閑話 ある女生徒のお話し
本日二話投稿予定。
後ほどもう一話投稿します。
私のクラスにはルナ・ハッター様とディア・クロウリー様というとても仲のよろしいお二人がいらっしゃいます。クールで誰も寄せ付けない氷の貴公子と呼ばれているディア様が、小柄で女性のように可愛らしいルナ様にだけは微笑む様はとても美しく、そんなお二人を私を含めた多くの女生徒たちが陰ながら見守っていました。
孤高の天才魔導士と謳われるディア様の心を癒せるのはルナ様しかいない。そう信じて、私たちは文化発表会でお二人を主役にしたラブストーリーを我がクラスの出し物とすることにしました。
衣装が完成し、並び立ったお二人はまさに絵画のようにお美しく私たちからは感嘆の溜息が洩れました。
ですが、残念なことにご実家のご領地に災害があり、ディア様は当日欠席。代役としてルナ様のメイド見習いのアリス・キャロル嬢が指名されました。
ある女生徒が言うには、アリスさんはルナ様が探し求めた初恋の君で、ルナ様の母上であられる侯爵夫人が、ルナ様の思いを成就させるためにアリスさんをメイド見習いとしたとのことで、そのストーリーもまた私たちの心を打ちました。
幼き日に出会った少年と少女が、主従として再会し、また愛を深める!萌える!
アリスさんはすらりとした美しい方ですが、思いの外男装がよく似合い、舞台でも迫真の演技で、男性以上に格好よくていらっしゃいました。
ルナ様と並び、男女逆転したその姿は背徳的な美しさを備え、私たちの心を鷲掴みにしました。その後、ディア様とルナ様を見守る会に加えて、ルナ様の恋の成就を応援する会とアリス様ファンクラブができたことは自明の理と言えるでしょう。
そして今日、舞踏会です。アリスさんを誘いたいルナ様がなかなか行動に移せずにいるとディア様が叱咤激励されております。私たちも手に汗を握りしめて、影ながらルナ様を応援しました。
そんなルナ様のご様子を知ってか知らずかいつも通りメイド然として佇むアリスさんに少々苛立ちを覚えるほどです。
ですが、ラストダンスでやっとルナ様がアリスさんをお誘いになり、アリスさんも嬉しそうにその手を取りました!私たち含め多くの人が陰でガッツポーズをしていたことは、淡い恋のオーラに包まれたお二人には知る由もないでしょう。




