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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

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第二百七十九話・平穏無事? 物には時節!(準備万端いうか、なんというか)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

──妖魔特区・ティロ・フィナーレ

 つ、か、れ、たぁ。

 例の『認識阻害アイテム』を仕上げるために、ここ数日の放課後は全て魔導具作成に費やしたよ。

 そして今日が最後の調整。

 うちじゃ狭すぎるので、ティロ・フィナーレの居間を使う。

 部屋全体に並べられた大小様々な魔導具の数々、ここまで種類のちがう魔導具を一度に作り出したのは俺ちゃんも初めて。


「最後の仕上げ……錬成魔法陣起動!! 効果定着と魔導核の融合開始!!」


──プシュゥゥゥゥゥ

 作り上げた装備に、一斉に魔導核が定着を開始する。

 これで全ての装備が魔導具となり、登録者以外は使用できなくすることができる。

 鑑定や天啓眼てんけいがんによって正体が見られた時のために、俺は第四聖典ザ・フォースにオリジナル魔法『書き換えライティング』を作り出す。

 これで名前やステータスも、全て変更できる。

 しかも魔力波長すらカモフラージュできるので、これほど完璧なものはない。

 まあ、ステータスや魔力波長とかは見た目のみのカモフラージュなので、本質を変えることはできなかったんだけどね。

 それでも、これが完成した暁には、堂々と鏡刻界ミラーワーズの魔大陸にいってお披露目をすることもできるし、こっちでも堂々と動くことができる。


──ピンポーン

 魔法陣による錬成が終わるまで、のんびりと炒飯でも作って日曜日のお昼タイムを堪能しようとしてんだけど、ベランダに設置したインターホンが鳴り響く。

 なんでベランダかってツッコミは無し。

 そもそも、うちのマンションをはじめ、妖魔特区内部のかなりの範囲は電気が止まっているんだからさ。

 つまりエレベーターも動かないので、うちに来るお客は空を飛んでくるのが主流、わかる?


「あの、乙葉くん。そろそろ開けてもらえるかな?」

「先輩との話し合いも終わったので、十二魔将についての報告を行いに来ましたよ」

「はいはい、少々お待ち……と」


 ガチャリとロックを開けて、二人をお招き。

 そして部屋中に広がっている魔導具を見て、呆然としているよ。


「ひいふうみぃ……と、どうして十人分も変装用魔導具があるの?」

「俺と新山さん、一応先輩。祐太郎、沙那さんとリナちゃん、高遠先輩と美馬先輩、セレナさんで九人分。予備が一つ。まあ、こんなものでしょう?」

「あ、そういうことですか。では、乙葉くんには本当に申し訳ないのですが、十二魔将についてはこのような感じになりまして……」


 そう話しつつ、先輩が深淵の書庫アーカイブを発動してモニターモードにしてくれたよ。

 そして新十二魔将と四天王? のリストを見せてくれまして。


「ははぁ、なるほどねぇ。これはまた大胆な結論に達したことで」

「それで、私たちの名前も全て偽名にして登録したいのですよ。魔皇さんたちは、それは可能だと教えてくれましたので」

「ほう。それはまた、厨二病が拗れそうな案件だけど。その程度なら、認識阻害魔導具を登録した後で、なんとでも書き換えられるから問題ないですよ」

「ちなみに、沙那さんとリナちゃんの許可はとりました。二人の名前についても、後で教えてくれるそうです」

「ちなみにだけど、白桃姫とかの許可は?」


 ここ、大切。

 魔族サイドの許可は取らないとね。


「あの、私が最初に魔人王になって、魔皇さんたちに押されて十二魔将を決定した時。白桃姫さんと羅刹さん、計都姫からは認証印が送られてきたのですよ」

「つまり、三人は受け入れたと。これはまた、歴代魔人王の中でも、トップクラスの十二魔将が出来上がったようだなぁ」


 魔族最強の一角の白桃姫

 それを凌ぐ魔神・羅刹

 初代魔人王八魔将の一人、計都姫


 この時点で、もう誰が新魔人王に反抗するのかと問い詰めたい。


「あと少しで完成するから、その後にでも白桃姫のところに行ってみますか」

「それがいいわね。では、それまではわたしたちも暇なので、何かスイーツでも作っていましょうか?」

「そうですね、そうしましょう!!」


 ということなので、新山さんと瀬川先輩はキッチンにゴー。

 俺?

 俺はこれからカナン魔導商会の納品依頼を完了するために、しばらくは魔導モニターと睨めっこだよ。


………

……


 あと少しで魔導具は完成。

 キッチンでは、作り置き用のスイーツが所狭しと作り出されているようですし。

 ベランダでは、要先生がシュークリームを両手に持って堪能している最中でございます。

 平和だなぁ。


「うんまぁぉぁぁぁい!! 何このシュークリーム。どこで買ってきたの?」


 要先生が陣中見舞いというか、妖魔特区内のパトロールの途中でやってきたのですよ。

 さらに、隣の家の人が掃除に来ていたらしいのですが、ライフラインが止まっていて掃除できなくて困っていたそうです。

 そして要先生に泣きつかれたので、水を上げることにしました。

 水ぐらいならなんぼでもありますよ、魔法で作れますからねということで、カナン魔導商会経由ウォルトコで蛇口につけるホースを購入。

 それを伸ばして水を貸しましたよ。 

 まあ、貸すというかあげたんですけどね、無料ですから。

 そして子供たちには新山さんたち特製のシュークリームのプレゼント。

 当然ながら材料の一部はカナン魔導商会経由。

 食品コーナーで、『マゼランゴートの生クリーム』というのがあって、それを購入してあげたらカスタードクリームを作ったそうで。


「あ、それは新山さんと先輩の手作りですね。だから市販品じゃありませんよ」

「そ、そうなの……二人はパティシエになる気はないの?」

「ないですね。私は小説家になりたいので」

「私は、瀬川マテリアルに就職しますから」

「あ〜、残念ね」


 本当に、膝から崩れ落ちそうなぐらい残念そうに、要先生が悔しがっておりますなぁ。

 まあ、俺ちゃんには関係ない話なんですけどね。


「それで、今日はここで何をしているのかしら? パトロールということで、この辺りを回っていたのですけれど。この魔導具の山は何かしら?」

「え? 実験的な防具とか。俺は、そんな感じのやつを作っているだけですよ。新山さんたちには完成したら実験に付き合ってもらうので」

「はい。完成までは暇だったので、スイーツを作り置きしているだけです」

「乙葉くんの所有するルーンブレスレットなら、時間停止効果がありますので。そこに保存してもらう予定ですわ」


 NICE!!

 これで怪しまれずに済んだ。

 

「なるほどね。まあ、あまり遅くまでいないように。かなり建物は結界に囲まれているとはいえ、十三丁目ゲートまでは遠いので、野良妖魔に襲われないようにね」

「電話をしたら、近くまでは退魔官が迎えにきてくれるのですよね?」

「まあ、俺ちゃんに勝てる妖魔なんて……そんなに居ないはずだから大丈夫だな」


 この妖魔特区内で怖いのは……まだ居そうなんだけど、見たことがないからセーフということで。

 魔法の絨毯や箒で飛んで帰れば、妖魔に捕まることもないよね?


「そうね。乙葉浩介くんたちに危害を与えるような妖魔はいないでしょうけれど、慎重にね」

「「「はい!!!」」」


 俺たちの返事で、要先生は隣に移動。

 何か話をしてから帰っていったようで。


──チーン

 ちょうど魔導具も完成したことですから、札幌市テレビ城に向かうとしますか!!



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「おお、乙葉ではないか。魔力玉をたもれ!」

「いきなりあって、それかよ」


 まあ、ニコニコと嬉しそうに両手を差し出すから、とりあえず十個ほど作って渡すけどさ。


「ほれ、とりあえずこれで間に合うか?」

「うむ、助かるのじゃ。それで、今日はなんの用事じゃ?」

「用事があるのは私でして。実はですね」


 ということで、新魔人王配下の人事問題についての説明とアドバイスをもらうことになりまして。


「……という事なのですが、なにかご意見はありますか?」

「いや、特にないぞ。妾は面倒臭いのは嫌じゃが、第四位辺りなら構わん。いや待て、羅刹よりもつよいというのは問題が……しかし計都姫の下……まあ、何もする気はないから構わんのじゃ」

「あっさりかい!! まあ、妖魔関係では動いてもらうこともあるから、その時は頼むな」

「まあ、その程度なら構わん。一つの案件につき、魔力玉一つで構わんぞ」


 そうくるか。

 まあ、タダ働きというのも問題なのかな?


「白桃姫さん。十二魔将というのは、お給料とかはどうなっているのですか?」

「ん? 虚無のゼロがしっかりと管理しておるぞ。あやつは歴代魔人王や魔皇にとっては、調停家じゃからな」

「調停家? それはなんです?」

「ふむ、調停家というのはな、実は……」


 そこからの説明を聞いて、俺たち一同は納得。

 虚無のゼロというのは歴代魔人王・魔皇の補佐的な役割であり、多数決や会議などでの問題の解決を行う貴族らしい。

 しかも、魔大陸の魔族王家の財務管理も一手に引き受けているらしく、ゼロの配下に『財務官』が多数存在するらしい。


「あ〜。ないわぁ。ファンタジー要素がガラガラと崩れていくわぁ」

「乙葉は、妾たちの故郷に何を夢見ておるのじゃ? いくら魔法と異種族が住まうファンタジー世界とはいえ、普通に文化や政治形態は存在するわ。それともあれか? 魔大陸は修羅の国かや?」

「また、何ということを。流石に俺でも、異世界にファンタジー要素は望んでいても、ラナパーナ王国とかを見てきたからそれぐらいは理解しているわ」


 それでもさ、魔大陸については修羅の国っぽく感じていたんだけどね。

 まあ、普通の中世ヨーロッパの文化政治形態の延長かなぁと考えれば、納得がいくよね。

 普通に異世界なんだからさ。


「それなら構わないが。まあ、魔大陸の政治的な部分については、裏地球リヴァースの連邦政府みたいなものと考えるが良い」

「それで、幾つもの王国があってそれを統括する王都があるのですか」

「うむ。裏地球リヴァースの形態とは少し違うがな。まあ、その話は終わりじゃ。面倒なことは向こうの奴らに任せておけば良い、給料などはゼロに任せておけ。足りない魔将については、プラティやアンバランスにでもやらせておけば良い」

「プラティはともかく、アンバランスって誰だ?」

「妾の元同僚じゃな。そのあたりについては、王都に着いてから妾が何とかしてやろうぞ」


 何と逞しい。

 先輩が頭を下げているのと、白桃姫がドヤ顔なのは性格的なものなのだろうなぁ。

 

「魔族との交渉については、力を貸してもらえるのは助かります」

「構わん構わん。魔力玉で全て解決じゃよ。それよりも、築地はどうするのじゃ??」

「祐太郎かぁ……だめだ、念話が繋がらないってことは、鏡刻界ミラーワーズだな。向こうに到着次第、すぐに連絡をとってみるよ」

「それが良い。アトランティスにはプラティがおるから、アトランティス経由で魔大陸に向かうとしよう。今宵の月齢を考えると……来週末に向かうとちょうど良いじゃろ」

「来週末って……ちょっと待った、十二月三十日じゃないか!! そこはずらせないのか?」


 聖地巡礼がぁ。

 いや、世界の平和と自分の趣味を天秤にかけちゃだめだ。

 でも、推し作家の新作が……はぁ。

 書店で買うか。


「何じゃ? 大切な用事があるのか?」

「いえ、大丈夫ですわ。では、来週末、土曜日の朝にここにきますので。それまでに皆さんも準備をお願いします。私事に巻き込んでしまって申し訳ありませんけれど」

「大丈夫です!! 先輩は大船に乗った気持ちで構えていてください。私も乙葉くんもついていますので」

「おう。そうともさ!!」


 これで年末は鏡刻界ミラーワーズ行きが決定。

 確か、当初の転移門の開く時期が、来年末。

 そして新山さんが生贄になった場合の転移門開放が、今年の年末だったよなぁ。

 このドタバタとした一年が、まだまだ続きそうだよなぁ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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