第十七話・青は藍より出でて露往霜来(魔法使いになる為に)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。
そんなこんなで、何がそんななのかよくわからないけれど。
夏休み中にみんなの加護の卵が全て孵化することも考慮して、俺は次の段階に進むことにした。
それは、魔法を使うに必要なもの、そう、発動媒体の作成である。
ということで、今日の部活では、それについてみんなに説明することにした。
「それでは第二ステップに入るぜ。魔法を使うのに必要な魔導具、つまり発動媒体を作ります」
「ええっと、魔法の発動媒体って、魔法使いの杖とか発動用のリングとかですよね?」
「ナイスだ新山さん。100点なのでハートマークをあげよう」
あらかじめ用意しておいたハート型チョコレートを一つ手渡すと、何故か新山さんが真っ赤になっている。チョコレートは嫌いかね?
「あー、それかぁ。ちなみにオトヤンの発動媒体は?」
「ないよ。俺は無詠唱。でも多分これが俺の発動媒体だと思うけどね」
空間収納から魔導書を取り出してテーブルの上に置いておく。
確かに俺が魔法を使うときは、空間の中に置いてある魔導書に魔力が集まる感じはしていた。なので、これが俺の発動媒体だと思う。
「なるほどね。けれど、この文字は私たちには読めないわね、どうしたらいいのでしょうか」
先輩が試しに俺の魔導書を数ページ開いてみたのだが、一ページ目の取説部分以外には何も書いていないらしい。
つまり、契約者以外は読めない仕様かと推測できる。
「俺には読めるんですよ。それで、ここに書いてある魔法が使えるようになりましてですね。まあ、魔力を落とすっていうのがありまして‥‥わかります?」
「い、いえ、何故でしょう、乙葉君の話が半分も理解できていないのですが」
「俺はオトヤンの説明は理解した。新山さんは?」
「ネットゲームでそういうの見たことありますので、なんとなくですが理解できます」
おぉっと。
あらかじめラノベやネトゲで基礎が出来ている祐太郎と新山さんは理解してくれたのだが、ここにきて瀬川先輩が困っている。
うーん。
どう説明したらいいのか。
「先輩。映画の『ヘンリーフォッカーと魔導の城』って見たことありますか?」
「あれは名作ですね」
「あの主人公が使っていた杖が発動媒体ですよ。あの作品では魔術は学校で学んで覚えていましたけれど、私たちはこの魔導書のようなものを手に入れて、一から魔術を覚えないといけないのですよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
ナイスだ新山さん。
そして祐太郎はさっきから魔導書を眺めて何をしているんだ?
「ユータロは何しているの?」
「ああ、オトヤン、魔導商会には、魔導書は売っていないのか?」
「あ、そういうことか。ちょっと待っててや」
すぐにカナン魔導商会を開いて魔導具のページを見てみる。
よしよし、無い。
いや、ここは普通あるでしょ。そしてあったどーって叫ぶところでしょ。
本当にないのかよ。
「あ、ないわぁ。魔導具のところにはないわぁ」
「メニューには書籍ってないのか?」
「あ、そっちかもね。どれどれ」
そして書籍のページを開いてみたんだけれど、知らない世界の歴史書とか伝承とかの本が大量にある。まあ、今の俺には関係ないからムシムシ。
そして魔導書があったのですけれどねぇ‥‥。
「あ~、あったから買ってみるわ」
「いや、そんなに簡単に買わなくても‥‥あー遅かったか。あとで纏めて請求してくれ」
「おとっっぁん、それは言わない約束だよ‼︎ ってか、この前みんなの分チャージしたでしょ? あれで間に合っているから遠慮は無用だ‼︎」
――ヒュンッ
今日の宅配魔法陣はテーブルの上。
そこには大きめの袋が三つ並んでいる。
俺が購入したのは、『魔導書作成キット』。
あっちの世界では、魔導書を手に入れるのは三つの方法がある。
一つ目は、この魔導書作成キットを使って自分で作り出す方法。
二つ目は、自分の魔法の師匠から魔導書を譲り受ける方法。
三つ目は、自分の魂から魔導書を抽出する方法。
それぞれ表紙の色が違うらしいのだが、俺のは三番目の魔導書。
魂からの削り出しらしく表紙は黒。
因みに自作した魔導書は白、師匠から譲り受けたものは師匠の魔術の資質の色というように、入手した方法により色が違うらしい。
ちなみにだけど、どうやらあっちの世界では『色の称号』を持つ魔導師が偉いらしい。たとえば『赤の魔女』とか『黄金の大魔導師』とか。
ちなみに世界最高位の魔術師は『白銀の賢者』らしいんだけど、その女性は現役を引退こそしたものの、今もなお最強らしい。
ちなみにこんな知識も、魔術の第一聖典を覚えたときに手に入れたんだよ。
「ということで、今日からお三方には自分の魔導書を作ってもらいます」
「え? 手作りなの?」
「なるほど、ハンドメイドだからこそ、自分のものとして自在に使えるということですか」
「いいねぇ。自分の魔導書、実にいい。オトヤン、それでどうやるんだ?」
そう問いかけられましてもねぇ。俺は作ったことないけれど、袋の中には取説が入っているはずなので‥‥と、あったあった。
「では、このユータロの取説を読んでみるので、ボイスレコーダーなりメモのご用意を」
そう告げるとみんな慌ててメモの準備。
そのまま読み上げていくけれど、かなり難易度が高いことがよくわかる。
自分の血を捧げよとか、魔力で紐を作りなさいとか。
ぶっちゃけると、俺でも作れる自信がない‥‥けど、みんなやる気十分である。
「なるほど。だーいじようぶ、まーかせて凸ってやつだな」
「あ、あの、乙葉君は回復魔法は使えますか?」
「へ? なんで?」
「血を垂らすのですよね、痛いのは嫌だなあって‥‥」
「あー、それか。それなら回復ポーションも買っておくよ。今日は軽回復ポーションが安かったからね」
ちなみに魔導書作成キットは一つ50万クルーラ、軽回復ポーションは一本1万クルーラ。
何かあったら困るから、軽回復ポーションは一人5本渡しておく。
つい先日、文学部のみんなから受け取ったお歳暮やらお中元やらを査定に出してチャージした金額で、今回の支払い分は十分に間に合うしお釣りも来るから問題ない。
まあ、チャージしてあるからお釣りはないんだけどさ、俺のメモで残高計算しているから問題はない。
それで魔導書作成を開始したんだけれどね、これがまた時間がかかってねぇ。
みんな初めてのことなのでかなり手間取ったけれど、五日かけてどうにか全員が自分の魔導書を手に入れることが出来たよ。よかったよかった。
「‥‥これが私の魔導書なのですわね。純白の綺麗な魔導書‥‥でも、大きくて重いのが欠点ですわ」
「そ、それですよね。どうしてこんなに大きくて重いのですか?」
「オトヤンのとは全く違うんだけれど、どうしてなんだ?」
俺の魔導書はA4サイズで厚さは5cm。みんなの作り出した魔導書はA2サイズで厚さは10cm。
当然、この大きさの違いにも訳がある。
「えぇっとだね、まだ魔導書が完成しただけでね、これから本契約を行わないとならないんだけどさ。それが終われば、俺の魔導書のようにサイズが圧縮されるし軽くなる‥‥でいいんだよな?」
自分の記憶の中から魔導書についての説明を確認する。よし、合っている。
そしてその契約が最大の問題である。
だって、俺は契約なんてしていないし、魂削り出しの魔導書だから自動的に俺のだし。
「その契約の方法は?」
「ええっと、右手を表紙に乗せて詠唱する。『我は汝の主なり、汝は我の知識なり。我は魔力にて魔導書を支配するものなり、我に汝の名を告げよ、さすれば契約は完了する』ってね。これで魔導書の真なる名前が表紙に浮かび上がれば契約は成立。もう他人には使えなくなるよ」
「さすがは乙葉君、先駆者のことはありますわね。では‥‥」
「わ、私も始めます」
「そんじゃ俺も‥‥」
みんなが同時に契約を始める。
けどね、たぶん失敗する。
だって、契約に必要な魔力が足りないからね。
それを補うのが、例の『加護の卵』だと俺は思うのよ。
契約に必要な魔力は最低500なんだけどさ、みんなはまだ200台なんだよね。
それでも普通の人は50もないから大したものなんだよ。
「んんん‥‥表紙が輝くけれど、何も文字が浮かんできませんわ」
「私もです。ただ光っているだけみたい」
「なあオトヤン。契約にも魔力が必要なのはわかるけれど、どれぐらい必要なんだ?」
「最低500だよ。ユータロで今220、新山さんか212、瀬川先輩も212ですよ。ちなみに光らなかったら魔導書作成に失敗したということになるので、作るのは成功しているんですよ」
「なるほどなぁ。ま、それは良しとして、このまま指先くっつけて訓練していればあがるのか?」
そこなんだよなぁ。
実は毎日訓練をしているので、先輩たちの『魔術の卵』の成長はかなり段階が進んでいる。
そして魔導書を手に入れたことでさらに成長が加速しているんだよ。
・瀬川雅 加護の卵 9/100
・新山小春 加護の卵 8/100
・築地祐太郎 加護の卵 25/100
祐太郎の卵は漸く4分の1。
先輩もあと少しで10、新山さんあとちょいで10。
「えーっと、ぶっちゃけるとユータロの加護の卵は第一コーナーを曲がりました。瀬川先輩はまだ最初の直線、一馬身差で新山さんも遅れているけどゆっくり成長しているからこのままガンガレ」
「ガンガルか。俺はどちらかというとアトランジャー派なんだが」
「アニメ化したからって調子に乗るなよ、まあ話は戻すけれど、さっき話した感じなので、このまま続けていけばいいと思うよ。俺とユータロは東京に行ってくるけれどさ、その間も訓練していれば、大丈夫。夢はいつか叶うさ」
その説明で瀬川先輩も新山さんも落ち込んだ様子はなくなり、むしろやる気十分である。
これは将来が楽しみであるが、それよりも俺、自分の訓練何もしていないぞ、俺こそやばくない?
「乙葉君、アドバイスをありがとうございます。では、二人が留守の間は、新山さんと訓練を続けることにしましょう」
「はい。では二人とも気を付けていってきてくださいね」
「ええ。気を付けていってきますよ。オトヤンが暴走しないように監視しておきますからご安心ください」
「だ~れ~が暴走するって?」
「だってさ、ことしのコミケは資金が潤沢だろう? 落とさないように気を付けないとね」
「いやいや、落とすはずがない。こうやって、ここに全部入れておくから安心だよ」
空間収納を開いて手を突っ込んでみせる。
あ、そうだ、祐太郎に収納バッグを貸してあげてもいいか。
そのまま空間収納内で荷物の入れ替えをすると、空になった収納バッグを取り出して祐太郎に手渡す。
「ほれ、これはユータロに貸しておくから失くさないように」
「これは?」
「ラノベ名物の内部空間拡張バッグだよ。高級品だから失くさないように」
ユータロは収納バッグを受け取ると、肩から下げたり腕を中に突っ込んで楽しそうにしている。いゃあ、喜んでくれて実に嬉しい。
それは非売品なんだから失くさないでほしいと思ったけれど、ステータス画面では俺の初期装備になっているので、どこかで紛失しても空間収納の中に回収できるらしい。
同じように俺の購入したアイテムや魔導書も、全て空間収納に回収できると知ったのはつい最近である。
そして、祐太郎の収納バッグを見て、瀬川先輩と新山さんも物欲しそうに見ている。
「あ、あのですね、これは俺の初期装備なので名義変更できないんですよ、なので貸しただけですからね」
「大丈夫ですよ。購入するとなると高そうですし少し残念ですけどね。私もできれば、そのような魔導具を欲しているのですが、それはかなわぬ夢なのですね‥‥」
「私も欲しかった‥‥」
ああっ、うちの美女二人ががっくりと意気消沈時様態。
すぐさまカナン魔導商会を確認してみたが、今日は20ボックスタイプの収納バッグが二億クルーラで販売しているだけである。
数の制限はないので、それを伝えておこう。
「え、えっとですね。今調べてみたのですが魔導商会に同じものではないのですが、収納バッグがありました。一つ二億クルーラですので、二億円分の買い取り査定商品を用意してくれれば代理購入できますよ」
この一言で祐太郎も二人と一緒にニマーッと破顔した。みんな、そんなに欲しかったのね。
「そ、そうですか。それでは私は、ロト6を見事に当ててから何か高額で売れるものを調べてみましょう‥‥乙葉君が部活を始めてからずっと調べていたのはこれだったのですね」
「わ、わたしも来週のロト6で当てたら買います。二人が帰ってくるまでに、先輩と色々と調べていますので、あの、それまで、これ、預かっていてもらえますか?」
新山さんが俺に魔導書を渡してくれる。
ああ、重くて持ち帰りたくないし、ここに置いておくのも嫌なのね、了解。
「それでしたら先輩のもあずかりますよ。戻ってきたら返却しますので」
「そうですね、ではお願いします」
祐太郎は貸した収納バッグにしまったので、俺は新山さんと瀬川先輩二人の魔導書を受け取ったところで、今日の部活は時間切れ。
俺と祐太郎は明後日、東京へと向かう。
いざ、聖地コミックマーケット!!
●現在の乙葉の所有魔導具
サーチゴーグル
SBリング(ブースト、透明化)
レジストリング(耐熱、耐打撃、耐斬撃、未登録×2)
中回復ポーション×2
軽回復ポーション×5
病気治癒ポーション×1
身代わりの護符
・カナン魔導商会残チャージ
76万2020クルーラ
(文学部残高の26万2000クルーラ込み)
●瀬川所有の魔導具と魔術の卵
加護の卵『9/100』
レジストリング(耐熱)
軽回復ポーション×5
魔導書作成キット
●築地所有の魔導具と魔術の卵
加護の卵『25/100』
レジストリング(耐熱)
軽回復ポーション×5
魔導書作成キット
●新山所有の魔導具と魔術の卵
加護の卵『8/100』
レジストリング(耐熱)
病気治癒ポーション×1
軽回復ポーション×5
魔導書作成キット
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回の判りずらいネタ
からくり○ーカス / 藤田○日郎 著
究○超人あ~る / ゆうき○さみ 著
がんばれロ○コン
モビルフォートレ○・ガンガル
合体ロボット ア○ランジャー