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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第五部・世界とんでも動乱編
295/586

第二百九十五話・平滑流暢、苦しい時の神頼み(でも、封印されている悪神はダメだよね?)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 使徒の対策会議から半月。

 

 日本政府及び第六課主導で、札幌市妖魔特区内には少しずつではあるが魔族が転居を開始している。

 小澤ら妖魔議員たちによる『妖魔特区を魔族の居住区として制定する』という法案が一部可決され、妖魔特区が正式に魔族が居住を許された土地として認定されたのである。

 これに伴い、対妖魔結界の大幅な改良が必要となり、『エリア入場許可証』を持つ事により結界を中和できるようにする魔導具を作る事になったんだよ。


 俺が。


──妖魔特区・ティロ・フィナーレ

 という事で、今日は日曜日。

 注文された魔導具を作るために、朝からここに詰めております。

 なお、SPのアルバイト期間が終わった祐太郎と新山さんも同席中。

 先輩は、今日は実家の方で色々とあるらしく、お休みなう。


「解せぬわ!!」

「まあまあ。綾女姉さんや計都姫に持たせたような魔導具を簡易型として作るだけだよな? それって難しいのか?」

「まあ、祐太郎に簡単に説明すると。魔導具に登録されている魔力波長を、結界の干渉から塞ぐっていう仕組みなんだよ。だから、携帯型魔導具に魔力波長を登録する必要があって、今の時点でそれが作れるのは俺だけなんだよなぁ」


 わかる?

 今の時点で妖魔特区に引っ越し希望者は2540人。

 結界内部の個人の所有すると建物やマンション、家屋を国が買い取って、それを魔族に売るっていう方法を取りたいって話していてね。

 でも、今の時点で妖魔特区内の建物の殆どが半壊もしくは全壊。

 かろうじて形を整えているのは俺の家入っているティロ・フィナーレと札幌市役所、北海道庁のみ。

 この三つには俺が作った結界発生装置がセットされているからね。


 でも、ライフラインが生きているのは俺のうちだけ。

 妖魔たちの居住区としての開発は必要になるわけだよ。

 でも、魔力を持たない素材では風化してしまう。

 そこも何とかできないかって言われたんだけど、無理!!

 何でもかんでも俺にやらせるなと、声を大にして叫んだわ。


「それで、これは?」

「これ? カード型の結界中和魔導具。ここに小型の魔晶石が組み込まれていて、カードに刻まれた魔力回路に自分の魔力を通して、結界を中和する」

「ほう。そこまで完成したとはなぁ……」

「ねぇ、乙葉くん。これって、こういう使い方もできるの?」


 新山さんが提案したのは、地下鉄のパスポート。

 妖魔特区内の地下鉄を復興させるっているプロジェクトは今でも健在で、地下鉄の路線に沿って、一定距離に結界発生装置を設置。

 それを使って妖魔特区内部に結界のトンネルを通さないかっていう事。

 それに伴い電源その他もトンネル内部に設置し、大通り駅などから妖魔特区内部に出るときは、このカード型結界中和魔導具で外に出るって寸法らしい。


 なかなかとんでもない発想なんだけど、札幌市交通局が俺に行った提案を改良したものだよなぁ。

 うん、それならいけるけれど、それで良いのか?

 

「新山さん、それは可能だけど現実的じゃない。オトヤンの負担が洒落にならないのと、使徒が侵入する可能性が高い」

「そういう事。この試作型カードって、登録しているやつが魔力を流し込むだけで結界をすり抜けられるのでね。何らかの入手方法でカードを手に入れた使徒が侵入する可能性があるんだよ」

「そっか。なかなか難しいね」


 そして残念な事に、素材が足りない。

 ミスリルが枯渇してしまったのと、カナン魔導商会とサイドチェスト鍛治工房でもミスリルは在庫切れなんだよ。

 

「材料もない。まあ、鏡刻界ミラーワーズに直接出向いて購入することもできないわけじゃないけどさ。そもそも向こうのお金を持っていないから、きついんだよ」

「素材の問題が。こればっかりはオトヤンでも無理だからなぁ」


 流石に無から有を生み出すことなんてできないからな。

 そんなことを考えていると、ベランダあたりの空間が湾曲して扉が完成する。


──ガチャッ

 そして扉の向こうから白桃姫と小澤が姿を表す。

 扉の向こうは、白桃姫が構築した空間結界であり、このあと、その中で使徒の解体及び解析を行うんだってさ。


「乙葉や、内部の調整は終わったぞよ。使徒とやらを出してくれるか?」

「すでに解析特化魔族は中で準備を終えている。噂では、サンフランシスコ妖魔特区の周辺にも、使徒らしき奴らが徘徊しているっていうからな」


 へぇ、小澤は独自にその辺りを調べていたのか。

 国会議員っていう立場をフルに使いこなしているんだなぁ。


「それじゃあ、先に使徒を渡しますか」

「うむ。中に檻を作ってあるから、その中に頼むぞ」


 扉を越えて内部に入る。

 ちょうど中心のあたりに鉄棒を組み込んだ檻があり、その周囲に四人の魔族が待機している。


「……それじゃあ、リリースしますので」


──ブン

 空間収納チェストから使徒の封じてある媒体を取り出し、封印呪符を剥がす。

 そして中に封じられている使徒を檻の中に叩き出すと、使徒は勢いよく檻に向かって爪を叩き込み始めている。


「うわ、これが使徒かや。まさに化け物じゃな」

「東京に出現したやつと同じか。それじゃあ、細かく解体させてもらうとするか」


──フラリ

 小澤が近くに置いてあったミスリルソードを取り出し、檻越しに使徒を攻撃する。

 使徒は一撃で腕が切断され、体液を撒き散らし始める。


「うわぁ。ここは任せて構わないよな?」

「うむ。あやつは妾たちに任せておけば問題はない。そっちはそっちで、色々とやる事があるのじゃろ?」

「まあ、な。そんじゃ任せるわ」


 という事で、結界内部での拷問からの解析は魔族チームに任せる。

 こっちはこっちで、出来ることをやりますか。


………

……


 対魔力コート

 対闘気コート

 再生能力

 飛翔能力

 組成変換能力


 これが、小澤らの解析した使徒の能力。

 頭部には高濃度魔力を感知するための磁石のようなものが埋まっておるのじゃが、後付けで埋め込まれたのではなく種族的にそういうものを持っていることが判明した。


「なあ、この使徒ってやつだが、俺たち魔族のような精神生命体と似たような構造だが。どう思う?」


 小澤の見せた資料を元に、妾なりに考えてみるのじゃが。

 確かに、精神生命体に近い存在ではあると思う。

 しかし、この姿は魔力が一定以上なければ認識すらできないし、特段、そのような輩を見るために必要な術式も必要としない。

 

 そして精神生命体の弱点でもある魔人核もなく、魔力や闘気の干渉は受け付けない。


「……いや、まさかとは思うが……こやつらは『幽体ソウル』が具現化したものである可能性があるな」

「幽体? 何だそりゃ?」

「はぁ……小澤……クルーエルよ、幽体とは簡単に説明すると、幽霊じゃよ」

「幽霊? また非科学的な」

「魔族が科学を語るな。全く、この世界に毒されおって……。それよりも、その体内に魔人核のようなものがあるはずじゃ、それが無くては、幽体は実体化できぬはずじゃからな」

「随分と詳しいな……どれ、調べてみる」


 四体の魔族が、バラバラになった使徒を端から端まで調べていく。

 そして、ようやく体内から黒い繭のようなものを見つけ出した。


「これか? ここから奇妙な力を感じるんだが」

「それかもな。開けるか?」

「ちょっと待っていろ……全く、現魔将は魔族使いが荒すぎる……と、何だこれは?」


 切り裂いた繭の中から、小さな骨と指輪が一つだけ出てくる。

 予想通りの展開じゃったか。


「これは人骨か。それに指輪?」

「遺骨と遺品じゃな。あまり考えたくなかったが、使徒の正体は……人間の幽霊じゃよ」

「……はぁ? もっと詳しく説明できるか?」

「待て待て、妾も詳しく知っているわけではない。妾の魔将印、その中の魔皇が説明してくれておる」


 そこからは、妾も魔皇から聞いた話を説明するだけ。

 オールディニックの使徒はすなわち、彼によって殺された人間の魂、遺骨、遺品から構成された『人造幽体』。

 また、彼に殺されなくとも、死んだばかりの新鮮な死体があれば、『人造幽体』は作り出すことができる。

 そして、使徒は人間の死体から、新たな使徒を作り出すことができる。

 もっとも、それを行う必要がないために、日本では新たな使徒を生み出していない可能性があるらしい。


「……もっと早く説明してくれ」

「妾は知らんわ。そもそも魔皇でさえ、ようやく思い出して説明してくれているらしいし、これだって完全な正解ではないと話しておる」

「はぁ。魔力も闘気も弾く理由は、神威によってのみ有効な幽体だったから。それを傷つけられるのは強い意志が宿る武器、もしくは神威。そして、人間の死体があれば、使徒は増殖する……最悪だな」


 まあ、それでもこの日本で爆発的に増えることはないらしい。

 使徒が自らの手で新たな使徒を生み出すには、新鮮な死体が必要。

 じゃが、日本は火葬ゆえにその素体を手に入れることは難しい。

 つまり。


「アメリカなどの土葬が主な国じゃ、使徒が新たな使徒を作り出すことも可能ってことか?」

「これは、式鬼使いや不死魔術師の領域じゃなぁ。まあ、それこそがオールディニックの本質ゆえに。死を司る、死の王。どこぞのマグナム配下の不死王やら、黄金の骸骨やらとは格がちがうわ」


『『ハックション!!』』


 おそらくサンフランシスコ妖魔特区とアトランティスでは、二人の骸骨さんたちがくしゃみをしているに違いない。


「そうなると対抗策は……囚われている幽体の解放だが。魔力も闘気も通さないから、やはり神の秘技に頼るか、神器クラスの武具・魔導具の存在か」

「まあ、それもそうじゃが。問題はもう一つある……オールディニックの復活のために必要な魔力、それを集めるための使徒。しかし、魔族から魔人核を集められなくなった場合、奴らはどう動く?」


 この説明で、クルーエルは腕を組んで考えているのだが。

 だんだんと顔色が悪くなっていく。


「魔人核以外の魔力を求める。人間を襲う可能性があるのか?」

「そして魔力を奪われ殺された人間の魂は、使徒に作り替えられる。そうなる前に、一刻も早くオールディニック本体をどうにかせんとならん」

「……まあ、ここまでのデータを元に、実証実験をしてみたいところだな。このデータは、国会にも提出したいところだが、構わないか?」

「好きにせい。結果として、どれほどの混乱が発生するのか、そこまで考えてからじゃな」


 ことは重要。

 妾たちの世界と裏地球リヴァースを繋がるための転移門、それの発生よりも危険度が高いじゃろ。

 次に転移門が開くまでに必要な時間は499年、だが、オールディニックの封印が解除されるのは近いやもしれない。

 そして、ミヤビが深淵の書庫アーカイブを通じて調べている太平洋上に封印されている浮遊大陸『ムー』。

 なにやら調べなくてはならないことが多すぎるわ。

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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