表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

3.マジックアイテム




「闇魔法は空間と精神に関与できるだろ。特に空間に関与できる点は、マジックアイテムの可能性を大幅に広げることができる。例えば有名店の調理場とチャンバーを闇魔法で繋げれば、いつでも出来立ての人気料理が食べられるようになる」

「なるほど。地方の素材なんかも、王都と繋げばいつでも新鮮な物が食べられるね」

「へえ、じゃあ薬草なんかも、簡単に手に入るようになるのか」

「そうだね。人が転移するよりも魔力も少なくて済むし、魔法陣魔法なら、誰でも簡単に使用可能だ……」

「でも闇魔法は攻撃には向かないだろ?」

「応用すれば攻撃も可能だ。敵を一瞬で排除することも可能だけど、確かに防御の方が圧倒的に向いているね。何しろ魔法攻撃はすべて吸収可能だからね……」


 今日のメニューはサーモンマリネとビシソワーズ、そしてひよこ豆のサラダだ。暑くなってきたので、冷製メニューを用意したけど、温くなるので早く召し上がってください!


 私たちの昼の集いにはいつのまにかディアも参加するようになった。ディアがルナ様と闇魔法の談義で盛り上がり、ジャックが闇魔法の剣術への応用やマジックアイテムについて食いつき、料理そっちのけで男三人、非常に楽しく会話が弾んでいる。


 ルナ様も本当によく笑うようになって、心からよかったと思うけど、……なんだこれ感が否めない。ヒロイン、私じゃなくてルナ様になってないかい?

 私は夢女子なので、BのLには萌えないのに!


 で、気になることがもう一つ。ピーター・マルスは相変わらずルナ様に隙あらば絡もうとしているようだが、私たちがいつも一緒なので手を出せないでいる。その顔がなんだか最近怖いのよね……。あれ闇落ちフラグじゃないかしら?

 ていうかマルスの奴も実はルナ様が好きなんじゃないの?


 確かに最近のルナ様の可愛さは学園内でも評判で、たまに一学年上の第二王子殿下もお声がけくださるようになった。まあ殿下とルナ様は元々知り合いみたいだけど。

 こないだも水場でルナ様が手を洗っていらっしゃると、王子が来て私より早くハンカチ差し出してたし。これヒロインと王子の出会いイベントじゃん!


 ルナ様の闇落ちフラグはほぼ回避できたと思うけど、マルスの闇落ちとルナ様が攻略対象者の毒牙にかからないように注意が必要ね!


 そんなある日の放課後、ルナ様、ジャック、ディアの三人が町に買い物に行くことになった。マジックアイテムの開発のための材料探しだって。私ももちろんメイド見習いとして同行します。


ルナ様とディアは授業の課題「新しい魔法の使い方」というテーマで、新たなマジックアイテムを作成することにしたらしい。

 何かのアイテムに闇魔法を施して、その特性を活かすというものだけど、魔法袋に続くような役立つものを作りたいと張り切っている。


 ちなみに私は複合魔法で水魔法を使って、光魔法を速やかに広範囲に適用するという方法でレポートを提出し、すでに優をもらっている。この方法を使うと例えば、土壌汚染や伝染病も速やかに解決できるのだ。水に光魔法をかけて空気中に水蒸気として散布することによって、伝染病を無効化したりね。実際、先日風邪が流行った時によく手伝いに行っている治療院で試させてもらったけど、うまくいったのよね。一人一人にキュアをかけるよりも低魔力でできるところがポイントよ。前世でRSウィルスにかかった時に吸入してもらったら随分楽になったことがヒントになった。あと加湿器もね。


 ジャックも木の実の中に火炎魔法をかけて、不完全燃焼の木の実を投げつけ、爆発させるという、いわゆるバックドラフト現象を活用した武器を提出し、可をもらっていた。

 子供の時に作って遊んでいたというのが危ないと判断され、優も良ももらえなかったそうだ。


 実はこの課題って、乙女ゲームのイベントの一つで、ジャックかディアのどちらかとヒロインが一緒に取り組むのよね。でも現実は私とジャックはすでに個人で提出し、ルナ様とディアが一緒に取り組んでいるという……。これはルナ様がディアルートに入ったということなのだろうか?いや、ないわ。


「わあ色々あるね」

 町に来るのは初めてだということで、嬉しそうにしているルナ様。キュートです!

 ディアとジャックもそんなルナ様を優しい目で見つめている。

 いやほんと、誰がヒロインですか?


「ルナ様走ったらだめですよ。はぐれないようにね」

「お前は母親かよ!」とジャックが笑いながらつっこむ。


「私はルナ様付きのメイド見習いですからね!」

 ほんと手をつなぎたいくらいだわ。可愛らしいルナ様を悪の餌食にしてはならないからね!


「本当に、アリスは中身母親だな。ていうか口うるさい乳母?小姑?」

 ディアが厭味ったらしくそう言った。ムッ!花の女子学生に向かってなんて失礼なことを言う奴だろう‼

「ディア、アリスは責任感が強いだけだから。……僕がしっかりしてないし」

 ルナ様がオロオロと取りなしてくださった。いえ、ルナ様は悪くありません!


「ルナ様、ルナ様はお考えも行動も十分しっかりなさっておいでですわ。でも町には悪い奴がたくさんいて、素敵で愛らしいルナ様を毒牙にかけようと虎視眈々と狙っている輩も多うございます。どうかくれぐれもお気をつけくださいませ」

 ルナ様は私の渾身のお願いになぜか顔を真っ赤にして頷いた。解せぬ。


 まず初めに雑貨屋に入る。そして武器屋、金物屋、いろいろ見て回って、アイディアが出たので、具体的な案を練ろうということで、カフェに入った。


「俺はあのポストを利用した新たな通信手段というのが画期的だと思うよ」

 ジャックが言う。

 この世界では手紙は鳥に届けさせるか、風魔法で送るか、人が手で届けるかだ。もちろん闇魔法使いは闇魔法を使って手紙を目当ての相手に届けることもできる。


 それを簡単にするために、二つのポストの上と下を捻じ曲げて、手紙のやり取りをするというものだ。Aのポストに入れたものがBのポストに届き、Bのポストに入れたものがAのポストに届く。役所なんかで取り入れても便利そうだし、家族や恋人同士の連絡方法としても素敵よね。セットにして売り出せば大ヒットになりそうな気がするわ。


「そうだな。俺も本当にいいアイディアだと思うよ」

 ディアも頷いた。今回、ディアが闇魔法を付与した新たなマジックアイテムを作ろうと提案し、ルナ様がポストのアイディアを出した。二人の共同作品として、申し分ないわね。


 私たちは金物屋に戻り、ポストを二つ購入した。学校に戻り、ルナ様とディアがそれぞれ闇魔法を付与し、お互いに手紙を入れて試してみた。結果はもちろん大成功!その足で先生の所に提出しに行くことにした。こういうのは鮮度が大事だからね。誰かに先を越されたら終わりだし。


 先生は大層褒めて下さって、二人に優が与えられた。それだけでなく、やはり画期的で役に立つアイディアであり、商品として可能性が高いということですぐに特許の手配をしてくださった。


 この商品はのちに爆発的に普及し、ルナ様とディアの名前を広く知らしめるものとなったほどだ。


 課題の後はテストがあった。ルナ様は成績優秀で学科で総合一位を取られた。魔法学ではディアが一位だったし、ジャックは騎士学と体術でそれぞれ一位だった。

 私もそれなりに良い成績を修められ、なんとか侯爵家のメイド見習いとして及第点を貰えた。


 長期休暇ではルナ様が領地に行かれるということで、私とディアも同行することになった。ディアは学友として一緒に闇魔法の研究を引き続き行うということで、私はもちろんメイド見習いとしてだ。今回ジャックは自領で鍛錬に励むということで同行しない。でも実はもう一人今回領地に来られる方がいらっしゃって大騒ぎになっているのだ。


 私はルナ様、ディア、そしてそのもう一人の方と同じ馬車におり、大変肩身の狭い思いをしている。なんで第二王子 エース・ハート殿下が同行してるのさ?


 しかもこの馬車、王家のものだからね。いつも乗ってる侯爵家の馬車の二倍くらいある。侯爵家の馬車も私が乗るのは使用人用の小さなものだから比べるべきではないのだけど、四人で乗るには広すぎないかい?


 まあ、私はあくまで使用人。必要がない限り、貝のように口を閉じておりますので!


「ルナは最近明るく元気になったね。小さい頃は大人しくてちょっと心配してたんだ」

 王子はルナ様と幼馴染らしく、弟のように思っているらしい。学園でお声がけをなさる時も、いつも親愛の情が込められていた。

「はい。学園がとても楽しくて。ディアやジャックやこのアリスのお陰だと思っております」

 ルナ様がそう言うと、ディアが恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんだ。私も嬉しくて目が潤むわ。そんな風におっしゃっていただいて、頑張った甲斐がありました!


 王子も嬉しそうに微笑むと、話題はルナ様たちが今開発しているマジックアイテムの話になった。なんと二人の提出した課題が注目され、今回王宮から直々に依頼があったのだ。


 鏡に遠方を映すマジックアイテムがすでにあるのだが、音声が聞こえないので、聞こえるようなものを開発してほしいということだ。できれば双方向、一方向共にほしいそうだ。

 音は風魔法の制するところなので、風魔法と複合すればできそうよね。前世の知識的には糸電話や伝声管的なものもありの気がする。

 でも双方向はともかく、一方向って難しそうね。


 さて、馬車に揺られること丸一日。やっとハッター侯爵領の領館に着きました。私は荷物をポーターにお願いすると、領館の侍従長に挨拶して指示を仰いだ。王子たちの歓待もあるので、遊んでいる暇はない。とりあえず厨房の人手が足りないということで、ルナ様に一言お断りをして、厨房に急ぐ。最近のルナ様のお気に入りレシピは共有済みなので、ちゃんと用意してくれていた。ルナ様がサロンでディアや王子とお茶を楽しんでくださってる間、私はめまぐるしく動き回った。厨房が一段落したら、ルナ様の荷解き、客間の風呂の用意。食事が始まれば、ダイニングの端に立ち、ルナ様がお困りごとがないか見守る。お食事を終えられるタイミングで、他のメイドと一緒にお茶の用意を行い。ルナ様がお部屋にお帰りになると言うと付き従った。

 湯あみや着替えはルナ様が断固として拒否するので手伝わせてもらえないんだけどね。


 ルナ様がベッドに入り、お休みなさいませと一礼して今日の仕事は終了。


 長い一日だったわ。

 そもそも休みの日に侯爵家でメイドしてる時は夕方迄なので湯あみなど手伝う機会は元からなかったし、おやすみの挨拶をすることも今までなかったのだ。この長期休暇で初めて私は一日中ルナ様と一緒にいることになる。

 なんだか妙に楽しくなって、自分の顔が締まりなく緩んでるような気がしてきた。恥ずかしいわ!



お読みいただきありがとうございました。

書き下ろし済み作品ですが、加筆しながら投稿しますので、不定時の投稿になると思いますが、今後もお付き合いただけましたら幸いです(๑˃̵ᴗ˂̵)


また感想、評価、誤字報告等忌憚なく頂きたくよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ