表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

270/592

第二百六十九話・諸行無常!危急存亡の秋だったかも(予想外、正直申し訳なく候)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

──シュタタタタ

 サーチゴーグルの示す方向に向かって、俺は走っている。

 すり替えられた魔力感知球は、この建物から少し離れた場所から反応している。

 全く。

 川端政務官は何を企んでいるんだろうと思って走っていたら、件の川端政務官が二人の特戦自衛隊員を連れて正面から走ってきた。


「乙葉浩介!! 受付の水晶球が偽物だったというのは本当か!!」

「は、はぁ? あれって川端政務官がすり替えたんじゃないんですか? 何か目的があってわざと反応しないようにしたとか?」

「そんなことをする理由がどこにある。受付で一定値以上の魔力が検知できなかった場合、別の講堂で魔力訓練についての講義からやり直すことにはなっているが、わざわさ水晶球をすり替えてまでそんな事をするはずがないだろうが」


 あ、ガチで怒ってた。

 これは俺の早とちりだわ、申し訳ない。


「それは失礼しました。今日の要先生たちの講義の妨害工作かと」

「やる意味がわからん。今は一人でも多くの魔術師が必要なんだからな。しかも、講義に参加する大半の人々は特戦自衛隊員だ。なにを妨害するというのだよ!!」

「全くです。では、俺は急ぎますから」

「待て、まさか本物の水晶球のある場所がわかっておるのか?」


 そう問いかけるので、取り敢えず頷いて走り始める。

 その後ろから川端政務官と二人の自衛官も走って追いかけてくるんだけど、それはまあ気にしないで。

 そんなこんなで五分ほど走って、巨大な倉庫にたどりつきましたが。


「……この倉庫の中ですが。ここは何があるのですか?」

「これは整備課の備品庫だが。鍵はあるか?」


 川端政務官が自衛官に問いかけると、一人が急ぎ足で鍵をとりに走る。

 まあ、さすがに開けっぱなしってことはないので、ここは鍵が到着するまでは周辺調査を……。


『ピッ……王爵級魔力反応1、男爵級魔力反応1。倉庫内部で魔力が高まっています』

「離れろぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」


 俺は思わず叫びつつ、横に向かって飛んだ。

 そして自衛官も俺の言葉に反応して、川端政務官を抱えて左に飛んだけど。


──ジュゴォォォォォォォォォォォォオ

 巨大なシャッターが丸く溶け落ち、さらに俺たちのいた場所に向かって熱線砲のようなものが飛んできた。


「ぐぅぁぁぁぁ!!」

 

 そして遅れて飛んだ自衛官の両足先が熱線砲に焼かれ、炭化して崩れる。

 川端政務官はどうやら無事だったらしいけど、その光景に顔が引き攣っている。

 そしてシャッターが音を立てて引き裂かれ、内部から両腕が大砲のような魔族と女性人魔が姿を表した。


「あらぁ? なんでここに魔術師がいるのかしら?」

「ゲッゲッゲッ」


 二足歩行の蝦蟇、両腕が大砲。

 仮称、ガマバズーカーとでもしておくか。


『ピッ……新山さん、魔族の襲撃があって被害者が一人でた。先輩の深淵の書庫アーカイブで俺のルーンブレスレットをサーチしてきてくれるか?』

『は、はい!! 急ぎ向かいます!!』


 念話は素早く簡潔に。

 チラリと政務官を見るけど、まだ恐怖に体がすくんで動けなくなっている。

 そっちにゆっくりと歩きつつ、二人の魔族を牽制。

 

「まあ、なんでここにと言われても。アルバイトとしか言えないんだけどさ。おばさん、久しぶりだねぇ。たしか、リィンフォースって名前だっけ?」

「おば……ゴホン。この私をおばさんだなんて、今から後悔させてあげるわよ。陽炎水鬼、目撃者を全員始末しなさい!」

「ゲッゲッゲッ」


 女の言葉に笑いつつ、ガマバズーカーが両腕を俺に向かって構える。

 目の前のこいつは、燐訪の魂を吸収した魔族同位体の魔神リィンフォース。

 以前会った時に登録した魔力波長が一致したよ。

 でも、今の外見は燐訪じゃない、一昔前のトレンディドラマに出てきそうなボディコンワンレンの派手なねーちゃん。

 おばさんって煽ったら、案の定反応してくれたよ。

 それよりもまずは、あの熱線砲をどうにかしないとならないよな。

 素早く政務官たちの前に飛び出し、魔導紳士モードに換装。

 そしてセフィロトの杖を構えて力の盾フォースシールドを百二十五倍強度で発動!!


──ブゥンドジュゥゥゥゥゥゥゥゥ

 ギリギリ熱線砲を受け止めることができたし、力の盾フォースシールド百二十五倍を貫通することはできないらしい。

 

「ゲゲッ?」


 頭を九十度傾けて疑問符よろしく俺を見るけどさ。

 それは攻撃しろって言っているよな?


「六十四倍、光銃!!」


──ブゥン……ドゴォォォッ

 手の中に光銃を作り出し、ガマバズーカー目掛けて撃ち放つ。

 だが、ガマバズーカーも光銃から射出した弾目掛けてバズーカーを放つ!


──ブジュゥゥゥゥゥゥ 

 そして相殺。

 いや、あの熱線砲って化け物のように強くない?


「あらぁ? あなたの火力ってその程度なの? 私のどの魔法よりも弱いじゃない」


──バサッ

 花扇子を広げて口元を隠す女人魔。

 くそう、余裕があるじゃないかよ。


「まだまだ余裕はあるけどね。本当にあんたは何者なんだ? マグナムの配下か?」


 そう問いかけると、キョトンとした顔でこっちを見てから、高らかに笑い始めた。


「ホーッホッホッホッホッホッ。この私が、あのマグナムの配下ですって? そんなバカなことがあるはずないじゃない。私は魔神リィンフォース、ある目的のために、あるお方に仕えている魔神とでも申しておきましょうかね」


 あるお方、ねぇ。

 魔人王じゃ無いだろうし、マグナム配下でもない。

 そうなると、新たな勢力の登場なのか? 面倒くせぇぇぇぇ

 しかもなんだよ、王爵級魔族って。

 魔神の階級も魔族と同じなのかよ?

 そもそも王爵級ってなんだよ?


「やっぱりリィンフォースかよ。その、白桃姫の知り合いの魔族が、こんなところで何をしているんだ?」

「知り合い……まあ、知り合いといえば知り合いよね。ぶっちゃけると、魔術師が増えると厄介なのよ。だから殺そうかなって思ってね……そうしたら、こんなに危険な魔導具があったじゃない。これはあってはいけないものよ?」


 スッと懐から水晶球を取り出して俺に見せると、突然それを鷲掴みにしてから。


──メキッ……ゴキガギゴギゴグシャッ

 力一杯握りしめて砕いた。

 嘘だろ?


「あ、は、はぁ? それを壊せるのかよ!! ってまたか!!」


 リィンフォースと話をしている最中にも、ガマバズーカーは熱線砲を撃ち込んでくる。

 まあ、力の盾フォースシールドの発動時間内だから、それを意識コントロールして受け止めるんだけどさ。


──シュンッ

 熱線砲を受け止めた直後、俺の懐ギリギリにリィンフォースが転移してきて。


──ゴギィィィッ

 俺の頭を横から殴り飛ばしてきた。

 そんなノーモーションで転移してきて、死角から殴り込まれたら躱しきることなんてできないわ。

 そのままもんどりうって横に吹き飛ぶと、急ぎ立ち上がって炎の槍フレアランスを展開する。


──ゴゥゥゥゥゥゥ

 燃え盛る2本の槍。

 それを見てガマバズーカーは後ろに怯んだが、リィンフォースは涼しげな顔。


「魔力強度64マギカスパルの槍……ねぇ。あなた、少しショボくない?」

「ショボいかどうかは、受け止めてから考えろってんだよ!」


──シュシュシュンッ

 リィンフォースに向かって炎の槍フレアランスが放たれる。

 だが、それをあっさりと交わすリィンフォース。

 うん、躱してくれて助かったよ。


「こんな火力の槍が通用するとでも?」

「リィンフォースには効果ないかもしれないけどさ。そっちはどうかな!!」


──ドゴォォォッ

 俺の放った炎の槍フレアランスは、的確にガマバズーカーの両肩を打ち抜き、腕全体を燃やした。


「ゲヒョォォォォォォォォォ!!」


 絶句か〜ら〜の叫び声。

 両腕が燃え落ち、ガマバズーカーは戦意喪失状態。


「へぇ。私に向かって放ったのは囮で、こっちが本物っていうことなの?」

「まさか? 本物はこっちだよ!!」


──ブゥン

 俺と話をしていたリィンフォースの全身を、魔導ライフルが撃ち抜いていく。

 さっき鍵を取りに行った自衛官が、どうやら連絡を受けて仲間を連れてきたらしい。


「多勢に無勢ではないけれど。まあ、今日のところは挨拶程度と思って構わないわ。次にあったら、もっと楽しいことをしてあげるわね?」


──ファサッ

 そう呟いて、リィンフォースは霧散化する。

 そして残ったガマバズーカーには、俺からの贈り物をプレゼントだよ。


力の矢フォースアローっ!!」


 次々と生み出される力の矢フォースアローが、ガマバズーカーの全身を貫いていく。

 そのうちの一発が魔人核を掠めたらしく、絶叫をあげながらその場で灰になり崩れ落ちていった。


「お待たせしました!! 怪我人はどこですか?」

「ナイス新山さん。川端政務官とその自衛官をお願いします。俺はサーチを続けるから!!」


 両腕を左右に広げる。

 さっきのリィンフォースの魔力波長は登録してあるので、この敷地内にまだ残っているかどうかサーチする。

 だが、すでに何処かに消え去ったらしく、リィンフォースの反応はなかった。


………

……


 この突然の魔族襲撃? も無事に完了。

 怪我をした自衛官の脚も再生し、ついでに抱えられていた川端政務官の腰も修復完了。

 どうやら横っ飛びで飛んだ時にぶつけたらしい。


「乙葉、さっきの魔族は知っているのか?」

「白桃姫の元同僚だってことぐらいしか知りませんよ。いや、正直いうと、逃げてくれて助かったって感じですね」

「お前なら倒せるんじゃないのか?」


 そんなご冗談を。

 あの魔力値、そんじょそこらの魔族とは桁が違うんだよ? 

 いくら俺でも、一人でどうこうできるとは思わないし。

 そもそも俺の後ろには川端政務官と負傷した自衛官がいたんだよ? 二人を守りながら戦うなんて、無理無茶の二つセットでお届けするよ。


「そうか、それは済まなかったな」

「え? 俺、声に出ていた?」

「しっかりとな。しかし助かったよ、礼をいう」


 深々と頭を下げる川端政務官と自衛官。

 いや、そんな、まあ、はい、そうですか。

 普段の噛みつき具合とは違うので、思わず面を喰らってしまったよ。


「まあ、素直に受け止めます。それで、これ、砕かれましたけどどうします?」


 ちょいちょいと砕け散った水晶球を指差すと、申し訳なさそうにこっちを見て。


「代金は支払う。同じものを用意できるか?」

「まあ、普段から持って歩いてますけど。どう見ても事故としか思えませんよね。どこですり替えられたのかはわからないので、そっちは川端さんたちで調べてください」


──スッ

 空間収納チェストから魔力感知球を取り出して手渡す。

 ちょうど新山さんのほうも治療が終わったらしく、俺の近くにやってきて。


「はい、乙葉くんも動かないで。診断ディアグノーシス……問題なし。魔力がかなり低下してますけれど、薬飲みます?」

「サンキュー。まあ、この後の俺の仕事は警備だけだし、そんなすぐに襲撃が来るとも思わないから、ゆっくりとするよ。新山さんこそ、呼び出してごめんね」

「ううん。大丈夫。要先生の方は先輩がついているから」


 深淵の書庫アーカイブを貫くだけの火力なんて、そうそう存在しないんだろうなぁ。


「では、俺たちは講堂にもどります。すり替え犯の割り出し、よろしくお願いします」

「ああ。そっちについては任せて貰おう。では、我々も失礼する」


 ちょうど魔導ライフルを装備した自衛官たちも到着したので、政務官もこの場を離れていく。

 そして一連の騒動を嗅ぎつけた自衛官たちが、無惨に破壊されたシャッターを見て驚いているけれど、それはそちらに丸投げさせて貰おう。

 

 ということで、ようやく講習が始まるのか。

 もう、どっぷりと疲れたよ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


3/3改定

魔神ルクリラを魔神リィンフォースに。

以前にも会ったことがあるので、矛盾点の修正。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ