたもいらっしゃい。うちには魔力玉があるから、それで失った精気を回復するといいわ」

「む、洋子どの、妾にはないのかや?」

「綾女もくるでしょ? 今後のことを話したいからね。でも、先に事情だけでも説明しておかないと」


 パトカーが止まり、中から忍冬警部補が出てくる。

 そしてこちらに向かって歩いてくるので、洋子たちは小さく手を振った。


………

……


──乙葉宅

「ダメね。寝ているのかしら?」


 自宅の電話で浩介に連絡を入れるが、留守電に切り替わる。

 時差を考えると、今のアメリカあたりは深夜になる。

 それならばと事情だけでも留守電に入れておいて、早速、話し合いをすることにしたのだが。


「馬天佑は逃げたし、藍明鈴は霧散化状態。ここからの再生に必要な魔力玉はあるけれど、それでも二週間は必要よね」

「眷属級ベヒモスを相手に、四人がかりでも追い込みはすれどとどめを刺すことは叶わぬとは。使徒如きならば問題はないのじゃが、眷属は危険じゃな」

「そうね。私も従来の力の半分も回復していないから、あれ以上は限界だから。それこそ、聖徳王の秘術でもなくては……」

「もしくは、御神楽さまの力が必要じゃなぁ」


 そう綾女が呟くが、だからといって御神楽に力を請いに向かうことなど不可能。

 今の御神楽は、ある目的のために彼の地を動くことができない。

 それがわかっているからこそ、その時のために力を蓄えているからこそ、オールディニック如き小さな輩に力を裂くようなことがあってはならない。


「使徒、眷属。その力に対抗するためには、やはりあれが必要なのじゃが」

「白桃姫が、それを取りに向かっているわよね」

「瀬川にも話を聞いておいた方が良いか。ベヒモスの件も踏まえて、あやつのところに情報を集めておくのは今後のためにも必要じゃからなぁ」

「それじゃあ、連絡して来てもらいましょう!」


 すぐさま電話で瀬川に連絡を入れると、時間があるのならすぐに来てほしいことを伝える。

 そして一時間後には瀬川も乙葉宅にやって来て、先ほどのベヒモス戦の事についての協議を開始。

 今後の対策についても話し合うことになった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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