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第二百五十三話・(はい、やっぱり騒がしくなりましたとさ!!)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。


 札駅迷宮地下二階・西側。


 飲食店のあるエリア【フードアベニュー】の真ん中付近では、無事に活性転移門の破壊を確認。

 いや、先輩の魔皇の力で、俺の魔術が全体的に底上げされていたわ。

 しかもだよ、底上げされたのは俺だけじゃなく、新山さんのスクロールマジックも、神聖魔法まで底上げされていたらしい。

 その効果によって、破壊不可能と思われていた活性転移門を無事に破壊、魔人核も萌芽種本体もぶっ飛ばすことに成功。

 それで今は、周囲の状況を確認しつつ休憩タイム。


「ここからだと、南に抜けて地下通路を通った方が安全か」

「いえ、忍冬さんの指摘したルートは以前、わたしたちの別チームがアタックをかけましたが。通路封鎖が行われていました」

「そうか。そうなると、来た道を戻るしかないか……」

「もう少し先、西側のはずれまで向かえば地上に出るための階段があったはずです」


 特戦自衛隊の田畑一等特尉をはじめとしたメンバーが、今後の対策を練っている。

 まあ、そこは大人たちに任せるとして。


「さて。砕け散った魔人核が、霧散化していない件について……なんでだ?」


 普通、魔族や魔獣の魔人核は損傷すると霧散化する。

 それを防ぐために、魔力を注いで固定化し、魔導具のコアとして使うという方法があるんだけど、これは以前説明したよね?

 そのどれでもない状態なのは、なんでだろ?


「魔皇データベースによりますと、この活性転移門は植物型魔獣の特性を持ち合わせた『人造魔獣』のようなものだそうです。この砕けた破片は自然界に存在する魔素を吸収して、再び発芽すると」

「はい! 空間収納チェストの肥やし確定!!」


 手を翳して破片全てを回収。

 サーチゴーグルで残りの破片の存在も確認して、どれぐらいの大きさが残っていたら危険かも先輩に聞いてから、危険度の高い物全てを回収した。


「先輩。あの、魔皇の力を使っても、体は大丈夫なのですか?」

「ええ。なんていいますか……この力がある方が、しっくりくるのです。欠けていた半身ではないですけど、これで完璧な状態……っていうところかしら?」

「あ〜。バースとか掛布とか、伝説の力があれば最強の力を得られるってやつですね?」


 ん?

 このネタには反応しないか。


「浩介、それは欠けていた阪神であって、虎吉以外にはわからないからな?」

「遠くからのツッコミ、ありがとうございます!!」

「「?????」」

「うん、先輩たちにはわからないだろうから、正直すまなかった。それで話は戻しますが、王印、どうするのですか?」

「さぁ……って誤魔化してもダメよね。父の仇を探し出して、どうして殺したのか聞き出すまでは……この力と共に歩むつもりです。そのあとで、白桃姫さんにでも譲渡しますわ」


 真剣な眼差しで話しているので、俺たちも頷く。

 そのためなら手を貸すし、先輩や新山さんの手を血に染めるようなことはしたくないからね。

 それにしても。


──キョロキョロ

 改めて周囲を見渡す。

 ここは札駅地下迷宮で、妖魔特区が姿を表してから一年以上の時間が経過している。

 サンフランシスコ結界内迷宮の例で考えるなら、およそ十二倍以上の月日が経っているんだよ。

 それだけの時間が経過していると、内部の物品が風化して形を失う。

 ただ、濃度の高い魔素に漬けられているような状態でもあるので、物品が魔導具化したり素材化したりするんだよね。

 その結果が、これ。


──コトッ

 近くに落ちていた牛丼の丼。


『ピッ……魔導オパール製・特盛丼。調度品としての価値は高い』


「あ、あれ? 乙葉くん、それってなに?」

「魔素に曝された牛丼の丼だね。こっちはエメラルドの箸。折れているけど、価値はあると思うよ?」

「……みなさん、逃げるのに必死だったので、その当時の状態で風化したのですわ。文明世界が滅ぶ様って、こんな感じなのでしょうね」

「「先輩、怖いっ!!」」

「いえいえ。よくあるディストピア世界のことですわ。私たちの世界がそうなるとしたら……」


 そこで、先輩の言葉が止まる。

 何かを考えているようだけど、なんだろう?


「そうなるとしたら?」

「私が暴走したときか、乙葉君が魔人王になったときかなって……」

「ないわ〜。先輩、それはありませんよ」


──シュタタタ

 そんな話をしていると、俺の視界の向こう側を何かが駆け抜ける。


「新山さん、後ろっっっ!!」


──シュン

 右手に魔力をこめて、横に振り抜く。

 無詠唱の風の刃エアカッターだけど、効果は絶大。


──スパァァァァァン

 一撃でターゲットの緑色の部分を真っ二つに切断すると、走っていたスプリンターオニオンがコトッと倒れた。


「あら? これってひょっとして」

「ええ。スプリンターオニオンですね。この太さだと白桃姫の畑で栽培していたやつじゃなく、自然種で……あれ?」


 自然種のスプリンターオニオン? 

 それって、去年のお祭りの焼き鳥屋台から逃げた奴か?

 そういえば、北大植物園の奴らを回収するのも忘れていたわ。


「浩介、そろそろ移動するけど……なんでネギ? それに、その宝石はなんだ?」

「あ、いや、スプリンターオニオンはまあ、ワンダリングベジタブルですし害はないのでそのままで。これはまあ、ダンジョンの宝物?」


 話し合いが終わり、地上に戻るための算段がついたらしい。

 向こうでは田畑一等特尉たちが装備のチェックをしているところだから、俺たちにも声をかけてきたんだろう。


「はぁ。ここ札幌妖魔特区内部で発見された魔導具などは、原則として拾得物扱いとなるので、一時的に日本国政府の管理対象物となる……元々の持ち主が名乗り出た場合……って、ようは落とし物扱いなので、あとで登録するからな」

「なるほど。ちなみに、テナント内部の物品が魔導具化した場合って、所有者はテナント?」

「そのテナントが所有していたものが魔導具であったならな。魔導具に『変質』した場合は、所有者とは認められない……ただし、形状に変化なく、明らかに所有していたものが魔導具化した場合、所有者と拾得者が半分ずつ権利を持つ」


 そう説明してくれてから、師範がオパールの丼を手にして一言。


「はぁ。また面倒なことを」

「俺のせいじゃないからね、俺たちは見つけただけですから」

「ええ。乙葉くんが魔力をこめてオパール化したわけではないです」

「新山さんの言う通りですわ……」

「まあ、登録はしておく。まさか国内最初の迷宮産魔導具が、牛丼の丼とはな……」

「エメラルドの箸もありますよ!!」

「わかった。回収しておいて、あとで渡してくれ」


 よっし。

 この件は俺に全く非がないことが判明した。

 さて、それじゃあ地上に向けて戻りますか。

 一昔前の歌であったよね、ダンジョンとかの調査では、行くときは困難ばかりだけど帰りは何もなかったってね。

 どこかの探検隊の人が言っていた奴。

 そう考えると、気軽に帰れるよね。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──地上・大通り十三丁目セーフティ

 あの歌を歌った奴、正座な!!

 蛇や蠍や毒蜘蛛もいない、底なし沼も無くなったってありまくりだよ!!

 ミノタウロスだよ、巨大な蜘蛛だよ、姿を消すカメレオンだよ!!

 帰りの方が戦闘が激しかったわ。 

 死ぬほどの大怪我はなかったけど、特戦自衛隊の人たちが重傷を負ったわ。

 新山さんの治療がなかったら死んでいた案件だわ。

 すっかり油断したわ……。


「生きている……」

「隊長。空が、星が見えます……」

「うわぁ……大きな星が、ついたり消えたりしている……」

「死亡フラグやめろ!! 装備の確認、のち、魔導ライフルは乙葉浩介に返却。一丁だけサンプルとして貸与をお願いします」

「あ、どうぞどうぞ。それ作れるのなら差し上げるので、解析して作ってみてください。毎度毎度、俺の方に話を振ってくるのだけはご勘弁を」


 俺の気が変わった?

 そりゃそうだよ、魔導ライフルの威力があれば、特戦自衛隊が前に出てくれるからさ。

 アメリカの対妖魔特殊部隊が、ヘキサグラムと連携して装備を強化しているって話だったし。

 あの連携を見たら、日本もかくあるべしって思っちゃうよ。


「……随分と気前がいいが、何か心境の変化か?」

「あ〜。手が足りない。国内にある水晶柱、その数だけ活性転移門が現れる可能性があるなら、俺じゃなく専門家に任せた方が俺が楽できるって思っただけですよ。だからこれ」


──ブゥン

 空間収納チェストから残り三丁の魔導ライフルを取り出し、忍冬師範に手渡す。


「いいのか?」

「二丁は第六課で管理してください。一丁は特戦自衛隊の……魂登録オンリーワン……と、田畑一等特尉専用登録にしましたので。他人が使えなくロックしてあります、解析に回させないでください」

「え、私が?」

 

 俺から魔導ライフルを受け取った田畑一等特尉が、動揺しております。

 二丁とも預けたらさ、絶対に全部回収して解析してバラして、前線に出てこないのわかるよね?

 そして田畑一等特尉にライフルを渡したら、残りの隊員が俺を見るよ。


「……わかった、わかりましたよ……量産化プロダクション!!」


──ブゥン

 足元に錬成魔法陣を展開し、すぐさま残り三丁も作り出す。

 そして全員に魂登録オンリーワンを行って、他人に使えなくしておいた。

 これで、対妖魔専用銃器を持つ特殊部隊の結成だよ、まったく。


「「「「ありがとうございます!!」」」」

「まあ、あまり未成年に頼らないでよね……と、師範、これを渡しておきますね」


 最後に。

 迷宮で手に入れたオパールの丼とエメラルドの箸を取り出して手渡す。


「書類は明日にでも書きに来てくれると助かる」

「はいはい。それじゃあ高校生と大学生は帰りますよ。もう、新山さんたちがうたた寝してますから」


 地上に戻ってきて疲れ果てている二人は、魔法の絨毯の上で仮眠状態。

 そして二人を起こしてから、俺たちは帰宅モード一直線だったんだけどさ。


………

……


──翌朝

 朝食を取っている時。


「ふぁぁぁぁぁ。なんじゃこりゃ!!」


 朝のニュースで、俺たちは三人と忍冬師範、特戦自衛隊の四名の合同チームが札駅迷宮に調査に向かったというニュースが流れている。

 ちょうど突入した時と帰還した時、そして十三丁目セーフティで牛丼の丼と箸を手渡した映像が映し出されている。

 どうやら魔導ライフルを製造した瞬間とか手渡した映像は映っていないから、その辺りは各局でも遠慮してくれだんだろう。


「……やられたって顔だな」

「まあ、浩介は目立つのだから。認識阻害用魔導具とかを作っておいた方がいいわよ?」

「そ、そうだね。そうした方が良いよなぁ……行ってきます」


 食欲も消え失せたわ。

 このあと登校してから、クラスメイトたち、特に梶原から何を言われるかわかったものじゃないわ。

 はぁ……憂鬱すぎるわ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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