表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

4.襲撃

ほんのちょっぴりシリアスです。



 アリスです。私はまだ、ハッター侯爵領におります。

 メイド見習いとはいえずっと仕事をしている訳ではございません。週に二日は丸々お休みがいただけます。そんな日は課題をやったり、読書したりして過ごすのですが、なんと、今日はルナ様たちと湖で船遊びをすることになりました。


 で、これ乙女ゲームのイベントでこんなんあったわーと今更ながらに気付いてしまいました。

 初めての長期休暇にお友達に招待されて湖にやってきたヒロインですが、お友達と離れて一人で湖を散策していた所を王子たちの船に誘われるのです。

 イベントでは王子とのフラグが立つか立たないかがここで決まるほどの重要な布石なのですが、これだけストーリーを逸脱してしまうとどうなんでしょうか?


 ちなみに王子は私が幼い日に森で会った少女だとあっさり気付いておられ、随分前に声をかけられましたが、例によって「忘れたふり戦法」で難を逃れました。今は完全に可愛い弟分の使用人という扱いです。

 ディアにも同じく子供の頃教会で会ったことを、一緒に昼休憩を取るようになってすぐ気付かれたのですが、ディアがそのことをルナ様に伝えるとなぜかルナ様がキラキラと感動したような眼差しで私を見てきました。解せぬ。


 まあ、ヒロインから使用人に格下げになって久しい私ですが、今日は私も一学友と言うことで、羽を伸ばさせていただきます!


 さすが、侯爵家の所有の船ということで、大層立派です。優雅に遊覧する様はまさにノーブル!

 私が爽やかな風を感じながら甲板で一人静かに過ごしていますと、ルナ様がいらっしゃいました。最近背も伸び、精悍な感じになられたルナ様ですが、まだまだ非常に可愛らしいのでお姿を見るだけで自然に顔が綻びます。


「ルナ様、今日はお誘いくださってありがとうございます!」

「こちらこそ、ごめんね。毎日頑張ってもらっているのにこんなことしかできなくて」

 ルナ様が申し訳なさそうに眉根を寄せますが、そんな顔もお可愛らしいのです。

「いえいえ、私はルナ様のお顔を拝見できるだけで毎日楽しいですので、謝らないでください」

 と言うと、ルナ様が顔を真っ赤にして押し黙ってしまいました。あら私変なこと言ったかしら?


 そんな時、突然魔法の気配がした。強力な魔法の攻撃がどこからか飛んできたのた。王子の護衛の方が魔法を弾き飛ばす。私も光魔法を付与した水のベールで船を包む。敵は周りの水面を狙い、船が大きく揺れた。ルナ様は蒼白になってしまった。私はルナ様の手を両手で握り、ルナ様を落ち着けるように言った。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫!ルナ様深呼吸してください。」

 ルナ様はハッとしたように深呼吸をする。私はルナ様の手を掴むと船室に戻った。

ここは危険ですので中に入りましょう。この船は絶対沈没させません。何しろ私は水魔法の超級者ですから!


「ディア、魔法攻撃だ!」

「そのようだな。ルナ、敵の位置を特定してルートを作ってくれ、俺が風で相手を切り裂く」

「わかった!」

 ルナ様が陣を結ぶと、空中に亜空間が浮かぶ。ディアがすかさず風魔法をその中にぶち込んだ!

 二人の連携魔法は息つく暇もないほどの手際で、敵の攻撃が一瞬にして止んだ。

 ディアが風魔法で気配察知を行い、相手が逃げたことがわかった。

 船は無事に岸に着き、幸いこちらの乗船者に怪我人は一人もいなかった。


「さすがに超級が三人も揃うと鮮やかですね」

 王子の護衛の騎士が感心したようにそう呟いた。

 敵がいた位置に何人かの騎士が転移して見に行ったところ結構な量の血が流れていたようだが、敵の姿も相手を特定できそうなものも何もなかったそうだ。


「アリス、ありがとう」

「ルナ様こそ、ありがとうございました!すごい魔法でしたね!」

 あんなに短時間で敵の位置を特定するなんて、目の前に突然風魔法の攻撃が現れた敵には逃げようがなかったはずだ。考えると恐ろしい攻撃ね。闇魔法使い恐るべし。


 王子の乗っている船を攻撃したということで犯人には国家反逆罪が適用されるわけだけど、犯人大丈夫かしら。ちなみにゲームの中ではこんな攻撃はなかったわ。


 今回の事件で一つ幸いなことがあった。連携魔法で、「闇でルートを作って風を送る」ということをやった二人だが、肝心の研究に応用する方法を思いついたらしい。それはやっぱり伝声管を利用したもので、双方向の場合は管を平行に、一方向の場合は管をラッパ状にし、さらに聞く側にスピーカーのような装置を付けるというものだった。管の途中に魔法陣を設置し、魔力を流せば聞いたり会話したりできるようにするという。

 いくつか試作して、一番使い勝手の良かったものが採用され、王宮の緊急連絡マジックアイテムとして活躍することになった。

 

 長期休暇が終わり、いつもの生活に戻った私たちは、湖の襲撃者のことを忘れかけていた。でも王宮では看過できないものとして、慎重に捜査が行われていたらしい。

 すると、湖の近くの森の奥で、数人の男の骨が見つかったとの連絡入った。

 骨に切り裂かれた跡があり、あの襲撃犯が口封じで依頼者に殺されたのではと考えられているようだ。

 襲撃者たちは少なくとも上級の魔力保持者だった。重傷状態にしても複数の上級者がそんなに簡単に殺されるものなんだろうか。依頼者か誰か知らないけど超級者の影が見え隠れするような気がした。


 超級者は子供の頃に登録されるので、調べればすぐわかるんじゃないかしら。そして私はこういうことができそうな超級者に一人心当たりがある。暗殺者―チェシャ猫、乙女ゲームの攻略対象者の一人だ。


 チェシャ猫はもちろん本名ではない。暗殺者の集団を率いる正体不明の超級魔導士だ。

 ヒロインが子供の頃に出会って、橋の下でご飯をあげたのだけど、学園二年目に再会するのよね。その前にも伏線的なすれ違いエピソードがあるんだけど、それはまあ置いておこう。


 再会イベントは町中で偶然会って、相手がヒロインに気付くのだ。これが難しくて、友達ルートに進む選択肢を選ばないと、その時一番好感度の高い攻略対象者を殺しに来るの。恋愛ルートではチェシャ猫は葛藤して、ヒロインがチェシャ猫を選べば、チェシャ猫はヒロインと他国に逃げてハッピーエンド。ヒロインが別の攻略対象者を選ぶと相手の好感度のゲージ次第で、相手が死んじゃうバッドエンドになっちゃうのよね。好感度ゲージが高ければチェシャ猫が死んじゃうことになるのでこれも後味悪いのだ。

 でも上手く友達ルートを選べば、闇落ちした悪役令息を倒す協力をしてくれるので頼もしい味方となる。

 

 って悪役令息って、ルナ様はもう違うからね!ルナ様には絶対に手を出させないし!



いつもご愛読ありがとうございますm(_ _)m

たくさんの方にお読みいただけて幸せです(๑˃̵ᴗ˂̵)

また忌憚ないご感想、評価等お寄せくださいm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ