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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

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第二百五十九話・(誤解? まあ、それはそれで)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

──北広島西高等学校

 今日も元気だ梶原がウザい……っておや? 今日は俺のところに来てないのだが。

 むしろ友達連中を集めて、なんだか楽しそうに談笑している。これ、談笑って書いたらお話が楽しそうな感じだけどさ、男娼って書いた瞬間に別の怪しい方向に変化するよね。

 友達と男娼する梶原。

 考えたら気持ち悪くなってきた。


「に、新山さん……精神回復系魔法をプリーズ」

「え? 精神治癒マインドリカバリー。これでいいの?」

「ふう、ありがとう。頭の中の気持ち悪さが消えたよ」

「魔力酔い? まさか魔障中毒? 診断ディアグノーシス!!」

「ちゃうちゃう。余計なことを考えていただけで」


 そう新山さんを落ち着かせようと説明したら、珍しく織田が俺の近くにやってきた。


「なあ乙葉。梶原が昨日の夕方、怪しい露天商から魔術師になることができる杖を手に入れたって話しているんだが」

「あ〜。ジェラールがまた露店を開いていたのかよ……ほら、その辺りの専門家はお前だろうか? 経験者が語ってこい」

「そ、その話はともかくとしてだな。美人で中国語が堪能な露天商って話だったから、ジェラールじゃないと思うんだが。そのあたり、警戒しておいた方が良いんじゃないのか?」

「そっか、ありがとうな」

「一応俺からは、要先生に連絡は入れておいたから。じゃあな」


 用件だけ告げて先に戻る織田。

 これが、一年前には散々俺に迷惑をかけまくってきた織田かと思うと、俺は嬉しくなってフベシッ!!


──ドゴッ

 俺の心が読めたのか、織田が消しゴムを指で弾いて飛ばしできた。

 投げたんじゃなく、指弾だよ、魔力を込めた消しゴムを指で弾いて飛ばしてきたぞ!!


「余計なこと話すなぁ!!」

「あ、声に出ていたか?」

「聞こえていたわ、このボケが!!」


 また声に出ていたのか。

 まあ、それはそれ、これはこれ。

 目の前では話を聞いていた新山さんが、瀬川先輩に念話で報告している。


「……はい、お願いします。先輩も深淵の書庫アーカイブで調べてくれるって。それで、乙葉くんはどうするの?」

「どうするもこうするも……梶原ぁ!! 魔術師になる魔導具、どこで買ってきた?」

「ああ? 梶原だぁ? 大魔法使い梶原さんだ『そういうのは織田で十分だから、とっとと話せ』チッ。円山の方だよ。表参道で露店がでていてな、そこで買ったんだよ」

「サンキュー」

「乙葉は魔術師だから必要ないだろうが」

「いやいや、魔導具を作るためにも、学ぶことは必要だからな」


 うん、そういうことでいいよ、もう面倒臭い。


「それよりも、梶原は魔法使いになる杖を買ったそうだけど、見せてくれるか?」

「その程度なら構わないけど、壊すなよ?」

「壊さない……と思う。やばいものだったら処分するけどな」 

  

 魂の情報ステータスカードを取り出して、そう宣言する。

 これは、日本国内閣府公安委員会『対妖魔機関』から俺に正式に与えられた権利らしくて、やばい魔導具関係については俺の判断で処分していいらしい。

 その際の補償その他は全て、第六課が行ってくれるというから、こちらとしても遠慮なく行えるんだよ。

 これも、魔術師を登録制にするっていう自由国民党の政策の一つなんだとさ。

 もうすぐ国会でも承認されるらしいから、俺はそこに登録するかどうか考えておいてくれと言われている。


 しないけどね。


「げ……銀色の魂の情報ステータスカードか。それがあれば、魔術師として認められるんだったよな? 俺にもくれないか?」

「やるわけないだろうが、それよりもとっとと出せ」


──シュンッ

 俺が告げると、梶原はポケットから小さな杖を取り出す。

 それは瞬時に四十センチぐらいに伸びると、梶原は俺に寄越してきた。


「サンキュー。それじゃあ天啓眼てんけいがん

『ピッ……魔力増幅杖。所有者の魔力を増幅する。発動杖としての機能はなく、子供が魔力を扱えるようになるための訓練杖』


 あ〜。

 なんだろ、この安心感溢れるおもちゃは。


「梶原、まあ、頑張れ」

「あ、ああ……」


 返却した杖をポケットに戻して、また梶原は話を始めている。

 まあ、どんな魔導具だったか織田にも説明してやったし、害がない珍しい魔導具だから放置しても安全……って、待て待て、安全な訳あるか!!

 なんであんなものが出回っているんだよ。


「はぁ。放課後、表参道行き決定……頭いてぇ」



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──放課後・円山表参道


 秋も深まり、円山は紅葉に包まれている。

 中央区の繁華街が結界の中に取り込まれてしまってからは、表参道や北24条といった昔ながらの繁華街に人が集まりつつある。


「……確か、この辺りだと……」

「特に怪しい露天商なんて見当たらないよね? 本当にこの辺りなのかなぁ?」

「う〜ん。先輩からLINEに送られてきた地図では、この辺りなんだよ」


 ちなみに先輩は、今日は用事があるので不参加。

 俺と新山さん、二人の調査活動となったんだけどね。


「あ、あそこに人だかりがあるよ?」

「教えてもらった場所から、少し移動しているけど。まあ、問題はないか」


 そのまま露店まで移動して、人影から覗き込む。

 そこには、つい先日、俺たちを襲った魔族とジェラールが座っている。

 いろいろな魔導具の説明をしている魔族と、その背後で不機嫌そうなジェラール。

 なんだこの光景は?


「はい、次のお客さまどう……ぞ?」


 そして魔族と俺の目があった。


『あ、あ、あなたは魔人王・乙葉浩介!!』

「なに、乙葉だと!!」


 誰が魔人王だよ……と、そうか、その手があったか。


──ジワリ

 体内魔力を左手掌に集める。

 そこに先輩に教えてもらった王印を生み出すと、それを定着。

 対鑑定用にするために、鑑定阻害術式も組み込んで、よし完成……って、なんで俺が魔人王なのか理解できないが。


『ここであったが100年目!! 貴様を倒して王印を奪ってフベシッ!!』

──ガスッ

 女魔族の顔面を掴んで会話を止めるジェラール。

 そして俺を見てから、鞄の中から一冊の本を取り出す。


「乙葉。西洋魔術大全、欲しくないか?」

「それは、なんじゃらほい?」

「アレイスター・クロウリーが残した、表に存在しない魔導書。あのアドルフ・ヒトラーも喉から手が出るほど欲しかった書物だ」

「なんぼだ!!」

「万能回復薬二、三本でどうだ!!」


──ガチャン

 それなら在庫はある!!

 契約成立なので空間収納チェストから万能回復薬・俺バージョンを取り出して手渡すと、交換で魔導書を手渡してくれた。


「むっほー。まいどあり!! あとは好きにしろ!!」


 受け取ったポーションを鞄に収めるジェラール。

 今の騒動で集まっていた客も離れていったんだが、まあ、好都合と言えば好都合。


『ぶぼっ……ジェラール!! 乙女の顔面を鷲掴みにするんじゃないわよ!! それよりも乙葉浩介!! 貴方の所持する王印を寄越し……』


──ザッ

 女魔族の言葉の途中で、ダミー王印が記されている左手をかざす。

 そこに一気に魔力を集めると。


──ヒッ!!

 女魔族の顔が引き攣り、後ろにずるずると下がっていく。


『そ、その魔力量……本当に魔人王……』

「あんたが何者かなんて俺は知らない。けど、俺はのんびりと生活をしたいんだ。あまり俺につきまとうな!!」


 俺、日本語からの中国語自動変換。

 女魔族の言葉は中国語だったから、これで会話は成立する筈。


「へぇ。本当に乙葉が魔人王なのかよ」

『そ、そうよ!! 貴方が魔人王なら、あの姿は一体何よ? 私が見た姿は四つ腕銀毛の女性よ? 危なく騙されるところだったわ!! この偽者!!』


 なるほど。

 そりゃあ、俺としても無茶だったか。

 確か、魔人王即位の鐘とやらが鳴った時に、その姿が見えたんだよな。すっかり忘れていたわ。


「まあ。それはどうでもいいか。ちなみにだけど、あんたはマグナム配下なのか?」

『マグナム様のことはご存知のようね。そうね、私たち【黒龍会】は、マグナム様配下によって構成された魔族の結社。彼の方を魔人王とするのが目的であり、この裏地球リヴァースを我らが手中に収めるために暗躍しているわ』


 堂々と開き直って叫ぶ。


「なあジェラール。お前も仲間なのか?」

「いや、日本で活動する路銀が底をついたので、持ち合わせた魔導具を俺の露店で売っているだけ。売り上げの二割が、俺の懐に入るってこと」

「あ〜。残念女魔族かよ」

『残念とは失礼な!! 私には藍明鈴っていう名前があるのよ!!』


 うん、こっちの世界での偽名だね。

 本名も何もかも、天啓眼てんけいがんではっきりと読み取れているからな。


「はいはい。ファン・ランカ・ダンサーってのがあんたの名前なのはわかっているから。それで、このまえ俺のところに来たのは、俺が魔人王の可能性があると踏んでやってきたわけだよな?」

『その通りね。まあ、魔人王の姿は女性だったので、より高濃度な魔力を持つ貴方をスカウトしに来たっていうのもあるわ』

「それで適当な奴らに憑依して生気を奪った挙句、俺たちに良いようにあしらわれて路銀も底をついたのか。本当に残念な魔族だな……」


 なんだろう、同情の余地はないんだが、残念すぎて呆れてくるわ。


──ファンファンファンファン

 そんな会話をしていたら、パトカーが走ってくる。


「ヤベェ、明鈴、逃げるぞ!!」

『わ、わかったわよ。乙葉浩介、次にあったら貴方を殺します。その生肝をマグナム様に献上するから覚悟することね!』


──フワァシッ

 一瞬で霧散化する藍明鈴と、荷物を素早く鞄に放り込んで走って逃げるジェラール。

 はぁ。

 相変わらず、逃げ足が早いというかなんというか。

 急いで駆けつけてきた井川巡査長が、実に悔しそうだったよ。

 しかし。

 また暫くは、こんなゴタゴタが続くんだろうなぁ。

 魔人王を狙う魔族が存在するってことは、そういうことだよなぁ。

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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