第百五話・心慌意乱は急死に一生を得られるか?(状況は最悪だ)
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ウォォォォ‼︎
授業中に倒れた新山さんは、急ぎ保健室へと運ばれた。
すぐさま俺が鑑定で確認したんだけど、表示された文字は一つだけ。
『神威型・魔障中毒』
「ふざけるなよ‼︎ カナン魔導商会GO‼︎」
すぐさまカナン魔導商会を開き、治療薬を探し出す。
『ピッ……強治療薬……』
買いだ、買い‼︎
すぐさま強治療薬を購入して新山さんに飲ませる……って、意識ないから飲めないよなぁ、水差し探してもないよなぁ‼︎
そうなると、選択肢って一つしかない。
「新山さん、ごめん!」
強治療薬を口に含んで、口移しで飲ませる。
どうやら新山さんも無意識に理解しているのか、喉を鳴らして強治療薬を飲み干してくれた。
──キィィィィィン……バズッ‼︎
すると全身が輝いたが、その光が砕け散って飛散する。
「鑑定っ……効いてねぇぇぇ、次だ、次っ‼︎」
他に薬はないのか?
慌てて探して魔法薬を可能な限り買い集める。
それらを全て鑑定して、効果のありそうなものを選んでもう一度飲ませるが、相変わらず効果が『無力化』されてしまう。
「な、なんだって……どうして無力化されるんだよ? 鑑定、教えてくれよ……」
『ピッ……新山小春の神威型・魔障中毒はベースとなる呪詛が神威によるものであり、神威もしくはそれに準ずる回復効果以外は無力化されます』
「カナン魔導商会、神威をサーチ‼︎」
『ピッ……現在のところ、神威表記のある商品は一つのみです」
「それで良い、ショートカット‼︎」
『ピッ……エリクシール。神代の果実であるマルム、アンブロディア、世界樹の雫を原料とする万病に効果のある薬……』
「購入‼︎ 買えるだけ買うわ‼︎」
『ピッ……残高が不足しています』
なんだと‼︎
カナン魔導商会アップデート時に貰った虹貨のチャージ分がまだ14億あるだろうが。
それでも足りない?
値段は……一つ15億。
少し足りないのなら、速攻でチャージしてやるわ。
──ガタガタガタガタッ
チャージ分の商品を購入しに向かうので保健室から出ようとしたとき、丁度話を聞きつけたらしい瀬川先輩と祐太郎も来た。
「新山さんの容態は?」
「神威型・魔障中毒らしい。エリクシールで回復するらしいんだけど、予算が足りないから金作ってくる。先輩、祐太郎、新山さんを見ていてください」
「了解ですわ」
「任せとけ‼︎」
よし、これで守りは完璧勇気100倍。
速攻で魔法の箒で近くのショッピングセンターに向かうと、買える限りの商品を購入する。
幸いなことに、カナン魔導商会には何度か納品していたので、売れ筋商品は理解している。
それでも2時間掛けて、どうにかチャージを15億まで持っていったので、急ぎ学校に逆戻りした。
……
…
「深淵の書庫……新山さんの呪詛について解析をお願いします」
乙葉君がカナン魔導商会を使って回復薬を手に入れるまで、私たちができることは彼女を守ること、彼女を蝕んでいる呪詛を解析すること。
守りについては築地君が居るし、彼女の自宅にも連絡入れてあるので、迎えに来るまではこの場から離れるわけにはいかない。
それに、深淵の書庫で呪詛について解析してもらったけれど、回答が得られるまで1時間以上が経過してしまったわ。
『ピッ……神威型呪詛・魔障中毒、呪詛付与者はファザー・ダーク、効果は彼女の魔力を呪詛に切り替え、生命を蝕み、闇の神威を解放する。なお、本体の生命力の強度不足により、新山小春の寿命はあと30日程度』
流石は貴腐神ムーンライトの加護。
乙葉君の鑑定眼でも分からない事が、私の深淵の書庫を通じたら分かる。
「そんな……」
「どうした先輩‼︎ 何がわかったんですか?」
「彼女に呪詛を埋め込んだのはファザー・ダーク。でも、それが誰なのか、どこにいるのか分からないのよ」
『ピッ……ファザー・ダークに関する情報は0です』
「解析開始、新山小春の呪詛の破壊方法を教えて」
『ピッ……ファザー・ダークの消滅、もしくは彼女の死。一度発動した神威型・魔障中毒はそれ以外では引き剥がすことは不可能。但し、創造神のみが扱える術式『却下』により、いかなる現象をも無力化する事ができる』
「調査、『却下』に関する情報を」
『ピッ……世界神権限では、そこに抵触することはできない。最低でも統合管理神クラスの閲覧権限が必要』
うわぁぁぁ。
これは不味いわ、危険すぎるわ。
しかも、私の深淵の書庫でも閲覧制限に引っかかるって、いったいどう言うことなの?
「駄目。情報が全くないわ……どうしたらいいのか、何がいいのか……新山さんの呪詛の外し方は、彼女に呪詛を埋め込んだファザー・ダークを消滅させるか、それとも彼女が死ぬか……」
「なんだと……なんで、どうしてこんな事が起こっているんだ‼︎」
築地君が拳を握って叫ぶ。
同じ部員であり、クラスメイトであり、そして大切な友達。
その彼女を襲った突然の悲劇に、苛立ちを隠せないのだろう。
そして、私の言葉は、偶然教室に戻ってきた乙葉君にも聞こえていたらしい。
……
…
「え? 先輩、いまのは冗談じゃなく?」
「……ごめんなさい。私の深淵の書庫でも、答えが導き出せなかったの……」
「先輩の深淵の書庫は、その気になれば、世界中のどんな機関や組織にも潜り込めますよね? それでも駄目なのですか……」
「閲覧制限に引っかかったの。それも、神レベルの……」
いやだ。
いやだいやだ
いやだいやだいやだ
信じない、奇跡は起こす為にあるんだ!
すぐさまカナン魔導商会でエリクシールを購入する。
『ピッ……神威対象商品につき、本数制限あり、貴方はこれを2度と買う事ができません。それでも、今、購入しますか?』
イエスだ!
今使わないでいつ使う‼︎
速攻で購入して同封されている取扱説明書を見る。
うん、飲まなきゃ駄目だ。
急いで口移しで飲ませる。
──キィィィィィン……フヮサッ……
すると、先程よりも強い光が新山さんを包み込むが、それは霧のように周囲に散っていった。
「鑑定っ‼︎」
『ピッ……神威型・魔障中毒による昏睡。体を這い回る呪詛により、魔力を呪詛に切り替え、生命を蝕み、闇の神威を解放する。エリクシールの効果により、体力の損耗が緩和されるが、それでもなんらかの手を講じない限りは半年で彼女の寿命が尽きる……』
「半年で……死ぬ?」
「嘘‼︎ 深淵の書庫っ……」
瀬川先輩の深淵の書庫では、最初は一ヶ月の寿命だっらしい。
それがエリクシールにより半年に伸びた。
こうなると、半年以内に何としてもファザー・ダークを探し出し、新山さんの呪詛を剥がさなくてはならない。
「ん……わた……し、なに……が」
意識が戻った‼︎
「新山さん、大丈夫だから。俺が必ず助けてあげるから……」
「……あ……呪…詛の、そう、魔障…中毒な…のね」
「心配無用!!新山さんには、現代の、魔術師、の、俺が…ついて……」
くっそう、なんで俺も泣いているんだよ。
泣いていたら、新山さんが心配するだろうが‼︎
「あ…りがと……う……ごめ…ん…ね」
「もう大丈夫だから。あとはゆっくりと休んで」
「う……ん……先輩……築…地君も……ごめ…」
新山さんの意識が途切れた。
慌てて先輩を見ると、軽く頷いている。
「バイタルは弱いけど安定しているわ。でも、いつ、
乙葉君の飲ませてあげた薬の効果が切れるかわからないか、急いだ方がいいわね」
「急ぐ、妖魔なら分かるだろうから、行ってくるわ‼︎」
「それなら俺も‼︎」
「祐太郎、新山さんの両親が来たら説明してあげてくれ、そして必ず助けるって‼︎」
「お、おう‼︎」
それからどこをどう飛んでいったのかなんて覚えていない。
ただ、気がついた時には妖魔特区の入り口に俺は立っていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「綾女ねーさん、白桃姫‼︎ 俺の声が聞こえているなら出てきてくれ‼︎」
妖魔特区内12丁目エリア外。
鬱蒼と茂った森のようなところを、俺は魔力を解放しつつ歩いている。
妖魔にとっては、裸の美女が餌をまとわりつかせて歩いたいるようなものだが、真っ先にきたのは。
「美味じゃぁぁぁ。放出されている魔力もまた美味じゃ」
「なにがあったか知らないけれど、随分と危ない事をしているねぇ。何かあったのかい?」
白桃姫と綾女ねーさんが文字通り飛んできた。
真っ先に話のわかる二人が顔を出してくれたのは助かったと言える。
「神威型・魔障中毒の解除方法、もしくはファザー・ダークについて教えて欲しいんだけど」
「魔障中毒なら、伯狼雹鬼の十八番じゃな。魔力回路を暴走させて対象者の魔力を高める奴。そうして贄を生み出して再生の秘術に使うと聞いた事があるが」
流石は白桃姫。
でも、それじゃないと思う。
「成る程なぁ。それで、神威型ってわかるか?」
「神威型って言うのは、術式体系の一つだね。私たち魔族は魔力型とか闘気型って言うのが主流、妖怪は妖気型を使う。これでわかるだろ?」
「神威型……神々の呪詛ってこと?」
「そうじゃな。ファザー・ダークについては、あたしは知らないよ。白桃姫は何か知っているかい?」
「知っておるけど、先に甘露、甘露をくれたもれ」
しゃーない。
魔力球を二つ用意して、綾女ねーさんと白桃姫に差し出す。
それを美味そうに食べる二人を眺めつつ、周囲の警戒も忘れない。
「それで、ファザー・ダークについて教えてくれ」
「待っておれ、いまいち事情が飲み込めぬぞ? 何があったのか、順を追って説明せい」
あー、時間が惜しいんだが、今は慌てても仕方がない。
おれ自身も落ち着く為にカナン魔導商会経由ウォルトコでティラミスを購入して食べつつ、頭の中で今までに起こったことを反芻する。
「……よし、それじゃあ今日起こったことなんだが」
教室で新山さんが倒れたこと、神威型・魔障中毒によって意識を失ったこと。
魔法薬を使っても効果が無かったが、どうにか体力の損耗速度を緩和できたこと。
それでも、後半年で新山さんが死んでしまうこと。
「ふむふむ。それで、ファザー・ダークを探しているのじゃな?」
「知っているのか、白桃姫?」
「魔族の信仰する神の一柱じゃな。Wander in the darkが正式名称じゃよ。今は信奉されておらぬ旧神じゃが」
はぁ?
ダーク神父って神なの?
まあ神威型とか使うぐらいだから神なんだろうなぁ。
「それで、その神様ってどこで逢える?」
「知らんわ。お主は、お前たちの世界の神様に会う方法を知っておるのか?」
「知らんわ、あ、なるほど納得、ありがとう」
「素直じゃな。因みにじゃが、会うことはできずとも、神託という形で言葉を得ることはある」
それだ、それ。
それこそ解決への道だよ。
「そ、その神託ってどうやれば?」
「神聖魔法の上位にある神託の術式を用いることで、言葉を送り出すことはできるが。返答がもらえるかどうかは神のみぞ知るじゃな」
「それだ、神聖魔法って新山さんだぁぁぁ」
「なんじゃ、そうなると、その新山とやらは神の巫女として選ばれたのか」
え?
それってどう言うことなの?
神の巫女?
慌てて綾女ねーさんの顔を見ると、気まずそうな顔しているし。
「綾女ねーさんなら知っているのですか?」
「あたしゃ、こっちの世界でも長く生きているからねぇ。神の巫女っていうのは、なんらかの儀式に必要な生贄を指すのさ」
「い、生贄?」
冗談じゃないぞ。
「その生贄って、なんで新山さんが巫女に選ばれたってわかるんだ?」
そう問いかけたら、白桃姫が指を一つずつ折って説明してくれた。
「巫女の条件は『神聖魔法が使える』、『人々を助ける慈愛を持っている』、『神によって巫女となるべく呪詛が刻まれる』の三つの条件じゃからなぁ」
「うわぉ、全部だよ、それってなんの儀式? 何が起こるんだ?」
「何って……乙葉浩介、周りを見るが良い。それで理解できるはずじゃぞ?」
白桃姫の呟きで、おれは今一度周囲を見渡した。
対物理障壁により隔絶された妖魔特区。
その中心であるテレビ塔付近には、鏡刻界と俺たちの世界を結ぶ転移門が存在している。
転移門が。
「新山さんは、転移門を開く生贄だっていうのか‼︎」
「過去に、あっちでも同じ事が起こった事があるからのう。確か、第二次大侵攻の時じゃったか? 第一次じゃったか?」
「どっちかだったのう。白桃姫はまだ幼き魔族であったろうから、覚えておらぬのもしかたなしじゃ」
待て待て待て。
それならあれか?
あと半年以内に転移門を封印したらいいのか?
そうすれば、新山さんは贄から解放されるのか?
「なあ白桃姫。俺が転移門を封印したら、新山さんは贄から解放されるのか?」
「分からぬが、新山とやらが転移門開放の贄ならば、解放されるかもしれないのう」
「因みにだけど、この件に白桃姫が関与しているっていうことは無いよな?」
「なんで妾が、お主の逆鱗に触れることをせねばならぬのじゃ? 百道烈士あたりならゲスの極みじゃからやりかねぬが」
「よーし、百道烈士ぶっ殺す……その前に、転移門の封印だな」
よーしよしよし。
希望が見えてきた。
此処からは最短コースで新山さん救出作戦を展開しないとならない。
俺は白桃姫と綾女ねーさんにお礼代わりに魔力球を二つずつ差し上げてから、妖魔特区を後にすることにし……。
──ドッゴォォォォォォン
頭上から何か降ってきた。
「現代の魔術師っ、ここであったか100年目だぁぁぁ」
百道烈士が降って沸いたかと思ったら、高速で間合いを詰めてくる。
早い、以前とは比較にならないぐらい早い!
繰り出してこようとしている拳にも、とんでもない魔力が載せられているのがわかる。
「換装っっっ、まだお前とやりあう気はないんだやっ」
──バシバシバシバシッ
繰り出されてくる拳の魔力を中和して全て受けし、後ろに下がり始める。
攻撃を受け流している限り、今の百道烈士は以前の二倍近く強さが増している感じがする。
(鑑定っ‼︎)
『ピッ……レジストされました』
うっそぉ。
「む、貴様、俺を見ようとしたな‼︎ だが甘いぞ、今の俺は以前の俺で無い。これを見よ‼︎」
右腕に闘気を、左腕に魔力を集めた百道烈士が、両腕を俺に突き出す。
すると、左右の腕から竜巻のように放出された魔力と闘気の渦が螺旋を描き、ドリルのように飛んでくる‼︎
「マジか‼︎」
魔力だけ、闘気だけなら中和できる。
だが、混ざり合ったものなんてどうやって中和したらいいんだよ‼︎
「125式、力の盾っ」
目の前に透明な壁を生み出す。
その瞬間、百道烈士の放った螺旋の波動とでもいうものが一撃で力の盾を破壊した。
──バギィィィィ
「嘘だろ?」
「嘘じゃねーよ。お前が来るまで、俺がどれぐらいの獲物を食らって力をつけたと思っている? この障壁内部の妖魔の数が減ったのはどうしてだと思う?」
まさか….仲間を喰ったのか?
「同族殺しかよ……」
「違うな。全ての存在は、俺の餌だ。俺は全てを喰らい、力とする。暴食のグウラとは、そういう存在なんだよ‼︎」
ヤバい、これはやばい。
ここは逃げの一点だ。
すかさず走り出して魔法の箒に飛び乗ると、魔力を込めて一気に加速する。
「逃がすと思ったかぁぁぁ」
──ブゥン!
右手に集めた闘気を、刃のように放出して飛ばしてくる。
それを次々と交わしつつ、どうにか12丁目エリアに突入すると、ようやく百道烈士も俺を追撃するのを諦めたらしい。
「ふん。まあいいさ。お前のおかげで、また転移門が覚醒に必要な魔力を集めただろうからなぁ」
満足そうに俺に言い放つと、百道烈士は森の中へと戻っていった。
危ない、本当にやばい。
今は、百道烈士の相手などしないで、転移門の封印を第一優先しよう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




