第二百八十一話・千載一遇? 千慮の一失?(よし、人間代表は決定!!)
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──アトランティス・水晶の塔
祐太郎とも無事に合流。
ここから先のスケジュールとしては、夕方に水晶の森に転移門を繋いで移動、そこから魔法の絨毯や箒で王城に向かい、諸々の手回しを行なったのちに、明日の正午にお披露目という流れである。
重要な説明を省きながら、白桃姫は忍冬師範たちも交えてのスケジュールの説明を行なったのち、真面目な表情で忍冬師範たちに問いはじめた。
「まあ、ここまでの説明を聞いて大体の予想はできているであろう。明日の正午、王都王城で魔人王及び四天王、十二魔将のお披露目をすることになる」
「……新しい魔人王か。我々の世界の対妖魔機関でも、あらたな魔人王が即位したという情報は聞き及んでいます。ですが、その正体についてはいまだ不明であり、我々人類に敵対しないことを望んでいるのですが」
「白桃姫さまから見て、新たな魔人王はわたしたちと敵対するような存在なのですか?」
忍冬師範と要先生が、複雑な表情で問いかけている。
最悪の場合、この地で差し違えても魔人王を倒すと言い始めるかもしれない。
「う〜ん。敵対はせんなぁ。魔人王殿は、魔族と人類の共存を求めておる。その証拠に、新たな十二魔将には、人間からも何名か組み込む予定であるのじゃが……」
そう告げてから、白桃姫がチラリと先輩を見て笑った。
先輩も覚悟を決めたらしく、こくりと頷いている。
まあ、一番話を通しやすい存在って、そうなるよなぁ。、 他国の対妖魔機関からは、かなりのクレームが日本国政府に集まるかもしれないけど……隠していれば、大丈夫だよね?
「そ、その人間サイドの魔将は誰なのですか?」
「宜しければ、教えて欲しいのですが」
「まだ決まっておらんのじゃ。という事なので、忍冬、要、二人にその地位を授けたい。構わぬか?」
「「え?」」
あ、久しぶりの鳩に豆鉄砲状態。
突然話を振られて、師範たちが呆然としている。
「ちょ、ちょっと待ってください。なぜ私たちなのですか?」
「妾から見て、人間サイドとして公平な判断ができると判断したからじゃが。日本国に仕えているというのもポイントであるが、なによりも中庸な立場を貫けると思ってのう」
「因みにですけど、この話は、他の政府関係者には?」
「誰にも話しておらん。参考までに、人間サイドは三名のみ。そのうちのふた枠をお主らに任せようと考えただけじゃ」
あ〜。
忍冬師範が腕を組んで考えはじめた。
これは長考になるのか?
ことの顛末については、俺たちは決定後に対応することになっているので、今は無言で……というか、祐太郎からアトランティスでの話を聞いている最中なので、そっちの会議に干渉する気はない。
まあ、瀬川先輩は深淵の書庫を発動して話を聞いているし、俺は並列思考で意識の半分はそっちに傾けているから、聞き漏らすことはない。
「ことが事なので。今すぐ、この場で判断するのは難しいのですが」
「そうか? もしもこの話を国会に持ち帰ったら、利権絡みの輩が派遣されるのではないか? 妾は、その辺りの人材については詳しくはないので、お主たちに不利益を齎すものを選ぶやもしれん。それにじゃ……この地でのお披露目は明日、今からでは間に合わないのでは?」
まあ、今決まらなくても空席にして置けるんだけど、敢えて思考時間も奪うとは、白桃姫……恐ろしい子!!
「では。魔族と人間を繋がる大使的役割という事で、この件はお受けします。それならばかまいませんか?」
「魔族大使兼、十二魔将か。それなら構わんな。要はどうするのじゃ? 十二魔将第四位、怠惰のピク・ラティエとして問うが」
「私も、忍冬警部補と同じ立場でなら、この件はお受けします。この後は色々と面倒な手続きなどがあるかと思いますが」
「面倒も何もないわ。では、この件は決定じゃな」
「……一つ教えてください。なぜ、浩介たち魔術師ではなく、我々なのですか?」
神妙な顔で、忍冬師範が問いかける。
すると、白桃姫が口を開いてニイッと笑う。
「新山小春、築地祐太郎は、新魔人王の四天王として動いてもらうからじゃ。ちなみに乙葉浩介は十二魔将第一位に登録し、妾たちの監督を行うことになっておる。残りの魔将については、この地を統括するものを明日にでも選抜する」
「なるほどなぁ。道理で、この話の間、お前たちは話し合いに口を出さなかったわけだ」
「いや、あのですね師範。俺たちを恨めしそうに見ないでくださいよ。こういうのは、俺たちの意見を告げる必要はないと思うんですよ? そう思いませんか?」
決定するのは師範たち。
そこに俺たちの意見を伝えることで、決定権を委ねられても困るからさ。
「なぁ、オトヤン。俺が四天王って初耳なんだけど?」
「あ、そうか。そういう事なので、宜しく!!」
「はぁ……まあ、構わんけど。ちなみに四天王ってことは、あとは?」
「ワイルドカードって言う奴。ちなみにリナちゃんと沙那さんは、二人で十二魔将の一席を任せることになっているから。だから四天王の残り一つは空位らしいよ」
俺の説明を聞いて、祐太郎も納得したらしい。
すると、要先生が俺たちの方を向いて。
「あの、瀬川さんは今回の話には関与していないの?」
「いえ、ちゃんと先輩の席もありますよ?」
「まず、忍冬と要は十二魔将となる。それ故に、魔人王殿の不利益となることは外に告げることはできないのじゃが、構わぬな?」
「ええ。引き受けるといった以上は、ルールは守らせてもらいます」
「私も従います。けど、それと瀬川さんの話と関係あるのですか?」
忍冬師範と要先生がそう告げると、先輩は席を立つ。
「では、改めて……当代の魔人王となりました、ミヤビです。よろしくお願いします」
──ザワザワザワザワッ
先輩が魔人化する。
魔人王フォームに姿を変化し、神装白衣に身を包む。
銀毛銀髪、四つ腕の獣人。
その姿を見て、忍冬師範と要先生は息を呑む。
──ゴクッ
「浩介が魔人王というのかと思ったんだが……完全に予想外だったな。まさか、瀬川君が魔族とは」
「いえ。父は魔族ですが、私の母は人間です。私は人間と魔族のハーフです」
「それで、全ての魔族を統べる力を手に入れてしまったのね。なるほど、人間と魔族の共存を唱える理由もわかりました」
「そういうことなら、協力させて貰う。まあ、立場的にはこれからは頭を下げる必要があるのかな?」
「それはやめてください。今まで通りで構いません。この鏡刻界を統治するのは、この地で十二魔将に信任する魔族に任せますし、私たちの世界でも私自身は表に出ることはありません」
淡々と説明する先輩。
そして白桃姫が、傍で腕を組んで頷いているプラティさんの肩を叩きつつ。
「プラティも十二魔将決定じゃよ。其方は、このアトランティスの管理を命じるぞ」
「……そうくるとは思いましたよ。魔人王ミヤビ、このプラティを魔将に加えてください」
恭しく頭を下げるプラティ。
これには先輩も大慌て状態。
「あ、頭を上げてください。では、プラティさんには十二魔将第十一位を」
「いや、ミヤビよ、そやつはもっと上で構わん。寧ろ、計都姫を四天王入りさせるのじゃ」
「え、そうなのですか?」
「うむ。立場だけでも魔族を一人四天王に入れておけば、万が一の時には対応可能じゃからな」
「はぁ。では、こんな感じになりますね?」
──ピッ
深淵の書庫がモニターモードになる。
そして入れ替えと追加で、内容は少しだけ大きく変化した。
魔人王:ミヤビ
四天王:ワイルドカード
:新山小春
:築地祐太郎
:計都姫
十二魔将
第一位 :乙葉浩介
第二位 :唐沢リナ&有馬沙那
第三位 :怠惰のピク・ラティエ
第四位 :魔神・羅刹(綾女)
第五位 :冥王のプラティ・パラティ
第六位 :第六課・忍冬修一郎
第七位 :第六課・要梓
第八位 :人間側から信任
第九位 :鏡刻界ミラーワーズで信任
第十位 :鏡刻界ミラーワーズで信任
第十一位:鏡刻界ミラーワーズで信任
第十二位:虚無のゼロ
「……なあ浩介。おまえ、こうなることを見越して俺たちを誘ったのか?」
「待って師範。俺は誘ってないからね、誘ったのは白桃姫だからね? 俺はこの件については関係ないからね?」
「その通りじゃよ。大局を見て、これが未来への道標になると判断しただけじゃ。それに、乙葉浩介はいざ知らず、人間サイドの十二魔将は、歳を取れば入れ替わるであろう?」
「まあ、魔族とは違い、わたしたちは長生きできても100前後。それに、瀬川くんも寿命で魔人王を降りる時期が来るのですよね?」
「その時は、妾が魔人王の地位を預かる」
おっと。
そう来ましたか。
でもさ、俺はいざ知らずって、どう言うこと?
「白桃姫に質問。なんで俺はいざ知らず?」
「お主と瀬川は半魔人血種。普通の人間よりも長生きするからな。そしてミヤビについては、妾が魔人王を継承する。つまり、お主は妾の部下になるのじゃ!!」
──ガーン⁉︎
「ちょ、おま!!」
「ホーッホッホッホッホッホッ。なんとでもいうが良い!! その時にはこき使ってやるから覚悟せい!」
「くっそ、これ見よがしに……」
白桃姫、いつか泣かすからな。
覚えていろ。
「では改めて。俺たちは人間代表として、魔族大使的役割に就くことになる。それで良ければ、よろしく頼む」
「同じく、対妖魔機関第六課・要梓として十二魔将に参加します」
「俺は、十二魔将として、このアトランティスを管理する立場に就くことになる。それで構わないな?」
「皆さん、よろしくお願いします」
──キィィィィィン
『契約は成された』
王印から声が聞こえる。
そしてこの場の全員の身体に、十二魔将及び四天王を示す【紋章】が浮かび上がる。
って、俺の右手に十二魔将の紋章が、左手に四天王の紋章が浮かび上がったのはなんで?
慌てて左手は隠して、右手の紋章を浮かび上がらせる。
「それは【魔将紋】【四天王紋】と言うそうです。そこから力が授けられますので、それは受け取ってください……と、魔皇さんたちが申しています」
「その魔皇とは?」
「はい、魔皇とはですね……」
先輩が忍冬師範と要先生に説明を始める。
どうやら、こうなった経緯も全て話すらしい。
そのあたりは俺たちも補足を加えるとして、いよいよ明日が本番。
話し合いが終わるタイミングで、全員に認識阻害装備を渡してと。
あ〜。
とっとと終わらせて、平和な時間を取り返したいわ。
俺の高校生活、まともに楽しめていないような気がするのは、気のせいじゃないよなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。