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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

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第二百四十六話・驚天動地!猿も木からムーンサルト(予想外だわぁ)

今年度は、お世話になりました。

皆様の応援のおかげで、【ネット通販から始まる、現代の魔術師】の書籍化が実現しました。


この場を借りで、厚く御礼申し上げます。

また来年も、よろしくお願いします。


それでは、良いお年を!!


『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。


次回更新日は、一月四日の予定です。

 ──鏡刻界ミラーワーズ・魔大陸中央王都

 魔人王の居城、その一角にある十二魔将の執務室。

 次代王が決まるまでは、現行の十二魔将は暫定処置として執務に当たらなくてはならない。

 その執務室の一つ、虚無のゼロの部屋には、大勢の魔族が集まっていた。

 部屋の中に入ることができず、外にも溢れかえっているその様子は、誰がみても異常事態が発生したのだと理解する。


「ゼロ!!!! どこの誰が魔人王になったのかわからないのか?」


 元十二魔将第六位、嫉妬のアンバランスがゼロに向かって問いかける。

 その他にも、第七位・傲慢のタイニーダイナー本人や、他の魔将側近たちも集まっている。

 誰もが、つい数時間前の『新王即位の鐘』の真偽を知りたかったのである。

 いや、それが嘘偽りのないものなのは、彼らも理解している。

 問題は、【誰】が魔人王となったのか。


「まあ待て、ここでは狭すぎるし部下の仕事にも支障が出る。会議室へ向かうぞ」

「おう。そうしてくれると助かる」

「ゼロがそこはというからには、なにか情報があるということだな?」

「まあ、な。全てではないが、ある程度の情報は得ている」


 そう説明して歩き始めるゼロ。

 その後ろについていく側近たちの中には、ブルーナの姿もあった。


………

……


(この混乱状態……これは、うまく情報を得てから動かないとまずいですね)


 マグナムのためではない。

 全てはファザーダークのため。

 私に取って一番都合がいいのは、マグナムが魔人王になること。

 そうなると、彼の元で王印を奪うタイミングを図ることができるから。

 手駒の存在しないマグナムなど、私にとっては敵ではない。

 魔人王の能力である【百鬼夜行】が発動する前に、後ろから始末するだけ。

 だから、今回のようなケースは非常にまずい。

 魔人王になったものによっては、相性が悪すぎて手が出せなくなってしまうから。


………

……


──カツカツカツカツ

 やがてゼロについていった魔族たちが会議室に辿り着く。

 席に着くのは魔将及びその側近。

 その他に集まってきた伯爵級魔族たちは、席の後ろに並んでいる。


「では、まずは皆が知りたいことから説明しよう」


 ゼロが周りの魔族を見渡したのち、ゆっくりと口を開く。


「魔人王継承の儀が始まる前に、魔人王が即位した。これは紛れもない事実であるが、その姿が浮かび上がらなかった……」

「そこだ。何故、今代の魔人王は姿を現さない?」

「まあ待て、最後まで聞けば理解する。あの鐘が鳴る直前、私の目の前に王印が姿を表した」


──ザワッ

 そのゼロの言葉で、会議室の空気が凍りつく。

 ゼロが魔人王となったのかと訝しんだり、頭を垂れようとするものもいる。

 だが、ゼロの言葉の続きを聞いて、一部の魔族は絶句した。


「そして、王印は役目を終えて消滅した……」

「それってつまり、王印は魔人王の証では無くなったと?」

「違うわ。ゼロ、オリジナルの王印を受け継ぐものが現れたということなのね?」


 タイニーダイナーの問いかけに、ゼロが静かに頷く。


「我々魔族にとって、王印は魔人王の証。フォート・ノーマが所有していたのはオリジナルの消滅により、ファザーダークが我らに与えたもの。それが必要無くなったということは、そういうことだと判断した」

「それで、さらに魔人王の姿が浮かばなかった……魔人王は裏地球リヴァースに現れたのか!!」


 アンバランスの問いに、ゼロは頷く。

 だが、それがわかったからといって、魔人王の元に集まることはできない。


裏地球リヴァースで魔人王が即位した。その場合、誰が魔人王となったか……可能性があるとするならば、我々にとって良手なのは怠惰のピク・ラティエ。彼女が魔人王ならば、安寧とした時代が訪れるだろう。裏地球リヴァース侵攻はならぬと思うが、それもまた時代の流れ」


 ゼロが淡々と告げると、魔族の過半数は頭を縦に振って納得する。

 実力ならばピク・ラティエは充分、魔人王としての資質を持っている。

 生来の物臭は彼女を補佐する十二魔将が補えば良い。


「最悪のケースは、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)か。原初の魔族の一人、ファザーダークの側近。神に近い魔族であり、トップクラスの武闘派だからなぁ」


 腕を組んでアンバランスが呟く。

 もしもそうなったら、魔大陸は人間の住まう大陸との戦争に突入するかもしれない。

 魔族こそが支配者、それを唱える伯狼雹鬼(はくろうひょうき)は魔族たちにとっても危険な存在である。


「ここまでが、私の知る真実と仮定。その上で、この場の上位貴族に、【儀式管理公爵家】であるわたしから問いたい。今回の魔人王継承、異議があるものは?」


 異議があったからといって、決定が覆ることはない。

 ただ、牙を剥くものがあるかどうか、それをゼロは知りたい。

 ブルーナを含む【ファザーダーク派】は、誰が魔人王になろうと目的は一つ。

 それ故に反対などしない。

 そしてその場の魔族も、王印の決定に異を唱えるようなことはない。

 それも、オリジナルが選んだであろう魔人王と言うことは、実力が備わっているから。

 また、それが足りないとしても歴代魔皇の力を受け継いだ魔人王の誕生となるなら、誰も逆らうことなど不可能であるから。


「では、儀式管理公爵家、虚無のゼロの名において、魔人王継承の儀の終了を宣言する! 新たなる魔人王が姿を表すまでは、わたしが選んだ【暫定十二魔将】によって執務その他を取り仕切ることとする、以上だ!!」


──ザッ!

 その場の全員が、ゼロに頭を下げる。

 この場で最も力を持つものが、彼であることを誰もが知っているから。

 十二魔将の階位は低いが、実力ならばピク・ラティエの次であることも、誰もが理解している。

 やがて一人、また一人と魔族たちが部屋から出ていく。

 最後に残ったのは、ゼロ、アンバランス、タイニーダイナー、そしてブルーナの四名のみ。


「ブルーナはマグナム代理ということか?」

「ええ。裏地球リヴァースで魔術師に殺されかけたマグナムさまの代行ということで、構いません。この場の決定は、しっかりと伝えますので」

「マグナムには、次代の魔将の席はない。先代を殺害したものが、次の魔将に選ばれることはないからな」


 しっかりと釘を刺すゼロ。

 フォート・ノーマ暗殺の件、実力主義の魔族にとっては世代交代の一つと捉えているのだが、次代王がマグナムを十二魔将に選ぶとは考えられないから。


「それも伝えておきます。ですので、今は暫定措置として、執務代行その他の話し合いに参加することだけはお許しください」

「それは構わないし、むしろ助かる。マグナム本人ではなく、ブルーナが代理として暫定政府の一員となるなら助かるからな」

「それじゃあ、魔人王不在時の暫定政府の立ち上げを始めますか……アンバランスも構わないわよね?」

「俺は、あのマグナムが魔人王でないのなら構わんよ」


 テーブルの上に足を放り投げて、ニヤニヤと笑うアンバランス。

 その態度にブルーナがどんな反応をするのか、それが見たかったのだろうが。

 ブルーナは表情を変えることなく、その場でゼロたちの話を静かに聞いているだけ。


 いくら水晶転移能力保持魔族であっても、その水晶柱の存在しない魔大陸では何もすることができない。

 この場に来るときに使用した活性転移門は、その形こそ留めているものの魔力が欠乏して、ただの置物の門に代わっている。


(なんとか、裏地球リヴァースに戻る算段を取らなくては……そのためにも、水晶柱を手に入れなくては……)


 現状、鏡刻界ミラーワーズに残された水晶柱は一つ。

 フェルディナント聖王国が所持する一柱のみ。

 その解放先は、日本国永田町、国会議事堂敷地内であるが、乙葉浩介が魔力蒸散用魔導具を設置している。

 こちらから開くことはできないが、ブルーナならばそこを通ることは可能かもしれない。

 もっとも、そのブルーナもフェルディナント聖王国の水晶柱のことは知らない。


「では、話し合いを始めよう……」


 歯がゆい思いをしつつも、ブルーナはマグナムの動きを牽制するために、この場に留まることにした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──カラーンカラーン!!

 『魔人王即位の鐘』は、地球でも響き渡っている。

 それは、未だ地球に存在するすべての魔族の耳に届き、それを聞いたものは慌てて外に出て、空を見上げる。

 

 人間には見えない、魔族の魂・魔人核が捉える『新たなる魔人王』の姿。

 そこには、一人の人狼の姿が浮かび上がっている。


 銀色の体毛を持つ女性型狼人。

 頭部には耳を模したツノが後ろに向かって生えている。

 身体の八割が銀毛に覆われかろうじて人間と解るのは頭部と、かろうじて破り捨てられた布で隠された人間の上半身。

 その肩からは二対四本の腕が生えている。


 その姿を見た魔族の殆どが、それが何者なのか理解できない。

 ただ、胸元に浮かぶ王印が小さな魔法陣を形成し、そこで脈打っている。


「あ、あれが魔人王……」

銀狼嵐鬼ぎんろうらんきか? いや、奴は男で、この魔人王は女だ……」


 円山の喫茶・七曜でも、鐘の音を聞いた羅睺たちが慌てて外に飛び出した。

 そして空を眺めると、そこには見たことのない魔族が浮かび上がっている。

 顔以外の全てのパーツ構成は、羅睺の知る銀狼嵐鬼ぎんろうらんきそのもの。

 だが、浮かび上がっているのは女性。

 そうなると、この女性が銀狼嵐鬼ぎんろうらんき所縁のものである可能性を考えたが。


「……あれは雅。まさか、銀狼嵐鬼ぎんろうらんきの娘だったの?」


 計都姫が呟く。

 彼女には、魔人王の顔が雅に見えた。

 その右目に宿る幾何学模様は、計都姫が見たことのある『深淵の書庫アーカイブ』そのものだったから。


「ま、待て計都姫!! そう結論を出すには早い!!」 「まずは事実確認から。フォート・ノーマの死去後、魔人王継承の儀を待たずして即位したというのか?」

「あの胸元にある王印。あれは私の知る王印。御神楽さまが所持していたものに間違いはない」


 そう言われてから、羅睺とチャンドラが魔人王の胸元に視線を送るが。


──プスッ

 計都姫がチャンドラの目を軽く突いた!


「いってぇぇぇぇぇぇ!! 計都姫、何をしやがる!!」

「チャンドラはエロい目をしていた。エロ、即、斬!」

「そ、そんな余裕があるかぁ!!」

「まあ、まずは落ち着くことが先決。一旦店に戻り、連絡を待つ。こちらからはあまり連絡はしない方が良いからな」


 羅睺が告げると、チャンドラや計都姫も頷いて店に戻る。

 新たな魔人王が、この地球上で即位した。

 これから起こるのは魔族の台頭か、それとも……。


 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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