第二百十二話・危急存亡、窮鼠猫を噛み続ける!(第一段階、覚醒!)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
応接間の外には、あふれんばかりの妖魔反応。
そのどれもが、壁や廊下、扉越しに俺を見ているのがわかる。
「オトヤン、任せて問題ないんだな?」
「あたぼうだよ、おまいさん! すでにうちのレディースたちも、戦闘準備OKのようだからね」
そう心配そうな祐太郎に告げる。
そしてこちらの切り札も準備するとしますか。
──チャキーン
空間収納から取り出しましたる、鏡刻界の鍵。
「お、ここでそれ出すのか?」
「いや、ここはお任せするに限るでしょ? 媒体の水晶柱はないけれど、ここの鏡を使わせてもらうさ」
ヘヤイに備え付けてある大きな鏡。
これに向かって左手を当てると、魔力を一気に流し込んで魔導化する!
「それじゃあいきます、転移門オープン!」
──カチィィィン
鍵を鏡に向かって差し込み、捻る。
すると、目の前の鏡に扉が生み出される。
「な、なんだって‼︎」
「あ、マクレーン主任。驚くついでに、ここの出来事は全て内緒で!」
そう告げながら、扉に手を当てて、一気に引く。
すると、扉の向こうに白桃姫とええっと、誰だっけ?
「遅いわ馬鹿者がぁ! ピンチになってから呼ぶでないわ」
「その顔は、俺のことを忘れたって顔だよな?」
「十二魔将十二位さん。あとは任せてオッケーですか?」
「クリムゾンだ‼︎ いい加減に覚えろクソガキが‼︎」
そう問いかけると、二人とも扉を超えて応接間に入ってくる。
「ふむふむ。混ざり者の匂いがするのう。妾たちの世界でも、魔導核に封じ込められて、ゴーレムの核として使われた者がいたこともある。あれに近しいな」
「はぁ。これが人間のやることかよ。俺たち魔族を兵器かなんかと勘違いしていないか?」
あ、その件につきましては、全て終わってから責任者と協議してもらえると助かります。
「それで、妾たちは小春たちを守れば良いのじゃな?」
「ええ。そのままみんなで施設の外に向かってもらえると、助かります」
「うむ。では、ここは妾たちが引き受けたので、乙葉たちはフラットを助けに行くが良いぞ」
え?
乙葉たち?
そう思って祐太郎を見ると、祐太郎も『俺もか?』って顔をしている。
「まあ、たしかに守りの要があるのなら。俺が出ない道理はないな」
「そんじゃ、祐太郎と俺のツーマンセルでぶちかましますか」
──ゴキゴキッ
拳を鳴らして準備運動を始める。
外では集まり始めた機械化妖魔たちが、白桃姫の気配を感じ取ったのがオロオロと動き回っている。
さらに俺たちの後ろでは、深淵の書庫を閉じ、新山さんからスクロールを受け取っている瀬川先輩と、同じく二本のスクロールと契約をしているセレナさんの姿がある。
「これがスクロールマジック‼︎ 実にエクセレントです‼︎」
──プシュゥゥ
左右に一本ずつ、契約の終えたスクロールを持つセレナさん。
しかも、そのスクロールからも魔力が溢れ出しているじゃないか。なんで?
「乙葉くん。セレナさんの魔力適性、スクロールマジックのようなのですけど?」
「治療のスクロールと契約したの、私は初めて見ました‼︎」
「なんとまあ……とはいえ、スクロールの追加はできないから?今のやつをうまく使い分けてくれるか? セレナさんの分は、あとで追加補充するからさ」
──ゴゴゴゴゴ
魔導紳士モードからの、フィフスガントレットとセフィロトの杖装備。
もう、これ以上先には進ませない。
「そんじゃ、あとは任せるわ。行くぞ祐太郎!」
「了解。ブライガー、フルアーマーモード‼︎」
──シャキーン
祐太郎も、勇者装備にブライガーの籠手を装着。
新山さんも盾を構えて……盾?
「新山さん、その盾って?」
「え? あの、癒しの聖女装備です。あっちの世界の、勇者の盾ですね?」
「ほうほう、あの小僧の使っていた盾ではないか! 懐かしいのう」
「本当だ……ほら、ここの傷、これは俺がつけたやつじゃないか‼︎」
いや、白桃姫もドラグーンも、物騒なこと言わないで。
新山さんがドン引き状態だよ!
「あ、そういう。そんじゃ、あとは皆さんにお任せして‼︎」
──キィィィィィン
俺の周囲に、十二本の拘束の矢が生み出される。
それを扉の向こうの妖気反応にターゲットロックすると、祐太郎が勢いよく走り出して扉に向かって踏み込みからの闘気込み掌底‼︎
──ドッゴォォォドォッ
扉が前方に吹き飛び、そのまま向こうの機械化妖魔を巻き込んで粉々になる。
俺は素早く外に飛び出すと、セットしてあった拘束の矢を一斉に撃ち出す!
──ズバズビズバスバァァァァォァァ
次々と機械化妖魔に突き刺さると、妖魔体の部分を麻痺させて身動きが取れなくした。
「どうよ。この魔法を使いこなしているっていう感覚‼︎」
「完全に戦闘型魔術師にしか見えないな」
「いや、俺は平和主義なんだけどなぁ」
そう叫びつつも、周囲に向かって魔力を放出。
俺の魔力が濃厚なので、新山さんたちの放つ魔力が全て霞んで打ち消されて行くのがわかる。
ただし、地下の連中もこっちに気がついたろうなぁとは予測できるけどね。
──プゥンプゥンプゥン
すると、足元に緑色の矢印が浮かび上がる。
『乙葉くん、築地くん。その矢印の先に地下施設に向かう階段があるって、主任さんが教えてくれたわ』
「ありがたい! それじゃあ加速してレッツゴー‼︎」
「急ぐか!」
走る。
とにかく走る。
俺は魔導体術で全身に魔力を流し込んで活性化し、脚力を強化。祐太郎は闘気による脚部強化でさらなる加速。
その状態から魔力を放ちつつ、階段目掛けて走った!
「廊下の先、階段の下からも反応が三つ……そのさらに下に……セレナさんのような魔力も感じるか」
「竪穴に作った非常階段かよ。下まで筒抜けとは、都合がいい」
「へ? 祐太郎、今なんてウオワァァァァァ」
階段の隙間は、まっすぐ真下まで筒抜けになっている。
そこから下を確認すると、祐太郎が俺を掴んで『縮地』を使う!
──ヴン
おそらく。
地下五階ぐらいまで、一気に移動した感じだよ。
なんていうか、胃の裏側が引き攣る感じ?
頭の中までグラグラする。
「グハァ……ユータロ、それを使うなら先にいえ! そもそも、他人を巻き込んで大丈夫なのか?」
「い、いや、オトヤンなら平気かと」
「平気なわけあるかぁ‼︎」
急ぎ空間収納から病気回復ポーションを取り出して喉に流し込む。
まあ、緊急事態だから今回は許す。
次からは使う前に言ってくれ!
「しかし、転移魔法か?」
「いや? 有視界内の目標地点までの距離を、闘気の塊に変化して一気に突き進む技。オトヤンも闘気が高いはずだから、いけるかなと思った」
「いまの俺の闘気はないからな。俺のは神威、魔力でも闘気でもないわ‼︎」
「あ、そうだったわ。それよりも、あの奥の扉の向こう!」
正面廊下。
左右に扉が並ぶ先、奥の正面の向こうには広い駐車場。
そこに向かって走っている三人組。
一人が背中に何か背負っていることから、奴らがターゲット!
「行くぞ!」
「今こそさっきのだろう……って居ないし!」
祐太郎、再び縮地を使って扉の向こうに飛ぼうとして。
──ドッゴォォォドォッ
駐車場手前の扉の前で、地面に向かって殴り倒された!
いや、何が起こった?
そう思った瞬間に、祐太郎の前に人狼とでもいうのか? 獣人が一人、立っている。
「ふぅ。悪いがゲームセットだ。フラットを取り戻されると、厄介なのでね」
そう呟く人狼。
そして祐太郎も立ち上がると、拳を構えた。
「オトヤン、こいつは俺が押さえる。フラットさんを頼む!」
「よっしゃまかせろ、祐太郎にできて俺にできないはずがない!魔導体術か〜ら〜の、魔力変異、からの!」
──シュンッ!
一瞬で駐車場に転移する。
いや、祐太郎の縮地を見てたらさ、第四聖典に『魔導転移』っていう術式が浮かび上がったんだよ。
つまり魔力型縮地な。
そしてフラットさんを連れていた男たちが車で地上に向かったので、俺は魔法の箒を取り出してまたしてもチェイス開始!
………
……
…
「魔力型縮地か。まあ、いくら奴が強くても、お前を先に仕留めて追いつけばいいだけだな」
うん、正直に言う。
目の前の人狼、こいつは一体何者なんだ?
体から発している魔力というか、恐怖の気配が洒落にならない。
これなら、百道烈士相手にしていた方が、なんぼかマシだわ。
「悪いが、時間は稼がせてもらうさ」
「……へぇ。勝てる、とは言わないのか」
そう呟くと、人狼は懐から懐中時計を取り出す。
「三分だ。俺と貴様の戦いは三分。その間、生きていたら、今回は見逃そう。まだ手駒はあるし、切り札は残っている」
「三分かよ。随分と紳士的ないことで」
「俺の本気に、三分耐えられたものはいないということだよ」
──スッ
人狼が右拳を差し出したので、俺もゆっくりと拳を合わせる。
「機甲拳、築地祐太郎、参る」
「我流。伯狼雹鬼、いざ‼︎」
──スッ
そして、拳が離れた瞬間に、俺と伯狼雹鬼は無限に感じるほどの拳の撃ち合いを開始した。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




