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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第五部・世界とんでも動乱編

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第二百九十三話・日進月歩、虎に翼!(使徒と悪魔と魔族と)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 世界の崩壊。

 去年、転移門ゲートをめぐっての攻防戦を繰り広げたというのに、次は魔族も含めての世界の崩壊の可能性。

 しかも、魔族を糧として封印を解き、世界を滅ぼすとは洒落にならないぞ悪魔さんよ。

 小澤との話し合いが終わり、一旦俺は北海道へ戻る。

 祐太郎はあと三日はSPのアルバイトがあるらしく……って、学校始まるぞ、相変わらず大丈夫なのか分からん。

 そもそも、去年の二学期は殆ど登校していないし、休み中の補修でどうにか進級可能じゃ無かったか?

 

「ん? 課題なら全て提出が終わっている。学力についても追試はクリアしたからな。そうじゃ無かったら、リナ坊や沙那さんみたいに学校に登校している筈だろう?」

「さすがは中学時校内トップ。東大現役合格者を次々と送り出している高校を蹴って、この高校に来ただけのことはあるわな」

「まあな。それじゃあ、白桃姫との話し合いは任せた。俺はこっちで、ヘキサグラムの連中とも連携が組めるかどうか、色々と調べてみるわ」


 よろしく哀愁。 

 という事で、いぞ、札幌へGO!!


………

……


──札幌・大谷地

「……」


 黙々と製図板の前で図面を引く有馬祈念。

 さて、何をしているかというと。


「よし、これで理論は完成した。これが完成した暁には、我々人類は自由に異世界鏡刻界ミラーワーズと我々の世界を自由に行き来することができる。今までの研究では、それをなすことができなかった。それはなぜか? そう、その通りだ。空間と時間を一つの過程として置き換え、それを組み替えるという技術が足りなかった。ワープ航法というものをご存知だろうか? あれは二つの空間を繋げて近道をすると考えるといいだろう。だが、わしの研究成果は、二つの座標を一つに合わせて、そこに存在するものを置換することにより、世界を自由に行き来する。もっとも、そのためには、より効率よく魔力を高め、それを時空エネルギーに変換する必要があった」


 ホワイトボードの前に移動し、カカカカカッと文字を連ねていく。

 その前では、唐沢リナと沙那の二人が、のんびりとお茶会をしてる。


「つまり!!」

「つまりだ! この理論を使えば異世界に行くための乗り物を作り出すことができる。そしてそれがこれだ!!」


 ツカツカと倉庫の中心に移動し、白い布が被せられている物体の横に立つ。

 そして布を力一杯引っ張ると、そこには一台の車両が置いてあった。


「おおう、ワーゲンバス!!」


 フォルクスワーゲン・タイプ2。

 通称・ワーゲンバス。

 それがシーツの下に隠されていた。


「その通り。時空置換装置を搭載するためには、どうしてもこの大きさが必要だった。ご覧の通り、これは車体の殆どが時空置換装置を搭載するために埋め尽くされており、人が乗るスペースはない。かろうじて運転席はあるのだが、あまりにも居住性が悪く、そこが今後の課題となる……」


──ピクッ

 そう説明をしていると、リナの耳がニョキッと生えてくる。

 ノルウェージャンフォレストキャットのような大きな、モッフモフの耳。

 それがピクピクと異音を感じ取っている。


「沙那ちゃんは有馬とーちゃんの護衛ね。それとメッフィもよろしく」

「うん。相手は何者なの?」

「さぁ? でもメッフィが近くで身構えてるから、かなり強い敵だよね」


──スッ

 黒いスーツの魔族・メフィストフェレスが実体化する。

 そして沙那と祈念の近くにやってくると、頷きながら一言。


「あれは使徒です。おそらくは、私の魔人核を嗅ぎつけてきたのでしょう。私がここを離れれば良いことなので、あとは私にお任せください」

「それは駄目!! メッフィは有馬とーちゃんを守って。あいつは私が……倒す」


──シャキーン……ドゴォォォォォッ

 右腕にツァリプシュカ改2を装着し、地面目掛けて闘気砲をぶっ放す。

 その反動でリナは倉庫の外に向かって飛び出すと、ちょうど着地してきた黒いガーゴイル目掛けてドロップキック!!


──ドガアッ

 そのままガーゴイルは後方にぶっ飛ぶ。

 そしてリナもその場でクルリとバク転してから着地すると、ツァリプシュカ改2をブンブンと回す。


「みやび先輩から聞いていた使徒って、こいつ?」

「ええ、それが、オールディニックの使徒。悪魔の眷属です」

「悪魔……あれ? メッフィは悪魔じゃないの?」

「私は魔族ですが。私やサタン、ベルゼバブも等しく魔族ですよ。まあ、こちらの世界でヨーロッパ圏やアメリカなどでは悪魔と呼ばれていましたが。ですが、使徒とオールディニックは、紛れもない悪魔です」


 後方から聞こえてくるメフィストフェレスの言葉。

 それに頷いてから、リナはガーゴイルを睨みつける。


「使徒には魔法・闘気は通用しません。純粋な意志の爆発、それによる物理攻撃のみが、奴らを滅ぼすことができます。ゆえに、私たち魔族でも、使徒を傷つけることができるものは殆ど存在しま……」

「リナちゃん、いきまぁぁぁぁぁす!!」


──ガゴガゴガゴゴゴゴガガゴガゴ

 一気に間合いを詰めてから、ツァリプシュカ改2での超高速乱撃を始める。

 かたやガーゴイルはというと、リナの信じられない猛攻に怯え、後方に下がり始めた。


「しゃ、沙那さん。リナちゃんのあの攻撃はなんですか? あの使徒が後ろに下がるなんて」

「リナちゃんのツァリプシュカ改2は、オリハルコンにより更なる強化を受けています。そして、リナちゃんの獣人闘気は身体強化。もとより物理的に殴り続けているだけですし。そもそも、あの巨大なガントレットの基部には、精神感応金属クルーラが組み込まれています」


 つまり、リナの強い思念がクルーラにより増幅し、さらにオリハルコンの表面にコーティングされている。

 まさに、対使徒用に特化した武器であると言えよう。


「グゲグガグガゴガガガガ!!」


 口から警戒音を発するガーゴイル。

 だが、そんなのはお構いなしに、リナは全力で殴り続ける。

 自身の腕よりも巨大なガントレット『ツァリプシュカ改2』。

 その先端の擬似手がガーゴイルの頭部を掴むと、リナはありったけの魔力をツァリプシュカ改2に注ぐ。


「爆烈!!」


──ドッゴォォォォォォン

 擬似手の掌から、圧縮闘気が噴出。

 それはガーゴイルの頭部を粉砕すると、ガーゴイル自身も力無くぐったりとぶら下がり、地面に肘をつく。


「……最後のあれは?」

「獣人闘気に意志力を組み込んだ技ですね。プラティ師匠が申しますに、正式にはウィルブラスターというそうですが。リナちゃんは、爆烈・ワイルドフィンガーと呼んでいます」

「はぁ……明らかにアトランティスの遺産ですよね。まあ、使徒相手にはこれほど適切な兵器はありませんか……」


 そう呟くメフィストフェレス。

 そしてリナもガーゴイルをずるずると引き摺りながら、倉庫へと戻ってくる。


 なお、この直後に異様な爆発音があったと近所から通報を受けて、パトカーがやってきたことは言うまでもない。

 そして慌てて連絡を受けた忍冬警部補が飛んできて、事態を丸く収めたことも言うまでもなく。


………

……


「使徒です!!」


 倉庫の傍ら、白い布が被せられた場所に使徒の死体が転がっている。

 普通の警察官には見せてはおらず、忍冬たち第六課のメンバーにのみ、リナと沙那は使徒の死体を見せたのである。  


「東京では、祐太郎とヘキサグラムが共同で使徒を撃破したという報告を受けているが。まさか、ここにも姿を現すとはな。詳しい話を聞かせてもらえるか?」

「それなら、こちらをどうぞ」


 沙那が近くのモニターの電源を入れ、映像を映し出す。

 そこには、リナと使徒の戦いが一部始終、記録されている。

 使徒の姿は、魔力を持つものでなくては見ることができない。

 当然、この映像は沙那が見ていたものをモニターに映し出しているだけ。

 オート・マタである沙那にしかできない技術である。


「使徒……悪魔か。白桃姫さんから聞いた話と、こうして使徒そのものを見ることになると。本当に危険が目の前に迫っているのがよくわかる」

「使徒は人間を襲わない。体内に魔人核がないから……だが、この場にいた二人を狙ってきたと言うことだな?」

「いえ、ここにも魔族はいます。私たちと協力的で、お父さんを見守ってくれている魔族が」

「そう。メッフィは仲間。プラティ師匠の眷属で、ファウストの血を受け継ぐものを守る。だから、使徒はメッフィを殺して、魔人核を奪おうとしたと思う」


 淡々と呟くリナ。

 

「メッフィ……ファウストの血を護る……悪魔メフィストフェレスのことか」

「そう。そこで、悪魔と魔族と使徒について、その違いを説明しないとならないってメッフィが話している」

『と言うかですね。メフィストフェレスという名前があるのですから、メッフィは勘弁して欲しいのですけれど』


 泣き言のように呟くメフィストフェレスだが、リナは頭を横に傾ける。


「なぜ?」

『もう良いです。それよりも、今後のことについてどうするべきか、対応を考えた方がよろしいですね。使徒の数はそれほど多くなく、世界各地に散っているとなると、一つの国にせいぜい五体程度かと予測できます』

「うん、そうかもしれない。それも話しておくね」

『お願いします。この場で私の言葉が聞こえているのは、沙那さんとリナさんだけですから』

「違う!!」


 そこでリナが全力で否定。


『え? 違うのですか? まさかこの男にも聞こえていると?』

「リナさんじゃなく、リナちゃん、です!!」

「リナちゃん。そこはどうしても拘るのね」

「とーぜん」


 忍冬警部補には、メフィストフェレスの言葉は聞こえない。

 だが、そこにいるらしいメフィストフェレスの存在については認識している。


「では、メフィストフェレスさんにも詳しい話を聞かせてもらえるのですか?」

『沙那さん、それは私の任務ではないとお伝えください。恐らくですが、我らが主人が説明をしてくれると思われますので』

「詳しい話は、プラティ師匠がしてくれると思います。メフィストフェレスさんには別の任務があるそうで、この件については説明できないそうです」

「成る程、了解だ。と言うことで、ここでの一件はうまく処理しておく。詳しい話を聞かせてもらえるようになったら、連絡をしてほしい」


 忍冬はそう告げて本部へと戻る。

 そしてリナたちも周辺警戒をさらに強化しつつ、奥に隠れていた祈念と話を続けることにした。



 



いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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