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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。
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第百八話・平滑流暢、岡目八目? (神居古潭の後日談?)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 疲労困憊どころか体が動きません、はい。


 神居古潭での羅刹との戦い。

 その結果、俺と祐太郎は所持していた回復薬のほとんどを使い切り、それでもどうにか羅刹を封印することに成功した。


 これで、新山さんを助けるために必要な二つの魔導具の一つ、『封印杖』を入手することに成功したので、この勢いで残り一つの『五芒星結界宝珠』を手に入れたいと思います。


 そんなことを考えていた時代が、俺にもありました。


 神居古潭から戻ってきた俺を待ち受けていたのは、全身筋肉痛と『魔力酔い』、そして回復しないMPの3点セットでございます。

 なぜ回復しないのか、鑑定してみたんだけれど、どうやら一気に魔力を使いすぎた時に発生する『魔力酔い』のさらに酷い状況らしい。


 なんといっても、一晩寝たら全快だったMPが、まだ20しか回復していないんだよ? 今の俺のMPは106だよ? 力の矢フォースアロー一発で終わりだよ。



「はぁ。今日が日曜日で助かったわ。よって、今日一日を回復日とする」

「同感だ。撮り溜めしていたアニメでも見るか?」

「あとで瀬川先輩もくるから、それからでいいんじゃね?」


 祐太郎の部屋で、今日はのんびりとする。

 とはいえ、昨日の戦闘で俺の手持ちの魔法薬はほとんど無くなったし、そもそもチャージがない。

 

「さてと、カナン魔導商会に査定をお願いして、少しチャージを増やしますか」


『ピッ……現在、乙葉浩介様からの買取査定については制限が掛かっています。現在の買取不可能商品は以下のリストを参照ください』


「な、ん、だ、っ、てぇぇぇ?」

「どうしたオトヤン?」

「やべぇ、在庫過多で買取制限だわ。取り敢えずリスト化するからちょっと待ってくれ」


 空間収納チェストからノートと筆記用具を取り出して、リストを書き写してみる。

 そして確認したけれど、食品関係は軒並みダメ、缶詰も含まれるし最近買取が高い上質紙もダメ。

 100均の文具工具もアウト。これはこの前やりすぎたのは理解している。


「はぁ、これって何を査定して貰えばいいんだ?」

「衣服関係はセーフか。あと自転車は台数制限あり、ふむ、これは?」

「写真集だねぇ。少しエロいのは買取可能だから……ん? ちょっと待ってくれ、ユータロ、これ借りるぞ」


 本棚からアニメの同人誌(R18)を数冊引っ張り出して、査定に出してみる。


「いくらカナン魔導商会でも、同人誌はないだろう?」

「いや、向こうの世界にない文化を高額買取してくれるなら、オフセ印刷のエロ同人誌が買い取られない理屈はない」


『ピッ……[いけない女教師、転生したらサキュバスになったので冒険者ギルドに勤務して若い冒険者にいけない依頼をお勧めしてみました]の買取査定は一冊1万五千クルーラです』


 お、10倍になった。

 

「ユータロ、10倍で買い取ってもらえるぞ?」

「なん……だと?」

「これってさ、ダブついている同人誌を大量に集めて査定に出したら、作家さんのためにもなるし俺たちも稼げるからウィンウィンじゃね?」

「それって転売屋のようですわよ?」


 おっと、先輩の登場です。


「それで、お二人は何をしているのかしら?」

「先輩、実はですね……」


 祐太郎が昨日の顛末を全て説明してくれた。

 そして俺が封印杖を空間収納チェストから取り出して見せてあげると、頭を抱えている。


「無謀にも程があるわね。貴方たちは命がいらないの? 魔法に頼りすぎて危機感が欠乏してあるんじゃないかしら?」

「あ〜」

「……確かに、俺もオトヤンも無謀だったのは理解した。少し気を引き締めます」


 第三者から見たら、俺たちの行為は自殺行為に過ぎないようだ。

 それどころか、失敗した時に起こり得る事態についての保険がないとも。


「次の大雪山については、先に先輩と要先生にも相談します」

「二人だけでの単独行動は慎みます」


 海より深く反省。

 

「そうしてくれると助かるわ。もしも何かあったら、新山さんに説明するのは私なのよ? 私にそんな悲しい報告をさせないでほしいわ」

「「 サーセン 」」

「それで、今は同人誌の査定をしているのね。それじゃあ、これを査定してみて貰えるかしら?」


──スルッ

 先輩がブレスレットから取り出したフルカラー同人誌。

 著書もタイトルも知らないR18マーク付き、表紙イラストから察するにBLなのは理解した。


「これですか? そんじゃ……」


『ピッ……[魔導師の俺とオーラ使いのあいつの、魔力と闘気の混ざり合った背徳の日々。そうか、闘気って白濁していたんだ]の査定価格は9500クルーラです』


「先輩、買取りが一冊9500円ですけど、これは?」

「まあ、色々と事情がある同人誌でね、発売前に発禁になったのよ。これなら約1000冊ほど私が持っているし、全て提供するわよ?」

「まじですか? ユータロ、これでチャージが回復する……どうした?」


 傍で祐太郎が、先輩から受け取った同人誌を見て真っ赤になっている。

 おいおい、祐太郎、いつから二刀流になったんだ?

 俺はアーッする気はないぞ?


「あ、オトヤン、内容をよく見ろ?」

「なんだって? どれどれ……」


 ふむふむ。

 よくある異世界転生もので、転生し損ねた男二人が能力に目覚めて、男同士でアレする話で。魔法使いと闘気使いが持てる能力をフルに駆使して愛欲の日々を送るって、これ、俺と祐太郎がモデルじゃないのかぁ?


「せ、先輩、これって……」

「去年の二学期頭に完成してね、印刷してあったのですけど、流石にこれを販売するのはどうかってタケもっこす先生にも止められたのですよ」

「止められて正解ですわ、これは処分です」

「こ、これは不味いでしょうが? これをみたのはタケもっこす先生だけですか?」


 そう問いかけると、先輩はテヘッという顔をしながらぺろっと舌を出して自分の頭をコツンと叩いている。


「アイェェェェェェ、ドコニバラマイタデスカ?」

「全部で1000冊って話ですよね? 今の在庫はいくらあるのですか?」

「975冊ね。足りない25冊のうち、タケもっこす先生が10冊、新山さんが2冊、要先生が1冊、あとの12冊はうちのクラスの女子に配布しちゃった」

「「 はぅぁぁぁぁ 」」


 な、なんちゅうことをしてくれたんや?

 戦争じゃ、戦争になるぞ?


「そ、それでですね先輩。あの、これをみた皆さんの感想って?」

「うん、みんなあまり感想については教えてくれないのよ。捗るわぁって話していたけれど」

「何がですか何が捗るのですか?」

「落ち着けオトヤン、それ以上はいけない‼︎」


 ハーハーゼーゼー。

 よし落ち着いた。


「それじゃあ先輩、それ、全て処分しましょう。査定に全て出してくれれば水に流します、それで手打ちにしましょう」

「はぁ、印刷代だけでもと思ったのですが、それで構いませんわ」


 ということで、どさっと出された同人誌を全て査定に出す。


『ピッピッ……査定総額は900万クルーラです。チャージしますか?』


「イエスだイエス‼︎」

「オトヤン、ストップだ‼︎」


──ピッ

 え? なんでストップ?

 チャージしちゃったよ?

 大量査定なので、少しサバ読まれで金額下がったみたいだけど。


「ユータロ、なんで止める? これはこの世界にあってはいけない書物だ、焚書したいレベルだわ」

「チャージしたってことは、異世界にあれが流れるんだぞ? 何処かの世界の好事家が、あれを求めて買い漁る可能性は考えなかったのか?」

「あ……」


 既に時遅し。

 ま、まあ、どうせカナン魔導商会のある世界になんていかないから、全て無かったことにしよう。

 それよりも、今のうちに魔法薬を買い占めておこう。

 一瓶10万の魔法回復薬を、弱、中、強それぞれ20本ずつ。

それを祐太郎と10本ずつ分かち合い、先輩にはダイエット飴を一瓶。

 なんだかんだでチャージが250万まで回復したし、回復薬もなんとか戻ってきた。

 

 しかし、これで暫くは持たせないとならないかと思うと、本当に現金でチャージしたくなってくるわ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 翌日からは普通に学校に登校、放課後には数日おきに新山さんのお見舞いにいきたいところなんだけと、女子の家に通い詰めるのも問題ありと瀬川先輩が言うので、俺たちが行くのは週に一度のみ、あとは先輩にお任せしてある。


 新山さんの容態は以前変化なし、1日に二、三度ほど意識が戻るらしいが、お母さんと二、三言話してすぐに意識がなくなっていくを繰り返している。

 栄養を取らないとまずいらしく、点滴でどうにか持たせようとも考えたらしいのだけど、先輩の深淵の書庫アーカイブ曰く、冬眠のような状態らしく何も食べなくても生命維持については問題がないらしい。


 因みに、神居古潭では観光の目玉の一つである大岩が突然消滅したのでひと騒動あったらしいけど、まあ、そこについては知らぬ存ぜぬを貫き通した。

 要先生たちにはバレたけど。

 それで現在、俺は第六課にやってきていますが何か?



「浩介、その封印杖の管理を我々に任せる気はないか?」

「無いです。いくら忍冬師範の頼みでも、これは俺たちの今後にも関わってきますし、そもそも新山さんを助けるために俺たちが命がけで回収してきたものなんですよ?」

 

 新設された第六課事務所で、俺と祐太郎の二人は第六課の面々及び何故かゲストでいる特戦自衛隊の幹部と話をしている。


「伝承によると、その封印杖は魔力を持たないものでも、簡単に妖魔を封印することができるのだよな? そんな貴重なものを民間人に預けておくわけにはいかない、素直に提出したまえ」

「お断りしますよ。第六課ならまだしも、なんで特戦自衛隊に渡さないとならないんですか?」

「あんたらに渡したところで、宝の持ち腐れだよ」


 ナイスだ祐太郎、幹部の顔が真っ赤になったぞ。

 

「わ、我々は国民を守る特戦自衛隊だ、それを宝の持ち腐れだと?」

「せめて魔術師がいて、そいつが使えるというのなら可能性がありますけどね」

「我々には魔術師など必要ない。特戦自衛隊は、科学力で妖魔を封じ込める為にあるんだ」


 ほら、いきなり矛盾した。

 

「その科学力でどうこうしたい特戦自衛隊が、なんで俺たちに関与しようと? 俺たちは特戦自衛隊の逆の立場なんですけど?」


──ガタッ

 ついに真っ赤な顔で立ち上がる幹部。

 そして「不愉快だ」の一言を残して部屋から立ち去っていった。



「忍冬師範、あの人は何者ですか?」

「特戦自衛隊幹部の一人なんだけど、魔法なんて全てまやかしだっていう派閥の一人だよ」

「つまり、名目上の幹部というだけで、美味しい蜜を吸うためにいる人なんですね? まだ川端政務官の方がマシですなぁ」


 俺たちの能力を理解して近寄ってくる川端政務官の方が、まだ話しやすいわ。

 それにしても、今の幹部は、なんで俺たちから封印杖を回収したがったんだろう?


「オトヤン、俺に言わせるとどっちもどっちだわ。それで、師範も回収するのに強行するのですか?」

「まさか。祐太郎たちが断るならそれで良いと思っているからな。そもそも、浩介の空間収納チェストに収められているものを、誰が盗み出せる? 一番安全な保管庫だと俺は思うが?」


 全くです。

 でも、同じように安全なのは要先生にも渡した収納ポータルバッグでもありますけどね。

 既に魂登録オンリーワンで要先生以外には取り出せないようにしてありますし、俺たちの代わりに表に立ってくれているので御礼に渡した魔法の箒もありますからね。


「それで、今日俺たちを呼び出したのはこれだけですか?」

「いや、要君の魔法訓練を手伝って欲しいんだが。まだ上手く制御できないらしいし、魔法の箒だって免許は習得したんだけど上手く飛ばせないらしくてね」


 成る程、それならお手伝いしましょう。

 まだMPは1/10程度しか回復していませんが、それでも俺たちは常人よりは高いのですよ。


……


 そんなこんなで、祐太郎は外で要先生に魔法の箒を効率よく使うための実地訓練中。

 カナン魔導商会から購入した魔法の箒を使っている祐太郎と、俺が術式を組み込んで作った魔法の箒を使っている要先生の違い、それは『魔力の出力』。

 

 俺の作ったのって、最高速度でもマッハ越えないんだよ。

 どうやら魔術回路の基礎構造が全く俺のものとは違うらしくて、俺が作ると全てが廉価版になってしまう。

 それでも、市販品モデルとしてなら問題ないし、術式に魔力リミッターを設定して最高速度を時速100kmぐらいに抑えておけば、十分市販品として問題ないって忍冬師範も話している。

 なんだろ、俺が市販品を作る前提の話になっているようだけど、それは置いておくとして、今の俺は第六課及び北海道庁勤務職員に対しての魔術講座を行なっている。


 本当なら1時間一億円もらうよっていう関係各庁幹部に話したやつではなく、これは俺が懇意にしてもらっている忍冬師範に対してのお礼。

 しっかりと受講者全員の魔力策定も行ったし、なにかこう、そう言うのを目に見える形で表示できたら良いよなぁって思うんだよね。


 それで考えたわけよ、本人の魂から生み出す身分証明証。

 魔術的に作り出すことによって、本人のデータをカード化して魂とリンクさせる。

 これって、普通に考えたら世界最強の身分証明証だよね? 偽造できない魂のカード。


 そう言う術式を考えていたら、魔導書にありましたよ、第四聖典ザ・フォースに新しく表示されていた魔法。

 『魂の情報ステータスカード』っていう魔法が。


……


「とまあ、ここまでが魔法の基礎です。魔法の発動に必要な条件である魔力回路の開放、魔力の体内循環、そして実体化。これらを順に行うことで魔法は発動します……と言うことで、本日はこれまでです」


 90分の講義で、何処まで効果があったかなんて分からないけれど、手応えを感じたような表情の人もいる。

 最後に講義室を出るときに魔力測定もしてあげたんだけど、まだ50台まで到達している人はいない。


 それでも、今までは触れることができなかった魔法について、きちんと学べたのが嬉しかったのだろう、皆笑顔で講義室から出ていった。



「浩介、手応えはあったか?」

「さあ? 俺の知っていることを説明しただけですし、まだ魔術師としての規定値まで魔力を高めている人はいませんよ」


 そもそも、魔力回路が開いていない。

 それを開くべきかどうかなんて、俺にもまだわからないんだから。

  

 少しして祐太郎も戻ってきたところで、今日の晩飯は忍冬師範の奢りで焼肉をご馳走になることになったのは、言うまでもない。


 ガチにゴチになります‼︎



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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