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六頁:午前0時の死闘

 午前〇時丁度。正太郎とエリカは、上谷区立図書館を訪れていた。

 老朽化が進んで建て直しが決まっている図書館の内部は、一階から三階まで吹き抜けの構造になっており、深更の闇を吸い込んで一層物悲しく朽ち果てて見えた。

 まばらに本棚へ取り残された本達は、背表紙がすり切れたり破れたりしており、捨てられる事を覚悟したかのように項垂うなだれている。


「この辺で一番大きい図書館ですよね。ここにワードが?」

「ある意味、お前の親の仇かもな」


 ――やっぱりそうだ。


 殺人事件の時、エリカが必ず見た青いドレスを着たお姫様。


「あの時の……」


 幼いエリカのグリムハンズ能力が暴走した時、あのワードを仕留める事は叶わなかった。

 死の亡霊は、十二年生き延びて沙月エリカとの邂逅かいこうを果たしたのである。

 ならば仕留めるしかない。

 大切な人々を奪った元凶の一つを今度こそ、徹底的に貫き尽くして――。


「エリカ、落ち着んだ」


 正太郎の声が沸き上がる復讐の熱を冷ましてくれる。


「相手は、だいぶ顕現けんげんが進んじまってる。冷静に戦わないと頭から喰われるぞ」

「顕現?」

「ワードは、発生してすぐ現世に影響力を持つわけじゃない。最初は、かすみみたいなおぼろげな存在でグリムハンズ以外だと視認する事すら難しい。だから奇怪な事件を起こしたり、都市伝説としてだったり、様々な形で人間に認知されて力を増していく」

「じゃあワードは、顕現するために九人も犠牲に……」

「あまり目立ちすぎてグリムハンズの注目を集めないよう慎重にな。本能的に俺らを忌避きひしてるから人目を忍んで徐々に力を高めんのさ。まぁ最近の犯行の大胆さは、ほぼ顕現しちまってる証拠だ。隠れる必要がない程、力を付けちまった」

「あのさ先生、ワードってどう倒すの? 私の能力でも今までは殺せなかったわけだし」

「わざと強制的に顕現させる。あくまで一時的にな」


 エリカが首を傾げると、正太郎は近くにあった本棚から無作為に文庫本を抜き取ってページを開いた。

 本のタイトルはグリム童話全集で、開いたページは茨姫の冒頭である。


「そのワードがどの物語のどんな単語や一節かを推測し、言い当ててやる。そうすると俺達の認知と認識によって一時的に実体を持って顕現する。この場合は、他者によって強制的に顕現させられる影響で力と存在が不安定になるんだ。だが何度もチャンスがある訳じゃない」

「どうして?」

「俺達、つまり少人数の認知と認識とは言え、何度も顕現させたら存在が安定しちまう。このワードは、既に四回も仕留め損なわれている。今回で仕留めないとまずい……っと講義はここまで。お姫様のお出ましだ」


 正太郎の視線の先、天井付近の大気にガラスのような冷たい気配が広がった。

 気配の中心点を見やると空間の一部分だけが歪み、捩じれ、人型を成していく。

 やがてそれは、青いドレスを着た女性の姿に変じた。

 彼女の背後の景色が透けてかすみのようだが、彩桜高校で対峙した時よりも、その異形の姿は鮮明に見える。


 面立ちには腐り落ちた肉塊に埋め込まれた蟲達が蠱毒こどくのようにうごめいており、青いドレスはり切れて、不浄に煮立った赤い肉の泡が流れ落ちている。

 怪物は、エリカを見やると黒くただれた唇を嬉々としてしならせた。


 幼い頃見た姿とはまるで違う。

 もっと可憐なおとぎ話のお姫様であったはずなのに。

 人の意識と認知が彼女をここまで醜悪しゅうあくに歪ませたのだろうか?

 十二年もの間、人の認知と認識を反映し続けてきた結果がこの成れの果てなのだろうか?

 だからと言って同情心は微塵もないし。逃がすつもりもない。


「よし。私のグリムハンズで」


 エリカがビー玉を右手に握り込むと、正太郎が視線で制した。


「待てエリカ。お前は、まだグリムハンズの扱いに慣れてない。遮蔽物だらけのここじゃ素早いあいつに有効打を当てられねぇ」

「じゃあどうするんですか」

「俺が動きを止める。その隙にやれ」


 頷きながら正太郎が朱色のジャケットの右ポケットから取り出したのは、特殊警棒である。

 ネットで買える程度の獲物の登場に、エリカは困惑した。


「警棒?」

「俺のグリムハンズ茨姫リトルブライアローズは、イバラの棘に触れた相手を瞬時に眠らせる。ま、眠らせるだけで殺傷力ねぇんだけどな。だからトドメはお前に任せる」


 エリカが頷くと、正太郎は、特殊警棒を振るって伸ばした。


「エリカ。シンデレラって読んだ事あるか?」

「もちろん」

「基本的にシンデレラは、継母にいじめられてる可哀想な女の子ってイメージだが、ちと違う書き方をされている物もある」


 正太郎は、警棒を握った右手の手首を回しながら宙を漂うワードに歩み寄っていく。


「イタリアのバジーレという詩人が書いた灰かぶり猫って話がある。これはペローとグリムにサンドリヨンや灰かぶり姫が執筆される前に書かれた物。世界的に有名なシンデレラのバリエーションの一つだ。この作品のシンデレラは、父親の再婚相手にいじめられていた。苦痛に耐えかねたシンデレラは、家庭教師の女に相談するんだ。すると家庭教師の女は、言った」




『衣装箱にしまってある服を取ってほしいとお義母さんに頼みなさい』




『彼女が衣装箱を覗き込んだら、頃合いを見計らって蓋を閉めて首を折ってしまいなさい』




『そしてお父さんに先生を新しいお母さんにしてほしいと頼みなさい』




「このワードは、その展開が顕現したものだ。故に子供を持つ母親の首を折って殺している。被害者は、継母と違って、全員罪のない一般人だがな」


 正太郎は、警棒の先端をワードに向けると笑みを浮かべて呟いた。


「顕現せよ。灰かぶり猫のゼゾッラ」


 正太郎の言葉をぶつけられたワードは、金属を引き裂くような声で一鳴きすると霞のようであった像をより鮮明にした。

 背後にある物が透けて見えていない。

 それは、ワードが一時的に現世へ顕現した証である。


「あれはシンデレラが母親の殺そうとした展開を模したワード。そしてゼゾッラは、灰かぶり猫の主人公の名前だ」


 ゼゾッラのワードは、恨めしげに正太郎とエリカを睨んで唇を開く。

 そこから灰が零れて地面に落ち、黒く尖った歯が正太郎を喰らいたそうにカチカチと鳴った。


「俺達二人の認知と認識によって奴は顕現した。お前はそこで待機してろ」

「先生は?」

「俺は奴の動きを止める。お前は隙を見てグリムハンズをぶちこめ」


 正太郎は、左手の人差し指の付け根に犬歯を立てて噛み千切った。


「グリムハンズ! 茨姫リトルブライアローズ!」


 零れた血を絨毯じゅうたんり込むと、無数の赤黒いイバラとなって床を走り、飢えたイナゴの群れのようにゼゾッラへ迫った。

 ひるがえりながら宙に逃れるゼゾッラであったが、渦巻くイバラの追跡は、音すら容易に置き去りにして標的を縛り上げる。

 正太郎は、イバラを足場に駆け上がると、身動きを封じられたゼゾッラの額に警棒を振り下した。


 グリムハンズの身体能力は、通常時の数十倍以上に強化される。

 身長一八〇センチを超える正太郎の鍛え上げられた肉体の強化度合いは、素手でも大型の猛獣を容易く殺傷せしめる。

正太郎の渾身の一撃は、ゼゾッラの牙によって容易く阻まれた。

 ゼゾッラが顎に力を入れると、警棒は無抵抗にひしゃげ、ゼゾッラの口内で無残な鉄片と成り果てた。


「チタン製の特注品だぜ」


 正太郎が着地と同時に警棒の柄を投げ捨てると、赤黒いイバラがゼゾッラの身体を一層激しく締め付ける。

 しかし拘束をものともせずゼゾッラは宙を舞い踊り、鋭い牙が正太郎の喉元へと迫った。


「眠れ!」


 正太郎の一声と共にゼゾッラの動きが急激に鈍くなる。

牙は、ゆっくりと正太郎の首筋に近付いてゆくが、触れる寸前で完全に静止した。

 正太郎が後方に飛び退き、


「エリカ! 今だ!」


 エリカがビー玉を握り込んだ拳を床に叩きつけようとした刹那、大量の睡眠成分を注入されたはずのゼゾッラは覚醒してもがき始め、イバラに喰らい付いた。

 相手は、チタンすら噛み砕く馬力の持ち主。強化されたグリムハンズの筋肉や骨格でも容易く食い千切るだろう。

 イバラも例外ではなく、ゼゾッラは、絡み付く蔦を一本また一本と噛み切っている。


「せ、先生!!」

「タングステンの強度とゴムの柔軟性を併せ持ってるイバラなんだけどな。こうも簡単に千切るかい」


 正太郎とエリカが驚いている間に、ゼゾッラは、最後のつたを噛み切り、イバラから抜け出すと、またしても正太郎に突撃した。

 もはや人間の知覚を超越した回避の叶わぬ速攻。

 常人ならば決定付けられた絶命。だがグリムハンズにより強化された反射神経と未来予知にも等しい先読みで、電光石火の異形を正確に捉えた如月正太郎に焦燥は微塵もない。


 正太郎は、自分の右手首の一番太い血管に歯を立てて噛み千切ると、多量の血が床へと落ちていく。

 ゼゾッラは、それを見て即座に動き出す。

 正太郎の行動が無意味であると考えてはおらず、何か仕掛けてくる前に、この男を仕留めるべきだと本能的に察していた。


 およそコンマ数秒にも満たぬ極小の思考。

 その決断を下すまでに要したゼゾッラのほんの僅かなタイムラグ。

 正太郎には、それだけで十分だった。

 床に落ちた血痕は、膨大なイバラの波となり、ゼゾッラを飲み込んでいく。


「エリカ!」


 正太郎の活にエリカは、右手の人差し指の付け根を噛み切り、ビー玉を握り込んだ拳を地面に叩きつけた。


「グリムハンズ! 灰かぶり姫(シンデレラ)!」


 夜気やきを吸い込んで煌めくガラスが赤い絨毯を滑り、ゼゾッラへと迫る。

 爆発的に膨張するガラスの結晶の群れは、龍の牙が如き威容でもって、イバラごと怨敵を喰らい尽くした。

 通常兵器ではびくともしない頑強な身体を引き裂き、貫き、切り伏せる。その瞬間、エリカの脳裏に浮かぶ光景があった。


『よくも妻を!!』


 エリカの傍らに寄り添う首をねじ切られた母の亡骸と青いドレスの少女に立ち向かう父の姿。

 しかし少女の怪力に父の手足は、ボロ紙でもあるかのように千切れ飛び、


『エリカ……逃げ、ろ』


 四肢を失い、息も絶え絶えな父を見下し、少女は右手を振るい上げた。


『パパからはなれろ!!』


 ――守りたい。


 その一心でエリカが叫ぶと、手にしていたビー玉が破裂して、


 ――思い出した。あの時も……。


 伯母夫婦の時も。

 保護施設の時も。

 刃のように研ぎ澄まされた結晶は大切な人たちを――。


 ――私は、ただ守りたかっただけなんだ。だけど私は……。


 過去の記憶からエリカが現実に回帰すると、眼前に巨大なガラスの柱がそびえたっていた。

 図書館の一階から三階まで槍のように突き抜ける結晶は、異形の姫君の亡骸を天高く掲げている。


「これがエリカの……なんっつー火力だ」


 想定以上の火力は、正太郎をも怯ませたが、エリカはまばたき一つせず、過去と向き合うようにガラスを見つめていた。

 やがてガラスの柱が崩れ落ちると、ゼゾッラの亡骸もまた影すら残さず大気に溶けていき、絨毯の上に掌ですくえる程度のガラスの破片が積もるばかりであった。


「やったの?」


 エリカの緊張が微かに緩んだ瞬間、ガラスの破片から光が飛び出してくる。

 透き通った白い輝きを放つ幼子の拳大程の光球であった。


「なにこれ?」

「ワードに変じていた揺蕩たゆたう力だよ。このままにしておくと、いずれ元の形に戻っちまう」

「え!? やばいじゃん!」


 狼狽ろうばいするエリカとは対照的に、正太郎は余裕を崩さない。

 白い表紙の文庫本サイズのハードカバーを朱色のジャケットの左ポケットから取り出した。


「本?」

「白紙のな」


 正太郎がページをパラパラとめくって見せてくれた。

 何も書かれていない白紙である。

 しかし本については素人のエリカでも、大層上質の紙で出来ていると一目で分かった。

 正太郎が本のページを向けると、光球は、白紙に吸い込まれていった。

 光球が完全に溶け込むと、白紙だったはずのページに真新しいインクで描いたような青黒い字で『灰かぶり猫のゼゾッラ』と一文が描かれている。


「最後の仕上げとしてこの本に封印する。文字ワードとしてな」


 十二年の歳月の果てに遂げたエリカの復讐は、終わってしまえば十文字。

 たった十文字から生じた存在が沙月エリカの人生を激変させてしまった。

 エリカの人生を闇に落とし、全てを狂わせた怨敵おんてきへの復讐を成し遂げたのに、大切な人々の敵を討ち果たしたはずなのに、胸中に巣食う罪悪感は、未だにエリカを焼き続けている。


 本当は分かっていた。少なくとも、両親はエリカの罪を許していると。

 エリカが人並みの人生を歩み、幸せに生涯を過ごす事を望んでいる。

 分かっていても、やはり自分を許せない。


 幼い頃からグリムハンズやワードの事を理解していたら、起こらなかった悲劇ではないか?

 何か自分の異能に気付く手立てがあったのではないか?

 ちゃんと使いこなせたらあの時点でワードを倒せたはずなのに。

 たらればばかり浮かんできて、自分の無能さが恨めしくなる。


「よくやったな」


 正太郎は、微笑みと共に本を閉じ、エリカの右肩を叩いてくるが賞賛を素直に受け取る事が出来なかった。


「親の仇を取ったって気はしないな」


 手口を考えると母親や伯母、施設長を殺したのはゼゾッラだったかもしれない。

 しかしそれ以外の犠牲者はどうなのだ?

 物語に行動が縛られるワードに殺すメリットなどあるのだろうか?

 そして父を守りたい一心で叫んだ時、爆ぜたガラスの結晶が事切れる寸前の父を引き裂いた記憶。

 大切な人たちを守ろうとして、結果的に命を奪ってしまった事実。

 故意でないにしろ、エリカの想いがグリムハンズを呼び起こし、人を死なせてしまった。


「やっぱり私が殺したんだって思う」


 思い知らされるのは、自身の異能が容易く全てを破壊してしまえる事。

 指を噛む痛みも僅かな血も、この力を扱う代償には軽すぎる。

 グリムハンズが悪いのではない。

 強大なグリムハンズの力を背負うには、沙月エリカという人間があまりにもちっぽけなのだ。


「先生。私は、自分を許さないといけない? これからどうすべきなのかな?」


 自分一人では、答えを出せる気がしなかった。

 人に頼る事を久しく忘れた人生だったが、正太郎なら何かくれるかもしれない。


「無理に自分を許す必要はねぇよ。ただ俺がいるって事だけは忘れんな」


 そんな淡い期待を彼は裏切らなかった。

 受け止めてくれる。

 そばに居てくれる。


「何でも話せる奴がここに居る。それだけは忘れんなよ」


 居場所なんだと、そう思わせてくれる。

 甘えていいんだと、教えてくれる。


「うん。ありがとう先生」


 ――この人と一緒なら、罪を背負っていける。


「明日は、ちゃんと授業受けろよ」

「うん。約束する」


 エリカの頷きを確認して正太郎は、背を向けたが、思い出したかのように向き直った。


「そうだ。お前、童話研究会への入会どうする?」

「なにそれ。もう入ったつもりでいたんですけど」


 本当の自分で居られる場所だから、居られるのなら一緒に居たい。

 しかし正太郎は、エリカをあまり歓迎している風ではなかった。


「今回は、相手との相性がいいから巻きこんじまったが、戦いを強制するつもりはない。命の危険だってある。生易しいもんじゃない」


 超常的な存在との戦いは、正太郎の語る言葉以上に過酷だろう。

 今日は、たまたま上手く行っただけで、今後待ち受ける戦いはより熾烈しれつさを増していくはずだ。

 グリムハンズの世界に足を踏み入れたら、これから生きる時間全てを使ってワードと戦い続ける日々が待っている。

 一度立ち入ってしまえば、命を落とす瞬間まで戦いを終える事は許されず、修羅しゅらが待っていようと、地獄が口を開けていようと、怯まずに歩み続けなければならない。


「いいよ。それでいい」


 それでも構わなかった。


「危険でもいいから居場所が欲しい」


 真実を知ってしまった以上、戦わない事は罪に思えた。

 今までは力を忌むばかりで彼女シンデレラにも寂しい思いをさせてしまった。

 でも誰かを救うために力を使えるのなら、これほど喜ばしい事もない。


「悲劇のヒロインは、もう終わりにする」


 不幸に浸り、自己を哀れむのはもうやめだ。

 強大な力を生まれ持った責任を果たすために、


「これからはグリムハンズとして戦う」


 もう二度と心は折らない。

 ただ一つ願うのは――。


「ねぇ、先生。一個だけ約束してくれる?」

「ん?」

「私を見捨てないで」


 この居場所を奪われない事。

 ずっとここに居ていいという保証。


「もう無理だから……一人で生きるの無理だから」


 一人は、もう無理だ。

 知ってしまった。思い出してしまった。

 人と触れ合う温かさを。人の想いの優しさを。


「久しぶりに人と話して……分かり合えて……もう昨日までの自分がどうやって孤独に耐えてたのか思い出せない……思い出したくないよ」


 昨日までの日々にだけは戻りたくない。

 だからせめてこの場所だけは、許されたい。

 この人にだけは、許されたい。

 自分の居場所と呼ぶ事を。


「傍に居て……」

「ああ。約束する」

「ありがと……先生」


 エリカは、笑顔を浮かべながら正太郎の胸に飛び込み、ひたすらに泣き続けた。

 どちらも十二年間、何より望みながら我慢してきた行為。


 ――せめて涙は、もう二度と見せずに済みますように。


 溜め続けてきた想いと一緒に、枯れ果てるまで涙を流し続けた。

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