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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

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第二百七十六話・有為転変、思い立ったが吉実?(すれ違い、そら見たことか)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

──鏡刻界ミラーワーズ・フェルデナント聖王国

 王城眼下に広がる庭園。

 その先の広場は今、厳戒態勢の真っ只中にあった。

 突然、フェルデナント聖王国港町上空に姿を表した魔族の飛竜部隊は、一直線に王城を目指した。

 本来ならば緊急事態故に、魔術兵団による迎撃があって然りなのだが、すぐさま王城から届けられた命令書には、王命により『そのまま王城広場まで案内するように』と記されていた。


 そのまま先駆けの馬が先導するかのように飛竜部隊を誘導、真っ直ぐに王城広場までやってきたのである。



「スカループ!! スカループ大司教はいるか!!」


 玉座の間に響く声。

 国王である聖王エドワードは、港町に現れた魔族の襲来の報告を受け、急ぎここにやってきた。

 すでに報告を受けていたマーカス宰相を始め、武官文官たちはすでに玉座の間に集まっている。

 そしてエドワードの前にひざまづいていた。


「聖王さま。スカループ、ここに馳せ参じております」

「早いな。それで単刀直入に問うが、ここに向かっている魔族が、神託にあった魔族に間違いはないのだな?」

「新たな神託はありませぬ故に。そのお考えで正しいかと」

「よし、そのものが到着したら我自らが相手をしよう。万が一を考えて武官は近くに待機しろ、白竜騎士団も準備させておけ」


 その指示に頭を下げ、武官や文官たちが部屋から出ていく。

 そしてその場には近衛騎士とマーカス宰相、エドワードのみが残っていた。


「マーカス、魔大陸に向かわせた船団からは連絡はなかったのか?」

「はい。遠話の魔導具も届かぬ距離にいるのではないかと察します。ですが、こちらに魔族がやってきたことこそが、無事に水晶柱を操る魔族の力を得た事の証明でしょう」

「そうだな、これであの、乙葉浩介とやらに復讐することができる。待っておれ乙葉!! 貴様の生肝を引き抜き、太陽神に捧げてくれるわ」


 高らかに笑うエドワード。

 その眼下では、頭を下げたままのマーカスが口元に笑みを浮かべている。


(まさか飛竜で来るとは予想外だが。ブルーナ、どうやら間に合ったようだな……)


 マーカス……ファザー・ダークの体内の保有魔力が、すでに枯渇を始めている。

 このままだと、この肉体を維持できず、魔族のような精神生命体に体が散ってしまう。

 この世界の法則に囚われてしまっているが故に、同族である知的生命体からは魔力を吸収する事はできず、動物などから得られる量にも限りがある。

 裏地球リヴァース内で暗躍していた時は、周囲の人間などから摂取していたために、ファザー・ダークとしての力もかなり使えていた。

 だが、今はその力も衰え始めている。


「マーカス、お主も広場にて魔族を出迎えてくるが良い。俺も準備ができ次第、向かうことにする」

「はっ、畏まりました」


 恭しく返事を返してから、マーカスも玉座の間を後にした。

 

………

……


──ヒュゥゥゥゥゥン

 12騎の飛竜が広場近くの駐騎場に着地する。

 飛竜の先頭に騎乗していた嫉妬のアンバランスは、周囲で待機していた騎士たちをぐるりと見渡す。


「どうやら、俺たちが来る事は事前に知らされていたようだな……俺は元十二魔将・嫉妬のアンバランスだ。この地に裏地球リヴァースに向かうための水晶柱があると聞いてやってきた。案内するが良い!!」


 頭を下げることなく、声高らかに叫ぶアンバランス。

 すると騎士の一人が前に出て、丁寧に頭を下げる。


「お待ちしておりました。私は陸竜騎士団の団長を務めるクーベル・ドネールと申します。早速ですが、水晶柱の広場までご案内します」

「うむ。話が早くて助かる」


 騎士団長に案内されて、駐騎場から広場へと向かう。

 そこはかつて、フェルデナント聖王国から裏地球リヴァースへと進軍を開始した橋頭堡であり、その一角に巨大な水晶柱が聳え立っていた。


「マーカス宰相殿!! 魔族のアンバランス卿をお連れしました」

「ご……ご苦労。これはこれは、十二魔将のアンバランス殿。お噂はかねがね伺っております」


 丁寧に頭を下げるマーカスだが、その心境は複雑である。

 

(な、何故? ブルーナはどうしたというのだ? 奴でなくては、水晶柱ターミナルをコントロールできないではないか?)


「丁寧な挨拶、いたみいる。さて、俺がここに来たことに、何か疑問があるような顔をしているが」

「そんな事はございません。我々としては、この水晶柱ターミナルをコントロールし、裏地球リヴァースへと繋がる転移門を開ける魔族が来ると思っていましたので」

「そうか。そのような神託があったという事で、間違いはないか?」

「はい。ですので、我々としてもそのような術式コントロールができる魔族を探すべく、魔大陸に使節団を送り出したのですが」


 それは未だ、絶海を越えることができずに海の上を彷徨っている。

 そしてマーカスの不安そうな顔を見てから、アンバランスは王城を見上げた。


「貴様が、魔大陸の使者だな? すぐにでも水晶柱ターミナルを開くことができるのか?」

「あぁ? なんだテメェ……俺がそんな力を持っているはずがないだろうが?」

「マーカス。其奴は何者だ?」


 上から目線のエドワードと、突然下に見られたことで腹を立てるアンバランス。

 

「そ、それがですね。どうやら彼らは、水晶柱ターミナルを操ることができる魔族ではないようでして」

「ほう。では、貴様らは何をしに、ここまでやって来た?」

「元同僚の配下が、ここに水晶柱があるっていう神託を受けたものでな。それを使って裏地球リヴァースに向かうことができるかどうか、調べに来ただけだ」

「同僚の配下だと?」


 エドワードの眉根がピクリと動く。


「其奴は、水晶柱ターミナルを操ることができるのではないか?」

「まあ、デュラッヘの氏族だからなぁ。空間芸術式についてはラティエ家よりも劣るが、奴らは水晶柱ターミナルを支配する術式を使えるんだったかな」

「其奴はどこにいる?」

「さあな。あんたに教える必要はないだろう?」


 お互いに牽制しつつ、情報を引き出そうとする。

 エドワードの目的の魔族については、アンバランスが熟知していることは明白。

 それならば、なんとか味方につけて水晶柱ターミナルを開く魔族と渡りをつけなくてはならない。


「恐れながら陛下。このものは元十二魔将であり、単騎での戦闘力は陛下を遥かに凌ぎます」

「一騎当千ということか……それで、この地には最後の水晶柱ターミナルがある。これを使わなくては、貴様ら魔族も裏地球リヴァースに向かう事はできない……そうだろう?」


 ニヤリと笑いつつ告げるエドワード。

 交渉権については、こちらが有利と言わんばかりのドヤ顔であるが。


「いや、多少危険だが、裏地球リヴァースに向かう方法については見当はついている。貴様ら低俗な人間如きに頭を下げる必要はないという事だ。では、失礼する」


──ブワサッ

 軽くマントを翻し、アンバランスが来た道を戻り始める。

 十二魔将だったアンバランスを、まともに相手できる人間などそうそういない。

 ましてや、たかが一国の王程度でどうこうできるとも考えていない。

 それゆえに、アンバランスは勝者の笑みで立ち去っていく。

 

「……こ、この魔族風情が!!」


 腰のつるぎを引き抜くエドワードだが、すぐさまマーカスが駆け寄って諫める。


「お待ちください。相手はあの猛将アンバランスです……余計な被害が出る前に、ここは引くのが得策かと思われます」

「貴様までそのようなことを!!」

「それに、奴ら魔族は、我々の知らない手段を知っているようです。ここは、情報を得るためにも奴を泳がせた方が得策かと思われます」

「そうか……しかし、忌々しい……」


 血が滲むほどに拳を握るエドワード。

 そして踵を返すと、王城へと戻り始めた。


「マーカス。なんとしても、裏地球リヴァースに向かう道を探し出せ!!」

「御意にございます」


 丁寧に頭を下げると、マーカスもその場を離れる。

 頼みの綱であったブルーナが使えなくなった今、更なる手段を講じる必要があるから。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


──札幌市・妖魔特区内、札幌テレビ城

 平日の夕方。

 二階会議室では、俺と新山さん、瀬川先輩、リナちゃん、沙那さん、そして白桃姫が集まっている。

 今日は部活も休みにしてあるので、白桃姫たちがいない間に、お互いに何があったのか報告を行う場を設けてもらった。

 

「……活性転移門とはまた。厄介なものがあったのじゃな」

「さすが白桃姫、知っていたのか」

「いや、詳しくは知らぬぞ。そういうものが存在するという話を、お伽噺的に聞いたことがあるだけじゃ。そもそも、それらの魔胞萌芽種については、封印大陸にしか存在しないと聞いたことがある。ゆえに、実在しているなど信じたくはないのじゃが」

「その封印大陸って、この前も話に出て来たよね? 一体なんなんだ?」


 そこが知りたい。

 けど、さすがの白桃姫も腕を組んで頭を捻ってしまう。


「う〜む。なんと申したら良いか。瀬川や、こっちの世界で神々が住まう場所はなんという?」 

「え? 私たち日本人の場合でしたら、高天原とか。諸外国ではヴァルハラとか、いろいろな呼び方がありますけれど」

「それと同じものが、封印大陸じゃよ。我々鏡刻界ミラーワーズの神々が眠る世界。いや、起きているのかもしれぬが、はやい話が、神々の住まう大陸ということじゃよ」

「話の規模が大きすぎるわ!!」


 そりゃあ、頭を捻るわな。

 

「でも、そんな場所の種が、どうして私たちの世界に姿を表したのですか?」

「小春の言う通りじゃ、そこじゃよ。可能性としては、そこから持ち出したものがおると考えるのが無難じゃが……そもそも、行き方も場所もわからぬ場所から、どうやって持ってくると言うのじゃよ?」

「なんらかの原因で、私たちの世界に流れ着いたとか?」


 白桃姫の言葉に沙那さんが反応するが。

 それにも白桃姫は唸り声を上げて考えている。


「ぬぁぁぁぁ。全く分からん。分からんという事は、考えるだけ無駄じゃ。この話はおしまいじゃ、また何か似たようなことが起きたら、その時に考えようぞ」

「そうなるよなぁ。まあ、あちらの世界での出来事の大きなものはそれぐらいだよ。あとは瀬川先輩が魔人王になった事、それに合わせて魔族が動いたけど、俺が裏技でどうにか収めたことぐらいかな」

「ふむふむ。それならまあ、こっちの世界は平和じゃな。しかし鏡刻界ミラーワーズをどうにかせんことには、魔大陸は混迷を極めるじゃろうなぁ」


 そこな。

 自分達の王が不在。

 そりゃあ、悪いことを考える魔族も出てくるってことだよ。

 それこそ、魔大陸全域を巻き込んだ、大戦争になってもおかしくないよなぁ。


「そうなると、向こうの世界で大戦争?」

「可能性がある。と言うことで、妾からの提案じゃ。乙葉や、瀬川を連れて魔大陸に向かうぞ!!」


 また、なんていう……って、ちょいと待て。

 それって、まさか?


「あ、あの、白桃姫さん? 私も一緒に行く理由は?」

「魔大陸中央、王都ドミニオンにある王城で、魔人王モードの姿を見せるのじゃ!! その上で、残っている輩に国の政を任せてくるのじゃよ?」


 あっさりと告げる白桃姫。

 そして俺たちも一瞬の間を置いて。


「「「「「えええええ!!」」」」」


 そ、それは想像していなかったわ。

 本当に、俺たちが向かうのかよ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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