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閑話 ルナ・ハッタ―の事情4

本日二話目です。ご注意ください。




 僕は少し浮かれ過ぎていたらしい。

 夢にまで見た初恋のアリスと婚約できて、ルイスの騒動も解決し、卒業が近づくにつれて、思うのはアリスとの輝かしい未来だけだった。


 卒業したら僕は王宮で王太子の補佐官の一人として側仕えすることも決まっていたし、アリスの才能を活かせる機会をと、エース殿下から提案を受けて彼女が宮廷で働けるように色々準備に夢中になっていたのもある。

 結婚式についてはすでに母が手配をしてくれていたので特に不安はなかったが、女性が働く場がほとんどないこの国で彼女の才能を邸内に埋もれさせるのはもったいないので、彼女が宮廷魔導士団に籍を置けるように、王太子妃の正式な側近となれるように日夜下準備に追われていた。


 エース殿下を狙った襲撃犯については、ラスキン公爵家の紋章のついた馬車の目撃証言のお陰で早い段階でウィリアム・ラスキンに辿り着いていた。ウィリアム・ラスキンが革新派と呼ばれる勢力に傾倒しており、この国の色々な差別問題の解消に尽力しようと行動していたことはある程度知られていたが、まさか王子を直接狙うなんて大それたことをするような人物とは誰も考えてはいなかった。何しろ真面目で堅実、勉強熱心で、向上心があり慈悲深い、貴族の鑑のような男性だったのだ。


 この国では、女性差別だけでないあらゆる差別が当たり前のように蔓延している。

 平民はどんなに優秀でも決して宮廷内に仕えることはできないし、孤児は奴隷のようなもので一生勉学の機会にも恵まれない。例え魔力持ちであっても平民というだけで魔法を学ぶ機会は与えられないし、下手をすれば魔力を制御する処置が施されるほどだ。


 移民は認められていないし、隣国のように冒険者が活躍できる仕組みもない。

 それはこの国が魔物の脅威にさらされていないことが主な要因であるが、冒険者ギルドがないせいで闇ギルドなどの裏の組織が暗躍する機会を逆に与えてしまっているとも言える。


 それでも城壁と貴族たちの大きな魔力に守られたこの国では表面的には何の問題もなく回っているのだ。孤児が姿を消そうが、平民がろくな職も得られず闇の仕事を請負おうが誰も気にするものはない。


 そんな状態で、冒険者ギルドの整備と実力のある平民の登用、そして国民全員への教育を叫んだウィリアム・ラスキンは、一部の若手貴族たちの間で英雄視されていたが、その父親、ラスキン公爵からは疎まれ、廃嫡も秒読みの段階だった。

 

 そこに襲撃事件が起こり、追い詰められた彼は、何の証拠も残さずに自らこの世を去った。


 ウィリアムの仲間が誰だったのか、疑わしい人物は何人かいた。そして、その内の一人がこの学園にいることも分かっていた。


 なのに、僕は易々とそいつに出し抜かれてしまったのだ。


 僕は教室に駆け込みジャックとディアを捕まえた。

「アリスが行方不明なんだ。リデル嬢によるとクローバー先生に呼び出されたらしい」

「おい、それ不味いじゃないか。クラブ・クローバーは容疑者の一人だろ!」

「先生の所に行こう、ジャックはエース殿下に連絡してくれ」

「あっジャック、お願いがあるんだ」

 僕はジャックを呼び止めた。僕のお願いにジャックは快諾するとエース殿下に連絡を取るため走って行った。

「さあ早くアリスを助けに行こうぜ!」

 ディアが僕の背中を押した。

 アリス!すぐに助けに行く!


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