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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第十二話・一難去って万物流転(お約束は続くよ)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 さて。


 俺のスキルがみんなにばれてから数日後。

 ここ最近は、文学部全員で部活の最初に魔力回路の解放訓練と、俺のやっていた『指立て合わせてグールグル』の魔力循環訓練を行なっている。

 これで部員全員の魔力回路が開き、魔力循環レベル1も修得。

 俺もスキルレベルが上がって万々歳だったよ。

 ちなみに祐太郎のロト6 だけど、ちゃんと当たり番号を教えてあげたよ。それは約束だからね。その結果だけど、当然ながら祐太郎も億万長者の仲間入り。

 来週は瀬川先輩、再来週は新山さんが億万長者の仲間入り決定。

 うちの高校だけで何人もロト六の当選者が出てくるとやばいので、一等をみんなに教えるのはこれでおしまい。

 まあ、俺の秘密を知ってるみんなを巻き込むという意味もあるので、俺としてはこんなところだろうと妥協している。


 そして問題のカナン魔導商会の魔導具について。


……


「‥‥‥まあ、お二人が魔導具に興味を示すのは当然かと思われますが、カナン魔導商会というところから購入するというシステムである以上は、当然ですが代価は必要になりますわよ?」

「あ、あとでどんな商品があるか教えてあげるし、代価を支払ってくれたら代理購入してやるぜ、ここのメンバー限定だけどね」


 日課の訓練ののち、瀬川先輩と俺が祐太郎と新山さんに説明を始めている。

 どうやら先輩の目には、二人が突然俺に魔導具が欲しいと言い始めたのが気になっていたらしい。まあ、俺はその辺が鈍いほうなので、冗談で話しているんだろうと笑っていたんだけれどね。


「まあ、確かにオトヤンや先輩の言うとおりだよな、すまん」

「私もその、ごめんなさい」


 ありゃ、祐太郎も新山さんも反省してるや。別に気にしなくていいと思うんだけれど、先輩曰く締めるところはちゃんと締めるそうで‥‥‥。ロト6の件は先輩はじめみんなにも話をしたし、口止め料も兼ねてねって俺が笑って話したら頭を下げられたからヨシ!!

 

 そんなのんびりとした日が続いたので、俺も油断していたんだよね。

 それはどういう意味かっていうと。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 白いハイエース。

 バールのようなもの。

 左右には何処かの黒服のようなスーツを着た、グラサンかけたおじさんたち。

 その後ろでは、この前、掌底力の矢(フォースアロー)で吹っ飛ばした不良A君。

 つまり、男なのにハイエースで拐われましたが。

 学校帰りにバス停まで歩いている最中、ほんの一瞬であっさりとね。


「やあ乙葉。この前は世話になったな。やっぱり俺たちとしてもさ、面子を潰されたらやり返さないとならないわけね。それでさ、俺って律儀だからさ、やり返すことにしたのよ」


 俺の髪を掴んで後ろにぐいっと引っ張る不良A。

 痛いからさ、ハゲるから手を離せって。

 取り敢えず命が危険な気がしたので、持っているレジストリングは全て換装して、ついでに意識下でカナン魔導商会も開く。

 魔導具にはいろいろと物騒な武器が売っているんだけれどね、そんなもの迂闊に買っても使えないからさ。

 なにか、ここ一番で身を守れるアイテムが欲しいわけ。


『ピッ…本日のお勧めが更新されました。本日のお勧めは『身代わりの護符』です。よくゲームにあるアレですよ、何かあったら自分の代わりに身代わりになってくれるっていう奴ですよ。

 これも諸般の事情により廃棄処分だったものですが、本日限りのネット販売となりました。現物一点ですのでお早めに。価格は120万クルーラです』


 くっそ。

 これ今すぐ欲しい。

 15万クルーラ足りねぇぇぇ。

 いますぐ何かを査定に出したいけど、持ち物でそんな良いものは無い。


『ピッ……本日より、お届け先を指定できます。座標指定、もしくは空間収納チェストのどちらかをご選択できます』


 あ〜ありがとうよ。

 今度からは買ったものは空間収納チェストに届けてもらうよ。

 それよりも15万クルーラだよ‼︎


 挙動不審気味に車内を見渡す。

 俺は査定に出せるものを探しているんだが、どこをどう見ても何も見えない。

 黒服も運転手も、多分暴力団関係者なんだろうなとは思うけど、それにしてもこの車は殺風景すぎる。

 あ、そういうことか。

 だったら査定に出すアイテムあるわ、とっても良いものが。


「なあ不良A君よ、俺を人の見ている前で攫って大丈夫なのか? この車のナンバーを調べたらすぐバレるんじゃね?」

「はぁ? お前バカだろ? そんな足のつくことなんかしてないさ。これはな廃車なんだよ、永久抹消登録とかいうのをしてあるんだってよ。

 ナンバーも偽装、つまり車を調べても俺たちのところまでは辿り着けないんだよ‼︎ それよりも身の安全を考えたほうがいいぜ。とりあえずお前んちに行く、そして金目の物を全部回収したら、お前は海の底か山の中だからな」


 あ、説明ありがとう。

 そこまで用意周到に計画しているのなら、手加減する必要はないな。

 打撃耐性のリングもあるけど、きっと痛いだろうなぁ。

 すぐに中治療ポーション飲んでおこうっと。


 窓の外を見るけど、うちの学校って札幌市の郊外なんだよ、つまり少し離れると人気がなくなるんだけれど、決して人がいないわけではない。

 道路沿いには何軒も家はある、その後ろは農地なのであまり大勢の人が行き来しているわけではないが、まったくいないわけではない。


(はぁ。そんじゃ帰るか。『査定、対象はこのハイエース』で宜しく)


 頭の中で念じてみる。

 廃車登録と言うことは、持ち主の登録はされていない。誰のものでもないんなら、査定できるんじゃないかな?


『ピッ……このハイエースの査定額は15万クルーラです。買い取りますか?』


 イエスだ‼︎

 正解だ、この車を査定に出したら逃げられる!!


『ピッ……今買い取ると乗員の安全は保証できません。それでも買い取りますか?』


 当然イエス‼︎

 このタイミングだ。

 郊外と言っても人は住んでいる。

 そして交番もある。

 その交番の真前を通過する瞬間に、カナン魔導商会にハイエースの買取を頼んだ。

 当然ながら、一瞬でハイエースは消える。

 けれど慣性は働いていたらしく、乗っていた運転手と黒服2人、不良A、そして俺は座った姿勢のまま道路に突然放り出される。

 この辺りの物理法則はどうなっているのかと思うんだけど、魔法ってそういうの無視してくるみたいなんだよね。

 走行中の車のドアを開いて降りたら、その場に立っていられるかっていうと無理だよね?

 つまりは、こういうこと。



──ドガゴゴガゴガガガガゴ

「うわあっ‼︎」

「痛ぇぇぇ‼︎」

「な、なんだブハァォァァァ」

「だぶあばぁぁぁ」


 俺以外の4人の、声にならない叫びとはこれいかに。

 予め身構えていた俺は体を丸めて受け身が取れるようにしていたので、どうにか打撲は無かったけどあちこちを擦りむいて出血した。

 けれど何も知らない俺以外は、突然車の外に放り出された感じで全身打撲。

 当然交番からは何事かと警官が2人走ってきたので、俺は叫んだよ。



「た、助けてください、こいつらに攫われていました‼︎」

「なんだと‼︎ そこのお前たち、ちょっと話を聞かせてもらおうか」


 路上に倒れていた奴らはそのまま警官に押さえられる。必死に抵抗しようとしたんだが、どうやら骨折したり頭を打って意識を失ったりしてて抵抗も虚しく取り押さえられてしまう。


「あの少年を拐ったという話だが、詳しい事情を……ってなんだこれは‼︎」


 あ、黒服さんは懐に拳銃を隠していたのね。

 そりゃあ、その場で現行犯逮捕される筈だよ。

 拳銃を所持していたのは黒服2人と運転手の計3人。その場で手錠を掛けられて御用となって連行されてしまう。

 さらに黒服と運転手が拳銃を持っていたことで大事になり、彼らの所属していた暴力団事務所や不良Aの実家まで家宅捜索が入る事件にまで発展。

 かなりの大騒動となったらしい。


 まあ、俺は病院に搬入されて検査を受けたり、警察の事情聴取を受けたりしていたから大変だった。

 この一連の騒動から解放されたのは7日後。

 俺は被害者なので何事もなく登校し、部活にも顔を出せるようになったのよ。


……


「……ということでさぁ。本当に死ぬかと思ったよ」

「はぁ……あんな大事件に巻き込まれて、それで終わるところはオトヤンらしいわ」

「本当ですよ。乙葉君が事件に巻き込まれたって聞いた時は、私は本当に気を失ったのですからね」


 新山さんの優しさが身に染みる。

 瀬川先輩もかなり心配していたらしく、時折俺の入院していた病院に連絡をくれていた。


「でも、背後に暴力団関係がいるのなら、復讐とかもあるかもしれませんわね?」

「あ、それは多分大丈夫。オトヤンがそっち関係に巻き込まれたって聞いた時点で、うちで手を打ってあるからさ」


 ニヤニヤと笑う祐太郎。

 まあ、そうだよなぁ。

 祐太郎の実家も、そっちに強いからなぁ。

 政財界関係者だしなぁ。


「流石だ竹輪の友よ‼︎」

「え? 俺は胡瓜かチーズなの? 中に詰められるの? オトヤンに食べられるの?」

「食わないからな。そして瀬川先輩。俺とユータロをそんな不謹慎な目で見ないでくださいな。口元の笑みがいつもの優しさではなく腐の領域だよ‼︎」

「腐腐腐。そんな事はないわ、安心して」

「いや、安心したくないからね。もうこの話はお終いにしようそうしよう‼︎」


 なんとか話を終わらせると、またいつもの日常に戻る。

 でもさぁ。

 いくら緊急事態とはいえ、派出所の前でハイエース消したんだよね。

 俺も何があったか分からないって必死にごまかしていたんだけどさ、明らかに超常現象を警察の前で使ったんだよね。

 これが、後々面倒なことにならないかと心配なんだよなぁ。



◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 身代わりの護符は警察に保護された瞬間に購入して装備した。

 因みにこれ、とんでもない代物だった。

 一度の身代わりにMPを1000も必要とするんだけど、壊れる事なく何度でも使えるらしい。

 これ、めちゃくちゃ使い勝手が良いんだけれど、なんで廃棄処分品だったの?

 どんな感じで身代わりになってくれるのかは試し方が分からないから、今度色々と考えてみよう。


 だが、重大な局面が目の前にある。


「カナン魔導商会、チャージが残り20クルーラぁぁぁぁ。ヤバイ、これはすぐになんとかしないとヤバイ。何かあったときに対応できないわ」


 すぐにロト6の4等を当てまくって作った小遣いで胡椒を大量に買い込み、次々と査定してもらったのは良いんだけど、買取査定が以前の半額に下がっていた。

 それでもなんとか色々とぶち込んで、チャージ金額220万クルーラまで回復したが、すぐに胡椒は買取休止になってしまった。



………

……

 


「っていうことになってさぁ、これって何があったかわかる?」


 翌日、部室でいきなり祐太郎に問い掛けたんだけどさ、祐太郎も何がなんだか分からないって顔しているし。


「すまんオトヤン。主語も何もなく、いきなり何があったかと聞かれても分からないんだが?」

「そこはほら、直感で返事してみてよ?」


 そう言い返してみると、祐太郎は天井を見上げて何か考え始めた。


「……俺には分からないなぁ。瀬川先輩には分かりますか?」


 祐太郎が瀬川先輩に助け舟を頼んだのだが、当の先輩は人差し指を立てて指を振る。


「恐らくだけど。胡椒が一般市場に流れやすくなったので買取査定が下がったのではないですか?」

「先輩、あなたは天才かよ‼︎ そっか、そういうこともあるのか」

「はぁ、例の魔導商会の買取の話か。先輩もよくわかりましたね? そしてオトヤン、主語から言わね~と俺たち庶民には分からないからな?」

「私は、乙葉君に何かあった可能性を考えてみただけですわ。私たちに相談するレベルという事は、例の魔導商会か魔法関係と仮定できますし、魔法なら自分で答えを出そうとしているだろうと思いまして。魔導商会関係でしたら、商品についてか買取関係、なので先に買取の方から話してみたのです」


 先輩、探偵になれますよ。

 なるほどなぁ、流通の関係か。


「乙葉君、ネットゲームでもそういうのあるんだよ? ある街で仕入れて別の街に売りに行ったけど、もう他のプレイヤーが大量に売却してしまって価値が下がるっていうの」

「あるなぁ。でもさ、その能力ってオトヤンだけのものなんだろ?」


 イエス。と言いたいんだけれど、確証はないんだよ。

 俺の他にこんな能力を持って、しかも現代で使いまくっているっていう例がそんなにあるとは思えないし。


「因みにだけど、今までどれぐらいの胡椒を売ったの?」

「トータルなら2キロよりも少ないよ? でも、それだけで買い取り中止になるものなのかな」

「どうなんだろうね。ま、ロト6 の懸賞金が入ればそれチャージして良いんじゃない?」

「うーむ。それもそうか。まあ、今度からは無闇にお勧め品買わないようにするわ」


 という事で、今日はのんびりと部活動に勤しむことにした。


「‥‥‥そうだ、これが現状で購入できるカナン魔導商会の魔導具一覧ね。値段も書いてあるけれど、ぶっちゃけると高すぎて手が出ない物が多いからさ、ご利用は計画的に」

「え? それって‥‥‥にやま先生のあれかしら?」

「新山先生? 新山さん先生なの?」


 思わず問いかけたんだけどさ、新山さんはリストから顔を上げて真っ赤になっているし、先輩はクスクスと笑っているしどういうこと?


「べ、別に何でもありません!! それよりも乙葉君、この『痩身ドロップ』とか『美肌クリーム』とか、これって魔導具なの?」

「あ~美容関係の魔導具かぁ。俺は興味ないから詳しくは判らないんだよな」

「オトヤン、この『ビバマッスルリング』の効果って、これまじか?」


ああ。

 それは俺も欲しいんだけどさ。

 リングをつけているだけで、一日500gの脂肪が術式処理されて200gの筋肉に転換されるんだって。しかもそれに伴う皮のたるみとかも魔法で整えてくれるらしいし、何より筋肉をつけたいところは装備している人の意思で自在らしい。

 まあ、副作用もあってさ、リングをつけている間はトイレが近くなる。


「まじだよ。説明は次のページでさ、効果はあるらしいよ。でも高いんだよ」

「そうだよなぁ。魔導具だと最低でも1万円以上はかかるのか」

「それ以外だと、飴玉一つ20クルーラが最低価格かな。たまに細かい額をチャージして買っているけれど、添加物がないから体に優しい甘さだしね」


 笑いつつその飴を入れてある缶を取り出してみんなにも勧めて見る。

 まあ訝しげそうに見てはいるけれど、一度舐めると病みつきになるんだよ、これがさ。

 そんなこんなで、文学部としての活動よりも魔法研究会のようになりつつある我らが文学部であった。


 あと二週間で終業式、そして高校生の夏休み。

 はじめてのサマーバケーションに俺ちゃんウキウキウォッチングだよ。


………

……



●現在の乙葉の所有魔導具

 サーチゴーグル

 SBリング(ブースト、透明化)

 レジストリング(耐熱、耐打撃、耐斬撃、未登録×2)

 中回復ポーション×2

 病気治癒ポーション×1

 身代わりの護符


・カナン魔導商会残チャージ

 220万20クルーラ



●瀬川所有・魔導具

 レジストリング(耐熱)


●築地所有・魔導具

 レジストリング(耐熱)


●新山所有・魔導具

 レジストリング(耐熱)

 病気治癒ポーション×1




誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


・今回のわかりづらいネタ

今回はそれほど難しくないでしょう。ふふふ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 皆億万長者!笑 ロトより病気治癒ポーションの方が稼げそうだけどな 政治家経由すれば数億円荒稼ぎ出来そう!
[一言] これだけ狭い地区から4人も連続でロト6当選は流石にまずいと思いました。 しかも全員16歳位の高校生。
[良い点] 主人公がドラえもんに見えてきた。
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