第十四話・群軽折軸何日かかる? 桃栗三年柿八年(見えるんです)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。
はい、いつもののんびりとした部活時間。
この前の休日に見た謎の物体、あれが一体何者なのか気になって仕方がない。
部室にあったラノベ以外の本を探して、『月刊ラ・ムー』というオカルト雑誌をずらりとならべて調べることにした。
「オトヤン、昨日話していたスカイフイッシュ? 透明くらげ? でも調べているのか?」
「なんで疑問形? まあそういう事さ。気になって仕方がないんだよ。因みに瀬川先輩は、目に見えないものを信じますか?」
物は試しに瀬川先輩にも話を振ってみる。
どのような返答が来るのかは楽しみである。
「まず、全世界的に透明な物体の噂はかなりありますね。小説では『透明人間』なんていう存在もあることですし、現実的に存在しないとは言い切れません。深海生物とかでも、体が透明に近いものもいますから‥‥まあ、光に対しての屈折率を0にすることが出来るものであれば、あるいは可能性としては否定できないかと思います。あとはそうですね、イクラを食べると」
「ス、ストップストップ、先輩ありがとございます。つまりいるかもしれない、ということでファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
にっこりとほほ笑む先輩。
しかし、その知識量は恐るべしでございますよ。
でも、透明とイクラってどういう関係?
「あ、あのね乙葉君。もしそれを探すのなら、私も手伝うよ?」
「おおお、新山さんありがとう。けど、新山さんは魔力循環、目に集中できる?」
トントンと自分の目のあたりを指さして問いかけてみる。
手伝ってくれる気持ちはうれしいけど、見えないとだめだよ?
「あう‥‥まだです、はい」
「なら、そこから練習しようね。新山さんの気持ちはうれしいけど、まずは自分でも見えるようにしないと」
「は、はいっ!!」
勢いよく返事をすると、新山さんは両手を合わせて瞑想を始める。あれが新山さんなりにたどり着いた、魔力循環式らしい。
俺も目に魔力を集めて新山さんを見てみるけれど、それはもう、気持ちよく循環していましたよ。
でもさ、これって魔導書を経由するとさらに効率よく循環するんだよね。
「今はまだだけど、新山さんも魔導書が使えるようになるともっと効率よく循環できるからさ、がんばろうね」
「うん、私もっと頑張るよ、乙葉君の役に立てるようになるからね!!」
「待ってるぜ!!」
サムズアップ、からのさわやか笑顔、からの光球を前歯に集めて発動。
――キラーン!!
こういうネタ的な魔法の使い方しかしていないけれど、使えば使うほど魔法の練度はあがるんだよ。
練度があるのかどうかは確認できていないけれどさ。
「なあオトヤン、今の話なんだけれど、魔導書でなくリングとかを魔力の循環の一部に組み込むと、もっと効率よくできるのか?」
「さあ? 試してないから判んないぞ」
俺がそう告げると、全員が一斉にレジストリングも魔力回路の一部として使い始めた。
そうか、俺も試してみないと判らないよな。
でも、みんなはレジストリングでやっているので、俺はSBリングを経由してみる。
『ピッ‥‥透明化リングに余剰魔力を確認。ファーストリミッターを解除、リバース効果を設定します』
また聞こえたぞ、ステータスウィンドウの声が。
あなたは本当にどなたさま? 大賢者スキルなんてないよ?
もしそうでも、俺はリムルさまみたいな生き方はできないからね、魔王になんかならないよ。
それよりもリバース効果設定だよ。
なんだろう。指輪が変化して剣にでもなるのか?
リバースの剣ってうるさいわ。
「‥‥うーん。程よく流れている気がするなぁ。でも、特におかしいところはないぞ、瀬川先輩、何か変わったことはフバファッ!!」
魔力循環したまま、瀬川先輩の魔力の流れを見ようとしたのですが、あ~、成程ね、透明化の指輪の逆効果ね。
――スーッ
ゆっくりと瀬川先輩の着ていた制服が透けていく。
おほっ、隠れ美乳でございましたか、スレンダーかと思っていましたけれど。
学生らしく透けないようにベージュの上下セットで、あかん、これ以上は駄目だ!!
慌てて頭を背けた先には、ナイススレンダーボディの新山さんの下着姿が。
しかも、それすらゆっくりと透けていくではないですか!! これはいけない。
俺様のエクスカリバーが、今まさに約束された勝利の剣を発動しかねない。
――ハッ!!
さらに慌てて祐太郎を見る。
ナイス隠れマッチョ。
引き締まった体にシックスパック‼︎
ナイス、バルク‼︎
さすが、小さいときに近所の道場で修行していただけのことはある。
あ‥‥エクスカリバーの納刀が終わった。
「どうしたオトヤン。顔色が赤くなったり青くなったりと大変だな」
「ひょっとして熱でもあるんじゃ!!」
新山さんが立ち上がって俺の前までやってくる。
目の前が危険です、二つの胸のふくらみが、何でもできる証拠なのですね。
そして額に手を当てて確認しているのですが、お客様困ります、アーッいけません、いや、いきそうになる、いろんな意味で。
「そ、そうだね、ちょっと保健室に行ってくるよ」
慌てて立ち上がって、再び抜刀した猛る股間がばれないように部室を後にする。
あとは、ほかの生徒にばれないように、こっそりと人気のないところに移動して、静かに収まるのを待つことにした。
うむ、SBリングの透明化リバース効果は多用しないでおこう。
リバース効果って、自分が透明になるんじゃなくて他人が透明に見えるのね、しかも魔力調整で段階的に透明にできるのね。
危険すぎるから!!
〇 〇 〇 〇 〇
夜。
いつもの日課からの明日の準備、そして宿題と、一人ぐらしのスリーカードを完遂すると、あとはフリータイム。
親がいないからと言って、だらけた生活はしないのよ俺は。
まあ正確には、だらけた生活をしたり成績が悪くなると、親父たちの転勤先であるアメリゴまで転校なわけ。
夏休みには両親ともに休暇を貰って帰ってくるらしいし、親父の仕事は動物学者だから、それとなく目に見えない動物とかの話を聞いてみるのも悪くはない。
そしてカナン魔導商会で何か面白いものはないかと探してみると、ちゃんとありましたよ、新商品が。
『ピッ‥‥新商品情報、時騙しの砂時計。この砂時計に魔力を注いでひっくり返すことで、砂が落ちきるまでの間、すべての時間を止めることが出来ます。 30分間魔力を込め続けることで、最大三分間の時間停止効果がありますが、込めている途中で魔力の供給を停止するとやり直しとなります。2500万クルーラ』
『ピッ‥‥新商品情報、性転換の指輪。装備して魔力を込めることで、最長1時間だけ性別を逆転することが出来ます。潜入工作及びコスプレなどに使用するとよいかもしれません。1250万クルーラ』
『ピッ‥‥新商品情報、安眠枕。この枕を使って3時間睡眠するだけで、8時間睡眠と同じ効果を得ることが出来ます。戦場などで魔力回復が追い付かないあなたのための逸品、今ならお買い得500万クルーラ』
『ピッ‥‥新商品情報、魔力飴。失った魔力値を回復する飴です。飴を舐めている間、一秒間につき1ポイントずつ持続的に回復します。30錠入り、15万クルーラ』
おおお?
今日は4つも商品が追加されているが、お勧めでないので保留しておこう。
今すぐ欲しいものがないかと言えば、時間を止める砂時計など最高じゃないかと思うんだけれど、いまいち使いどころが判りづらいので保留。
性転換の指輪‥‥いや、すぐに欲しいんだけれどね、これがアダルト商品でないところが何か引っかかる。いや、性転換イコールTSイコールアダルト系っていう厨二病だから疑問という事ではないよ、たぶん外見だけだろうなぁと思ったから保留さ。
枕と飴についてはこれはいいと思うんだけれどさ、別に普通に睡眠時間は取れているから問題はないし、魔力値が限界まで減るって、俺じゃありえないような気がするからこれも保留。
まあ、明日にでも先輩たちに聞いてみて考えてみよう。
〇 〇 〇 〇 〇
翌日早朝。
物は試しにバスに乗って学校に行く途中、ものは試しにと目に魔力を集めてみる。
『リバース効果オープン!!』
もう一人の僕のように心の中で叫び、床をじっと見る。
――ジワァァァァァァ
すると、ゆっくりと溶けていくかのように床が透き通っていき、高速回転しているタイヤが見えた。
「あ、ここタイヤの上か。しかし、これは凄いんだけれど、とっても疲れるわ‥‥目が痛くなる」
ちなみにステータスを確認すると、リバース効果は1秒間にMPを100使う。
俺のステータスだと、178秒、約三分の勝負。
昨日はこの三分間に色々とありすぎてなぁ‥‥三分って、意外と長いよね?
やがてバスは学校にたどり着く。
そしてクラスに向かって何事もなかったかのように、授業を受けることにした。
だってさ、この能力使うと勉学がおろそかになるよ、授業中にエクスカリバー大暴れしてセクスカリバーになったら大変だからね。
‥‥
‥
はい、部活です。
という事で、昨日追加された商品について説明したんだけれどね、なんていうか、みんな興味津々の模様ですなぁ。
「オトヤン、せ、性転換の指輪ってなんだ? 言い値を出そう、イイネだけにな!!」
「枕は便利そうですわね。試験期間とかは、ゆっくりと休んでコンディションを維持できるかが勝負ですから」
「時間が止まるの? その三分間って何してもばれないの?」
祐太郎が性転換薬に飛びつくのは理解できる。
瀬川先輩が枕に飛びつくのも、じつにまっとうな意見である。
「だが新山さん、何故に砂時計に飛びついたの?」
「時間停止は夢ですよ? わ、悪いことには使わないですけど、なんていうか、その時間が止まっている間は無敵ですよね?」
「うーん。まあそうなんだけれどさ、先にチャージしておかないとだめだし、チャージしたらすぐに使わないと、砂時計から手を放していると蓄積していた魔力がどんどん抜けていくからさ、使い勝手が悪いよ?」
そう。
この砂時計は本当に使いづらい。
なにより高価である。
魔力回復飴については、今はまだ覚醒していないから必要ないってあっさりと却下されてしまった。
まあ、俺も今は使わないし、意外と他の商品が高額なのですこし買い物は自粛しておかないとって後悔している。
マルムティーセットは、経験値だったりスキルだったりとお買い得なので買っておいてよかったと思うけれどさ、もう販売停止なのか判らないけどメニューから消えていたんだよ。
ということで、カナン魔導商会・乙葉営業所の開店である。
「では、カナン魔導商会代理購入担当の俺ちゃんです。本日からは代理購入ならしますけれど、どうしますか? 割引クーポンはないので定価購入になりますけれど」
「うーん。正直言いますと、今販売されているカナン魔導商会の商品は、学生の身分で購入できる金額ではないという事ですよね? それに、気になることもありますから」
「まずは、チャージするために何を査定に出すかだよなぁ。砂糖とか塩、香辛料はまあありだとしても、向こうの世界の科学技術が分からないと、色々試すしかないよな」
「ユータロの言う通りだよ。なんなら、今日の放課後にでも色々持ち寄って試してみる?」
「オッケー。それなら、家にある余っているもの持ってオトヤン家いくわ、お歳暮に貰ったハムやら缶詰やら、余ってて困っていたんだよ」
「いいね‼︎」
普段使いにいいものをリストアップして三人には手渡してみた。
当然新商品リストも書いてあるが、このカナン魔導商会は『査定買い取りシステム』を有効的に使ってこそ、効果を発揮するのだろう。
結局、この日は新規購入はなく、のんびりとした部活動になったのは言うまでもない。
まあ、一介の高校生で貯金が千万単位である奴なんているとは思えないからね。
どれだけお年玉貰ったら、そんなに貯金できるんだろうなぁ‥‥。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回の判りずらいネタ
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