第二十九話・百聞は一見に熟思黙想(聖地巡礼・帰還編)・
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コミックマーケット三日目。
今日と明日で、この夏の聖地巡礼は完了する。
ああ……今回の聖地巡礼は、俺たちのさらなる成長に拍車をかけてくれました。
昨晩、話し合いが終わってから、タケもっこす先生が突然衣服を脱ぎ始めた時はどうしようかと思ったけれど、あれってタケもっこす先生……中級魔族ラティラハスヤの能力の一つ、愛欲だったんだね。
先生曰く食事の延長って……摘み食いされました。
「ま、まさか初体験がタケもっこす先生と祐太郎との3Pだなんて想像していなかったわ……」
「まあまあ。私もこれで冬コミまでは精気を吸わなくても持つからね。でも、二人とも凄かったわよ。流石は加護持ちね、まさか魔力循環とか魔力解放をあんなことに使うなんて。闘気って、アレも大きく出来るのね?」
「「 言わないでくれぇぇぇぇ 」」
シャワーから出てきたタケもっこす先生が、先に着替えて出かける準備をしていた俺たちにそう話しかけてくる。
いや、もうね、自我を失うとかそういうのを実体験すると、普通のエッチなんてできなくなるかもしれない。恐るべし愛欲ホルダー。
「あ、タケもっこす先生は間に合うのですか? 今日はサークル参加ありますよね?」
「一般作品の方ね。だって、私はすぐに行けるから。じゃあ、またね」
──パスッ‼︎
突然霧散化して霧状になると、その場からス〜ッと消えていった。
「き、きったねぇぇぇ、妖魔の能力全開じゃないかよ」
「オトヤン落ち着け、そして急げ。もう始発が走る時間だ、今日もあれで行くぞ‼︎」
「応‼︎」
魔法の箒の移動もこれで三日目。
段々と慣れてきたせいか、余裕があるよね。
でも、気のせいか見られたような気もしなくもなくもない。どっちだ?
そんなこんなで残り二日間も無事に終わり、俺と祐太郎は北海道へ帰ることにした。
予め飛行機のチケットは取ってあったんだけどキャンセルして、今回は魔法の箒でゆっくりと飛んで帰る。
「まあ、基礎魔力とか消費魔力値の上限を増やすのは、とにかく使いまくって回復する、これを繰り返すのが一番。じゃあ、またね。もし何かあったら私のところに連絡してくれると飛んでいってあげるからね」
最終日のタケもっこす先生の言葉が妙に優しくて、そして艶かしかった。
あれって、頼み事したら一晩絞られる覚悟は必要だよね。
そんなこんなで楽しかった、一部腹立たしかった聖地巡礼は終わり、北海道へ戻ることにした。
………
……
…
8月16日。
事前調査が正しければ、今日は築地祐太郎と乙葉浩介の二人が北海道に帰る日。
予約した航空会社も搭乗する時間も手に入れてあるので、あとは空港で待つだけ。
チェックインする前に二人を発見し、どうにか話だけでもしたいと思ったのだけれど、あと一時間で飛行機は飛び立つのにいまだに姿を見せる様子はない。
「井川君、本当にこの便で間違いはないんだな?」
「はい。御影警部補のお手を煩わないように、今度こそ二人を確保したいと思います」
私こと井川綾子は、先日の失態を取り返すべく日夜調査を続けていた。
二人が妖魔に対して敏感に反応するのなら、この東京で何かしらの事件を起こすに決まっている。フリーランスの妖魔退治屋なら尚更、あちこちを漂っている妖魔を無視することなんてできないから。
そう、妖魔は私たち人間にとっては絶対悪であり敵対存在、その存在自体が認められるはずがない。
第六課創始者である御神楽様の予知した妖魔の大氾濫、それが起きる前に少しでも対抗手段を持つものを集め、結界の再構築のために力を貸してもらわなくてはならない。
あの二人はそれだけの力を持っている、にも拘わらず私達に手を貸してくれないなんて、私は絶対に認めない。
あれ?
御影警部補? そこは受付カウンターですよ?
何かあったのですか?
何やら受付の人と話をして、ああっ、何故頭を抱えるような姿を見せるのですか。
貴方は警視庁公安部特殊捜査課の責任者でもあるのですよ? そのような、残念な子供を見るような目で私を見ないでください……。
「よし、帰るぞ」
「えええ? まだ二人を確認していませんよ?」
「その二人だが、ついさっき座席をキャンセルしたらしい。どうやら他の手段で北海道まで戻るんじゃないかな?」
えええ?
他の手段と言うことは、北海道新幹線ですね?
ではすぐに調べてきます‼︎
「待て待て、東京から離れたら別の警察の管轄区になるからな。北海道のことは、北海道警察に任せるしかないだろう」
「そ、そうですが……私は納得できません。あれだけ強い力を持っていて、どうして協力してくれないのでしょうか」
「フリーランスの退治屋はそんなものだよ、決して組織と手を組むことはない…自分たちなりの矜恃を持っているのだからね。しかし、どんな武具を持っているのかは興味があるな」
それでも、私は納得できません。
妖魔なんて、全て滅べば良いのですから。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「はい!! ということで約二週間ぶりの部活でございます」
「正確には10日な。しかし、相変わらずうちは少数精鋭ですね」
水曜どうでしょう的なノリの俺と祐太郎は、札幌に戻って1日のんびりしてから、久し振りに文学部に顔を出した。
「久しぶりですね。それで東京は楽しかったですか?」
「ええ。それはもう……これ、先輩に頼まれていたお土産です」
どさっと空間収納からBL系同人誌を取り出して瀬川先輩に手渡す。新山さんの分は祐太郎が預かっているので、ちょうど彼女に手渡してもらっているところである。
「これはご丁寧にありがとうございます。でも、手に入れるのは難しかったのではないですか? タケミカヅチ・もっこす先生のBL同人誌はプレミアつきますから」
コミケ四日目のタケもっこす先生のブースは、それはもう修羅場のような状態であった。
18禁男性向けは大量に作っているのに、女性用BLは毎回100部しか作っていない。
正確には知り合いなどに領布する分が販売分の他に100部程あるらしいが、それでも全国に200部しか存在しない希少価値のあるものには間違いはない。
それ故に、過去に発行していたものは全てオークションで10万円単位で取引されている。
そんなものを俺たちはどうやって手に入れたか、それは簡単、本人に直接頼んだからね。
「えええええ、これは幻の第一回領布同人誌ではないですか、これは100万払っても欲しい人が大勢いるのですよ?」
「まあ、今回の遠征での収穫で一番凄かったのは、タケもっこす先生のlinesアドレスですかなぁ」
「そうそう。俺とオトヤンはタケもっこす先生と友達になってきましたので」
「でかしたぞ君達‼︎ いゃあ、私は良い部員を持って幸せだよ……」
ああ、先輩が感無量に浸っている。
腐の領域の先輩が見え隠れしている。
口調がいつもと違う、男らしい『腐の領域』の瀬川先輩だ。
その対角線上の席では、新山さんが受け取った同人誌を必死に読み込んでいた。
ウサギとトラのヒーローのアレですね? どっちもTSして百合っていうスーパーコアなジャンルはどうかと思いますよ。
「それで、修行はどうなりましたか? 卵は孵化しましたか?」
祐太郎が瀬川先輩に問いかけると、新山さんも気づいたらしく手を挙げて喜んでいた。
「先輩は一昨日、私は昨日、無事に第一段階というのをクリアした筈なのですが……まだ孵化していません。あとで魔導書を頂けますか?」
「あとでなくても、今でいいんじゃね?」
すぐに空間収納から新山さんと瀬川先輩の魔導書を取り出して手渡す。
契約については、以前試したこともあるので、今回はスムーズに契約も完了して二人は大喜びである。
それならお祝いにと、カナン魔導商会で20ボックスタイプの収納バッグを二つ購入して、今二人が持っている魔導具も纏めて魂登録で魂に登録してあげてから手渡す。
「じゃ、俺はトイレ行ってくるからさ、ユータロから使い方説明してあげて」
「オッケー。じゃあ、まず最初に……」
頭下げられたり深々とお礼言われると恥ずかしくなるから俺は逃げた。
購買部に行って缶ジュースを箱買い、肩に担いで部室へと戻る事にした。
………
……
…
「ただいま」
「あ、おかえりなさい。それでね……乙葉君、魔導具ありがとう」
「こんなに高価なものを頂いて、このお礼は後日改めてさせてもらいますね」
いや、そんな大したことじゃないんですよ。
早速瀬川先輩と新山さん、祐太郎は魔導書を開いてお互いの魔術について擦りあわせを始めていた。
うん、まずは祐太郎が二人に教えたほうがいいよね。なのにどうして、三人とも複雑な顔をしているのかな?
「ははぁ、成る程。オトヤン、ちょいと知恵を貸してくれないか?」
「構わんが、なにがあったん?」
「俺たち三人とも、魔術の系譜が違う。魔導書に記されている魔術が、三人ともバラバラなんだ」
ほうほう、それはそれは。
楽しそうなので新山さんの覚えた魔術を見せてもらう。
…
……
・第一の息吹
ライトヒール
ライティング
フォースコート
キュアポイズン
スモールブレス
ステータス
リードランゲージ
……
…
「あ、新山さんのは完全にヒーラーだよね、僧侶とかクレリックとかアコライトとか。人を癒す魔術が使えるけど、まだ病気は治せないし、骨折とかの大きな外傷は無理みたいだよ?」
「そ、そうなのですか‼︎ よくゲームで見る魔法なので、そうかなぁとは思ったのですが……そうか、今度は私がみんなを癒してあげられるのですか」
どことなく嬉しそうな新山さん。
だけど、どうして祐太郎は瀬川先輩の魔導書を見て渋い顔をしているんだ?
「ユータロや、そっちは何だ? ユータロが普通の魔法使い系、新山さんが僧侶系、ということは先輩は賢者?」
「い、いや、よくわからないんだが、これはどの系譜なんだろう?」
どれどれ、そっち系のゲームとラノベにずっぷりと埋まっている俺が見てあげよう。
…
……
・第一階位
サモン・エレメンタル(火、水、風、土)
エレメントブリッツ(火、水、風、土)
エレメントシールド(火、水、風、土)
コントロール・エレメント
アプライザー
ステータス
リードランゲージ
……
…
「?????」
「ほら、そうなるだろう? どう思う?」
「簡単に説明するとですね、先輩は精霊使いです」
「なるほど、それはあれかしら? 露羽とか支葵とか、ということは、私はエーテル使いなのかしら?」
「いや……その先輩のネタがわからないんですけどね。多分ですが、先輩の予想通りの精霊使いで間違いはないかと」
うーむ、先輩のネタが分からない。
けれど多分、精霊を使役するってことで意味は合っていると思う。
「そうですか。実際に試してみたいところではありますけれど、迂闊に魔術なんて行使したら警察騒ぎでは済まないですからね……何処か人気のないところはあるでしょうか?」
「まあ、自宅で練習するのが一番ですけど、何でしたらうちに来ます? あのロト6 で札幌駅前のマンション購入したので。其処でしたら人目もありませんから練習できますよ?」
「あ‼︎ そうだ乙葉君、ロト6 ありがとう。私も当たったんだよ、三億八千万」
「私も。二億六千万ほど小遣いが増えましたよ。乙葉君君のおかげですね」
それはよかった。
さて、そうなると、夏休み中にうちに集まって魔法合宿と行きたいですよね。
色々と揃える必要もあるから、今日はこのまま駅前まで行って、足りない家具とかも揃えることにしますか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
乙葉君からロト6 の当選番号を教えてもらった翌日。
私の家では、ひと騒動ありました。
「……まあ、小春はまだ未成年だから、銀行に一緒に行かないと換金できないのね? それは構わないわよ」
「お母さんありがとう。私一人だと心細かったから」
「別にいいわよ。でも、ちょっとだけ帰りに美味しいものを食べて帰りましょ? 小春の奢りでね」
まだ私も当選金額については説明していない。
もし知ったら、どんな事になるのか不安だったから。
でも、銀行に行って別室まで案内してもらって、いざ当選金額の受け取りの時点でお母さんの顔は凍り付いた。
「……という事です。お嬢さんの当選金額は3億8150万2500円です。これは小春さんの名義となりますがよろしいですか?」
「あ、あの、うちの娘が当てたのですか?」
「ええ。それでですね、当選金については税金は掛かりませんが、後ほど両親の口座などに移動した場合は贈与とみなされて贈与税が付加される事もあります。
ですので、もしも移動する可能性がある場合は、共同購入という手続きをすることもできますが、どうしますか?」
あ、これは乙葉君から聞いたやつだ。
確か乙葉君は全て自分のものにしてもらったらしいけれど、わたしは違う。
「はい、共同購入でお願いします。私の口座に二億五千万円、残りは父と母の口座にお願いします」
「小春!! 別に全部小春のもので構わないのよ?」
「いいのいいの。私一人でこんな大金持ちたくないし、お父さんやお母さんも少しは楽ができるよね?」
そんな話をしていると、目の前の支店長が書類を揃えて準備を始める。
「では、名義は共同購入で、指定金額を三名様の口座に振り込ませて頂きます」
「はい。できれば私の分は、定期預金の限度分にも分けてください」
「かしこまりました。では手続に少々お時間をいただきます」
よし。
これで面倒な手続は全部終わった。
あとはのんびりと夏休みを楽しもう‼︎
そう思っていたのに、翌日になって親戚から電話が次々とくるのはどうしてだろう?
それも知らない親戚が多いのはどうしてだろう?
結局、この知らない人達のおかげで電話番号を変えたりするのに時間が掛かった。
本当、何処で知ったのかなぁ。
そして単身赴任のお父さんからも、何が起こったのかわからないという感じで連絡が来た。
しまった、お父さんに説明するのを忘れていました。おかげで一時間の長電話になってしまったのは言うまでもありません。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりにくいネタ
精○使い / 岡○武士 著
水曜どう○しょう
修正:間違って亡くなっていた新山さんのお父さんを蘇生。お父さん死亡ルートはノクターン用ハードモード。




