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旅人達の夢見る星

作者: きりぼし団子

 私達は果てしない旅路に、長い長い時と遠い遠い星光へ理想を訪ねる。新緑が授ける清らかな風に世界を感じ、草原を照らす月光に希望を見出す。旅人とは、人知れず歩き無限を知る者のことだ。私達はそのことを誇りとし、喜び今日も未知への旅路を歩き続けるのだ。


「団長、そろそろ休みましょうぜ。暑くて暑くて参っちまう」


 私達の旅団は地平線まで広がる砂の中で太陽に照らされていた。3日間歩いてもオアシスは未だに見当たらず、旅団員達にも疲れが見え始めていた。水と食料がまだ残っていることだけが救いだった。


「我慢しろピスラ。旅なんてこんなものだ」


「顔が明るい内はまだ大丈夫ってことね。へばってんじゃないわよ」


 副団長であるダイヤが喝を入れた。彼女ですら疲れている筈なのによくやるものだ。ピスラの期待が崩れた溜め息が聞こえた。私達5人はオアシスを目指しひたすらに進む。


 次第に太陽が傾き、風が冷たくなっていく。闇夜が砂漠を覆い、星が疎らに光り始めた。私達はテントを張り、火を焚いて野営の準備をした。砂漠の夜は極寒である。旅をする上で準備を欠かしたことは無いがこの寒気は私達の身に応えるものであった。


「団長、寒いです」


 まだ少し幼い団員、イオラが不満気な表情で訴えてきた。


「仕方ないだろ。火の近くで凍傷にならないようにだけはしとけよ」


「分かってます。そうじゃなくて、私は温もりが欲しいんです」


「何をしろと?」


「団長、あっためて下さい」


「駄目だ」


「むぐぅ」


「イオラ、あんまり団長困らせるんじゃないわよ」


 旅をするのに、年も性別も、国籍も関係は無い。重要なものは意思である。イオラは数年前、本土の都市で孤児だったところを拾った。当時はすぐに野垂れ死ぬんじゃないかと思っていたが……ここまでよく着いてきたものだ。よほど外の世界を知りたかったらしい。健気なものだ。


 野営の準備が終わり、夕食を食べる。余程腹が減っていたのか、或るいは昼に体力を使いすぎたか、私達はあっという間に平らげてしまった。少し喉が詰まりそうだ。

 

 ふと空を見上げると、満天の星空が砂の大地を覆っていた。冷たく乾いた砂の粒をほんのりと照らす星々は、私達を釘付けにした。それは私達の感じた寒ささえ忘れてしまうほど美しい光景であった。トリンは、荷物の中から手早く望遠鏡とカメラ、方位磁針と天体地図を取りだした。


「天体観測か」


「ええ。中々砂漠に来て星を見れる機会なんてありませんから」


 彼は世界各地で星を観測し、宇宙を知る為に旅団に同行している天体学者だ。天気がいい夜にはよく星を見ている。トリンもまた一つの旅人の形であると、私は星に夢中になる彼の姿を見て思う。


「今日は砂嵐が無くて助かったぜ」


「ピスラ、流砂も起きませんでした」


「今日はアクシデントが無くて良かったよ」


「そろそろオアシスが見つかるかもしれませんね」


 団員達は、口々に明日への希望を話した。この星がそうさせたのかどうかは分からない。だが、私も少し浮足立っている。私達の夢見る場所が星ならば、オアシスも星だ。砂漠に存在する、澄んだ湖と豊かな木々に見守られる、地球のような場所だ。


「さあ、今日はもう寝るぞ。寝支度しろ」


「ラジャー」




 私達は次の日も、オアシスを目指し歩き続けた。オアシスに着いたら、またどこかを目指し歩き続けるだろう。私達旅人は、ただ風に任せ、乾いた土地を歩き、太陽に身体を照らされる。旅とは、ただ自由に世界を巡り、一期一会の出会いに目を輝かせるもののことだ。旅に、本質的な形など無い。しかし、幻想を抱き己を見つける為ということに旅人は変わり無く不変である。


 私達は今日も、星を夢見て歩き続ける。

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